近年、個人のDNA解析に基づく遺伝子検査サービスが国内外で急速に拡大しています。遺伝情報から健康リスクや祖先のルーツを知るだけでなく、医療やスポーツ、創薬にまで応用範囲が広がり、様々なスタートアップや大企業が参入しています (MIT Tech Review: 利用者数2600万人突破 過熱する「DNA検査」商戦)。本記事では、主要な分野ごとに遺伝子検査関連企業を紹介し、それぞれの企業情報やビジネスモデル、最新技術動向について整理します。



健康リスク診断分野の主要企業
健康リスク診断の分野では、遺伝的な病気の発症リスクやがんリスクを調べるサービスが注目されています。例えば米国の23andMe(トゥエンティスリーアンドミー)は、消費者が郵送した唾液サンプルからDNAを解析し、乳がんやアルツハイマー病などの遺伝的リスクを報告します。23andMeは2006年創業のスタートアップで、2010年代にFDA(米食品医薬品局)から一部疾患リスク検査の認可を取得し、市場を開拓しました。2021年にはSPACを通じてNASDAQに上場し、現在は約1,000万人以上のユーザーの遺伝データを保有しています (民族的ルーツを知るだけじゃない―、遺伝子検査市場が伸びるワケ | Coral Capital)。同社はユーザーに同意を得た上でデータを匿名化して研究活用しており、英製薬大手GSK(グラクソ・スミスクライン)と提携して創薬事業も展開しています (民族的ルーツを知るだけじゃない―、遺伝子検査市場が伸びるワケ | Coral Capital)。ビジネスモデルはB2C(Direct-to-Consumer)で検査キットを販売しつつ、蓄積したデータを活用したB2B提携にも乗り出している点が特徴です。
米国では他にもColor Genomics(カラー・ゲノミクス)やMyriad Genetics(ミリアド・ジェネティクス)といった企業が健康リスク診断で知られています。Color Genomicsは非上場のベンチャーで、累計1億ドル以上の資金調達を行い、主にがんや心疾患の遺伝子パネル検査を提供しています (MIT Tech Review: 利用者数2600万人突破 過熱する「DNA検査」商戦)。同社は当初B2Cで遺伝子キットを販売していましたが、近年は企業や医療機関向け(B2B)にヘルスチェックプログラムを提供するモデルにシフトしています。一方、Myriad GeneticsはNASDAQ上場企業で、遺伝性乳がん・卵巣がんのBRCA遺伝子検査のパイオニアです (MYRIAD GENETICSのFORM 10-K (2022Q4) 翻訳版)。医療従事者を通じた**B2B(臨床検査ラボ)**モデルで、遺伝性がんリスク評価「MyRisk」など複数の検査サービスを展開しています。近年は多遺伝子リスクスコアの開発や、イルミナ社との提携による包括的ながんパネル検査提供など、最新のゲノム技術も取り入れています (世界の遺伝子検査市場 : 世界の市場規模と需要、シェア、トップ傾向とメーカー ーレポートの洞察と将来予測調査)。
日本国内では、健康リスクや体質に関する遺伝子検査を手がけるベンチャーが登場しています。ジェネシスヘルスケア(Genesis Healthcare)はその代表例で、消費者向けブランド「ジーンライフ (GeneLife)」を展開する国内最大手の遺伝子検査企業です。2004年設立の非上場企業ながら、累計200万件以上の遺伝子解析実績を持ち、国内シェアNo.1をうたっています。ジーンライフはB2Cモデルで各種セルフキットを販売しており、全身の疾患リスクや体質を包括的に解析する「Genesis2.0」や、肥満や肌質などテーマ別の検査キットを提供しています。最近では約2万円台という低価格で個人向け全ゲノム解析サービス「GeneLife WGS」も開始し、より網羅的な遺伝情報提供に乗り出しました (民間企業初、従来の遺伝子検査を超える ゲノム検査サービスを新装発表 | ジーネックス株式会社)。また、同社は蓄積データを活かした研究開発も進めており、日本人集団に特化した疾患リスク解析や製薬企業との共同研究などR&D動向にも注目です。
祖先解析(DNA祖先探し)分野の主要企業
