1. はじめに:タンパク質の形と病気の関係
タンパク質の基本的な役割と正しい折り畳み(フォールディング)の重要性
タンパク質は、生命活動を支える上で不可欠な分子であり、筋肉の収縮、酸素の運搬、化学反応の触媒、細胞間の情報伝達など、多岐にわたる機能を担っています。これらの機能は、タンパク質が特定のアミノ酸配列情報に基づいて、精密に制御された三次元の立体構造(ネイティブ構造)へと正しく折り畳まれる(フォールディングする)ことによって初めて発揮されます 1。この立体構造の形成は、アミノ酸残基間の疎水性相互作用、静電相互作用、水素結合といった、多数の微弱な分子内相互作用が絶妙なバランスの上に成り立っています 2。
タンパク質の立体構造は静的なものではなく、機能発現のために動的に変化します 3。しかし、その安定性は非常に微妙であり、わずかなエネルギー差によって保たれています 4。この繊細なバランスが崩れると、タンパク質は本来の機能を失うだけでなく、時として深刻な病態を引き起こす原因となります。
タンパク質の異常な凝集とは何か?
細胞は常に様々なストレス(熱、pHの変化、酸化ストレス、機械的ストレスなど)に晒されています。これらのストレスは、タンパク質の安定性を損ない、ネイティブ構造を維持できなくさせることがあります。その結果、タンパク質は部分的に折り畳みがほどけた(アンフォールドした)状態になったり、本来とは異なる異常な立体構造(ミスフォールド)をとったりします 2。
このような異常構造をとったタンパク質では、通常はタンパク質の内部に埋もれている疎水性のアミノ酸残基が分子表面に露出しやすくなります。これらの露出した疎水性領域は「ホットスポット」と呼ばれ、タンパク質同士が互いに引き寄せ合い、結合する強い駆動力となります 2。このメカニズム、すなわち不安定化から異常構造形成、そしてホットスポットの露出を経て自己集合に至る一連の流れが、タンパク質凝集の基本的な引き金と考えられます 2。
異常構造を持つタンパク質分子が、露出したホットスポットなどを介して非共有結合的に強く相互作用し、次々と集まってより大きな集合体(凝集体、アグリゲート)を形成するプロセスが「タンパク質凝集」です 2。この凝集プロセスは多くの場合、不可逆的であり、一度形成された凝集体は非常に安定で分解されにくい特徴を持ちます 2。
凝集が引き起こす病気(特にアルツハイマー病、パーキンソン病など)
タンパク質の異常な凝集と蓄積は、多くの難治性疾患、特に神経変性疾患の病態に深く関与しています。アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、プリオン病(狂牛病など)などがその代表例です 1。
これらの疾患では、それぞれ特定のタンパク質が凝集の主役となります。例えば、ADではアミロイドβ(Aβ)ペプチドとタウタンパク質が 7、PDやレビー小体型認知症(DLB)ではα-シヌクレインが 11、脳内に異常な凝集体として蓄積します。
これらの凝集体、特に凝集過程の初期段階で形成される比較的小さな可溶性の凝集体(オリゴマー)は、神経細胞に対して強い毒性を持つと考えられています 9。これらの毒性オリゴマーが神経細胞の機能障害(シナプス機能の低下など)や細胞死を引き起こし、疾患の発症や進行に中心的な役割を果たしている可能性が強く示唆されています 11。実際、疾患の重症度と脳内の凝集体量との間には相関が見られることが報告されています 10。これは、凝集が単なる細胞の「ゴミ」の蓄積ではなく、特定の凝集体が能動的に病態を引き起こすプロセスであることを示唆しており、治療戦略においては、単に凝集物を除去するだけでなく、毒性の高い特定の凝集形態を標的とすることの重要性を浮き彫りにします 9。
私たちの細胞内には、プロテアソームやリソソーム(オートファジー)といった、異常なタンパク質や凝集体を分解・除去するための精巧な品質管理システムが存在します 10。しかし、加齢や遺伝的要因、環境要因などによって凝集体の産生が過剰になったり、除去能力が低下したりすると、これらのシステムが追いつかなくなり、凝集体が蓄積して病態が進行すると考えられています 10。
なお、タンパク質の凝集は神経変性疾患に限った問題ではありません。抗体医薬などのバイオ医薬品(タンパク質製剤)においても、製造工程や保管中に凝集が起こることがあります。凝集したバイオ医薬品は、本来の薬効を失うだけでなく、体内で予期せぬ免疫応答(免疫原性)を引き起こし、有効性の低下や重篤な副作用につながるリスクがあるため、その品質管理は極めて重要です 2。
2. 抗体とは?:体の防御システムと標的認識
抗体の基本的な構造と機能
抗体は、私たちの体を細菌やウイルスなどの外敵から守る免疫システムにおいて中心的な役割を担う分子です。免疫グロブリン(Immunoglobulin, Ig)とも呼ばれ、主に血液や体液中に存在し、Bリンパ球(B細胞)によって産生・分泌される糖タンパク質です 30。
抗体の最も基本的な構造は、アルファベットの「Y」の字に似た形をしています。このY字型のユニットは、4本のポリペプチド鎖、すなわち2本の同一な重鎖(Heavy chain, H鎖)と2本の同一な軽鎖(Light chain, L鎖)から構成されています 30。重鎖と軽鎖はジスルフィド結合(S-S結合)によって強固に連結されています 31。
Y字の二股に分かれた腕の先端部分(Fab領域:Fragment, antigen-binding)には、抗原結合部位と呼ばれる特別な領域が存在します。この部位のアミノ酸配列は抗体ごとに非常に多様性に富んでおり(可変領域)、特定の抗原(異物)の特定の部分(エピトープ)を鍵と鍵穴のように精密に認識し、特異的に結合する能力を持ちます 30。一方、Y字の根本部分(Fc領域:Fragment, crystallizable)は、同じクラスの抗体間ではアミノ酸配列が比較的よく似ており(定常領域)、マクロファージなどの免疫細胞表面にあるFc受容体に結合したり、補体系を活性化したりすることで、抗原を排除するための様々な免疫応答を引き起こす役割を担います 30。
抗原とエピトープ:抗体は何を認識するのか?
