細胞とは何だろう-動物細胞と植物細胞の違い、そして単細胞生物について理解する-

目次

はじめに

すべての生物は基本的に細胞から成り立っています。

細胞は皮膚の細胞や神経細胞や腸の細胞でそれぞれ働きが違うように、一つの生物の中でも組織や場所によって多様な性質を持つことが知られています。

今回、この記事では細胞一つの基本的な構造について目をこらして見ていきましょう。

細胞の基本的な知識事項を紹介しています。入学試験や資格試験には対応していませんのでご了承いただき、あくまで読み物としてご活用ください。

細胞の発見の歴史

細胞が世に出たのは1665年に発行されたロバート・フックによる顕微鏡図譜(Micrographia)であるとされています。

ロバート・フックは自身が開発した顕微鏡を用いて乾燥したコルクの細胞を観察し、スケッチしたのです。

細胞(Cell)という言葉が細胞を意味するものとして使われたのもこのときがはじめと言われています。

ロバート・フックによる細胞の発見は後の細胞説(Cell theory)へと繋がり、細胞が生命の構成単位であることが常識となることに繋がっていきます。

・Micrographiaにあるフックの顕微鏡の版画は生物の教科書の挿絵にもよく使われています。

・Micrographiaはネット上に無料で公開されているので興味がある方はぜひ読んでみて下さい。Cellという言葉を細胞という意味で用いたのもフックが最初と言われています。Micrographiaの中にもCellという言葉が出てきますが、区画のような意味で用いられていて、なんだか不思議な気分になります。
https://www.gutenberg.org/cache/epub/15491/pg15491-images.html#obsXXX

・ロバート・フックはフックの法則(弾性の法則)を発見したことでも有名です。

・生命科学の進展は工学の発展とリンクしていると言っても過言ではないほどに実験機器の発達に支えられて生命科学は進化を遂げてきました。細胞の発見においては顕微鏡の進化が最も重要で、細胞という直径20マイクロメートル程度の構造物を見ることが出来るようになったことが、まさしく細胞を発見出来た理由なのです(そのため、物理学者でもあるロバート・フックが発見者)。

・顕微鏡の歴史で言うと、微生物を最初に顕微鏡で観察したのはレーウェンフックと言われています。ロバート・フックもそうですが、レーウェンフックが生きた時代は1600〜1700年代でヨーロッパ(特にイギリス)がすべての中心で今のようにインターネットももちろん無く、情報の伝聞は限られたものでした。ちょうどこの頃世界最古の学会とされる王立学会(Royal Society)が設立されたこともこの発見(細胞の発見)が瞬く間に世の中に知られていったことと一致していそうです。

細胞説に関してはまた別の記事でご紹介、もしくはこの記事に加筆する形で紹介させていただきます。

細胞の構造 -植物細胞と動物細胞-

細胞は大きく分けて真核細胞原核細胞の二種類に区分されます。

真核細胞はその名の通り核を持つ細胞で、植物と動物の細胞は真核細胞に分類されます。

植物と動物の細胞の違いはいくつかありますが、大きな特徴としては植物細胞には細胞壁と葉緑体が存在することが上げられます。

植物は動物のように外骨格を持たないので、細胞壁は体を支えることに利用され、葉緑体はご存知のように光合成に利用されます。

・もしヒトの細胞で新しい何かメカニズムを発見した場合、その現象がヒトの細胞だけなのか、脊椎動物では確認出来る現象なのか、無脊椎動物の細胞でも起こりうるのか、また植物細胞ではどうなるか、そして原核細胞ではどうなるか。このような広い視点を持っていると興味深いディスカッションが出来ること間違い無しです(主観)。学会でもある新しい現象が発見された場合に、その現象がどの程度種間で認められる現象なのか質問が飛び交っていることもしばしばあります。

・葉緑体を持つ動物は少ないですが一応存在は知られています。アブラムシ、ウミウシ、そしてサンショウウオの仲間のわずかな種の細胞内に葉緑体が含まれていることが知られています。いずれも自身のDNAから葉緑体を生成するというより、藻との共生のようです。なお、生成されたATPを動物細胞側で利用できるようで、もしこのメカニズムが人間に応用出来たらソーラー人間が誕生しちゃいますね。

以下は葉緑体を持つ(共生する)サンショウウオ(Ambystoma maculatum)の研究論文と葉緑体を持つ動物を紹介している日本語記事です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3080989/pdf/pnas.201018259.pdf
https://logmi.jp/business/articles/143534

