海外の完全栄養食2大巨頭「Soylent」と「Huel」 -日本の完全栄養食との違い-

いまや世界規模で一大市場となりつつある「完全栄養食」。その発祥をご存じですか?「完全栄養食」はアメリカのSoylent社が2013年から開発を手掛け、翌2014年に発売したことが始まりと言われています。またイギリスでも2015年にHuel社が開発をスタートさせ、現在「Soylent」と「Huel」は「完全栄養食の2大巨頭」と呼ばれています。我が国においても完全栄養食市場は広がりを見せていますが、これら2大巨頭と日本のそれらとは若干様子が異なるようで・・・。

目次

完全栄養食の2大巨頭とは

株式会社グローバルインフォメーションの調査レポート「完全栄養製品の世界市場:製品別、流通チャネル別、地域別の展望、業界分析および予測(2021年~2027年)」によると、「完全栄養食」の世界的な市場規模は、2022年の52億2000万米ドルからCAGR6.4%で成長し、2023年に55億6000万米ドル、2027年には70億5000万米ドルに達すると予測されています。(※1)その世界的な市場を牽引しているのが「Soylent」と「Huel」です。

1)Soylent

2013年、アメリカのシリコンバレーにおいて、Soylentの創業者たちは、冷凍食品やラーメンという同じ食事をしながら働いていました。創業者ロブ・ラインハートは共同創業者たちとともに、完全な栄養摂取は困難でも高価でもないという考えをもとに、Soylentを開発しました。当初は粉末のものを水に溶かして飲むタイプでしたが、現在は液体状でボトルタイプのものや、バーになっているものもあります。植物由来のタンパク質が20g以上、26種類のビタミンやミネラルが含まれています。炭水化物や脂質も含まれ、バランスに富んでおり、1食分で必要な栄養素をすべて摂れると謳っています。(※2)

2)Huel

Huelは、2015年7月に「動物や環境への影響を最小限に抑えた、便利な完全栄養食を作り、多くの方が続けやすい価格で提供する」というミッションを掲げたジュリアン・ハーンによって立ち上げられました。Huelシリーズの中のブラックエディションというものが完全栄養食となっており、粉末のものを水や植物性ミルクに溶かして飲むタイプになっています。三大栄養素であるたんぱく質、脂質、炭水化物を理想的なバランスで配合し、食物繊維や26種類の必須ビタミンやミネラルなどを豊富に含んでいます。ファイトニュートリエントと呼ばれる植物性栄養素を、1つの製品からバランス良く摂取することができます。(※3)

完全栄養食開発における世界的な背景

これらの2大巨頭は、発祥の地や辿った経緯は異なりますが、いずれも「完全栄養食」として様々な栄養素を含み、それら1食分で人間が必要とする栄養素を摂取することができるようになっています。そして完全栄養食市場の拡大は、世界的な新型コロナの流行や、例えばアメリカにおける重度肥満や肥満の有病率が増加している問題などにより、健康や栄養を意識する消費者が急増したことにより、さらに後押しされています。

また、実は健康や栄養に関すること以外にも、完全栄養食の拡大を増長させる世界的な背景があるのです。

世界の人口は年々増加しており、2050年までに970億人に達すると見込まれています。 現在の食糧生産方法は、持続可能性(サステイナビリティ)に欠けると言われています。また、私たち現代人は、生産した食糧の約3割を廃棄しているとも言われており、深刻な食品ロスの問題が露呈しています。さらに、主な食糧供給源として動物性食品を摂取し、食品包装からの廃棄物も大量に排出していることも、大きな問題です。

2015年9月の国連サミットにおいて、国連加盟193か国は2016年から2030年の15年間で達成すべき「SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))」という目標を掲げました。すでに大半の方が耳にされたことがあると思われるこの「SDGs」とは、世界中の人々がより良い未来を築くための計画です。17の目標があり、貧困や不平等、気候変動、環境劣化、繁栄、平和と公正など、私たちが直面するグローバルな諸課題の解決を目指しています。これらの流れに沿うように消費者の嗜好も徐々に変化し、健康的で持続可能なライフスタイルを維持するため、従来の動物性食品から有機・植物性食品へと食生活をシフトしています。

そして、SoylentとHuelはこの流れを汲み、基本的な考え方を掲げたのです。

2大巨頭に共通した考え

例えばSoylentは、「栄養へのアクセスは人権であり、誰も飢えるべきではないと信じています。また、食品会社には、私たちの故郷のコミュニティや世界中の食料不安を根絶するために、私たちの専門知識を活用する責任があると信じています。」と述べています。一方、Huelは「食べ物に対する人々の考え方を変えていきたいと思っています。栄養を重要視し、大量の廃棄物を出さず、環境への影響を最小限に抑えながらも便利で安価な食品。それが今を生きる私たちには必要だと考える。」と述べています。このように、世界の「完全栄養食」市場を牽引する2大巨頭は、栄養バランスが良いことを当然の狙いとしながらも、「持続可能なライフスタイルのために、動物性食品の摂取を減らし、植物性の食品によって栄養価の高い食事を、どの人にも提供できる」ということを、共通して目指しているのです。

