2023年4月OpenAI社からChat-GPTがリリースされ、社会人を始めとして多くの人々の間で衝撃が走りましたね。
Chat-GPTは対話型のChat Botでこちらから何か質問やリクエストを送ると、何なら日本人よりも流暢な日本語で適切に回答してくれて、実際に利用されて世間の賑わいを肌で感じた人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
世界で最も権威あるコンサルティング集団であるマッキンゼー・アンド・カンパニー社は生成AIに関するレポートを発表し、多くの業界、業種が生成AIによって何らかの変化を及ぼす可能性があることを指摘しました。
どのような業界にいても、生成AI、Chat-GPTの存在を無視できない状態になっていますね。
さて、それでは生命科学領域におけるChat-GPTを始めとした生成AIの影響はいかがでしょうか。
本記事では生命科学業界における生成AIの影響を考えていきたいと思います。
そもそも生成AIとは
生成AIとは、generative AIの日本語訳で人工知能によって新しい画像やテキスト、動画といったアウトプットを生成する際にその人工知能そのものを指して利用される言葉です。
現在巷を賑わしているChat-GPTも生成AIの一つということになります。

Chat-GPTが生命科学に及ぼす影響
生命科学といってもこれまた色んな業界が含まれてきます。
製薬業界やヘルスケア業界、食品業界など様々な業界がありますね。
そもそもビジネスかアカデミックな業界かによっても変わってきそうです。
それぞれ考えていきましょう。
ビジネスの世界におけるChat-GPT
ビジネスの世界においては、一旦企業を中心に考えてみたいと思います。
企業は多くの場合、それぞれ部署ごとに機能を持っています。
経理部は経理関係の業務を担っている部署で、営業部は営業関係の業務を担っている部署で、そしてマーケティング部はマーケティングのことを担っている部署で、それぞれ部署によってChat-GPTの活用方法がありえます。
部署ごとのChat-GPTの活用は多くの場合業界に依存しません。
どのような業界でも営業部はありますし、経理部もあるので、Chat-GPTの活用についても変に業界に分けて考えない方がむしろ自然と言えるかもしれません。
製薬業界におけるChat-GPT

インダストリー(業界)で切って考えてみましょう。
まずは製薬業界におけるChat-GPTの活用です。
Chat-GPTは膨大なテキストデータを学習し、その学習データを元に対話型でテキストを生成する人工知能です。
仮に、製薬業界に特化したテキストデータを学習したChat-GPT(ここではPharma-GPTとでもしましょうか)が存在したら、どのように役立ってくれるでしょうか。
製薬業界における研究の場合、薬効を測定するというシチュエーションが考えられます。
薬効の測定にも様々な方法がありますが、よく利用される指標にIC50というものが知られています。
IC50は50%阻害濃度と呼ばれていて、どの濃度で、その薬物が標的としている物の半数の働きを阻害できるかを示します。
通常新しい薬や候補となる薬を細胞にふりかけて、その細胞のターゲットとする動きの変化をプロットしていき、ちょうど50%阻害できる濃度を探していきます。
もちろん、大手であればあるほど、自社でIC50を算出するような独自の計算ソフトウェアを保有していて、実際の業務上困ることは少ないと思います。
ただ、Pharma-GPTが組み込まれていた場合、グラフの作成や整理に加えて考察や他の化合物の情報、さらには類似する構造を持つ化合物の提案もしてくれるかもしれません。
加えて、近年はいわゆるウェットな実験を機械が実施する例も増えてきています。
人間が手作業で細胞に試薬を振りかけるのではなく、それを機械が担ってくれるというわけです。
もし仮にPharma-GPTがウェットな実験をオーケストレーションする機能を持つくらいになったらどうでしょう。
「Hey!! Siri!!」
のようなテンションで、話しかけて実験に関する要望を出せば、その要望を実験計画書としてまとめてくれて、人間に計画を確かめてくれる。
そして人間に計画を確かめてOKであれば、その後自動で実験を行ってくれ、さらにIC50を始めとした指標をまとめてくれて、さらに候補となる次の実験も提案してくれる。
今の技術でこの全てがすぐに実現できるわけではありませんが、Chat-GPTを始めとした生成AIの技術はこのような人工知能ドリブンな実験が行う未来がすぐそばまで来ていることを示唆していると私は思います。
これは一例で、例えば蛋白質構造解析の領域や新規化合物の提案など様々な研究に近い領域で生成AIが活躍していくことが想像されます。
ヘルスケア業界におけるChat-GPT