・調べた限り2023年2月現在細胞壁が存在する動物細胞は報告されていなさそうです。

一つの細胞から成り立つ単細胞生物の不思議

細胞は現在においては生命体を形成する一つの要素として無くてはならないものと理解されています(細胞説)。

植物細胞と動物細胞もそれぞれ一種類単体で生命体が構成されるわけではなく、基本的に複数の細胞の種類によって構成されています(多細胞生物)。

その細胞の多様さこそが生命の多様性を構築していると言っても過言ではありません。

しかしながら、この世の中には一つの細胞からその生命のすべてが構成される単細胞生物と呼ばれる存在がいます。

単細胞生物

単細胞生物は一つの細胞から構成されているものの、シンプルな生物ではありません。

以下で単細胞生物の具体的な例をいくつか上げているので見ていきましょう。

なんとなく形からも確認出来るように、大腸菌とシアノバクテリアは核が存在しない原核生物でもある。
また、クラミドモナスとシアノバクテリアは色の通り葉緑体を持っている単細胞生物。

ゾウリムシ、クラミドモナス、アメーバ、酵母、大腸菌、シアノバクテリアなど単細胞生物は上げればキリがないほどに様々な種類が存在します。

なお、原核生物は全て単細胞生物です。

しかしながら、原核生物でさえも私たちの想像より多様な機能を持っていることが近年知られてきています。

ここからは原核生物で知られているバクテリア(細菌)の細胞をもう少し詳しく見ていきましょう。

バクテリア細胞(細菌)の構造

一般的なバクテリア細胞の構造を見てみます。

バクテリア細胞は真核生物と異なって核が存在せず、代わりに核様体と呼ばれる物質にゲノムDNAが収納されています。

真核細胞であれば、有性生殖によって形質を子孫に遺伝させていくことが知られていますが、バクテリア細胞は性繊毛と呼ばれる毛を使ってプラスミドという円状の遺伝子をやり取りすることで特定の形質を別の個体に伝えていきます。

遺伝によって伝えられていくような生物の形や性質のことを生命科学の用語で「形質」と呼びます。

細胞は膜構造として動植物細胞に見られる細胞膜、細胞壁に加えて莢膜と呼ばれる独自の膜構造を持っていることも知られています。

莢膜は全てのバクテリア細胞が持っているわけではありませんが、細菌の感染機構にも関与しているとされています。

バクテリア細胞の運動は鞭毛(べんもう)と呼ばれる毛状の細胞小器官によって担われています。

真核生物にも鞭毛が存在する場合がありますが、細菌や古細菌で鞭毛の種類が異なることが知られており、さらに細菌の中でもその種類によって鞭毛が異なることも知られています。
興味がある方は以下の参考文献をご覧ください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsb1944/57/3/57_3_519/_pdf/-char/ja

このように、単細胞生物と言っても個体の形質を受け継ぐ力があって運動する能力も兼ね備えられているのです。

単細胞生物の学習

生命活動において、学習とは非常に重要な機能であることは言うまでもありません。

人間における学習と言うと、机に向かって勉強することであったり、本を読むことが上げられそうな気がしますが、生命科学(心理学)における学習と言うともう少し厳密に定義されています。

例えば、wikipediaの定義を見ると、学習とは「新しい理解、知識、態度、スキルや価値、態度、そして好みを獲得するプロセス」と定義されます。https://en.wikipedia.org/wiki/Learning#cite_note-1

また、学習の中には順化(Habituation)と呼ばれるものがあります。

順化とは繰り返し刺激を与えている間に起こる反応の低下です。

非常に興味深いことに、この順化という学習は単細胞生物でも行われることが少なくとも1988年の論文で報告されています。

2019年の報告では、回避行動も単細胞生物(ラッパムシ)で行われると報告されているので、私たちが思っている以上に学習というプロセスは原始的なものであるのかもしれません。

出典:

https://wired.jp/2020/01/28/single-celled-mind/

https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)31431-9

原生生物の順化に関する実験をしている論文の1文目に順化の定義の記載もあります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6569516/pdf/jneuro_8_7_2248.pdf

さて、今回細胞に関することを動物細胞と植物細胞の違いや単細胞生物の話も絡めながら簡単に記載させていただきました。

いずれも今後さらに深堀りしていきたい内容ではありますが、一旦細胞について頭だけ理解するには充分な内容と思います。

今後も乞うご期待ください。

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