APIってなに? -仕組みと歴史を徹底解説-

「API」という言葉を聞いたことはあっても、「具体的にはよく分からない」という方は多いのではないでしょうか。実は、APIはさまざまなサービスを便利につなげる「橋渡し」の役割を果たしています。本記事では、APIの基本的な仕組みや歴史から最新の技術動向まで、初心者にもわかりやすく解説します。これからITを学びたいビジネスパーソン必見です。

目次

APIの基本概念

APIとは?

API(Application Programming Interface)とは、異なるソフトウェアやサービス同士をつなぐ「インターフェース(接点)」のことです (APIとは?意味や種類、メリット・デメリットを分かりやすく解説 | Slack)。たとえば、あるアプリケーションが他のサービスのデータや機能を利用したい場合に、直接内部のコードを書き換えるのではなく、そのサービスが提供するAPIを呼び出して使います。APIはソフトウェア間の「窓口」や「契約」のような役割を果たし、決められた方式(リクエスト)で要求を送ると、決められた形式で応答が返ってきます。これにより開発者は自分で一から機能を作り込まなくても、他のサービスの機能やデータを再利用でき、ソフトウェア同士を柔軟に連携させることが可能になります (APIとは?意味や種類、メリット・デメリットを分かりやすく解説 | Slack)。

なぜAPIが重要なのか?

現代のビジネスやITシステムでは、複数のツールやサービスを組み合わせて機能を実現することが当たり前になっています。APIを活用すると、こうしたツール同士をつないでデータ連携や機能拡張が簡単に行えます (APIとは?意味や種類、メリット・デメリットを分かりやすく解説 | Slack)。たとえば企業のクラウド会計ソフトが銀行のAPIを使って最新の入出金データを自動取得するように、API連携により常に最新情報を取り込めるためユーザーの利便性が向上します 。また、開発者にとってもAPIの利用は大きなメリットがあります。外部のサービスが提供するAPIを使えば、自社で一から同じ機能を開発する必要がなくなり、開発時間とコストを大幅に削減できるからです。さらに、APIは新しいビジネスモデルやサービス創出の鍵にもなっています。自社のサービスをAPI経由で公開(パブリックAPI)すれば、社外の開発者やパートナー企業がそれを活用して思いもよらない新サービスを生み出す可能性があります。実際、Googleが提供する地図サービスのGoogle Maps APIなどは、自社データを外部に開放して収益化した成功例として有名です (API とは?仕組みをわかりやすく解説)。このように、APIはソフトウェアの開発効率を高め、システム同士の統合を容易にし、ビジネスの拡大にも寄与する重要な技術なのです。

APIの歴史と進化

初期のAPI(ローカルAPI、ライブラリ)

APIという概念はコンピュータ史の初期から存在していました。最初期のAPIは、単一のマシン内で動くプログラムの部品(ライブラリ)として提供されるものでした (API とは?仕組みをわかりやすく解説)。例えばオペレーティングシステム(OS)はアプリ開発者向けに種々の関数(API)をライブラリとして提供し、アプリ側はその関数を呼び出すことでOSの機能を利用できます。この頃のAPIはローカルAPIとも呼ばれ、一つのシステム内部で完結するものでした。一部にはメインフレーム(大型計算機)同士でメッセージ交換を行うような事例もありましたが、基本的には同じマシン内でのコードの呼び出しがAPIの役割でした 。

WebAPIの登場とRESTの普及

インターネットが発達すると、コンピュータ間でネットワーク越しに機能を呼び出すリモートAPIのニーズが高まりました。1990年代末から2000年代初頭にかけて、インターネットを介して動作するAPIが急速に発展し、Web APIと呼ばれるようになります (API とは?仕組みをわかりやすく解説)。Web APIではHTTPというWeb標準の通信プロトコルを使ってリクエストとレスポンスをやり取りし、データ形式にはXMLやJSONといった機械可読なフォーマットが使われました。初期のWeb APIを標準化するために登場したのがSOAPというプロトコル仕様です。SOAPではメッセージ形式にXMLを採用し、HTTPやSMTP経由でリクエストを送ることで、異なる環境・異なる言語のシステム間でもデータ共有を容易にしました。

