システムを作るときまず何から始めたらいいの?-仕様、要件定義とはどのようなプロセスなのか-

システム開発プロジェクトを立ち上げる際、最初に直面する疑問は「一体何から始めれば良いのか?」という点でしょう。結論から言えば、ビジネスの目的やニーズを正しく把握し、それをシステムに落とし込むための「要件定義」と、実現内容を明確化する「仕様」の策定こそが最初の一歩です。多くのプロジェクト失敗の原因はこの初期段階の不備にあると言われ、要件が曖昧なまま進行すると何度もやり直しが発生して“終わらないプロジェクト”になるケースも少なくありません (システム開発の失敗の主な原因を解説 | 株式会社APPSWINGBY)。不明確な要件は後工程で高額な手直しを招き、**「1:10:100の法則」**が示すように、不備の発見が遅れるほどコストと時間が跳ね上がることが知られています (要件定義とは│業務要件・機能要件・非機能要件を徹底解説 | 株式会社QualityCube)。本記事では、非IT業界のビジネスパーソンにもわかりやすく、この「要件定義」と「仕様」策定のプロセスを解説します(IT業界の方にも有用な情報を盛り込みます)。ビジネス的な観点(発注者視点)を重視しつつ、技術的トピックや最新動向も取り上げ、システム開発の成功の鍵を探っていきましょう。

目次

システム開発の最初の一歩とは?

システム開発の基本的な流れ

システム開発には一般的な進め方の流れがあります。まず要件定義で「何を実現すべきか」を固め、その後設計で「どう実現するか」の詳細を決めます。続いて実装(プログラミング)を行い、テストで問題がないか確認し、最終的にリリース(本番運用開始)という手順です。特に最上流の要件定義は、ビジネス側のニーズと開発側の技術を結びつける土台となるフェーズであり、ここがしっかりしていないと後工程すべてに影響します。ウォーターフォール型開発では要件定義をプロジェクト冒頭にまとめて行いますが、アジャイル型開発でもスプリントごとにユーザーストーリーを通じた要件の洗い出しと調整が繰り返されるだけで、**「ユーザーの求めるものを正しく定義する」**という本質は変わりません。

「仕様」と「要件定義」とは何か?

そもそも要件定義(Requirements Definition)とは、「発注者(ユーザー)の要望や業務上達成したいことを整理し、システムに求める条件を明確化する工程および文書」を指します。一方で仕様(Specification)とは、「定義された要件をもとに、システムが備えるべき具体的な機能や振る舞い、性能など詳細を記述した内容」のことです (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ)。簡単に言えば、要件は「ビジネス側が必要としているもの(何を実現したいか)」であり、仕様は「開発側が作るべきものの詳細(どう実現するか)」と言えます。

実際のプロジェクトでは、要件定義の結果として**「要件定義書」を作成し、それを受けて設計段階で「仕様書」が作成されます。要件定義書は開発開始前にまとめられるのに対し、仕様書は開発中にエンジニアやテスター向けに作られるドキュメントです (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ)。仕様書は要件定義書を土台にして作られるため、要件定義の段階でシステムに求められる条件・性能・制約などを明確にしておく必要があります (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ)。発注者視点では、自社の業務課題やニーズを開発ベンダーに正しく伝え、それが要件定義書に落とし込まれているか確認することが重要です。また、発注者自身が簡易的な要望書(いわゆる要求定義書**やRFP)を用意するケースもありますが、最終的にはベンダー側と協力して要件定義書を完成させ、互いの認識をすり合わせる必要があります (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ)。

要件定義のプロセス

それでは、要件定義は具体的にどのような手順で進めるべきでしょうか。ここでは発注者の立場も意識しながら、典型的な要件定義プロセスを4つのステップに分けて解説します。

ステップ1: ユーザーのニーズを把握する

(image) (要件定義のヒアリングコツまとめ(フォーマット/シート、項目))まず取り掛かるべきは、ユーザーの真のニーズを徹底的にヒアリングすることです。発注者がシステムに求める要望は、当初は漠然としていたり表面的だったりするものです。例えば有名な風刺図にあるように、発注者が「3人がけのブランコが欲しい」と依頼しても、プロジェクトリーダーやアナリスト、プログラマーそれぞれが異なる解釈をしてしまい、出来上がったシステムが当初の要望とかけ離れる…という笑えない話も現実に起こり得ます (要件定義のヒアリングコツまとめ(フォーマット/シート、項目))。こうした認識齟齬を防ぐには、発注者(業務部門)と開発者が密にコミュニケーションし、ユーザーが本当に解決したい課題は何か、本質的なニーズはどこにあるのかを探ることが欠かせません。

