bitbucketってどんなツール?使い方、他のサービスとの違い、活用事例について一挙解説

目次

1. はじめに:Bitbucketとは?

ソフトウェア開発の世界では、チームでの効率的な共同作業とソースコードの適切な管理が不可欠です。Bitbucketは、こうした現代の開発ニーズに応えるために設計された、強力なプラットフォームの一つです。

Atlassianが提供する開発チーム向けプラットフォーム

Bitbucketは、オーストラリアに本社を置く大手ソフトウェア企業Atlassian社によって提供されている、Webベースのコードホスティングおよび共同開発プラットフォームです 1。Atlassian社は、プロジェクト管理ツールのJiraや情報共有ツールのConfluenceなど、開発プロセスを支援する多様な製品で世界的に知られています。Bitbucketもこれらのツールと深く連携するように設計されており、単なるソースコードの保管場所にとどまりません 1

その本質は、エンジニア、デザイナー、その他の関係者を含む開発チームが、アイデアの創出からコーディング、テスト、そして最終的なデプロイメントに至るまで、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を通じて協力し合うための統合環境を提供することにあります 4。チームが一丸となってプロジェクトを遂行するための基盤となることを目指しています。

Git/Mercurialリポジトリホスティングとコードコラボレーション

Bitbucketの中核機能は、現代のソフトウェア開発で広く採用されている分散バージョン管理システムであるGit、およびMercurialのリポジトリホスティングです 2。これにより、開発者はソースコードの変更履歴を正確に追跡・管理し、チームメンバー間で安全かつ効率的にコードを共有することが可能になります。

しかし、Bitbucketは単にコードを保管するだけではありません。コードレビューを円滑に進めるためのプルリクエスト機能 2 や、コードの特定行に対してフィードバックを残せるインラインコメント機能 7 など、チーム内でのコラボレーションを促進し、コード品質の向上と知識の共有を支援する機能が豊富に用意されています。

Bitbucketを選ぶ主な理由

数あるコードホスティングサービスの中で、Bitbucketが選ばれる理由には、いくつかの特徴的な強みが挙げられます。

  • Atlassian製品との強力な連携: 特にJiraやTrelloといったAtlassian製のプロジェクト管理ツールを既に利用しているチームにとって、Bitbucketの導入は大きなメリットをもたらします 4。例えば、コミットメッセージやブランチ名にJiraの課題キーを含めるだけで、関連する開発アクティビティがJira課題に自動的にリンクされ、開発の進捗状況と課題の関連性が一目でわかるようになります 6。これにより、開発者はツール間を行き来する手間なく、必要なコンテキストを把握でき、プロジェクト全体のトレーサビリティが大幅に向上します 11。この深い統合は、単に機能が連携するだけでなく、開発ワークフロー全体をシームレスにつなぎ、生産性を高めることを意図しています。Bitbucketは、独立したツールとしてだけでなく、Atlassianスイートの一部として機能することで、その価値を最大化します。
  • 柔軟なデプロイメントオプション: Bitbucketは、Atlassianが管理するクラウド版 (Bitbucket Cloud) に加えて、ユーザー自身のサーバー環境で運用できるオンプレミス版 (Bitbucket Server) や、大規模組織向けのData Center版を提供しています 1。これにより、組織のセキュリティポリシー、コンプライアンス要件、既存のインフラストラクチャに合わせて最適な運用形態を選択できます。(ただし、Server版は新規販売が終了し、サポートも段階的に終了するため、現在はCloud版またはData Center版が主な選択肢となります。)
  • 組み込みCI/CD機能 (Bitbucket Pipelines): Bitbucket Cloudには、Bitbucket Pipelinesと呼ばれる継続的インテグレーション/継続的デリバリー (CI/CD) 機能が組み込まれています 5。これにより、開発者は別途CI/CDツールをセットアップ・管理する手間なく、リポジトリ内で直接、コードのビルド、テスト、デプロイを自動化するパイプラインを定義・実行できます。これは、特にCI/CD導入の初期段階にあるチームにとって、導入のハードルを下げ、迅速なフィードバックループを実現する上で大きな利点となります。