しかしSOAPは規約が厳格で実装も複雑だったため、よりシンプルなアプローチが求められました。そこで登場したのがREST(Representational State Transfer)という考え方です。RESTは2000年にRoy Fielding氏の博士論文で提唱されたアーキテクチャスタイルで、Webの設計原則を整理したものです (API とは?仕組みをわかりやすく解説)。RESTに従って設計されたWebAPIはRESTful APIと呼ばれ、明確な仕様書(プロトコル)を持つSOAPとは異なり公式な規格は存在しません。あくまでいくつかの設計原則に準拠していればRESTfulとみなされます。具体的なRESTの原則については後述しますが、SOAPに比べてシンプルで軽量なことからRESTfulなWeb APIは急速に普及し、現代ではWeb APIと言えばRESTful APIを指すことが多くなっています。

最新のAPI技術(GraphQL、gRPCなど)

2010年代以降、API技術はさらに進化を遂げています。代表的なのがGraphQLgRPCです。GraphQLは2015年にFacebook社(現Meta社)が公開したクエリ言語で、RESTに代わる新しいAPIのスタイルとして注目されました。GraphQLを使うとクライアント側が欲しいデータを指定して取得できるため、モバイルアプリなどで問題となっていた「必要以上のデータ取得(オーバーフェッチ)」や「複数エンドポイントへの連続問い合わせ(アンダーフェッチ)」を解決できます。この点は後ほど詳しく解説します。また、gRPCは2016年頃にGoogle社が公開したオープンソースのRPC(Remote Procedure Call)フレームワークです。高速・高効率な通信を重視して設計されており、通信にHTTP/2とバイナリ形式のProtocol Buffersを用いることで、REST+JSONよりも低いレイテンシを実現します (gRPCとは何か | F5)。gRPCについても詳細は後述しますが、主にマイクロサービス間の通信など、サーバーサイド同士のやりとりで威力を発揮する技術です。

このように、APIは当初のローカルな関数呼び出しから始まり、Webの発展とともにリモートAPI、そして現在のより洗練されたAPI技術へと連続的に進化してきました。それでは、現代の主流であるWeb API、とりわけRESTについて基本を押さえておきましょう。

WebAPIとRESTの基本

REST APIの特徴

REST(レスト)とは先述の通りWeb APIの設計様式の一つで、シンプルさと拡張性を重視したアプローチです。RESTful APIにはいくつかの特徴的な制約がありますが、主要なものを紹介します。

  • クライアント-サーバーの分離:クライアント(利用側)とサーバー(提供側)の役割を明確に分離し、通信はHTTPなどのプロトコルを通じて行います。クライアントはリソースを要求し、サーバーはリソースの表現を返す、という役割分担です。
  • ステートレス(無状態):各リクエストは完全に独立しており、サーバー側にクライアントの状態(セッション)を保持しません。これによりサーバーのスケーリングや冗長化が容易になります。
  • 統一インターフェース:リソースへのアクセス方法を統一するという概念で、具体的にはHTTPのメソッド(GET, POST, PUT, DELETEなど)を活用してリソース(データ)の取得・作成・更新・削除を行います。リソースはURIで一意に識別され、クライアントとサーバーがやりとりするメッセージは自己記述的(どのように処理すべきかの情報を含む)である必要があります。また、必要に応じてレスポンスに次の操作へのリンクを含め、ハイパーリンクでアプリケーション状態を遷移する(HATEOAS)こともRESTの重要な要素です。
  • キャッシュ可能:HTTPの仕組みを利用してレスポンスをキャッシュ可能にすることで、クライアントとサーバー間の通信を効率化できます。
  • 階層化システム:サーバーとクライアントの間にプロキシやゲートウェイなどの中間層を挟んでも、クライアントから見たやり取りの仕方は変わりません。これによりロードバランサーや認証ゲートウェイなどを途中に配置してもシステム全体として統一的に動作します。

これらRESTの制約は一見多いようですが、厳密な仕様を定めるSOAPに比べればずっと柔軟で分かりやすいものです。そのためRESTful APIは実装が容易でスケーラブルであり、Webサービス間の連携に広く採用されています。近年では、REST APIを記述する共通仕様としてOpenAPI(旧Swagger)仕様が登場し、言語非依存でAPIのインターフェースを定義・共有できるようになりました(OpenAPI仕様については後述の「Swaggerとは?」で説明します)。

API とは?仕組みをわかりやすく解説を参考に執筆。

RESTfulな設計とは?