祖先解析は、自身の遺伝的ルーツや民族的バックグラウンドを知るサービスです。世界的にこの分野をリードしているのが、米ユタ州発のAncestryDNA(アンセストリーDNA)です。同社は家系図作成サービス大手Ancestry.comのDNA検査部門で、祖先地域の比率や親戚マッチング情報を提供します。AncestryDNAは株式非公開企業ですが、2020年に投資ファンドのブラックストーン社が約47億ドルで買収しており、その企業価値の高さがうかがえます。利用者数の点でも祖先解析市場を席巻しており、23andMeとAncestryの2社でDTC遺伝子検査市場を寡占していると言われます (MIT Tech Review: 利用者数2600万人突破 過熱する「DNA検査」商戦)。実際、2019年初頭までに2600万人超の消費者が主要4社の遺伝子検査を受けており、その多くがAncestryか23andMeのサービス利用者でした (MIT Tech Review: 利用者数2600万人突破 過熱する「DNA検査」商戦)。AncestryDNAはB2Cモデルで検査キットを販売しつつ、付随する家系図データベースへのサブスクリプション課金でも収益を上げています。
イスラエル発のMyHeritageも祖先解析で知られる企業です。MyHeritageは当初家系図SNSとして始まり、その後DNA検査サービスを導入しました。非上場ながら世界1500万人以上のユーザーを抱え、2019年には健康レポート付きのDNA検査にも参入しています (民族的ルーツを知るだけじゃない―、遺伝子検査市場が伸びるワケ | Coral Capital)。MyHeritageの特色は、祖先起源解析だけでなく膨大な歴史記録データとのマッチングで家族史の発見を支援する点です。ビジネスモデルはB2C中心で、キット販売とプレミアム会員サービスを組み合わせています。
日本国内に目を向けると、先述のジーンライフ(Genesis Healthcare)も祖先解析サービスを提供しています。同社の「Haplo」シリーズでは、Y染色体ハプログループやmtDNAから祖先のルーツを分析し、自身の先祖がどのような移動を経てきたかを可視化します (遺伝子検査のジーンライフ| 国内シェアNo.1|200万件の解析実績 | 国内の自社研究所で安全・高品質な解析 – GeneLife )。また、家系図作成SNS「Myoji-Yurai.net」と連携し、遺伝情報と戸籍データからルーツを辿る試みもなされています。その他、日本市場向けにはFamilyTreeDNA(米国)や23andMe日本語版など海外企業のサービス利用も増えてきています。祖先解析はエンターテインメント要素が強く、B2Cビジネスとして個人の興味関心に訴える形で市場を拡大しています。
個別化医療(プレシジョン医療)分野の主要企業
個別化医療の分野では、患者一人ひとりの遺伝子情報に基づき診断や治療を最適化するサービスが重要です。特にがんゲノム医療や**薬剤応答性の遺伝子検査(薬理ゲノミクス)**で多くの企業がしのぎを削っています。
米国のFoundation Medicine(ファウンデーション・メディシン)は、がん患者の腫瘍DNAを包括的に解析するコンパニオン診断企業です。上場後にロシュ社の傘下に入り、がん関連遺伝子を300以上網羅する「FoundationOne CDx」パネルを開発しました。この検査は、日本でも中外製薬を通じて提供され、保険適用のがん遺伝子パネル検査として広く使われています。Foundation Medicineのモデルは**B2B(病院・製薬向け)**で、遺伝子検査を受託する臨床検査会社です。最新動向としては、液体生検(血液中のがんDNA解析)技術にも注力し、より早期にがんの遺伝的変異を捉える研究開発を進めています。
同じく米国発のGuardant Health(ガーダント・ヘルス)も個別化医療分野で注目企業です。Guardantは血液中の微量な腫瘍DNAを解析してがんの遺伝子異常を検出する液体生検技術で先行しています。NASDAQ上場企業であり、肺がん検出「Guardant360」などの製品をB2B提供しています。2020年代には大腸がんの早期発見血液検査「Shield」を発売し、従来の内視鏡に代わるスクリーニングとして期待されています。個別化医療の文脈では、こうした**次世代シーケンス(NGS)**技術を駆使した検査が、患者に合った治療薬選択(ターゲット療法の適応判定)や予後予測に大きく貢献しています (民間企業初、従来の遺伝子検査を超える ゲノム検査サービスを新装発表 | ジーネックス株式会社)。
日本国内では、医療機関と連携したゲノム解析サービスを提供する理研ジェネシスやシスメックスなどがキープレイヤーです (世界の遺伝子検査市場 : 世界の市場規模と需要、シェア、トップ傾向とメーカー ーレポートの洞察と将来予測調査)。理研ジェネシスは理化学研究所発の企業で、最先端のシーケンサーを導入した受託解析サービスを展開しています (遺伝子解析受託 – 理研ジェネシス)。シスメックスは臨床検査機器大手ですが、近年は米国企業や研究機関と組んで遺伝子検査に進出しています。例えば独Qiagen社とのアライアンスや、国立がん研究センターと共同で国内向けがんパネル「OncoGuide」を開発するなど、プレシジョン医療領域への投資を加速しています。