これらの特徴により、Bitbucketは単なるコードリポジトリではなく、Atlassianエコシステムの中核として、開発チームのコラボレーションと生産性を向上させる統合プラットフォームとしての地位を確立しています。

2. Bitbucketの主要機能

Bitbucketは、現代のソフトウェア開発チームが必要とする多様な機能を提供しています。リポジトリ管理からコードレビュー、CI/CD、セキュリティまで、開発ワークフロー全体をサポートする主要な機能を見ていきましょう。

リポジトリ管理とソースコード管理

  • Git/Mercurialサポート: Bitbucketは、分散バージョン管理システムのデファクトスタンダードであるGitと、Mercurialの両方をサポートしており、これらのリポジトリの作成、管理、ホスティングを一元的に行えます 1
  • プロジェクト構成: 複数のリポジトリを「プロジェクト」という単位でグループ化し、整理・管理することが可能です 14。これにより、関連するリポジトリへのアクセスや管理が容易になります。
  • ブランチ管理: 開発者は「ブランチ」と呼ばれる独立した開発ラインを作成し、新機能の開発やバグ修正などを、メインのコードラインに影響を与えることなく安全に進めることができます 6。さらに、特定のブランチに対してアクセス権限を設定することも可能で、リリースブランチなどを保護するのに役立ちます 12
  • コード検索: リポジトリ内はもちろん、プロジェクト横断的にコードを検索できる強力な検索機能が提供されています 3。これにより、必要なコードや過去の変更箇所を迅速に見つけ出すことができます。
  • Git Large File Storage (LFS): デザインファイルやメディアアセットなど、バージョン管理システムが苦手とする大容量ファイルを効率的に扱うためのGit LFSをサポートしています 2。利用可能なストレージ容量は料金プランによって異なります 2
  • コマンドラインインターフェース (CLI): Webインターフェースだけでなく、ターミナルからリポジトリを操作するためのコマンドラインインターフェースも提供されており、熟練した開発者は好みの方法で作業を進められます 7

プルリクエストによる高度なコードレビュー

プルリクエストは、Bitbucketにおけるコードレビューとコラボレーションの中心的な機能であり、単なるコードのマージ依頼以上の役割を果たします 2

  • 差分表示 (Diff View): 変更されたコードの箇所が、追加(緑)、削除(赤)などで視覚的に分かりやすく表示され、レビュワーは変更内容を効率的に把握できます 9
  • インラインコメント: レビュワーは、コードの特定の行に対して直接コメントを残すことができます 7。これにより、具体的で文脈に沿ったフィードバックが可能になります。また、@メンション機能を使って特定のメンバーに通知を送ることもでき 7、コメントに対する絵文字でのリアクションも可能です 15
  • 承認者設定とマージチェック: プルリクエストに対して、特定のレビュワーによる承認を必須とする設定が可能です 6。さらに、「マージチェック」機能を利用すれば、承認が得られているか、関連するビルドが成功しているかなど、事前に定義した条件を満たさない限りコードのマージをブロックできます 2。これらの機能は、コードレビュープロセスを形式的なものから、品質保証とチーム合意形成のための実質的なプロセスへと昇華させます。特に、必須のマージチェックは、組織全体の開発標準やコンプライアンス要件をツールレベルで強制する手段となり、プロセスガバナンスを重視するチームにとって強力な支援となります。
  • タスク作成: レビューコメントから直接修正タスクを作成し、担当者を割り当てることができます 15。これにより、レビューで指摘された事項の追跡と対応漏れ防止に役立ちます。

このように、Bitbucketのプルリクエスト機能群は、コード品質の向上、知識共有の促進、そして開発プロセスの標準化を実現するための、構造化されたコミュニケーションと品質保証のハブとして機能します。