日本でも広がりを見せる完全栄養食市場

以前の記事(※4)でもお知らせしましたが、2022年の「完全栄養食」の国内市場規模は144億円(前年比2.3倍)、2030年には21年比で8.5倍の546億円にまで拡大すると予測されています(※5)。近年、我が国においても世界の傾向と同様、健康や栄養への意識が急激に高まっており、完全栄養食市場が年々拡大しています。

しかしながら、その市場を牽引しているのは前述の2大巨頭であるSoylentやHuelではなく、日本国内で開発された「完全栄養食」が主になっています。海外の市場と日本の市場、どのような違いがあるのでしょうか?

海外と日本との比較

先に述べたように、世界の完全栄養食2大巨頭であるSoylentとHuelは「持続可能なライフスタイル」「すべての人に栄養を」というSDGsに則した考えが主軸となっています。粉末を水で溶かして飲むものやボトルに入った液状のものなどが主流で、また植物素材がベースになっているため環境面のメリットも多いと言えるでしょう。

では、日本の完全栄養食はどうでしょうか?日本国内の完全栄養食市場を牽引しているのは、ベースフード社の「BaseFood」シリーズと、日清食品の「完全メシ」シリーズです。(※4)

「BaseFood」シリーズの2023年10月時点のラインナップは、菓子パン、食事パン、クッキー、パスタとソースなど。「忙しい毎日でも、おいしくてからだにいいものを食べたい」という想いから、主食かつ手軽に、栄養もしっかり摂れることを目指しています。

「完全メシ」シリーズは、カレー、焼きそば、ポタージュなどのインスタント食品やスムージー、冷凍のカツ丼、牛丼など、豊富なラインナップとなっており、日常の食事に違和感なく差し替えられるようになっています。

また近年注目されているのが、MISOVATION社の「MISOVATION(ミソベーション)」です。「MISOVATION」は、同社代表であり、栄養士でもある斉藤悠斗氏が、世界で一番健康的な料理として味噌汁を想起し、「味噌汁は豆腐と味噌が入っているからタンパク質が豊富。どんな野菜にも合い、何より日本人の舌に馴染みのあるうま味が豊富で、心がホッとする。さらに糖質と脂質は少ない。」ということから、美味しい味噌汁を毎日飲めば「健康=我慢」を覆せるのではないか?と感じたことが開発のきっかけだったそうです。(※6)

このように、完全栄養食について海外と日本を比較すると、日本においてさらに重要視している部分があることがわかります。それは「美味しさ」の追及です。

我が国の完全栄養食の特徴とは

「完全メシ」を世に送り出した日清食品の社長、安藤徳隆氏は、Diamondのインタビューにこう答えています。(※7) 「完全栄養食というコンセプト自体は世界にありましたが、成功している企業、商品はいまだにありません。例えば、栄養素の粉末を水やミルク等で溶かして飲むようなものはありますが、栄養補助食品の類に入るもので、食事とはいえません。」

「完全メシ」も「BaseFood」も「MISOVATION」も、栄養が手軽に摂れるというコンセプトは維持しながらもそれと美味しさを両立させた、世界的に見ても稀有な完全栄養食と言えます。これはやはり日本独特の考え方であり、食を大切にする思想の影響が大きいと言えるのではないでしょうか。

まとめ

「完全栄養食」市場は、世界規模で拡大を続けています。世界を牽引しているSoylentやHuelは、手軽に、栄養をしっかり摂るということは当然のこととして、さらに「持続可能なライフスタイル」「すべての人に栄養を」というSDGsの考え方も主軸に置いています。一方、日本で台頭している「BaseFood」や「完全メシ」、近年注目の「MISOVATION」は、上記に加え「美味しさ」をも追及していると言えます。「おいしい完全栄養食」という考え方の商品が我が国にはたくさん産まれてきています。飽きのこないラインナップに感謝しつつ、世界の環境や自分の健康を維持していけるよう、自身の食生活の一端として活用してみるのも、新たな食生活に繋がるかもしれません。

(※1)

株式会社グローバルインフォメーション 市場調査レポート「完全栄養製品の世界市場:製品別、流通チャネル別、地域別の展望、業界分析および予測(2021年~2027年)」(KBV Research)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002042.000071640.html

(※2)

Soylent Let us take a few things off your plate.

(※3)

ヒュエル|Huel®|世界No.1の完全栄養食ブランド

(※4) 

前回記事 「完全栄養食は私たちの栄養を本当に補ってくれるのか」

(※5)

株式会社富士経済 2023年1月20日 プレスリリース第23010号

(※6)

【公式】完全栄養食 MISOVATION(ミソベーション)

(※7)

Diamond online

安藤徳隆・日清食品社長が語る、世界中で誰も実現できなかった「おいしい完全食」を日清食品が開発できた理由と、目指している未来

https://diamond.jp/articles/-/313627

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次