さて、それではヘルスケア業界においてはいかがでしょうか。
近年街中を歩いていればどこにでもあるフィットネスジム。
これまでも、いわゆるデータドリブンな運動プログラムは一定存在していたでしょうし、成果も出していたことと思います。
しかしながら、生成AIの登場はパーソナルジムの顧客体験も一から組み替えてしまうかもしれません。
顧客データとその人がこなした運動プログラム、そして運動後摂取した栄養を学習したChat-GPT (仮にGym-GPTとしましょう)は会話ベースであなたにとって最適な運動プログラムを提案してくれます。
運動をサボったり、不適切な栄養の摂取の仕方をすると自身のスマートフォンにアラートが届き、半強制的にジムへと連れ出されます。
これまでは受動的で機械的であったマシンによる私達の健康への干渉が、生成AIという技術によって、擬人的になるとでも表現できましょうか。
オンラインにおいて、人の必要性がマストではなくなるとも言えるかもしれません。
アカデミックな世界におけるChat-GPT

そもそもアカデミックな世界とは何ぞ、という方も多くいらっしゃると思いますので簡単にアカデミックについても説明いたします。
アカデミックな世界とは、いわゆる研究所や大学といった研究活動を中心に行っている場所を意味します。
企業のように営利を目的としない場所も多く、ほとんどのアカデミックな機関は国からのお金をメインに運営されています。
アカデミックな世界において、生命科学分野の人間が活躍する業種は多くが研究者です。
研究者とは研究活動を行うことによってお金を得ている人たちのことを言います。
つまり、アカデミックな世界におけるChat-GPTとは、研究者がChat-GPTをどのように活用するか議論することと同義でもあります。
研究活動における業務
生命活動に限らず、どの分野の研究者であっても研究活動における業務のほとんどは実験と論文の執筆です。
というのは理想で、それに加えて書類仕事、グラント獲得、講義、学生指導が役職及び研究機関、研究室によって異なるというところです。
例えば理化学研究所のような日本最高峰の研究機関の場合、研究者自身で強いられる書類仕事は相対的に少なく、さらにグラント獲得に躍起になる必要も他の研究機関に比べたら少なくなります。
加えて、理化学研究所は教育機関ではないので、提携する大学院や研究室が無い限り学生指導や講義も最小で実験と論文執筆がメインの仕事となりえます。
一方、私大や地方国公立大の場合、そもそも研究室にお金が無いことが多く、研究者自身が雑務を担わなければならない傾向が強くあります。
科研費を始めとした外部グラントを獲得しなければ文字通り研究費がほぼ0になってしまうというような話も聞いたことがありますし、研究室あたりの学生数も多く、教授の仕事のほとんどが学生指導のようなケースも耳にしたことがあります。
これは研究領域によって大きくことなりますが、生命科学領域においてはおおよそこのような感覚で相違ないかなと思っております。
研究者の業務におけるChat-GPTの貢献
まず意外に貢献度が高い可能性があるなと思うのが、講義資料作成へのChat-GPTの貢献です。
Microsoft Copilotを始めとして、生成AIは資料作成のサポートへの貢献も著しいです。
誤字脱字の修正はもちろん、資料の骨子を作成したり、デザインを整えたり、もはや資料作成者が担うことはアイディアを生成AIツールに届けるだけのような状態に近づいています。
新任教員や新しい講義を担当する研究者にとって講義資料の作成はかなり煩わしい業務の一つと耳にしますが、生成AIはその業務負担を限りなくゼロにしてくれることが期待できます。
次に、論文を作成する際の参考文献のまとめです。
研究者にとって最も重要な仕事の一つが論文執筆です。
特に生命科学系においては、論文を書いていないとあの人は仕事をしていないと後ろ指を差されることが多くなりますし、論文を書いていない人はそもそもプロモーションされる機会がありません。
通常、論文を執筆する際は過去の論文(先行研究)を基に書き上げていきますが、その整理や実際に論文を執筆する際の引用は中々面倒な作業になります。
仮に、研究者側から指示を出せば、論文の骨子を書いてくれて、しっかり参考文献ごと載せてくれるような生成AIがあれば、研究者の生産性はバク上がりと思います。
※もちろん、参考文献が本当に参考文献なのか人間の目で確かめる必要はある
他にも、グラント申請の叩きの作成においてもChat-GPTは活用できそうですし、事務仕事(倫理審査の申請や社内書類)のサポートにおいてもChat-GPTを始めとした生成AIは何らかの貢献を果たしてくれるように思います。
これらは研究者の業務としては非常に地味なものですが、その地味な業務たちを実際に生成AIが片付けてくれた場合、研究者の方々が泣いて喜ぶ姿が目に浮かびます。
おわりに
生成AIは非常に面白い技術で、その衝撃度は利用した人なら皆気づいていることでしょう。
しかしながら、実際その技術が各業界や私たちの生活にどのように影響を及ぼすか、はわかっているようでわかっていないのが現状のように思います。
それゆえに各業界のトップランナーたちやシンクタンク、コンサルファームはそれぞれ何らかの形で自身の組織が考える生成AIについて発信しているのだろうと私は考えています。
この変化が激しい時代に生きる一人の人間として、学習を止めず何かを世の中のために与えていきたいと思うばかりです(タイトル関係ない)
それではまたお会いしましょう。