Bitbucket PipelinesによるCI/CDの実現

Bitbucket Pipelinesは、Bitbucket Cloudにネイティブに統合されたCI/CDサービスです 3

  • 組み込みサービス: 外部のCI/CDサーバーを別途構築・管理する必要がなく、Bitbucketプラットフォーム内でCI/CDパイプラインを完結させることができます 13。これは、ツールチェーンを簡素化し、特にCI/CDにこれから取り組むチームにとって導入の障壁を大幅に下げる効果があります 12
  • コードによる構成: パイプラインの定義は、リポジトリ内のYAMLファイル (bitbucket-pipelines.yml) で記述します 6。これにより、パイプライン構成自体もコードと同様にバージョン管理の対象となり、変更履歴の追跡や再現性の確保が容易になります。
  • 自動実行: コードがリポジトリにプッシュされると、定義されたパイプラインが自動的にトリガーされ、ビルド、テスト、デプロイなどのステップが実行されます 6
  • Bitbucket Pipes: 特定の一般的なタスク(例: AWS S3へのデプロイ、Slackへの通知、脆弱性スキャン)を実行するための再利用可能なスクリプト部品が「Pipes」として提供されています 6。これらを利用することで、複雑なパイプラインも比較的容易に構築できます。
  • デプロイメント管理: デプロイメントの状況を追跡し、どのバージョンがどの環境にデプロイされているかを可視化できます 6。プレビュー機能などを活用することで、本番環境へのリリースをより安全かつ確実に行うことができます。
  • リソース制限: 利用可能なビルド時間(分/月)は料金プランによって異なり、チームの利用状況に応じてプランを選択またはアップグレードする必要があります 2

Bitbucket Pipelinesは、コード管理からデプロイまでの一連の流れを同一プラットフォーム上で実現することで、開発者のコンテキストスイッチを減らし、より迅速で信頼性の高いソフトウェアリリースサイクルを支援します。これは、Bitbucketを単なるコード置き場から、開発ライフサイクル全体をサポートするプラットフォームへと高める重要な要素です。

Jira/Trelloとのシームレスな連携

Bitbucketの最も強力な特徴の一つが、同じAtlassianファミリーの製品であるJira Software(課題管理・プロジェクト管理)およびTrello(カンバン方式タスク管理)との深い連携機能です 4

  • 課題とのリンク: 開発者は、コミットメッセージ、ブランチ名、プルリクエストの説明文などにJiraの課題キー(例: PROJECT-123)を含めるだけで、その開発アクティビティを関連するJira課題に自動的にリンクさせることができます 6
  • 双方向の可視性: リンクされた情報は双方向で表示されます。Jira課題画面からは、関連するコミット、ブランチ、プルリクエストの状況(オープン、マージ済みなど)を直接確認でき 7、逆にBitbucketのコミットやプルリクエスト画面からは、それがどのJira課題に対応するものなのかを簡単に把握できます。これにより、特定のコード変更が「なぜ」行われたのか(どの機能要求やバグ修正に対応するのか)という背景情報の追跡が容易になり、開発の文脈理解が深まります。
  • ステータスの自動更新: プルリクエストが作成されたり、マージされたりといったBitbucket上でのアクションをトリガーとして、関連するJira課題のステータス(例: 「進行中」から「レビュー中」へ)を自動的に更新するワークフローを設定できます 6。これにより、手動でのステータス更新の手間が省け、課題の状況と実際の開発状況との間の同期が保たれます。
  • Trello連携: Trelloのカードに対しても同様に、ブランチ、コミット、プルリクエストを関連付けることができ、より軽量なタスク管理とコードを結びつけることが可能です 2

この緊密な連携は、プロジェクト管理とソースコード管理の間に存在する壁を取り払い、開発者とプロジェクトマネージャー、あるいはチーム全体に対して、作業の進捗状況と背景情報を一元的に可視化します 7。結果として、コミュニケーションが円滑になり、開発プロセスの透明性とトレーサビリティが大幅に向上します。これは、特にJiraをプロジェクト管理の中心に据えているチームにとって、他のコードホスティングサービスに対するBitbucketの明確な優位性となります。

