私たちの日常生活を根本から変える可能性を秘めたプロジェクト、スマートシティ。
今回は「スマートシティサービス」の最前線を紹介します。
ここで取り上げる10項目の革新的サービスは、各地域の課題解決、持続可能な都市開発、そして市民の生活の質の向上を目指しています。
「スマートシティ」と聞いても、いまいちどんなサービスが提供されるかわからない人も多いと思いますが、この記事を読めば大丈夫です。 スマートシティの魅力と可能性を深く理解するためのあなたの最初の一歩を、この記事から踏み出してください。


スマートシティで受けられるサービスとは?
スマートシティとは、IoTやAIといった最先端技術を用いて、課題解決や生活環境の改善を図る都市や地域です。
つまり平たく言えば、最新技術がより積極的に導入されることによって、スマートシティの住民の生活もより便利になるわけです。
では、実際にはどう便利になるのでしょうか。
今世界で様々なスマートシティが誕生し、運営が始まっています。そこで受けることのできるサービルは多岐に渡りますが、それぞれが住民の課題解決に繋がっているのです。
そこで受けられる具体的なサービスを、見ていきましょう。
スマートシティサービス10選
国内外のスマートシティの事例を参照しながら、そこで提供されているサービスの具体例を、各項目にわけてご紹介します。
是非、興味のある項目から読んでみてください。
交通・モビリティ
スマートシティにおいては、人々の「移動手段」に大きな変化が起こります。
自動運転車を部分的に運行し、運転手不足といった課題に対処したり、ビッグデータに基づいて公共交通機関のダイヤ最適化を行ったり、といったことが可能です。
例えば、フィンランドのヘルシンキでは2016年、MaaS(Mobility as a Service)アプリを世界で初めて導入しました。
電車やバス、タクシーなどの交通手段を1つのシームレスなサービスとして捉え、情報検索から予約、そして決済まで一括して行うことができます。
スマートシティにおける交通・モビリティの変化は、日々の移動の高速化、効率化をもたらすのです。
健康・医療
健康・医療の分野においても、スマートシティでは革新的なサービスを受けることができます。
バイタルデータといった人々の健康データを収集、解析することで一気通貫したサポート体制を構築したり、MaaSと医療センターを連携させることによるアクセス向上などがあります。
高齢化率が高く医療に深刻な課題を抱えていた福島県会津若松市では、「バーチャルホスピタル会津若松」を掲げ、医療機関や介護事業者の情報を連携。未病対策から治療、病後管理まで包括的にサービスを提供することによって、医療サービスの向上と効率化を達成しています。
今後ますます少子高齢化が進む日本社会において、スマートシティによる健康・医療分野のデジタル化は最も注目したい分野と言えるでしょう。
観光
コロナ禍が世界的に終焉に向かっている今、再び活性化しているのが観光です。
もちろん日本も、豊富な観光資源を生かして国内外の観光客を招きたいところですが、ヨーロッパ屈指の観光都市として有名なスペイン・バルセロナでは、データ解析を利用したサービスが始まっています。
バルセロナでは、ビーチの混雑状況をリアルタイムで収集し分析。そして市役所のホームページから誰でも見られるようにしています。もちろん、観光客も事前にチェックすることが可能です。
日本でもキャパシティを超える観光客が来てしまうことによる「オーバーツーリズム」が問題になっていますが、このようにスマートシティのサービスによって、そういった課題への対処も可能なのです。
防災
自然災害が多い日本においては、防災の分野でもスマートシティの機能が注目されています。
降雨量の情報を24時間体制で監視し、AIで分析して河川の氾濫を予測したり、災害時には住民の位置情報を把握して安否確認や避難支援をできるようにするなど、実装がはじまっているのです。
東急不動産とソフトバンクが取り組む、東京都港区竹芝地区における共同プロジェクト「Smart City Takeshiba」では、あらゆるメディアやSNSなどから発信される防災情報を一つに集約し、実際の災害時には的確な情報が人々に行き渡るようなシステムを開発しています。
データ同時が独立してうまく連携できない「サイロ化」を防ぎ、被害を最小限に食い止めるためにも、防災分野でのスマートシティのサービスが注目されているのです。
行政