抗体が認識して結合する対象となる分子を「抗原」と呼びます。抗原となり得るのは、細菌やウイルスの表面にあるタンパク質や糖、毒素など、生体にとって異物とみなされる様々な物質です 32。
抗体は抗原分子全体に結合するわけではなく、抗原表面にあるごく一部の特定の構造を認識します。この抗体が直接認識し結合する抗原上の部位を「エピトープ」または「抗原決定基」と呼びます 32。エピトープは通常、数個(1~6個)の糖鎖や、数個(5~8個)のアミノ酸残基から構成される小さな領域です 32。
エピトープには大きく分けて二つのタイプがあります 32。一つは、抗原タンパク質のアミノ酸配列が直線的に連なった部分を認識する「線状エピトープ(連続エピトープ)」です。もう一つは、タンパク質が正しく折り畳まれて三次元的な立体構造をとった結果、アミノ酸配列上では離れた位置にある残基が空間的に近接して形成される特定の「形」を認識する「構造的エピトープ(不連続エピトープ、コンフォメーショナルエピトープ)」です。
通常の抗体(配列を認識)と構造特異的抗体の違い
従来の抗体研究や応用において、多くの抗体は特定の線状エピトープを認識するように作製、あるいは選択されてきました。これらの抗体は、ターゲットとなるタンパク質のアミノ酸配列の一部を認識します。
これに対して、「構造特異的抗体(Conformation-specific antibody)」は、タンパク質のアミノ酸配列そのものではなく、タンパク質がとる特定の立体構造、すなわち「形」を認識する抗体です 7。これは、たとえ同じアミノ酸配列を持つタンパク質であっても、その折り畳まれ方や状態(例えば、正常な構造か、異常な構造か、凝集しているか)が異なれば、構造特異的抗体はそれらを区別して認識できる可能性があることを意味します。この「形」を見分ける能力こそが、構造特異的抗体の最も重要な特徴であり、タンパク質の構造変化が病態に関わる疾患の研究や診断、治療において、極めて重要な意味を持つことになります 7。
また、抗体の構造がFab領域(抗原認識)とFc領域(機能発現)に分かれていることは、抗体医薬の設計において重要な基盤を提供します。例えば、特定の抗原に結合するFab領域の能力はそのままに、Fc領域を改変することで、免疫細胞の活性化などのエフェクター機能を調節したり(例:副作用の低減)、抗体の体内での寿命を制御したり、あるいはFc領域に結合する特定の分子(プロテインAやプロテインGなど)を利用して抗体を効率的に精製したりすることが可能になります 28。さらに、Fc領域を介した特定の受容体との相互作用を利用して、通常は抗体が通過しにくい血液脳関門を通過させる技術なども開発されています 34。この構造的なモジュール性が、抗体という分子の多様な応用を可能にしているのです。
3. 構造特異的抗体:タンパク質の「形」を見分ける抗体
定義とメカニズム:特定の立体構造(コンフォメーション)を認識する仕組み
構造特異的抗体とは、前述の通り、タンパク質のアミノ酸の一次配列(線状エピトープ)ではなく、タンパク質がとる特定の三次元的な折り畳まれ方、すなわち立体構造(コンフォメーション)を特異的に認識する抗体の総称です 7。同じアミノ酸配列を持つタンパク質でも、正常な機能を持つ状態、異常な折り畳み(ミスフォールド)状態、あるいは凝集してオリゴマーやフィブリルといった構造を形成した状態など、様々なコンフォメーションを取り得ます。構造特異的抗体は、これらの異なる「形」の違いを識別し、特定の形にのみ結合する能力を持ちます。
その認識メカニズムは、ターゲットとなるタンパク質が特定のコンフォメーションをとった際に、その表面に形成されるユニークな構造的エピトープへの結合に基づいています 7。例えば、アミロイド線維に特徴的なβシート構造の特定の空間配置や、オリゴマー状態でのみ露出する表面の凹凸などが、構造特異的抗体の標的となり得ます。多くの場合、これらの構造的エピトープは、正常な単量体(モノマー)の状態ではタンパク質の内部に埋もれていたり、形成されていなかったりするため、抗体はアクセスできません 33。これにより、構造特異的抗体は、正常なタンパク質と異常なタンパク質、あるいは異なる凝集状態を区別することが可能になります。
なぜ構造特異性が重要なのか?(正常型 vs 異常型、凝集過程の異なる段階)
タンパク質のコンフォメーション異常は、多くの疾患、特に神経変性疾患の根源に関わっています。ADにおけるAβやタウ、PDにおけるα-シヌクレインのように、特定のタンパク質が異常なコンフォメーションをとって凝集することが、病態の引き金になると考えられています。
重要なのは、凝集過程で出現する様々な構造体が、それぞれ異なる生物学的活性や毒性を持つ可能性があるという点です。例えば、凝集初期の可溶性オリゴマーは強い神経毒性を示す一方で、最終的な不溶性のフィブリル(アミロイド斑など)の毒性は比較的低い、あるいは異なるメカニズムで毒性を発揮する可能性が指摘されています 7。
構造特異的抗体は、このような凝集過程における異なる段階(モノマー、オリゴマー、フィブリルなど)や、正常型と異常型のコンフォメーションを精密に区別できるため、極めて有用です 7。この「選択性」こそが、構造特異的抗体の最大の価値と言えます。特定の病的なコンフォメーション(例えば、最も毒性の高いオリゴマー種)のみを標的とすることができれば、正常な機能を持つタンパク質には影響を与えずに、病気の原因を選択的に除去したり、その毒性を中和したりする治療戦略が可能になります 7。これにより、治療効果を高めつつ、副作用を最小限に抑えることが期待できます。
また、診断の観点からも、特定の病的コンフォメーションを検出できる構造特異的抗体は、疾患の早期発見や進行度のモニタリング、治療効果の判定に役立つバイオマーカーとしての応用が期待されています 7。