具体的には、発注者側は現状の業務フローや抱えている問題点を余すところなく共有し、なぜそのシステムが必要なのか背景(目的)を説明します。一方、開発側は単に言われた要望を鵜呑みにせず、背景や業界特有の事情まで掘り下げて質問し、要望の裏にある真のゴールを引き出します (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ) (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ)。発注者視点では、「自社の誰が何に困っており、どんな改善効果を期待しているか」を明確に語ることが重要です。また、システムの最終ユーザー(現場担当者やエンドユーザー)の声を直接ヒアリングする場を設けることも有効です。ユーザー自身が自分の要件を完全に把握していないことも多いため、対話を通じて一緒に「本当に欲しいもの」を発見していくプロセスと捉えましょう (要件定義のヒアリングコツまとめ(フォーマット/シート、項目))。

ステップ2: 要件を整理し、優先順位をつける

ユーザーの要望や課題を一通り洗い出したら、次にそれらを整理・分類し、重要度の高いものから順に優先順位をつけていきます。多くの場合、予算やスケジュールには限りがあるため、すべての要求を100%実現できるとは限りません (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ)。そこで、「どの要件が最も本質的な課題解決につながるか」「ビジネス価値が高いか」という観点で取捨選択と優先度付けを行います。発注者の立場では、自社にとって絶対に外せない機能や条件(Must項目)と、できれば実現したい希望(Want項目)を明確に区別することが求められます (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ)。この段階での発注者と開発者の認識合わせが甘いと、「こちらはオプションのつもりだったが実は必須だった」といった行き違いが後から発覚しかねません (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ)。

整理の方法としては、要件をカテゴリーごとにまとめるのが有効です。例えば「業務プロセスに関する要件」「ユーザーインターフェースに関する要件」「法規制や社内ルールに関する要件」などテーマ別に洗い出し、各グループ内で重要度を評価します。MoSCoW法(Must/Should/Could/Won’tの4段階)などの優先度設定手法も参考になるでしょう。ここで大切なのは、ビジネス側の優先事項を明確に伝えることです。発注者は経営戦略上重要なポイントやユーザーのニーズの強さを踏まえて、「これは最優先」「これは次善策」といった判断を示します。一方、開発側からは技術的難易度や実現コストの見積もり情報を提供し、両者で落とし所を決めていきます。

また、このステップでは要件のスコープ(範囲)を明確化することも肝要です。どこまでを今回のシステム開発で実現し、どこから先は対象外とするのかを線引きします。スコープが曖昧なままだと、開発途中で「これも追加したい」という際限ない要求拡大につながりプロジェクト崩壊の原因となります (システム開発の失敗の主な原因を解説 | 株式会社APPSWINGBY)。発注者はプロジェクトの目的に照らして必要十分な範囲を見極め、将来的な課題は一旦スコープ外にする等の判断を下すことが求められます。

ステップ3: システムの機能要件と非機能要件を明確にする

次に、整理・優先付けした要件について機能要件非機能要件に分類し、それぞれ具体的な内容を詰めていきます。

非機能要件は欲張り始めるとキリがない面もあるため、ここでも優先度の考え方が役立ちます (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ)。例えば「ユーザーはできれば1秒以内の画面遷移を望むが、予算との兼ね合いで2秒程度まで許容する」といった具合に、現実的な落としどころを探ります (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ)。技術的に困難な要件については代替案を検討することも必要でしょう。発注者にとって妥協しがたい非機能要件(例えばブランドイメージに関わるデザインポリシーなど)は何か、逆に優先度の低い部分はどれかを明確にしておくと、開発側も取捨選択しやすくなります。

ステップ4: 仕様書を作成する

要件が一通り固まったら、最終ステップとして**「要件定義書/仕様書」の形でドキュメントを作成します。ここまでのステップで洗い出した内容を公式に文章化し、プロジェクト関係者全員で合意するための契約書・設計図**のような役割を果たすものです。発注者視点では、このドキュメントに自社の望むことが過不足なく盛り込まれているか確認することが非常に重要です。一度開発が始まれば安易な変更はコスト増につながるため、「言った・聞いてない」の行き違いを防ぐ観点でも、仕様書へのサインオフ(承認)は慎重に行う必要があります (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ)。