RESTfulなAPI設計を実践するには、上記の原則に沿ってリソース志向で考えることが重要です。たとえば、オンライン書店のAPIを設計する場合、本や著者、在庫といった**名詞(リソース)**をまず定義し、それらに対してどのような操作(動詞)を提供するかをHTTPメソッドで表現します。典型的には以下のような対応付けになります。

  • GET /books – 本の一覧を取得する
  • POST /books – 本の新規登録をする
  • GET /books/123 – IDが123の本の詳細を取得する
  • PUT /books/123 – IDが123の本の情報を更新する
  • DELETE /books/123 – IDが123の本を削除する

このようにエンドポイントのURIはリソースを表し、HTTPメソッドが操作を表します。レスポンスは通常JSONやXMLといった形式で、リソースの状態(プロパティ)を表現します。さらに、必要に応じてレスポンス内に関連リソースへのリンクを含めることで、クライアントが次に取れるアクションを示すようにします(これがHATEOASの考え方です)。

RESTful設計ではステートレス性も守らねばなりません。例えば認証が必要なAPIでも、セッション情報をサーバー側で保存せず、認証トークン(APIキーやJWTなど)を毎回リクエストに含めてもらう方式が一般的です。これにより、どのサーバーインスタンスがリクエストを受けても同じ結果を返せるようになり、スケーラビリティと信頼性が向上します。

以上がRESTの基本となる考え方です。では、最新のAPI技術として挙げたGraphQLやgRPCについて、それぞれRESTと何が違うのかを見ていきましょう。

最新のAPI技術

GraphQLとは? RESTとの違い

GraphQL(グラフキューエル)は、Facebook社が開発したAPI用のクエリ言語です。RESTがリソース毎に固定のエンドポイントと定型レスポンスを提供するのに対し、GraphQLでは単一のエンドポイントに対してクエリ(問い合わせ)を書いて必要なデータだけを取得するという方式を取ります (GraphQLとRESTの比較─知っておきたい両者の違い)。これにより、RESTでしばしば発生するオーバーフェッチ(必要以上のデータを取得してしまうこと)やアンダーフェッチ(必要なデータを得るのに複数のリクエストが必要になること)を回避できます (〖初心者向け〗REST APIとGraphQLの違いを超ざっくり解説する #REST-API – Qiita)。実際、GraphQLではクライアントが取得したいフィールドをリクエスト内で指定するため、一度の呼び出しで複数の関連データをまとめて取得でき、通信回数の削減とデータ転送量の最適化が図れます (API とは?仕組みをわかりやすく解説)。

もう一つの大きな違いはスキーマ(型定義)の存在です。GraphQLではサーバー側で提供するデータの型や関係をあらかじめスキーマとして定義します。これにより、クライアントは利用可能なクエリやフィールドを事前に把握でき、リクエストとレスポンスの形式が厳密に決まります。型に基づいているため、APIのバリデーションやドキュメント生成も容易です(GraphQLとRESTの比較─知っておきたい両者の違い)。一方RESTでは明確なスキーマはなく、APIドキュメントや規約に従ってリクエスト/レスポンスを理解する必要があります。

GraphQLのメリットをまとめると以下の通りです。

もっとも、GraphQLにも注意点があります。例えば、単一エンドポイントゆえにキャッシュが効きにくい(HTTPのGETでリソース毎にキャッシュといった手法が使えない)、学習コストが高い、シンプルなAPIでは却って複雑になる場合もある、といった点です。とはいえ、近年は大規模サービスを中心にGraphQLを採用する企業も増えており、RESTとGraphQLは用途に応じて使い分けられるようになってきています (GraphQLとRESTの比較─知っておきたい両者の違い)。

gRPCの概要と活用シーン

gRPC(ジーアールピーシー)は、Google社が開発した高性能なRPC(リモートプロシージャコール)フレームワークです。RPCとは遠隔の手続きを呼び出す技術で、要するに別のマシン上の関数をあたかもローカルのように呼べる仕組みです。gRPCの最大の特徴は、通信にHTTP/2を使用しデータフォーマットにProtocol Buffers(プロトコルバッファ)というバイナリ形式を用いることで、非常に高速かつ効率的な通信を実現していることです (gRPCとは何か | F5)。そのため、マイクロサービス間の大量のやりとりリアルタイム性の求められる通信に適しています。

gRPCでは、まずサービスのインターフェース(利用可能なメソッドやメッセージ構造)をプロトコルバッファ(*.protoファイル)で定義します。この定義から自動的にサーバー側・クライアント側のコードスタブを生成できるので、多言語・多環境で統一仕様のAPIを実装可能です。通信はすべてHTTP/2上で行われ、Protocol Buffersでシリアライズされたバイナリデータをやりとりします。これにより、人間には可読性が低いもののデータサイズは非常に小さく、高速なデコードが可能です (gRPCとは何か | F5)。

gRPCの強みとして、ストリーミング通信をネイティブにサポートしている点も挙げられます。通常の単一リクエスト-レスポンスに加え、サーバーからクライアントへの一方向ストリーム、クライアントからサーバーへのストリーム、双方が並行してストリームを送り合う双方向ストリーミングが可能で、イベント駆動型のリアルタイムサービスに向いています (gRPCとは何か | F5)。