さらに、構造特異的抗体は、基礎研究においても強力なツールとなります。タンパク質がどのように凝集していくのか、その過程でどのような中間構造が形成され、それぞれの構造がどのような性質(毒性など)を持つのか、といった凝集メカニズムの詳細を解明するために、特定の構造状態を「目印」として検出できる構造特異的抗体は不可欠です 7。これにより、疾患の根本的なメカニズムの理解が深まり、新たな治療標的の発見につながる可能性があります。
4. オリゴマーとフィブリル:凝集過程の異なる顔
タンパク質凝集の段階:モノマー、オリゴマー、プロトフィブリル、フィブリル
タンパク質の凝集は、多くの場合、一足飛びに最終的な凝集体ができるわけではなく、複数の段階を経て進行する複雑なプロセスです。まず、正常な機能を持つ単量体(モノマー)タンパク質が、何らかのきっかけで構造的な不安定化を起こし、部分的に折り畳みがほどけたり、異常な構造をとったりします 2。
次に、これらの異常構造を持つモノマーが少数(数個~数十個程度)集まり、比較的小さな集合体である「オリゴマー」を形成します 3。オリゴマーは、凝集過程の中間体であり、多くはまだ水に溶ける可溶性の状態です。
オリゴマーは、さらに成長・構造変化していく過程で、「プロトフィブリル」と呼ばれる、より大きく細長い線維状の前駆体構造を形成することがあります 23。プロトフィブリルもまだ可溶性の場合がありますが、オリゴマーよりもβシート構造(タンパク質の二次構造の一種)が豊富になっていることが多いとされます 38。
最終的に、これらのオリゴマーやプロトフィブリルがさらに多数集合し、構造的に安定なβシート構造が積み重なった、規則正しい線維状の構造体である「フィブリル」(アミロイド線維とも呼ばれる)が形成されます 7。フィブリルは一般に不溶性であり、組織中に沈着してADにおける老人斑や神経原線維変化、PDにおけるレビー小体といった、疾患に特徴的な病理構造物を形成します。
オリゴマーとフィブリルの構造的・毒性の違い
オリゴマーとフィブリルは、凝集過程における異なる段階の産物であり、その構造や性質には大きな違いがあります。
- オリゴマー:
- 構造: 一般に可溶性で、サイズは比較的小さい(数量体~数10量体程度)。球状、リング状、短い線維状など、非常に多様な形態をとることが知られており、構造的に不均一(ヘテロジニアス)な集団であることが多い 7。構造が不安定で、一過的に出現しては消えるものもある 9。フィブリルと比較して、βシート構造の含有量が少ない場合もある 11。
- 毒性: 多くの研究から、神経細胞に対して強い毒性を持つ可能性が指摘されている 9。シナプス機能の障害、神経伝達の阻害、炎症反応の誘導、細胞膜の損傷などを引き起こすと考えられている 11。
- フィブリル:
- 構造: 一般に不溶性で、サイズは大きい。特徴的なクロスβ構造(βシートが線維軸に対して垂直に積み重なった構造)を持ち、非常に安定で規則正しい線維状の構造体である 23。
- 毒性: かつてはフィブリルが主な毒性種と考えられていたが、現在ではオリゴマーほどの直接的な細胞毒性は持たない、あるいは異なるメカニズム(物理的な圧迫、慢性的な炎症反応の惹起など)で病態に関与する可能性が考えられている 11。むしろ、毒性の高いオリゴマーを隔離・貯蔵する「貯蔵庫」としての役割を果たし、ある意味で保護的に働いている可能性も議論されている 23。
どちらがより病態に関与するか?(オリゴマー毒性仮説)
ADなどの神経変性疾患において、最終的に脳内に大量に蓄積するのは不溶性のフィブリル(老人斑や神経原線維変化)です。そのため、長らくこれらのフィブリルが神経細胞死や認知機能低下の主犯であると考えられてきました(アミロイド仮説など)。
しかし、近年の研究の進展により、この考え方に修正が加えられています。AD患者の脳では、老人斑の量と認知機能低下の程度が必ずしも強く相関しないのに対し、脳内の可溶性Aβオリゴマーの量は認知機能障害とより密接に関連していることが示唆されています 23。また、実験的にも、フィブリルよりもオリゴマーの方が強い神経毒性を示すという証拠が積み重ねられています 9。
これらの知見から、疾患の引き金となり、神経機能障害や細胞死を直接的に引き起こす主たる毒性種は、最終産物のフィブリルではなく、その前駆体である可溶性のオリゴマーであるとする「オリゴマー仮説」が提唱され、現在、多くの研究者に支持されています 9。この仮説は、疾患研究や治療薬開発の方向性に大きな影響を与えています。すなわち、治療標的として、最終的なフィブリルを除去するだけでなく、あるいはそれ以上に、毒性の高いオリゴマーの形成を抑制したり、オリゴマーを選択的に除去・中和したりすることの重要性が認識されるようになったのです。この考え方の転換は、神経変性疾患の理解と治療戦略における大きな進歩と言えます 11。
ただし、オリゴマーと一口に言っても、そのサイズ、構造、毒性は非常に多様であり 7、どのオリゴマー種が最も病態に関与しているのか、オリゴマーとフィブリルの正確な関係性(例えば、オリゴマーがフィブリル形成の核となるのか、あるいはフィブリルから毒性オリゴマーが解離してくるのか)など、まだ解明されていない点も多く残されています 11。凝集は静的な蓄積ではなく、モノマー、オリゴマー、フィブリル間を移行しうる動的なプロセスであり 3、この複雑な動態を理解することが、効果的な治療介入のタイミングや標的を選択する上で重要となります。このオリゴマーの不均一性と動態の複雑さが、研究や治療薬開発を難しくしている一因であり、特定の毒性の高いオリゴマー種を正確に同定し、標的とするための精密なツール(構造特異的抗体など)の開発が求められています 7。
5. オリゴマー/フィブリル特異的抗体の存在と実例
これらの特異的抗体は存在するのか?