一般的な要件定義書/仕様書には、次のような項目が含まれます。

文書化にあたっては専門用語ばかりにならないよう注意が必要です。発注者(業務部門)にも理解できる平易な言葉で記述しつつ、技術的にあいまいな表現は避けます。双方の言語ギャップを埋める工夫として、図表やプロトタイプ(試作画面)を活用すると効果的です。例えば画面遷移図やUIワイヤーフレームを仕様書に盛り込み、発注者と開発者で出来上がりイメージを共有するのも良いでしょう。

出来上がった要件定義書は、発注者と開発ベンダーでレビューを行い、認識のズレや抜け漏れがないか最終確認します (要件定義とは?仕様書との違いや記載すべき項目、作成の進め方を解説 | Backlogブログ)。必要に応じて修正・補足を加え、**「この内容でシステムを作る」**という合意を明確にした上で開発フェーズへ移行します。この念入りな合意形成こそが、開発途中の手戻りを防ぎ、スムーズなプロジェクト進行につながります。

仕様策定に関する最新の技術・ビジネス動向

システム要件定義や仕様策定のやり方は、時代とともに進化しています。近年は技術トレンドやビジネス環境の変化を受けて、新しい手法・ツールの登場や進め方の変革が起きています。ここでは最新の動向を技術面・ビジネス面からそれぞれ見てみましょう。

技術的な進化(新しい手法やツール)

  • アジャイル開発と継続的要件定義の普及:かつて主流だったウォーターフォール型では冒頭に要件を完全に固めるスタイルでしたが、近年はアジャイル開発の浸透により、要件定義を反復的かつ継続的に行うケースが増えています。アジャイルではプロダクトバックログにユーザーストーリー形式で要件を記述し、スプリントごとに優先度の高いものから実装・フィードバックを繰り返します。この方法により、ビジネス環境の変化や新たな学びに素早く対応し、要件を柔軟に進化させることができます。グローバルでは多くの企業がアジャイル手法を採用していますが、日本国内では導入率はまだ2割程度に留まるとの調査もあり (アジャイル開発がDXのカギ ウォーターフォールとのハイブリッド戦略)、今後の普及拡大が注目されています。
  • プロトタイピングとデザイン思考の活用:要件定義段階で**プロトタイプ(試作品)**を活用する動きも一般化してきました。UI/UXデザインツール(例:FigmaやAdobe XDなど)で画面モックアップを素早く作成し、ユーザーに触ってもらいながら要件をブラッシュアップする手法です。これにより文章だけでは見えなかったユーザーの真のニーズや使い勝手の問題を早期に発見できます。特に新規サービス開発では、デザイン思考のワークショップを通じてユーザー体験を重視した要件定義を行い、そのアウトプットをプロトタイプ→検証→要件修正というサイクルで練り上げるケースが増えています。技術的にも、コードを書かずに動くモデルを作れるノーコードツールが登場し、非エンジニアであるビジネス担当者自身が試作を作って要件を確認することも可能になってきました。
  • 要求管理ツールとコラボレーションプラットフォーム:要件の追跡性や変更管理を徹底するために、要求管理ツール(RMツール)の活用も進んでいます。大規模開発ではIBM DOORSやJamaなど専門ツールで要件ごとにIDを振り、変更履歴やテストケースとの紐付けを管理することで、要件漏れ防止や影響範囲の可視化を図ります。また、より軽量な手段として、チームコラボレーションツール(JiraやConfluence、Backlogなど)を使って発注者と開発者がリアルタイムに仕様書を共同編集・コメントするスタイルも一般的になりました。クラウド上で最新の要件ドキュメントを共有し、関係者全員がいつでも閲覧・議論できる環境を整えることで、コミュニケーションロスを減らし品質向上につなげています。
  • AI(人工知能)の要件定義支援への活用:近年特に注目なのが、ChatGPTに代表される生成AIを要件定義に活用する試みです (ChatGPTで要件定義を行うには?プロジェクト進行を効率化させる …)。対話型の大規模言語モデルを用いることで、要件に関するブレストや文章化の支援、矛盾チェックを行うことができます。例えば、ChatGPTやClaudeなどに要件定義書のドラフトを入力すると、「この記述は曖昧です」「〇〇が未定義ですが想定はありますか?」といった具合に、AIが自動で追加の質問や改善提案を返してくれます (生成AIで「作れない」が「作れる」に!賢いプロダクト開発の新時代|小林 孝嗣)。これにより人間が見落としがちな抜け漏れや不明確表現を洗い出し、要件をより具体的で明確なものに磨き上げることが可能です。また、AIは過去の類似プロジェクト事例も学習しているため、「同様のケースでは××なアプローチがありました」と参考情報を提示してくれることもあります (生成AIで「作れない」が「作れる」に!賢いプロダクト開発の新時代|小林 孝嗣)。さらに一歩進んで、自然言語で書かれた要求をAIがそのまま擬似コード化したり、プロトタイプ画面を自動生成する技術も登場しつつあります (生成AIで「作れない」が「作れる」に!賢いプロダクト開発の新時代|小林 孝嗣)。これらのツールはまだ発展途上ですが、要件定義の効率化や精度向上に大きな可能性を秘めており、「人間とAIの協働による要件定義」が今後の新常識になるかもしれません。