活用シーンとしては、前述のマイクロサービスアーキテクチャでの内部通信が代表例です。一つの大規模アプリケーションを細かなサービスに分割した場合、それらサービス間のAPIコールが頻繁になりますが、gRPCなら通信オーバーヘッドを抑えてスムーズにデータ交換できます。また、モバイルアプリとサーバー間通信でも、帯域や速度の面で有利なことから採用が検討される場合があります。ただし、gRPCはブラウザから直接呼び出すことは想定されておらず(HTTP/2を扱えるブラウザでも直接のgRPCコールは通常できないため)、REST/JSONのように手軽に試せない点には注意が必要です。そこで、外部向けにはREST APIを提供しつつ内部実装はgRPCで通信するといったAPI Gatewayパターンも用いられます (gRPCとは何か | F5)。

APIセキュリティの重要性

APIが広く使われるようになると同時に、APIを狙ったセキュリティ上の脅威も高まっています。もしAPIの設計や管理に不備があると、不正アクセスによるデータ漏洩やサービス停止といった深刻な被害が発生しかねません (API セキュリティとは | Red Hat)。事実、企業はAPIを通じて機密データをやり取りするケースが多く、もしAPIがハッキングされてしまえば顧客の個人情報や金融情報が流出するリスクがあります。そのため、APIを提供・利用する際にはセキュリティ対策が不可欠です。

具体的なAPIセキュリティ対策としては、まず認証と認可の徹底があります。APIキーやOAuth2.0トークンによる認証で、許可されたユーザーだけがAPIを呼び出せるようにします。また、ユーザーごと・アプリごとにアクセス権限を細かく設定し、取得・操作できるリソースを制限します(認可)。次に通信の暗号化です。API呼び出しは基本的にHTTPS(TLS暗号化)を使用し、通信経路上でデータが盗聴・改ざんされないようにします (API セキュリティとは | Red Hat)。例えばREST APIであればTLSによりクライアントとサーバー間のトラフィックを暗号化し、安全に保つことができます。

さらに、レート制限やWAF(Webアプリケーションファイアウォール)の導入も有効です。特定のIPから短時間に大量のリクエストが来た場合にブロックするなど、不正なアクセスやDDoS攻撃を防ぐ仕組みをAPIゲートウェイで設けます。入力パラメータの検証を適切に行い、SQLインジェクションやスクリプトの埋め込みといった典型的な攻撃手法にも備えます。近年ではAPIセキュリティ専用のソリューションも登場しており、APIの脆弱性スキャンやリアルタイム監視、異常検知などを行うサービスも普及しつつあります。

要するに、APIはシステムの「玄関口」とも言える存在であり、そのセキュリティが破られると全体の安全性が損なわれます。企業にとってAPIセキュリティは今や軽視できない重要課題となっているのです (API セキュリティとは | Red Hat)。

サーバーレスAPIのメリットとデメリット

昨今のクラウドの発展により、サーバーレスアーキテクチャを使ってAPIを構築するケースも増えてきました。サーバーレスとは、開発者がサーバー(インフラ)の管理を意識せずにコード実行環境を利用できる形態で、代表例がAWS LambdaやGoogle Cloud Functionsです (サーバレスにはどんなシステムが向いているの?メリット・デメリットを解説|ブログ|アイテック阪急阪神ITインフラ・クラウドソリューション)。サーバーレスでAPIを実装する(いわゆるFaaS: Function as a Serviceを使う)メリットとしては以下が挙げられます。

  • インフラ管理不要: サーバーのプロビジョニングやOS管理、スケーリング設定などをクラウドプロバイダが自動で行うため、開発者はビジネスロジックの実装に集中できます。運用負担が大幅に減り、インフラ管理のコスト削減にもつながります。
  • 自動スケーリング: リクエスト量に応じて関数インスタンスが自動で増減するため、急なトラフィック増加にも対応しやすいです。逆に利用が少ないときはリソースを使わないので、無駄なコストを抑えられます。
  • 従量課金でコスト効率: 実行した分だけ課金されるモデルが一般的なので、特に負荷が断続的なアプリケーションでは、常時サーバーを立てておくより安価に運用できる場合があります。
  • 迅速なデプロイ: コードをアップロードするだけでデプロイでき(設定項目も少ない)、新しいAPIエンドポイントの公開や更新が高速です。開発のスピード感が増します。