セキュリティと権限管理

Bitbucketは、企業やチームが安心してコードを管理・運用できるよう、多層的なセキュリティ機能と詳細な権限管理機能を提供しています。

  • アクセス制御: リポジトリはデフォルトで非公開(プライベート)に設定でき、意図しない情報漏洩を防ぎます。無料プランでもプライベートリポジトリを無制限に作成できますが、アクセスできるユーザー数には制限があります 2
  • 詳細な権限設定: アクセス権限は、ワークスペース全体、プロジェクト単位、リポジトリ単位、さらには特定のブランチに対しても細かく設定できます 7。ユーザーやグループに対して、「読み取り」、「書き込み」、「管理者」といった役割を割り当てることで、職務に応じた適切なアクセスレベルを付与し、「最小権限の原則」を適用することが可能です 8
  • 2段階認証 (2FA): パスワードだけでなく、追加の認証要素(例: モバイルアプリのコード)を要求することで、アカウントのセキュリティを大幅に強化します 3。個人レベルでの設定はもちろん、組織管理者が全ユーザーに対して2FAの使用を強制することも可能で(Premiumプラン)2、セキュリティポリシーの徹底を図れます。
  • IPホワイトリスト: Premiumプランでは、あらかじめ登録された特定のIPアドレスからのみBitbucketへのアクセスを許可する設定が可能です 2。これにより、不正な場所からのアクセスをネットワークレベルで遮断できます。
  • 監査ログ: 誰がいつ、どのような操作(リポジトリ作成、権限変更、プッシュなど)を行ったかの記録が監査ログとして残ります 7。これにより、セキュリティインシデント発生時の追跡調査や、コンプライアンス要件への対応が可能になります。
  • 脆弱性スキャン連携: Bitbucket Pipelinesなどを通じて、Snykのようなサードパーティ製のセキュリティスキャンツールと連携し、開発プロセス中にコードの脆弱性を継続的に検出し、修正を促す仕組みを構築できます 12
  • その他の高度な機能: コミッター(コードをコミットした人)の身元を確認する機能 15 や、地理的に分散したチームのパフォーマンスを向上させるためのスマートミラーリング機能 2 など、特に大規模な組織やエンタープライズ環境での利用を想定した機能も提供されています。

これらの包括的なセキュリティ機能群は、Bitbucketが単なるコード置き場ではなく、企業の重要な知的資産であるソースコードを安全に、かつ統制の取れた方法で管理・運用するためのプラットフォームであることを示しています。特にPremiumプランで提供される高度なセキュリティ機能は、厳格なセキュリティやコンプライアンス要件を持つ組織にとって、Bitbucketを選択する強い動機となり得ます。

その他の機能

上記以外にも、Bitbucketは開発チームの生産性を高めるための便利な機能を備えています。

  • Wiki: 各リポジトリには、プロジェクトのドキュメント、仕様、議事録、メモなどを記録・共有するためのWiki機能が付属しています 2。Markdown形式で記述できます。
  • Issue Tracker: Bitbucket自体にも、リポジトリごとにシンプルな課題追跡機能が組み込まれています 2。バグ報告や機能要望などを管理できますが、多くの場合、より高機能なJiraとの連携が利用されます。
  • Snippets: ちょっとしたコード片や設定ファイル、メモなどを、リポジトリとは独立して保存し、チームメンバーや外部と簡単に共有できる機能です 3
  • 静的サイトホスティング: リポジトリ内の特定のブランチにあるHTML、CSS、JavaScriptファイルなどを、bitbucket.io というドメインで静的なWebサイトとして公開できます 3。プロジェクトのドキュメントサイトや簡単なデモサイトの公開などに利用できます。
  • REST APIとアドオン: Bitbucketは豊富なREST APIを提供しており、外部ツールとの連携や独自の機能拡張を開発することが可能です 3。また、Atlassian Marketplaceでは、Bitbucketの機能を拡張する様々なサードパーティ製アプリ(アドオン)を見つけてインストールできます 14

これらの機能により、Bitbucketはコード管理だけでなく、関連するドキュメント作成、課題管理、情報共有といった開発プロセス全体をサポートする、より包括的なプラットフォームとなっています。

3. Bitbucketの使い方:基本操作ガイド

Bitbucketを使い始めるための基本的な手順と、日々の開発作業でよく使われる操作について解説します。ここでは主にBitbucket CloudとGitを使用するケースを想定しています。