薬剤応答性の検査では、米国のOneOme(ワンオウム、メイヨークリニック発)やThermo Fisher Scientific(サーモフィッシャー)のソリューションが知られます。OneOmeは複数の薬物代謝関連遺伝子を一括検査し、その人に安全・有効な薬剤選択を支援するレポートを提供しています。Thermo Fisherも遺伝子検査技術を医療向けに展開しており、例えば特定の遺伝子多型に基づき薬物の効果や副作用リスクを予測するパネルを病院向けに販売しています。個別化医療分野ではB2Bモデルが中心で、医療現場や研究機関との連携が不可欠です。最新の研究では、AIを活用して病理組織画像やゲノム情報から治療反応性を予測する試みも進んでおり (病理組織画像からがんの遺伝子異常を予測する – 国立がん研究センター)、遺伝子検査データと他の医療データを統合した高度解析がトレンドとなっています。
スポーツ適性遺伝子検査分野の主要企業
スポーツ適性検査は、筋肉の構成や持久力に関与する遺伝子を調べることで、その人に向いたスポーツ種目やトレーニング法を提案するサービスです。海外ではイギリスのDNAFitやFitnessGenesがこの分野のパイオニアです。DNAFitは自分の持つ筋肉繊維のタイプ(速筋・遅筋の比率関連遺伝子ACTN3など)や酸素利用効率に関わる遺伝子を分析し、個別のトレーニングプランや食事アドバイスを提供していました。現在DNAFitは香港の遺伝子企業Preneticsに買収され、社名をPreneticsに統合して上場しています。B2Cモデルで一般消費者向けにキットを販売するほか、企業と提携してアスリート育成プログラムに組み込む事例もあります。
日本でも近年スポーツ遺伝子検査サービスが登場しています。例えばセルズケア株式会社の提供する「IDENSIL(イデンシル)」は、国内のスポーツ遺伝子検査でトップシェアを持つサービスです (スポーツ遺伝子検査イデンシル(IDENSIL) – セルズケア株式会社)。IDENSILでは筋肉のつきやすさやケガのリスクに関わる21種類のスポーツ関連遺伝子を解析し、競技力向上に役立つアドバイスを行っています (スポーツ遺伝子検査 IDENSIL(イデンシル) アスリート)。同社はスポーツドクターやフィットネスクラブと提携し、B2B2Cの形で遺伝子検査を提供しており、既にプロ選手や学生アスリートへの導入実績も多数あります (スポーツ遺伝子検査イデンシル(IDENSIL) – セルズケア株式会社)。
また、遺伝子検査結果を栄養指導に活かすサービスも増えています。例えばKeymine社はアスリート向けの栄養サポートに遺伝子解析を組み込み、500名以上のプロ選手に個別指導を行った実績を発表しています (アスリート専用の栄養サポート・食事指導 スポーツに特化した …)。他にも、大阪大学医学部発の「Baseball & DNA」という野球選手向け検査サービスでは、野球で重要な8項目(瞬発力や集中力など)に関連する遺伝子を解析し、トレーニング指導に役立てています (Baseball&DNA オンラインショップ【野球】)。これらの国内サービスはいずれも非上場のスタートアップですが、遺伝学とスポーツ科学を融合した新ビジネスとして注目されています。
スポーツ分野の遺伝子検査はエビデンスの蓄積が進む段階にあり、効果の過大宣伝に対する懸念も指摘されています。しかし、一部の遺伝的素質(例えば持久系か瞬発系かの適性)は科学的根拠がある程度示されており、自己理解やトレーニング効率化ツールとして市場が形成されつつあります。価格帯も1〜2万円程度と手頃なものが多く、一般のフィットネス愛好家にも裾野が広がっています。
ゲノム創薬支援分野の主要企業
創薬支援では、大規模なゲノムデータ解析によって新しい創薬ターゲット(治療標的)を見つけたり、創薬プロセスを効率化したりする取り組みが行われています。遺伝子検査企業の中には自社で創薬部門を持つところもありますが、製薬企業と提携してデータ提供や解析サービスを行うケースが多くみられます。