一方で、サーバーレスAPIには注意すべきデメリットも存在します。

  • コールドスタートによる遅延: サーバーレスではリクエストが来てから関数実行環境が起動する場合があり、この初回起動に時間がかかることがあります。これをコールドスタート問題と呼び、場合によっては数百ミリ秒〜数秒の遅延が発生します。リアルタイム性が要求されるAPIではこの遅延が許容できないことがあります。
  • 実行時間やリソースの制限: FaaS環境では1リクエストあたりの最大実行時間(例えば5分など)や使用メモリ上限が定められています。長時間バッチ処理や大容量データ処理には不向きです。また、TCPソケットなど一部の長時間接続を伴う処理も制約があります。
  • 運用上の不透明さ: サーバーを直接管理しないため、ログ取得やデバッグの方法が通常のサーバーと異なります。問題発生時に原因究明が難しい場合があります。また、クラウド依存が強くベンダーロックインのリスクもあります。特定クラウドの独自機能を使いすぎると他環境への移行が困難になる点にも注意が必要です。
  • 常時高負荷にはコスト増: 従量課金とはいえ、一定以上に常時トラフィックがある場合はサーバーレスの方が割高になることもあります。大量リクエストがひっきりなしに発生するようなAPIでは、従来型のサーバーの方が安価になるケースがあります。

以上のように、サーバーレスAPIは上手くハマれば運用負荷とコストを大きく削減できますが、万能ではありません。システム要件に応じてメリット・デメリットを勘案し、最適なアーキテクチャを選択することが重要です。

サーバレスにはどんなシステムが向いているの?メリット・デメリットを解説|ブログ|アイテック阪急阪神ITインフラ・クラウドソリューションを参考に執筆。

API開発のためのツールと管理手法

Swaggerとは?

Swagger(スワッガー)とは、REST APIを設計・ドキュメント化するためのツール群の名称です (OpenAPI (Swagger) まとめ #JavaScript – Qiita)。もともとはSwaggerという名前でAPI仕様を記述するフォーマットとそれを扱うツールが開発されましたが、2015年にそのフォーマットがLinux Foundationに寄贈されてOpenAPI Specification(OAS)と改名されました (Swagger使ってみた #swagger – Qiita)。現在では「Swagger」という名前は主にOpenAPI仕様を利用するためのツールセットを指します。

Swaggerの代表的なツールには次のようなものがあります (OpenAPI (Swagger) まとめ #JavaScript – Qiita)。

  • Swagger Editor:ブラウザ上でOpenAPI(Swagger)仕様を書けるエディタ。YAML/JSON形式でAPIのリソースや操作、モデルスキーマなどを定義できます。
  • Swagger UI:定義したOpenAPIドキュメントから自動生成されるインタラクティブなAPIドキュメント。ブラウザでAPIのエンドポイント一覧やパラメータ、レスポンス例が確認でき、その場で試し呼び出し(スニペット実行)も可能です (OpenAPI (Swagger) まとめ #JavaScript – Qiita)。
  • Swagger Codegen:OpenAPI定義をもとに各種プログラミング言語向けのサーバースタブやクライアントSDKコードを自動生成するツール (OpenAPI (Swagger) まとめ #JavaScript – Qiita)。

Swagger UIの画面例。定義したAPIのエンドポイントがリスト表示され、パラメータやレスポンス形式も確認できる(画像はSwagger UI公式サイトより、Petstoreサンプル)。

Swaggerを使うことで、APIの設計書とドキュメント、モックサーバー、コード生成まで一貫して行えるため、API開発の生産性と正確性が飛躍的に向上します。例えばバックエンドとフロントエンドのチームが並行して開発する場合でも、まずSwaggerでAPI仕様を合意しておけば、バックエンドはその仕様通りに実装し、フロントエンドはSwagger UIで提供されるモックを相手に開発・テストを進めることができます。結果、双方の齟齬が減りスムーズに統合できます。

APIマネジメントとは?