タンパク質凝集体の特定の立体構造、すなわちオリゴマーやフィブリルといった「形」を特異的に認識し、他の形態(正常なモノマーや異なる凝集体)とは区別して結合する抗体は、実際に存在し、研究開発が進められています 7。これらの抗体の存在は、タンパク質の構造的多様性を標的とする治療戦略や診断法の開発が可能であることを示しており、神経変性疾患などの克服に向けた大きな希望となっています。
実例:A11抗体、OC抗体、KW1、日本の研究例など
構造特異的抗体の中でも、特にオリゴマーやフィブリルを認識する抗体について、いくつかの代表的な例が報告されています。
- A11抗体: ウサギ由来のポリクローナル抗体(複数のB細胞クローンが産生する抗体の混合物)で、Aβ、α-シヌクレイン、プリオンタンパク質など、様々な種類のアミロイド形成タンパク質が作る「プレフィブリラーオリゴマー」(フィブリル形成前の中間段階のオリゴマー)に共通して存在する構造的エピトープを認識します。重要な特徴は、正常なモノマーや最終産物のフィブリルとは反応しない点です。この抗体は、オリゴマーが種々の疾患に関与することを示す上で重要なツールとなりました 23。
- OC抗体: A11と同様にウサギ由来のポリクローナル抗体ですが、こちらはAβフィブリル、およびフィブリル様の構造を持つ可溶性のオリゴマー(フィブリラーオリゴマー)に共通する構造的エピトープを認識します。A11が認識するプレフィブリラーオリゴマーやモノマーとは反応しません。A11とOCは、互いに異なる、重複しない構造エピトープを認識しており、オリゴマーにも構造的に異なる種類(プレフィブリラー型とフィブリラー型)が存在することを示唆しました 23。
- KW1: Aβ40オリゴマーに選択的に結合するよう、ファージディスプレイ技術を用いて人工的に作製されたラクダ科抗体の可変領域フラグメント(VHH、ナノボディとも呼ばれる)です。Aβオリゴマー表面の特定の疎水性・芳香族性アミノ酸残基(Val18-Phe19-Phe20付近)を含む構造を認識し、フィブリルやモノマーとは結合しません。オリゴマー構造の解析や、オリゴマー形成阻害への応用が期待されています 42。
- その他の抗体:
- 配列・構造特異的抗体: 特定のアミノ酸配列(例:Aβの29-36番)がオリゴマー状態でとる特定の構造を認識するように合理的に設計された抗体(例:DesAb-Aβ29–36)も開発されています 9。
- Gammabody: 標的タンパク質の凝集に関与する短いペプチド断片を、別の抗体の抗原結合部位(CDR)に移植(グラフト)した人工抗体です。移植されたペプチドが、凝集体中の同じペプチド配列と相互作用(ホモティピック相互作用)することで、配列特異的かつ構造特異的な認識を実現します 8。
- 治療用抗体: AD治療薬として開発されたレカネマブ(Aβプロトフィブリル特異的)、ドナネマブ(ピログルタミル化Aβプラーク特異的)、アデュカヌマブ(Aβ凝集体特異的)なども、広義の構造特異的抗体と言えます 12。
- 特定のオリゴマー種を標的とする抗体: 特定のサイズ(例:56kDa Aβオリゴマー 24)や、特定の毒性構造を持つオリゴマーを標的とする抗体(例:KHK6640 55, ACU193 41)の開発も進められています。
どのようにして区別するのか?(認識エピトープの違い、開発戦略)
オリゴマーとフィブリル、あるいはモノマーとオリゴマーを特異的に区別する抗体は、どのようにして作られるのでしょうか。そこには、認識するエピトープの違いと、それを標的とするための巧妙な開発戦略があります。
- エピトープの違いを利用:
- 隠れエピトープ (Cryptic Epitope): オリゴマー状態では表面に露出しているが、フィブリルが形成されるとその内部に埋もれてしまうようなアミノ酸配列や構造を標的とします。これにより、フィブリルには結合せず、オリゴマーに特異的な抗体を得ることができます 37。
- 構造特異的エピトープ: オリゴマーやフィブリルが形成される際に新たに生じる、あるいは安定化される特有の立体構造(例:特定のβシートの曲がり角、ループ構造、表面の電荷分布など)を認識します。A11とOCが異なる構造を認識するように、オリゴマーとフィブリルでは異なる構造的エピトープが存在します 23。
- 開発戦略:
- 抗原の選択と調製: 標的とする特定の凝集状態(オリゴマーまたはフィブリル)を、in vitroで調製し、安定化させたものを抗原として動物に免疫したり、選択(スクリーニング)に用いたりします。時には、凝集構造を模倣した合成ペプチドを用いることもあります 33。
- ディスプレイ技術と選択: ファージディスプレイや酵母ディスプレイといった技術を用いて、膨大な種類の抗体(あるいは抗体フラグメント)ライブラリを作製します。このライブラリの中から、標的とする凝集体(例:オリゴマー)には強く結合し(ポジティブセレクション)、標的としない形態(例:モノマーやフィブリル)には結合しない(ネガティブセレクション)抗体を効率的に選び出すことができます 7。
- アビディティ(結合力)の利用: オリゴマーは通常、同じエピトープが複数存在する多価抗原です。一方、モノマーは単一のエピトープしか持ちません。抗体(特にIgGなど二つの抗原結合部位を持つ二価抗体)は、多価抗原であるオリゴマーに対しては、二つの結合部位が同時に結合することで、モノマーに対する結合よりもはるかに強い結合力(アビディティ)を示します。この結合力の差を利用して、適切な濃度条件下でオリゴマーを選択的に検出したり、結合させたりすることが可能です 7。
- 構造模倣・合理的設計: 標的タンパク質の凝集に重要とされるアミノ酸配列(モチーフ)を、別の安定な抗体フレームワークの抗原結合部位(CDR)に移植(グラフト)します。この人工抗体(Gammabodyなど)は、移植されたモチーフが、凝集体中の同じモチーフと相互作用(ホモティピック相互作用)することで、配列特異的かつ構造特異的に結合すると考えられています 8。さらに進んで、標的となる凝集体の構造情報に基づいて、結合に有利な相補的な配列や構造を計算機的に設計し、抗体に取り込むアプローチ(合理的設計)も行われています 9。
これらの多様な戦略は、標的とする凝集体の不安定さや不均一性といった課題を克服し、目的とする特異性を持つ抗体を得るために、状況に応じて使い分けられています 7。