ビジネス的な影響(市場動向、成功・失敗事例)

  • デジタル化時代のスピード要求と柔軟性:市場の変化が激しい昨今、ビジネス側はシステム開発にこれまで以上のスピードと柔軟性を求めています。新サービスを立ち上げる際には、要求定義からリリースまで数ヶ月以内で走り切らないと競合に遅れを取る場面も増えました。そのため、「まず必要最低限の要件でリリースし、市場の反応を見て改善していく」アジャイル的な発想が経営層にも浸透しつつあります。要件定義も一度きりで完了ではなく、プロダクトのライフサイクルを通じて継続するプロセスと捉える企業が増えました。たとえばフィンテック企業では、最初の要件定義段階で全てを決め打ちするのではなく、リリース後にユーザーフィードバックを収集して追加要件を素早く仕様に反映しアップデートするといったように、要求の変化に追随する開発体制を整えています。ビジネス側としても、「要件は不変ではなく市場や顧客の声で進化する」ことを前提に、柔軟な仕様変更を許容する契約や予算計画を検討する動きが見られます。
  • 現場主導・ユーザー主導の要件定義:従来、発注者といえば経営企画部門や情報システム部門が多く、現場ユーザーの声が間接的にしか伝わらないこともありました。しかし最近は現場の業務担当者自らがプロジェクトに参画し、要件定義をリードするケースが増えています。現場に一番近い人がチームに入ることで、日常業務の細かなニュアンスや顧客対応で培った知見がダイレクトに要件へ反映され、ミスマッチを減らせます。また、ユーザー企業が自社内にIT人材を育成し、ベンダーと対等に議論できる体制を作る動き(内製化やプロダクトオーナー育成)も進んでいます。これにより「ビジネス部門がシステム要件を理解できない」「IT部門がビジネス目的を理解していない」という相互不信を解消し、ビジネスとITの橋渡し役が社内に存在することで要件定義の質を高めています。
  • 失敗事例に学ぶ重要性:要件定義軽視のツケを痛感した企業も少なくありません。不明確な要件定義のまま開発を始めてしまい、完成後に「現場のニーズに合わない」ことが判明して結局作り直し…という失敗事例は各所で報告されています (〖開発会社が教える〗アプリ開発はなぜ失敗する?事例で学ぶ解決策とは – FlutterFlow Cafe)。例えばある企業では新基幹システムを構築したものの、実際のオペレーションにフィットしない点が多く現場から不満が噴出。結局リリースを延期して追加開発・仕様変更を繰り返す羽目になりました。この原因は初期の要件定義フェーズで現場の声を十分に拾わず、机上の要件に偏ってしまったことにあったと分析されています (〖開発会社が教える〗アプリ開発はなぜ失敗する?事例で学ぶ解決策とは – FlutterFlow Cafe)。また先述のセキュリティを怠った7payの例 (〖開発会社が教える〗アプリ開発はなぜ失敗する?事例で学ぶ解決策とは – FlutterFlow Cafe)のように、非機能要件の見落としで信用失墜に直結するケースもあります。こうした失敗から、経営陣レベルでも「システムの成否は要件定義で8割決まる」という認識が高まりつつあります。プロジェクト開始時に要件定義へ十分なリソースと時間を割くこと、必要なら外部コンサルタントの支援を受けてでも要件を精緻化することが、結果的に最もコストパフォーマンスが良い投資となるのです。
  • 成功へのアプローチ:逆に成功したプロジェクト事例を見ると、初期段階の取り組みに共通点が見られます。それは**「ビジョンの明確化」と「ステークホルダーの巻き込み」です。ある小売業のシステム刷新では、プロジェクト開始時に経営トップ自らビジョンを示し、店舗スタッフからIT部門まで横断チームを結成して要件定義ワークショップを行いました。その結果、全員が目的を正しく共有し、現場の知恵を盛り込んだ実効性の高い要件定義書がまとまり、開発もスムーズに進行。リリース後の評価も高かったそうです。また、最近ではユーザー参加型の開発**(例えばユーザー企業の担当者がスクラム開発のプロダクトオーナーになる)が成功要因として挙げられることも増えました。ビジネスサイドが能動的に開発プロセスに関与し、要件の取捨選択や優先度付けに責任を持つことで、「作ったけれど使われない機能」が減り、投資対効果の高いシステムが実現しています。