代表的なのが米バイオ企業deCODE genetics(デコード・ジェネティクス)です。アイスランドに本拠を置くdeCODEは、アイスランド国民の遺伝子と医療情報を集めて疾患関連遺伝子を数多く発見してきました。同社は2012年に米製薬大手Amgen(アムジェン)に約4億15百万ドルで買収され、以降はAmgenの傘下で創薬標的の発見とバリデーションを支える役割を担っています (Amgen to Acquire deCODE Genetics, a Global Leader in Human Genetics| Amgen) (Amgen to Acquire deCODE Genetics, a Global Leader in Human Genetics| Amgen)。AmgenはdeCODEの持つ集団ゲノム解析能力を取り込むことで、創薬候補ターゲットの同定・検証を強化し、より成功確率の高い開発案件に注力できるようになりました (Amgen to Acquire deCODE Genetics, a Global Leader in Human Genetics| Amgen)。
同様に、23andMeもその巨大なユーザーデータを活用して製薬企業と共同研究を行っています。先述の通りGSKとの提携では40以上の創薬プログラムが進行し、一部は臨床試験段階に進みました (23andMe Partner Page)。もっとも、23andMe自身は2023年に社内の創薬部門を縮小する再編を行いましたが、データライセンス供与など間接的な創薬支援ビジネスは継続しています (23andMe ends drug development and slashes staff | pharmaphorum)。ビジネスモデル的には、膨大なゲノムと表現型データベースを持つ企業が、製薬会社に有償でデータ提供したり共同研究契約を結んだりする形です。23andMeは同意取得済みユーザーの匿名化遺伝データを外部研究に提供し、年間数百億円規模の収益を上げているとも報じられています (民族的ルーツを知るだけじゃない―、遺伝子検査市場が伸びるワケ | Coral Capital)。
創薬支援の新興企業としては、AIとゲノムデータを組み合わせるデータ駆動型創薬スタートアップが各国で誕生しています。例えばカナダのDeep Genomicsは機械学習によって遺伝変異の機能影響を予測し、新たなRNA療法の標的発見につなげています。英国のSOPHiA Genetics(ソフィア・ジェネティクス)はスイス発の企業で、クラウド上で病院の遺伝子データを解析しパターンを学習することで、バイオマーカー発見や創薬研究に活かすプラットフォームを提供しています。2010年代後半には、日本でもビッグデータ創薬を掲げる動きがあり、塩野義製薬がAI創薬ベンチャーと提携したり、政府主導で統合データベースを構築するといったプロジェクトが立ち上がりました。遺伝子検査企業が持つゲノム情報資産は、創薬ターゲットを絞り込む上で極めて価値が高く、今後も製薬業界との連携が深化していくでしょう。
主要遺伝子検査企業の比較
主要な国内外の遺伝子検査企業について、その国籍や事業内容を一覧で整理します。
※ジェネシスヘルスケアは2019年までに累計数十億円規模の資金調達を実施と報道あり。
上記の表から分かるように、国ごとに遺伝子検査ビジネスの形態は様々です。米国勢は積極的に上場してグローバル展開する企業が多く、日本勢は国内市場にフォーカスした非上場企業が中心ですが、独自のサービス開発で存在感を示しています。また、一口に遺伝子検査と言っても、対象分野(健康、祖先、医療、スポーツ、創薬)によって提供サービスや収益モデルが大きく異なることがわかります。
遺伝子検査市場の動向と技術トレンド
遺伝子検査業界は技術革新とともに市場規模が急成長しており、いくつかの重要なトレンドが見られます。
(Genetic Testing Market | USD 91.30 Billion by 2034)グローバル遺伝子検査市場規模の推移(2024~2034年予測)。2024年に約119億ドル規模だった市場が、2034年には913億ドルに達すると予測されている (Genetic Testing Market Size Expected to Reach USD 91.30 Bn by 2034 – BioSpace)。年平均成長率は約22.6%と極めて高い。
市場規模と成長予測