日本の研究例(例:11A1, 24B3抗体など)
日本国内の研究機関も、構造特異的抗体の開発において世界的に注目される成果を上げています。
- 毒性ターン認識抗体 (11A1, 24B3): 京都大学の入江教授らのグループは、Aβ42ペプチドが凝集して毒性を発揮する際に、その中央部分(グルタミン酸22番、アスパラギン酸23番付近)で特定の「折れ曲がり構造(毒性ターン)」をとることが重要であるという「毒性配座理論」を提唱しました 57。そして、この毒性ターン構造を安定化させたペプチドを抗原として用いることで、毒性ターン構造を持つAβオリゴマーを特異的に認識するモノクローナル抗体「11A1」および「24B3」の開発に成功しました 57。これらの抗体は、AD患者の脳組織において、従来の抗体では検出が困難であった細胞内に存在するAβ凝集体や、特定のオリゴマー種(11A1は主に3量体を認識)を検出できることが示されています 57。特に24B3抗体は、毒性の高いオリゴマーを選択的に認識する能力が高いとされ 57、これを用いた高感度ELISA法を開発し、脳脊髄液中の毒性オリゴマーを測定することで、ADの超早期診断を目指す研究が進められています 57。最近では、毒性ターン構造を分子内ジスルフィド結合で固定化したペプチドを抗原とし、X線共結晶構造解析によって毒性ターン認識メカニズムが解明された新規抗体(TxCo-1)も開発されています 58。
- 血液脳関門通過型抗体: 東京医科歯科大学の横田教授らのグループは、Aβオリゴマーに特異的な新規抗体の断片化抗体を開発し、さらにそれを独自開発の「スマートナノマシン」技術と組み合わせることで、血液脳関門(BBB)を効率的に通過させて脳内に送達する研究を進めています 36。この技術により、末梢投与でも十分な量の抗体を脳内に届け、副作用を抑えつつ治療効果を高めることが期待されています。
- タウオリゴマー抗体: 学習院大学の高島教授らのグループは、ADなどで見られるタウタンパク質の凝集体のうち、特に顆粒状のタウオリゴマーなどを高感度に認識する新規モノクローナル抗体「2D6-2C6」を開発しました 65。この抗体は、AD脳における初期病変(プレタングル)や神経原線維変化を効果的に染色することが示されており、タウオパチーの診断や研究に貢献することが期待されます。
これらの例は、日本の研究者が独自の視点や技術に基づき、構造特異的抗体という分野で世界的に重要な貢献を果たしていることを示しています 36。
表1:代表的な構造特異的抗体の例
抗体名 (Antibody Name) | 標的タンパク質 (Target Protein) | 認識する構造 (Recognized Conformation) | 開発手法/特徴 (Development Method/Feature) | 主な用途/知見 (Main Application/Finding) | 関連文献 (Relevant Snippets) |
A11 | Aβ, α-syn, etc. | プレフィブリラーオリゴマー (Prefibrillar Oligomer) | ポリクローナル (ウサギ), 共通エピトープ | 研究ツール, バイオマーカー | 23 |
OC | Aβ, IAPP, etc. | フィブリル & フィブリラーオリゴマー (Fibril & Fibrillar Oligomer) | ポリクローナル (ウサギ), 共通エピトープ | 研究ツール, バイオマーカー | 23 |
KW1 | Aβ40 | オリゴマー (疎水性モチーフ) (Oligomer (hydrophobic motif)) | 合成ラクダ科VHHフラグメント | 研究ツール | 42 |
11A1 | Aβ42 | 毒性オリゴマー (3量体, 毒性ターン) (Toxic Oligomer (Trimer, Toxic Turn)) | モノクローナル (マウス, E22P抗原) | 研究ツール, 診断応用 (日本) | 57 |
24B3 | Aβ42 | 毒性オリゴマー (毒性ターン) (Toxic Oligomer (Toxic Turn)) | モノクローナル (マウス, E22P抗原) | 研究ツール, 診断応用 (ELISA) (日本) | 57 |
レカネマブ (Lecanemab, Leqembi) | Aβ | プロトフィブリル (Protofibril) | ヒト化モノクローナル抗体 | AD治療薬 (承認済) | 12 |
ドナネマブ (Donanemab) | Aβ | プラーク (ピログルタミル化Aβ) (Plaque (Pyroglutamate Aβ)) | ヒト化モノクローナル抗体 | AD治療薬 (第3相成功) | 12 |
アデュカヌマブ (Aducanumab, Aduhelm) | Aβ | 凝集体 (オリゴマー/フィブリル) (Aggregated forms (Oligomer/Fibril)) | ヒトモノクローナル抗体 | AD治療薬 (迅速承認後開発中止) | 12 |
この表は、本文中で議論された主要な構造特異的抗体の情報をまとめたものです。標的、認識構造、開発背景、用途などを比較することで、これらの抗体がどのように異なり、研究や医療においてどのような役割を果たしているかを具体的に理解する助けとなります。
6. 構造特異的抗体の応用:診断と治療への期待
構造特異的抗体、特にオリゴマーやフィブリルといった病的な凝集体を選択的に認識する能力は、神経変性疾患をはじめとするタンパク質凝集関連疾患の診断と治療に新たな道を切り開くものとして、大きな期待が寄せられています。
診断への応用:バイオマーカーとしての可能性(血液、脳脊髄液)、画像診断(PET)
疾患の早期発見と正確な診断は、効果的な治療介入を行う上で極めて重要です。構造特異的抗体は、体液中のバイオマーカー測定や脳画像診断において、その特異性を活かした応用が進められています。
- 体液バイオマーカー:
- 脳脊髄液 (CSF): 脳と直接接しているCSFは、脳内で起こっている生化学的変化を反映する「窓」と考えられています 16。ADでは、CSF中のAβ42濃度が低下し(脳内への沈着を反映)、神経細胞の損傷を示す総タウ(t-tau)およびリン酸化タウ(p-tau)濃度が上昇することが、確立されたバイオマーカーとなっています 16。一方、PDやDLBなどのα-シヌクレインオパチーでは、CSF中の総α-シヌクレイン(t-α-syn)濃度が健常者やAD患者と比較して低下する傾向があり、逆にオリゴマー型α-シヌクレイン(o-α-syn)濃度は上昇する可能性が示唆されています 21。