APIマネジメント(API管理)とは、企業や組織が公開する複数のAPIを統合的に管理・制御するための手法やプラットフォームを指します (APIマネジメントとは | ブログ | Kong株式会社)。現代の企業では数多くのAPIが社内外向けに提供されていますが、これらを放任するとセキュリティや性能、バージョン管理の点で問題が生じる可能性があります。APIマネジメントを導入すると、APIのライフサイクル(設計・公開・運用・廃止)を一元管理し、利用状況のモニタリングやアクセス制御、ドキュメント整備、課金連携などを包括的に行うことができます。

具体的には、APIマネジメントプラットフォーム(例:Amazon API GatewayやGoogle Apigee、Azure API Managementなど)を使用すると、以下のような機能が提供されます。

  • APIゲートウェイ:全てのAPIリクエストを一箇所で受け止める入口。ここで認証・認可やスロットル(レート制限)、プロトコル変換(例えば内部はgRPCでも外部にはRESTで提供)などを行います (API管理とは何ですか? | IBM)。いわばAPIの交通整理役です。
  • 開発者ポータルとドキュメント:社内開発者や外部パートナーがAPIを利用しやすいように、API一覧や使用方法のドキュメント、自分のAPIキー発行・管理画面などを提供します。これにより、利用者にとってもAPIが「サービス」として扱いやすくなります。
  • 分析とモニタリング:どのAPIがいつどれだけ呼ばれているか、レスポンス時間やエラー率はどうか、といった統計情報を収集・可視化します。これによりボトルネックの発見や利用状況の把握(どの機能が人気か、など)が可能になり、ビジネス上の意思決定にも役立ちます。
  • セキュリティポリシー適用:全APIに共通のセキュリティルール(例:認証方式はOAuth2に統一、など)を適用したり、脆弱性スキャンやWAFによる保護を組み込んだりできます。個別APIごとに対策するより集中管理でき、安全性が向上します。

要するにAPIマネジメントとは、増え続けるAPI群を整理整頓し、安全かつ効率的に活用するための枠組みです。これを適切に行うことで、企業はAPIから最大限の価値を引き出しつつリスクを最小限に抑えることができます (APIマネジメントとは | ブログ | Kong株式会社)。今やAPIは一企業のIT資産として極めて重要であり、その管理なしにビジネスの信頼性や拡張性を保つことは難しくなってきています。

まとめ – APIの未来と展望

ここまでAPIの仕組みと歴史、関連技術について幅広く解説しました。最後に、APIの未来と展望について触れておきます。

APIの重要性は今後ますます高まると考えられています。ソフトウェア開発はモノリシック(一枚岩)からマイクロサービスへ移行し、クラウドやサーバーレスの利用が拡大しています。これらの背景では、サービス同士をつなぐAPIがまさにシステムの神経網となります。企業は自社の機能をAPIとして公開し、パートナーやサードパーティーと連携することで新たな価値を創出する「APIエコノミー」の時代に突入しています。例えば金融業界ではオープンAPIによる他社サービス連携が進み、ユーザーにとって便利な統合サービス(資産管理アプリなど)が生まれています。

技術面では、前述したGraphQLやgRPCのような新技術の普及が進むでしょう。GraphQLはフロントエンド主導のデータ取得手段として定着しつつあり、柔軟なAPI提供が求められる場面で選択される機会が増えるはずです。一方gRPCはIoTや高速通信が必要なサービス、そして内部システム間通信でさらに採用が広がるでしょう。また、リアルタイム双方向通信が必要なAPIにはWebSocketやGraphQLのサブスクリプション機能、あるいはgRPCのストリーミングが使われるなど、用途に応じて複数のAPIプロトコルが共存する時代になると考えられます。

セキュリティと管理の分野でも進化が続きます。APIへの攻撃手法も高度化しているため、ゼロトラストセキュリティの考え方を取り入れた堅牢なAPI認証・監視が標準になっていくでしょう。同時に、API管理ツールはAIを活用して異常検知を自動化したり、ポリシー適用をよりインテリジェントに行ったりするようになるかもしれません。APIの数が爆発的に増えても人手で管理できるよう、さらなるプラットフォームの成熟が期待されます。

最後に、APIの本質的な価値は今後も変わりません。それは「異なるシステムの橋渡しをして、新たな組み合わせを可能にする」ことです。APIによって個々のサービスは相互につながり合い、一つの大きなエコシステムを形成します。その結果生まれるイノベーションは無限大です。今後もAPIはソフトウェア開発とビジネスの世界で重要な基盤であり続けるでしょう。皆さんもぜひAPIの知識を実務に活かし、便利なツールやサービス連携を実現してみてください。APIの未来は明るく、可能性に満ちています。

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