アカウント作成と初期設定

  1. サインアップ: Bitbucket Cloudの公式サイト (https://bitbucket.org/product/ja) にアクセスし、アカウントを作成します。既にAtlassianアカウント(Jiraなどで使用)を持っている場合は、そのアカウントでログインできます 21
  2. プロファイル設定: アバター画像や表示名など、基本的なプロファイル情報を設定します 20
  3. 通知設定: プルリクエストの更新やメンションなど、どのようなイベントでメール通知を受け取るかを設定します 14
  4. SSHキーの設定: ローカルのGitクライアントからBitbucket上のリポジトリへ安全に接続(プッシュやプル)するために、SSHキーペアを作成し、公開鍵をBitbucketアカウントに登録します。詳しい手順はOS(macOS, Windows, Linux)ごとに公式ドキュメントで解説されています 14
  5. 2段階認証の設定(推奨): アカウントのセキュリティを強化するため、2段階認証を設定することが強く推奨されます 14

リポジトリの作成・クローン・インポート

  • 新規リポジトリ作成:
  1. Bitbucketにログイン後、画面上部の「+」アイコンなどから「リポジトリを作成」を選択します 21
  2. リポジトリ名(URLの一部になります)、アクセスレベル(公開または非公開)、バージョン管理システム(Gitを選択)などを設定します 21
  3. オプションで、初期ファイルとしてREADMEファイルや.gitignoreファイル(バージョン管理から除外するファイルを指定)を自動生成することもできます 9
  4. 「リポジトリを作成」ボタンをクリックすると、空のリポジトリが作成されます 21
  • リポジトリのクローン:
  1. Bitbucket上で既存のリポジトリページを開き、「クローン」ボタンをクリックします。
  2. 表示されるURL(HTTPSまたはSSH)をコピーします。
  3. ローカルマシンのターミナル(コマンドプロンプト)を開き、リポジトリを置きたいディレクトリに移動して、git clone <コピーしたURL> コマンドを実行します 19。これにより、リモートリポジトリの内容がローカルマシンにコピーされます。
  • リポジトリのインポート: GitHubや他のGitホスティングサービス、あるいは手元にある既存のGitリポジトリからBitbucketにコードを移行したい場合は、リポジトリ作成時に「リポジトリをインポート」オプションを選択し、指示に従ってインポート元を指定します 19

コードの変更とプッシュ・プル

  1. ローカルでの変更: クローンしたローカルリポジトリ内で、テキストエディタやIDEを使ってファイルを編集、新規作成、または削除します 21。特定のファイルやディレクトリをGitの管理対象から除外したい場合は、.gitignoreファイルに記述します 22
  2. 変更のステージング: 変更したファイルの中から、次のコミットに含めたいものを選択(ステージング)します。コマンドラインでは git add <ファイル名> や git add. (変更された全ファイルをステージング)を実行します。
  3. コミット: ステージングされた変更内容を、意味のあるメッセージと共にローカルリポジトリの履歴に記録します。コマンドラインでは git commit -m “変更内容を示すメッセージ” を実行します。
  4. プッシュ: ローカルリポジトリで行ったコミット(変更履歴)を、Bitbucket上のリモートリポジトリにアップロードします。コマンドラインでは git push origin <ブランチ名> (例: git push origin main)を実行します 19。これにより、チームメンバーと変更内容を共有できます。
  5. プル: 他のメンバーがリモートリポジトリにプッシュした最新の変更内容を、自分のローカルリポジトリに取り込みます。コマンドラインでは git pull origin <ブランチ名> を実行します 19。作業を始める前やプッシュする前にプルを実行し、ローカルリポジトリを最新の状態に保つことが推奨されます。