- 血液(血漿・血清): CSF検査は腰椎穿刺が必要であり侵襲性が高いのに対し、血液検査は低侵襲で繰り返し実施できるため、より実用的なバイオマーカー開発が期待されています 16。近年、ELISA(酵素免疫測定法)やSimoa(単一分子アレイ)といった超高感度測定技術と、オリゴマーなどの特定の構造を認識する構造特異的抗体を組み合わせることで、これまで検出が困難であった血液中の微量な病的凝集体(Aβオリゴマー、α-synオリゴマーなど)を定量化し、ADやPDの早期診断、病態進行のモニタリング、さらには異なる疾患の鑑別診断に応用しようとする研究が精力的に進められています 9。例えば、血漿中のAβオリゴマー化傾向を測定する「Multimer Detection System-Oligomeric Amyloid-β (MDS-OAβ)」といった検査法も開発され、臨床での有用性が検証されています 25。これらのバイオマーカー研究は、単に病気の有無を判別するだけでなく、病気の進行段階(例:MDS-OAβはADの進行度によって変動する可能性 73)や、異なる疾患の鑑別(例:ADとDLB/PDにおけるα-syn種の違い 21)、あるいは併存する病理(例:PD患者におけるAβ病理の合併 72)を評価するなど、より精密で多角的な情報を提供することを目指しており、構造特異的抗体がその基盤を支えています。
- 画像診断 (PET):
- 陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography, PET)は、放射性同位体で標識した薬剤(トレーサー)を体内に投与し、その分布を画像化する技術です。
- アミロイドPET: 脳内のアミロイド斑(主にフィブリル)に結合するトレーサー(例:$^{11}$C-PiB, $^{18}$F-florbetapir, $^{18}$F-florbetaben, $^{18}$F-flutemetamol)を用いることで、生きたまま脳内のアミロイド蓄積を可視化できます 67。これはADの診断補助、臨床試験への参加資格の判断、そして後述する抗アミロイド抗体療法の治療効果モニタリングなどに広く用いられています 67。ただし、既存のトレーサーは主に不溶性のフィブリルに結合し、毒性が高いとされる可溶性オリゴマーは直接検出できません 67。
- タウPET: 同様に、脳内のタウ凝集体(神経原線維変化)に結合するトレーサーも開発され、タウ病変の分布や程度の評価に用いられています 79。
- 抗体を用いたPET: 抗体自体をPETトレーサーとして利用できれば、その高い特異性を活かして特定の凝集体構造を画像化できる可能性があります。しかし、抗体は分子サイズが大きいため血液脳関門(BBB)を通過しにくいこと、体内での滞留時間が長く、画像コントラストを得るために半減期の長い放射性同位体が必要となり被曝量が増えることなどが課題です 83。この課題を克服するため、標的(例:Aβ凝集体)に結合する抗体をまず投与し、時間をおいてから、その抗体に特異的に結合する低分子の放射性トレーサーを投与する「プレターゲティング法」などの新しい技術が研究されています 83。また、オリゴマーに結合する低分子リガンドの開発も進められています 68。
治療への応用:抗体医薬の開発(アルツハイマー病治療薬レカネマブ、ドナネマブなど)
構造特異的抗体の最も期待される応用の一つが、疾患の原因となる異常凝集体を直接標的とする治療薬(抗体医薬)の開発です。特に、ADの原因とされるAβ凝集体を標的とする抗体医薬の開発が近年大きく進展しました 12。
- レカネマブ (Lecanemab, 商品名 レケンビ): 日本のエーザイと米国のバイオジェンが共同開発したヒト化モノクローナル抗体です。Aβの中でも、神経毒性が高いと考えられている可溶性の凝集中間体「プロトフィブリル」に選択的に結合する特徴を持ちます 50。大規模な臨床第3相試験(Clarity AD試験)において、早期AD患者(ADによる軽度認知障害または軽度AD)を対象に、プラセボと比較して脳内のアミロイド斑を有意に減少させ、認知機能および日常生活機能の低下を統計学的に有意に抑制する(それぞれ27%, 37%抑制)ことが示されました 12。この結果に基づき、2023年に米国FDAにより正式承認、日本でも厚生労働省により承認され、ADの病態に作用する初めての治療薬の一つとして実用化されました 47。
- ドナネマブ (Donanemab): 米国のイーライリリーが開発したヒト化モノクローナル抗体です。脳内に既に沈着しているアミロイド斑の中でも、N末端が修飾されたピログルタミル化Aβと呼ばれる特定の形態に選択的に結合し、除去を促します 49。臨床第3相試験(TRAILBLAZER-ALZ 2試験)において、早期AD患者を対象に、プラセボと比較してアミロイド斑の顕著な減少と、認知機能・日常生活機能の低下を有意に抑制する(それぞれ最大で35%, 36%抑制)ことが示されました 12。現在、日米欧で承認申請が行われています 49。
- アデュカヌマブ (Aducanumab, 商品名 Aduhelm): 米国バイオジェンが開発したヒトモノクローナル抗体で、Aβの凝集体(オリゴマーおよびフィブリル)に結合します 54。臨床試験において脳内アミロイド斑の用量依存的な減少効果が示されたことに基づき、2021年に米国FDAから迅速承認を受けましたが、認知機能改善効果については臨床試験の結果が一貫せず、専門家の間でも議論がありました 12。その後、検証試験の実施が求められていましたが、2024年に開発・販売が中止されました 54。
これらの抗Aβ抗体に加え、PDやDLBの原因となるα-シヌクレイン凝集体を標的とする抗体(例:Prasinezumab, Cinpanemab)13や、ADや進行性核上性麻痺(PSP)などのタウオパチーの原因となるタウ凝集体を標的とする抗体(例:Semorinemab, Tilavonemab)20も、疾患修飾薬を目指して複数の臨床試験が進められています。
臨床試験の現状と課題