このように、ビジネス環境と技術の両面から、要件定義・仕様策定のあり方は日々アップデートされています。大事なのは流行の手法に飛びつくことではなく、自社のプロジェクトに合ったやり方を取り入れることです。例えば、全てをアジャイルにしなくとも、上流の要件定義だけはじっくり行い、その後の開発はスピード優先で進めるハイブリッド型も有効でしょう (システム開発の失敗の主な原因を解説 | 株式会社APPSWINGBY)。重要なのは、最終的なビジネス価値を最大化するために、要件を的確に定義し管理する仕組みを持つことです。

まとめ – 要件定義を成功させるために

システム開発の成功可否は、冒頭の「何を作るか」を決める段階でほぼ決まる――これは決して大げさな表現ではありません。非IT業界のビジネスパーソンにとっても、要件定義は他人任せにできない非常に重要なプロセスです。自社の課題を正しく伝えること、期待する成果を明確にすること、これがなければ的外れなシステムが出来上がってしまいます。

要件定義を成功させるポイントを整理すると以下のようになります。

  • ビジョンと目的の共有:プロジェクトのゴール(解決したい課題や実現したい価値)をステークホルダー全員で共有する。目的意識がブレないよう最初に明確化する。
  • 徹底したヒアリングとコミュニケーション:発注者側は現場の生の声を引き出し、開発者側は背景まで含めて深く質問する。【継続的なコミュニケーション】を確保し、要望の細部に至るまでしっかり擦り合わせることが重要です (システム開発の失敗の主な原因を解説 | 株式会社APPSWINGBY)。
  • 全方位的な要件の網羅:機能面だけでなく非機能面、運用面、制約条件、将来の拡張性まで検討し、漏れのない要件定義を目指す(網羅性の担保)。
  • 優先順位とスコープ管理:ビジネス上の優先度にもとづき要求の取捨選択を行う。スコープを明確に決め、途中の逸脱を防ぐ。変更要求が出た場合の影響も見極める。
  • ドキュメントの明確さ:要件定義書・仕様書は発注者にも理解でき、かつ開発者にとって誤解のない表現で記述する。図や具体例を活用し、あいまいな表現を残さない。
  • 合意形成と管理:要件定義書を単なる文書で終わらせず、発注者・ベンダー間で正式合意し、プロジェクト全体で「単一の真実の源泉」として管理する。変更が生じたら速やかに関係者へ周知し文書を更新する。

発注者の視点では、「システム開発はベンダー任せではなく、自社のビジネス要件を形にする共同作業だ」という意識を持つことが大切です。幸先の良いスタートを切るために、上記のポイントを踏まえて要件定義に臨んでください。要件定義がしっかり固まれば、その後の設計・実装は見違えるほどスムーズに進みますし、完成したシステムがビジネスにもたらす価値も最大化されます。

最後に、技術や手法がどんなに進歩しても、「相手(ユーザー)の話をよく聴き、本当に求めているものを理解する」という本質は変わりません。要件定義はシステム開発の土台であり、ビジネス目標を達成するための羅針盤です。最新の知見も活用しながら、この重要なプロセスを丁寧に進めていけば、きっとプロジェクト成功への道が拓けることでしょう。

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