世界の遺伝子検査市場は年々拡大を続けています。2021年時点で約213.5億ドルだった世界市場規模は、2030年には660億ドル超に達するとの予測もあります (遺伝性遺伝子検査市場規模、シェア|2030年までの業界予測)。別の推計では、2024年の約119億ドルから2034年に913億ドルと、更に高い成長が見込まれています (Genetic Testing Market Size Expected to Reach USD 91.30 Bn by 2034 – BioSpace)。いずれにせよ年二桁成長が続く巨大市場となっており、予防医療への関心増大、検査コスト低下、サービス提供企業の増加がその原動力です。特に健康・ウェルネス目的の検査が市場をけん引しており、2024年時点で売上全体の約52.3%を占める最大セグメントとなっています (Genetic Testing Market Size Expected to Reach USD 91.30 Bn by 2034 – BioSpace)。地理的には北米が約45%と最大のシェアを持ちますが、アジア太平洋地域も中国や日本を中心に急成長しています (世界の遺伝子検査市場 : 世界の市場規模と需要、シェア、トップ傾向とメーカー ーレポートの洞察と将来予測調査) (Genetic Testing Market Size Expected to Reach USD 91.30 Bn by 2034 – BioSpace)。
日本国内の市場も拡大傾向にあります。2020年代前半にはDTC遺伝子検査利用者が累計数十万人規模に達し、企業による積極的なマーケティングも相まって認知度が向上しています。もっとも、市場規模は米国に比べまだ小さいため、参入各社は価格引き下げやサービス多様化でユーザー獲得に注力しています (世界で加熱する遺伝子検査サービスを日本のスタンダードに。「バイオ×IT」ハイブリッド起業家の思い | 株式会社Zene)。一方で医療分野では、がん遺伝子パネル検査が保険収載され、病院による実施件数が増加しています。行政もゲノム医療推進法の制定など制度整備を進めており (民間企業初、従来の遺伝子検査を超える ゲノム検査サービスを新装発表 | ジーネックス株式会社)、今後は医療保険下での遺伝子検査市場も本格的に立ち上がっていく見通しです。
次世代シーケンシング(NGS)の進歩
遺伝子検査の技術的土台となる次世代シーケンシング(NGS)技術の進歩はめざましく、市場拡大の最大の牽引役です。2000年代初頭にはヒトゲノム解析に数億ドル・数年を要しましたが、現在では数百ドル・数日で個人の全ゲノムを読める時代になりました。シーケンサー最大手のIllumina社は2022年、新機種により1人当たり200ドル程度でのゲノム解読を将来可能にすると発表しています(従来比で数分の一のコスト) (Genetic Testing Market Size Expected to Reach USD 91.30 Bn by 2034 – BioSpace)。また、中国のBGI社も低コストシーケンサーを開発し、各国でゲノム解析サービスを安価に提供し始めています。こうした技術革新によるコスト低減と処理速度向上により、スタートアップでも大量のゲノムデータを扱えるようになり、新サービス創出を後押ししています (Genetic Testing Market Size Expected to Reach USD 91.30 Bn by 2034 – BioSpace)。さらに、Oxford Nanopore社のように従来とは異なるシーケンス原理(ナノポア法)を用いた小型・携帯型装置も登場し、現場でリアルタイムに遺伝子解析を行うといった応用も可能になりつつあります。NGS技術の進展は今後も遺伝子検査の精度向上とコスト削減をもたらし、市場拡大の基盤となるでしょう。
AI解析とデータ活用の高度化
AI(人工知能)解析の活用も重要なトレンドです。ゲノムデータは膨大かつ複雑であり、人手による解釈には限界がありますが、機械学習やディープラーニングを用いることで新たな知見を引き出せる可能性があります。例えば、DNA配列の生データから病的変異を高精度に検出するAIモデルが開発されており (【AsianScientist】がんの変異検出器開発―ディープラーニングで …)、従来の手法では見逃していた微小な異常を発見できるようになっています。また、非コード領域の変異や複数遺伝子にまたがる多因子疾患リスク(ポリジェニックリスク)の推定にもAIが活躍しています。23andMeなどは多数のユーザーデータを用いて疾患発症確率を算出するアルゴリズムを洗練させており、糖尿病や心疾患についてポリジェニックリスクスコアの提供を始めています。さらに、遺伝子検査データと電子カルテ情報を統合し、AIで将来の病気リスクや最適治療を予測する取り組みも進行中です (Genetic Testing Market Size Expected to Reach USD 91.30 Bn by 2034 – BioSpace)。このように、データサイエンスとの融合が遺伝子検査サービスの付加価値を高めており、各社ともデータ解析部門への投資を強めています。