抗体医薬、特に抗Aβ抗体は、AD治療に新たな光をもたらしましたが、まだ多くの課題も残されています。
- 有効性: レカネマブやドナネマブは、早期AD患者において統計学的に有意な認知機能低下の抑制効果を示しましたが、その効果の大きさ(病気の進行を約25~40%遅らせる程度)は限定的であり、病気を完治させたり、進行を完全に止めたりするものではありません 45。より大きな効果を得るためには、治療開始のタイミング(病気がより早期の段階、あるいは発症前からの介入が有効である可能性 49)や、標的とするAβ種のさらなる最適化(例:より毒性の高いオリゴマー種への特異性向上)が重要と考えられます 41。
- 抗タウ・抗α-シヌクレイン抗体: これらを標的とする抗体医薬は、現在のところ、臨床試験で明確な有効性を示すには至っていません 13。タウの場合、細胞外に分泌されるタウを標的とすることの有効性や、どの形態・修飾状態のタウを狙うべきかなど、まだ解明すべき点が多く残されています 92。
- 安全性 (副作用): 抗Aβ抗体療法に特有の副作用として、アミロイド関連画像異常(ARIA)が知られています。これは、脳MRI検査で検出される一過性の脳浮腫(ARIA-E)や微小出血(ARIA-H)であり、多くは無症状ですが、まれに頭痛、錯乱、痙攣などの症状を引き起こすことがあります 12。ARIAの発症リスクは、投与量やAPOE ε4遺伝子の保有状況、既存の脳血管病変などに関連することが分かっており、治療中は定期的なMRIモニタリングと慎重なリスク管理が不可欠です 51。
これらの臨床試験の結果、特に成功例(レカネマブ)と難航・失敗例(アデュカヌマブ、ソラネズマブ、バピネウズマブ、一部の抗タウ抗体)を比較検討すると、標的とする凝集体の種類(プロトフィブリル、プラーク、モノマーなど)やその構造的特異性が、臨床的な有効性に直接影響を与える可能性が強く示唆されます 41。どの「形」の凝集体を、どのタイミングで標的とするかが、治療成功の鍵を握っていると言えるでしょう。
診断技術と治療法の開発は密接に関連しています。バイオマーカーやPETによる診断技術の進歩が、より適切な患者を選択し、治療効果を客観的に評価することを可能にし、それが治療薬開発の成功確率を高めるという好循環が生まれつつあります 16。構造特異的抗体は、この診断と治療の両輪において、中心的な役割を果たしているのです。
7. 今後の展望と課題
構造特異的抗体は、タンパク質凝集が関わる疾患の理解と治療に大きな進歩をもたらしましたが、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、まだ克服すべき課題も多く存在します。今後の研究開発は、より高い特異性、安全性、そして効果的な送達法の確立に向けられています。
より特異性の高い抗体の開発
現状の抗体医薬の有効性が限定的である一因として、標的とする凝集体の種類や構造の選択が最適でない可能性が考えられます。今後は、以下のような、より精密な標的化を目指した抗体の開発が重要となります。
- 特定の毒性オリゴマー種の標的化: オリゴマーは不均一な集団であり、その中でも特に毒性の高い特定の構造を持つ種が存在する可能性があります。これらの真の「悪玉」オリゴマーだけを識別し、結合・中和する抗体を開発できれば、より高い治療効果と安全性が期待できます 7。
- 翻訳後修飾の認識: 凝集タンパク質は、リン酸化、アセチル化、ユビキチン化、切断、ピログルタミル化など、様々な翻訳後修飾を受けていることが多く、これらの修飾が凝集性や毒性に影響を与えることが知られています。特定の修飾を受けた病的なタンパク質のみを認識する抗体も、有望な治療標的となり得ます 20。
- 合理的設計・計算科学の活用: 標的タンパク質の構造情報や、抗体と抗原の相互作用に関する知見に基づいて、特定のエピトープに高い親和性で結合したり、特定の機能(例:受容体への結合を阻害する、あるいは逆に活性化する)を発揮したりするように、抗体の構造を計算機上で設計する「合理的設計」や「de novo設計」といったアプローチも進展しています 9。これにより、従来の手法では作製が困難であった特異性や機能を持つ抗体の創出が期待されます。
副作用(免疫原性、ARIAなど)の克服
抗体医薬の臨床応用における大きな障壁の一つが副作用です。
- 免疫原性: 抗体医薬自体が体内で異物と認識され、それに対する免疫応答(抗薬物抗体、ADA)が誘導されることがあります。ADAが産生されると、薬剤の効果が減弱したり、アレルギー反応やアナフィラキシーといった重篤な副作用を引き起こしたりする可能性があります 6。このリスクを低減するため、マウス由来の抗体をヒトの配列に近づける「ヒト化」や、免疫応答を引き起こしやすい配列を除去する「脱免疫化」といった技術が用いられています 97。特に、複数の標的に結合する二重特異性抗体(BsAb)など、構造が複雑な新しいタイプの抗体では、免疫原性が課題となるケースも報告されており、開発初期からのリスク評価と対策が重要です 98。
- ARIA (アミロイド関連画像異常): 抗Aβ抗体療法で見られる特有の副作用であり、脳浮腫(ARIA-E)や微小出血(ARIA-H)として現れます 12。発症メカニズムは完全には解明されていませんが、抗体によるアミロイド除去プロセスに伴う血管透過性の亢進や炎症反応が関与すると考えられています。リスク因子(APOE遺伝子型など)の特定、投与量の最適化、定期的なMRIモニタリングによる早期発見と適切な対処が重要です 51。また、免疫応答を引き起こすFc領域を持たない抗体フラグメントを用いることで、ARIAのリスクを低減できる可能性も探求されています 36。
- オフターゲット効果: 目的とする標的以外の分子にも抗体が結合してしまう(オフターゲット効果)と、予期せぬ副作用を引き起こす可能性があります。抗体の特異性を高め、オフターゲット結合を最小限に抑えることも、安全性の向上に不可欠です 95。
血液脳関門(BBB)通過技術の開発
脳を標的とする抗体医薬にとって最大の難関の一つが、血液脳関門(Blood-Brain Barrier, BBB)です。BBBは、脳を血液中の有害物質から守るためのバリア機構であり、分子量の大きな抗体のようなタンパク質は、通常ほとんど通過することができません 83。脳内への移行率は、血液中の濃度の0.1%以下とも言われており、十分な薬効を発揮するためには大量の抗体を投与する必要があり、コストや末梢での副作用のリスクを高める要因となっています 102。