ブランチ戦略とプルリクエストの活用

チーム開発では、メインのコードライン(通常 main または master ブランチ)を直接変更するのではなく、ブランチを使って作業を進めるのが一般的です。

  1. ブランチ作成: 新しい機能の開発やバグ修正に取り掛かる際、現在の最新のコードから新しいブランチを作成します。コマンドラインでは git checkout -b <新しいブランチ名> を実行します 6。BitbucketのWeb UIから直接ブランチを作成することも可能です。
  2. ブランチでの作業とプッシュ: 作成したブランチに切り替えてコードの変更、コミットを行います。作業がある程度進んだら、そのブランチをリモートリポジトリにプッシュします (git push origin <新しいブランチ名>) 9
  3. プルリクエスト作成: ブランチでの作業が完了し、変更内容をメインブランチに統合(マージ)する準備ができたら、Bitbucket上でプルリクエストを作成します 6。プルリクエスト作成画面で、マージ元ブランチ(自分の作業ブランチ)とマージ先ブランチ(通常 main)を指定し、変更内容の概要やレビューしてほしい点などを記述し、レビュワー(コードを確認する担当者)を指定します。
  4. コードレビュー: 指定されたレビュワーは、プルリクエストの画面で変更差分(Diff)を確認し、コードの品質、設計、テストなどに問題がないかチェックします 7。必要に応じてインラインコメントで質問や修正提案を行います。議論を経て、問題がなければ「承認」ボタンをクリックします。修正が必要な場合は、プルリクエスト作成者がフィードバックに基づいてコードを修正し、再度ブランチにプッシュすると、プルリクエストも自動的に更新されます。
  5. マージ: 必要な承認が得られ、ビルドなどのチェックもパスしたら、プルリクエスト作成者または権限を持つ担当者が「マージ」ボタンをクリックします。これにより、作業ブランチの変更内容がメインブランチに統合されます 9。マージ後に作業ブランチを自動的に削除するオプションも選択できます 9

チームでの共同作業

  • メンバー招待とグループ管理: ワークスペースの管理者は、チームメンバーをメールアドレスで招待し、Bitbucketワークスペースに参加させることができます 18。メンバーが増えてきたら、「開発者」「テスト担当者」などのグループを作成し、メンバーを所属させることで、権限管理が容易になります 18
  • アクセス権限の設定: プロジェクトやリポジトリごとに、どのユーザーまたはどのグループがアクセスできるか、そしてどのような権限(読み取り、書き込み、管理)を持つかを設定します 8。これにより、コードへのアクセスを適切に制御できます。
  • コミュニケーション: プルリクエストのコメント機能は、コードに関する議論やフィードバックを行うための主要な場となります 8。@メンションを使って特定のメンバーに通知を送ることで、迅速な反応を促すことができます 7

これらの基本的な操作をマスターすることで、Bitbucketを活用した効率的なチーム開発を進めることができます。

4. 料金プランとデプロイメントオプション

Bitbucketは、チームの規模やニーズに合わせて選択できる複数の料金プランと、運用形態に応じたデプロイメントオプションを提供しています。

Free, Standard, Premiumプランの詳細と比較 (Bitbucket Cloud)

Bitbucket Cloudは、主に3つの料金プランを提供しています 2

  • Free プラン:
  • 価格: $0/月 2
  • ユーザー数: 最大5ユーザーまで 2
  • リポジトリ: プライベートリポジトリ数は無制限 2
  • Pipelines ビルド時間: 50分/月 2
  • Git LFS ストレージ: 合計1GB 2
  • 主な機能: 基本的なリポジトリ管理、コードレビュー(プルリクエスト)、Jira/Trello連携、基本的なCI/CD (Pipelines)、基本的なマージチェック 2
  • 対象: 個人開発者、スタートアップ、小規模チーム、Bitbucketを試してみたい場合 2
  • Standard プラン:
  • 価格: $3/アクティブユーザー/月(変動価格、最新情報は公式サイトで確認)2
  • ユーザー数: 制限なし 2
  • Pipelines ビルド時間: 2,500分/月 2
  • Git LFS ストレージ: 合計5GB 2
  • 主な機能: Freeプランの全機能
  • 対象: 成長中のチーム、中規模の開発チーム
  • Premium プラン:
  • 価格: $6/アクティブユーザー/月(変動価格、最新情報は公式サイトで確認)2
  • ユーザー数: 制限なし 2
  • Pipelines ビルド時間: 3,500分/月 2
  • Git LFS ストレージ: 合計10GB 2
  • 主な機能: Standardプランの全機能に加え、必須マージチェック(特定の条件を満たさないとマージを強制的にブロック)、デプロイ権限(特定のユーザー/グループのみが特定の環境にデプロイ可能)、IPホワイトリスト登録(許可されたIPからのみアクセス可能)、2段階認証の必須化(組織全体で2FAを強制)、スマートミラーリング(地理的に分散したチーム向けパフォーマンス向上)など、高度なセキュリティ、コンプライアンス、管理機能 2
  • 対象: 大規模チーム、エンタープライズ、厳格なセキュリティやガバナンス、高可用性が求められる組織