エピジェネティクス解析の進展
エピジェネティクス(後成的変化)解析も新たな潮流です。エピジェネティクスとはDNAの配列そのものではなく、メチル化やヒストン修飾といった化学的標識による遺伝子発現制御機構で、生涯を通じて変化しうる特徴です。近年、このエピジェネティクス情報を解析することで健康状態を評価するサービスが登場しています。その一例が、老化の程度をDNAメチル化パターンから測定するエピジェネティック・クロック(生物学的年齢)検査です。2023年、日本のスタートアップ**Rhelixa(レリクサ)**が国内初となるエピジェネティック年齢検査「エピクロック®テスト」を発売しました (国内初!カラダの老化を知り、若返りにつなげる検査「エピクロック®テスト」本日10/15(火)から提供開始 | 株式会社Rhelixaのプレスリリース)。この検査では血液中のDNAメチル化状態を網羅的に解析し、実年齢とは異なる「体の老け具合」や老化の進行スピードを可視化します (国内初!カラダの老化を知り、若返りにつなげる検査「エピクロック®テスト」本日10/15(火)から提供開始 | 株式会社Rhelixaのプレスリリース)。従来の遺伝子検査が生まれつき不変のDNA配列を見るのに対し、エピクロックは生活習慣や加齢で変化するエピゲノム情報を対象としており、健康寿命の延伸に役立つ具体的アドバイス提供を目指しています (国内初!カラダの老化を知り、若返りにつなげる検査「エピクロック®テスト」本日10/15(火)から提供開始 | 株式会社Rhelixaのプレスリリース)。
他にも、米国のGrail社(現在はIllumina傘下の予定)が開発したマルチがん早期検出の血液検査は、腫瘍から漏れ出すDNAのメチル化パターンをAI解析して50種類以上のがんを一度に発見できるとされ、大きな話題を呼びました。エピジェネティクス解析技術の発展により、環境要因や生活習慣が刻み込まれた分子情報を検査サービスとして提供できるようになってきたのです。今後は、遺伝子+エピジェネティクス+マイクロバイオーム(腸内細菌叢)など複数の「オミクス」情報を組み合わせた統合的な解析サービスも登場するとみられ、個人の健康を360度評価する精密ヘルスチェックが実現する可能性があります。

以上、国内外の遺伝子検査関連企業を主要分野別に概観しました。遺伝子検査は個人の遺伝情報を可視化して有益な知見を引き出す画期的なツールであり、その市場は医療からエンターテインメントまで多岐に広がっています。技術革新(NGSの高速化・低廉化、AI解析、エピジェネティクス活用)がサービスの可能性を拡張し、新たな企業が次々と参入する中、競争も激化しています。プライバシー保護や倫理への配慮といった課題に対応しつつ、遺伝子検査ビジネスは今後も成長を続け、人々の健康管理や生活の質向上に一層寄与していくでしょう。
参考文献・情報源: (MIT Tech Review: 利用者数2600万人突破 過熱する「DNA検査」商戦) (MIT Tech Review: 利用者数2600万人突破 過熱する「DNA検査」商戦) (民族的ルーツを知るだけじゃない―、遺伝子検査市場が伸びるワケ | Coral Capital) (Amgen to Acquire deCODE Genetics, a Global Leader in Human Genetics| Amgen) (Amgen to Acquire deCODE Genetics, a Global Leader in Human Genetics| Amgen) (世界の遺伝子検査市場 : 世界の市場規模と需要、シェア、トップ傾向とメーカー ーレポートの洞察と将来予測調査) (Genetic Testing Market Size Expected to Reach USD 91.30 Bn by 2034 – BioSpace) (Genetic Testing Market Size Expected to Reach USD 91.30 Bn by 2034 – BioSpace) (Genetic Testing Market Size Expected to Reach USD 91.30 Bn by 2034 – BioSpace) (民間企業初、従来の遺伝子検査を超える ゲノム検査サービスを新装発表 | ジーネックス株式会社) (スポーツ遺伝子検査 IDENSIL(イデンシル) アスリート) (国内初!カラダの老化を知り、若返りにつなげる検査「エピクロック®テスト」本日10/15(火)から提供開始 | 株式会社Rhelixaのプレスリリース)など。