この課題を克服するため、様々なBBB通過技術の開発が進められています。
- 受容体介在性トランスサイトーシス (RMT) の利用: BBBを構成する脳血管内皮細胞の表面には、トランスフェリンやインスリンといった特定の分子を脳内に輸送するための受容体が存在します。これらの受容体に結合する部分を抗体に付加することで、受容体を介した輸送経路(トランスサイトーシス)を利用して、抗体を能動的に脳内へ送り込む「シャトル」技術が開発されています 102。例えば、トランスフェリン受容体(TfR1)を標的とするシャトルを用いた抗Aβ抗体は、通常の抗体と比較して脳内への移行効率が大幅に向上し、より低用量でアミロイド除去効果を発揮することが動物実験で示されています 104。
- 集束超音波 (FUS): 体外から特定の脳領域に超音波を集束させて照射し、同時に微小な気泡(マイクロバブル)を血中に注入することで、一時的にBBBの透過性を亢進させる技術です。これにより、通常はBBBを通過できない薬剤(抗体を含む)の脳内への送達効率を高めることができます。脳腫瘍などの治療への応用を目指して臨床試験が進められています 105。
- 経鼻投与: 薬剤を鼻腔内に投与し、嗅神経などを介して直接脳内へ送達する経路を利用する試みも行われています。MIND(Minimally Invasive Nasal Depot)技術などが研究されています 100。
- 抗体の化学修飾: 抗体分子に特定のポリマーなどを化学的に結合させることで、BBB透過性を改善しようとする研究も行われています 101。
これらのBBB通過技術の進展は、脳を標的とする抗体医薬の有効性を飛躍的に高め、より少ない投与量で効果を得られるようにすることで、治療の可能性を大きく広げると期待されます。
個別化医療への応用
神経変性疾患は、同じ診断名であっても、原因となるタンパク質の種類、凝集の程度や形態、遺伝的背景、病気の進行速度などが患者ごとに大きく異なることが知られています。そのため、全ての患者に画一的な治療を行うのではなく、個々の患者の病態をバイオマーカー(血液、CSF、画像)で正確に評価し、その結果に基づいて最適な構造特異的抗体や治療法を選択する「個別化医療(プレシジョン・メディシン)」のアプローチが今後ますます重要になると考えられます 69。
新しいモダリティの登場
従来の IgG 型抗体が持つ限界(サイズが大きい、BBB透過性が低い、免疫原性のリスクなど)を克服するために、抗体フラグメント(Fab, scFvなど)36、ラクダ科動物や軟骨魚類が持つ軽鎖のない抗体由来の単一ドメイン抗体(ナノボディ、VHH、VNAR)17、あるいは核酸から作られる人工的な結合分子(アプタマー)17 など、新しいタイプの分子(モダリティ)の開発も活発に行われています。これらは、サイズが小さい、安定性が高い、特定の構造を認識する能力が高い、大量生産が容易であるなどの利点を持つ可能性があり、構造特異的な標的化のための新たな選択肢として期待されています。計算科学による de novo 設計抗体 95 もこの流れに含まれます。
予防的治療への期待
オリゴマーなどの病的凝集体が、症状が現れるかなり前の段階から脳内で形成され始めている可能性 27、そしてバイオマーカーによって発症前の変化を捉えられる可能性 16、さらに早期の治療介入ほど効果が高い可能性 27 を考えると、将来的には、構造特異的抗体をリスクの高い個人に対して症状が出る前に投与する「予防的治療」や、ごく初期の段階で介入する「超早期治療」が実現するかもしれません。これは、神経変性疾患の克服に向けた究極的な目標の一つと言えるでしょう。
これらの課題と展望を踏まえ、特異性、安全性、そして脳内への送達という、抗体医薬開発における相互に関連する課題 [Insight 16] に対して、基礎研究と臨床応用、そして新しい技術開発を連携させながら、統合的に取り組んでいくことが、今後の進展の鍵となります。
8. まとめ
タンパク質は、そのアミノ酸配列に基づいて特定の立体構造(コンフォメーション)をとることで、生命活動に必須の多様な機能を発揮します。しかし、様々な要因によってこの構造が異常をきたし、タンパク質が凝集してしまうと、アルツハイマー病やパーキンソン病に代表されるような、多くの難治性神経変性疾患の原因となります。
近年、このタンパク質の「形」、すなわちコンフォメーションを特異的に認識する「構造特異的抗体」が注目を集めています。これらの抗体は、正常なタンパク質や、凝集過程における異なる段階(モノマー、オリゴマー、フィブリルなど)を識別するユニークな能力を持っています。特に、神経毒性が高いと考えられているオリゴマー種を選択的に認識し、標的とする抗体は、疾患メカニズムの解明、早期診断のためのバイオマーカー開発、そして病態の進行を抑制する新たな治療薬(抗体医薬)開発において、中心的な役割を担うようになりました。
実際に、Aβプロトフィブリルを標的とするレカネマブや、Aβプラークを標的とするドナネマブといった抗Aβ抗体が、早期アルツハイマー病の進行を抑制する効果を臨床試験で示し、承認あるいは承認申請に至るなど、構造特異的抗体を用いた治療戦略は着実に成果を上げつつあります。また、α-シヌクレインやタウといった他の凝集性タンパク質を標的とする抗体の開発も精力的に進められています。
一方で、臨床効果の更なる向上、ARIAや免疫原性といった副作用の克服、そして抗体を効率的に脳内へ送達するための血液脳関門(BBB)通過技術の開発など、解決すべき課題も依然として多く存在します。
構造特異的抗体は、タンパク質の異常凝集という複雑な生命現象に立ち向かうための強力な武器です。基礎研究から臨床応用まで、様々な分野の研究者が連携し、より特異性が高く、安全で、効果的な抗体とその利用技術を開発していくことで、これまで有効な治療法がなかった神経変性疾患をはじめとする多くの疾患に対する、真に有効な診断法・治療法の確立が期待されます。構造特異的抗体の研究開発は、まさに医学・生命科学のフロンティアであり、その進展が、多くの患者さんとその家族に希望をもたらすことが強く望まれます。
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