あなたもきっと、役所での手続きに時間がかかりすぎて、もしくは提出しなければいけない書類が多すぎて、イライラしたことがあるのではないでしょうか。
そういった行政サービスも、スマートシティにおいては改善が見込めます。
兵庫県加古川市では、情報の一元管理による処理速度の高速化や、AIチャットボットやAIによる電話対応で、窓口対応を効率化し、行政サービスの質向上に一役買っています。
スマートシティの取り組みが全国に広がれば、役所の窓口に並ぶ長蛇の列、といった光景は過去のものとなるでしょう。
環境・エネルギー
2050年までのカーボンニュートラルを目指す日本ですが、スマートシティはその目標達成のために非常に重要なファクターです。
再生エネルギーの利用といった「作る側」の工夫だけでなく、ビッグデータを使ったエネルギー利用の効率化という「使う側」の工夫も必要だからです。
横浜市のプロジェクト「横浜スマートシティプロジェクト」では、家庭や商業ビルにおける電力需給のバランスを最適化した結果、2014年までの4年間の実証実験でCO2排出量29%削減、省エネ率17%の成果が得られました。
人類共通の課題、地球温暖化を止めるためにも、スマートシティは役立つのです。
教育
スマートシティにおいては、教育分野でも様々なサービスが提供されます。
滋賀県守山市では、コロナ禍で児童生徒が家庭学習を余儀なくされた際に、市内の小中学校の全学年に対し、AIドリルを導入しました。
AIによって子ども一人ひとりに最適化された課題が提供され、それぞれの苦手克服に役立ったようです。
このようなデータ活用による教育の個別最適化は、コロナ禍が明けた今後も更に加速していくでしょう。
セキュリティ
それぞれの街での生活満足度に大きく影響する「セキュリティ」の分野。誰もが安心・安全な街に住みたいとおもっているはずですが、スマートシティはそういう面でも魅力的なサービスを展開しています。
神奈川県藤沢市で開発が進められている「Fujisawa サスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」では、「バーチャル・ゲーテッドタウン」という取り組みが行われています。
ゲーテッドタウンとは、街の出入り口にゲートを設けることによって人の従来を制限・監視することで防犯性を高める方法で、海外の高級住宅街などによく見られます。
藤沢市では、ある区画の出入り口となる箇所に約50台の監視カメラと人感センサー付きの照明を効果的に配置し「見えないゲート」を構築。開放的でありながら死角のないセキュリティを実現しています。
スマートシティのサービスは、どの世代にとってもありがたい「セキュリティ」を提供してくれます。
物流
人だけでなく、モノの流れも街のインフラとして重要なシステムです。スマートシティにおいては、この物流分野でも革新的なサービスが提供されます。
北海道上士幌町では福祉バスを利用したユニークな取り組みが行われています。
元々、高齢者などの交通弱者に向けて運行されている循環バスを、利用者の少ない空き時間は商店街のお弁当屋さんの宅配といった貨物運送に使用しているのです。
人の輸送とモノの輸送を、データを駆使して効率的に行うことにより、新たな設備投資をせずに物流環境の改善を図ることができる、好例と言えるでしょう。
農林水産業
特に地方において主力の産業といえる農林水産業の分野においても、スマートシティは効果的なサービスを提供します。
その一例として「スマート農業」があります。ロボットやICT技術を用いて、農業の効率化・省力化を図るのです。
北海道大学とヤンマーホールディングス株式会社などは、自動走行トラクターを使って、無人による耕うん整地と有人による施肥播種を連携して行う「有人-無人協調作業」を実施しました。このトラクターは2018年に市販化しています。
この技術によって、一人当たりの作業可能面積が拡大し、大規模経営の効率化を実現しています。
まさに「農業のDX」です。このような事例は、今後更に増えていくことでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。スマートシティで実際に提供されているサービスについて、10の項目にわけてご説明しました。
実際にそこに住んだ場合、どんなサービスを受けることができ、どんな生活が待っているのか、具体的にイメージができたのではないでしょうか。
これらの情報を念頭において、今後も増えていくであろうスマートシティ関連のニュースに注目していきましょう。