Bitbucket Cloud プラン比較表

機能 (Feature)FreeStandardPremium
ユーザー数 (User Limit)最大5ユーザー (Up to 5 users)無制限 (Unlimited)無制限 (Unlimited)
月額料金/ユーザー (Price/User/Month)$0$3 (変動あり)$6 (変動あり)
プライベートリポジトリ無制限 (Unlimited)無制限 (Unlimited)無制限 (Unlimited)
Pipelines ビルド時間/月50分 (50 build minutes)2,500分 (2,500 build minutes)3,500分 (3,500 build minutes)
Git LFS ストレージ1GB5GB10GB
必須マージチェック
IP ホワイトリスト
必須2段階認証
スマートミラーリング

注: 上記は概要であり、最新かつ詳細な情報はAtlassian公式サイトをご確認ください。

この段階的な料金体系は、チームが成長するにつれてスムーズに移行できる道筋を提供します。多くのチームは機能豊富なFreeプランから始め、ユーザー数が増えたり、CI/CDの利用量が増加したり、より高度なセキュリティ機能が必要になったりするにつれて、StandardやPremiumプランへとアップグレードします 2。特に、ビルド時間やGit LFSの制限、そしてPremiumプラン固有のセキュリティ・管理機能は、上位プランへの移行を促す要因となります。Premiumプランがセキュリティと統制機能に重点を置いている点は 2、Bitbucketがガバナンスを重視する組織をターゲットとし、これらの機能を付加価値の高いプレミアムサービスとして位置づけていることを示唆しています。

また、教育機関向けには無料または割引価格のアカデミックプランが提供される場合があります 2

Cloud, Data Center, Serverの違いと選び方

Bitbucketは、運用形態に応じて主に以下のデプロイメントオプションを提供しています。

  • Bitbucket Cloud:
  • ホスティング: Atlassianがインフラストラクチャを管理・運用するSaaS(Software as a Service)モデルです 5。ユーザーはWebブラウザ経由でURLにアクセスして利用します 5
  • 特徴: サーバーのセットアップやメンテナンスが不要で、すぐに利用を開始できます。アップデートも自動的に適用されます。組み込みのBitbucket Pipelinesが利用可能です 5
  • 対象: インフラ管理の手間をかけずに迅速に導入したいチーム、クラウド利用に抵抗がない中小規模のチームやスタートアップに適しています。
  • Bitbucket Data Center:
  • ホスティング: ユーザー自身のインフラ(オンプレミスまたはプライベートクラウド)にBitbucketソフトウェアをインストールして運用します 3。複数サーバーによるクラスタ構成が可能です。
  • 特徴: 高可用性(アクティブ-アクティブクラスタリングにより単一障害点を排除)、大規模環境でのパフォーマンスチューニング、柔軟なスケーラビリティを提供します 5。データとインフラに対する完全なコントロールが可能です。スマートミラーリング機能により、地理的に分散したチームのGit操作パフォーマンスを向上させます 2。サブスクリプションベースのライセンスです。
  • 対象: 大規模な開発組織、ミッションクリティカルなシステム開発、高いパフォーマンスと可用性が必須の環境、厳格なデータ管理やコンプライアンス要件により自社管理が必要な企業に適しています。
  • Bitbucket Server (オンプレミス):
  • ホスティング: Data Centerと同様に、ユーザー自身のサーバー環境(単一サーバー)にインストールして運用します 1
  • 特徴: データとインフラに対する完全なコントロールが可能です 5。永久ライセンスが提供されていました 5。CI/CDは主にBamboo(Atlassianの別製品)との連携が想定されていました 5
  • 対象: かつては自社環境での運用が必要な組織の選択肢でしたが、AtlassianはServer製品の新規販売を2021年2月に終了し、既存ライセンスのサポートも2024年2月に終了しました。 現在、Server版を利用している場合は、Cloud版またはData Center版への移行が推奨されています。

選び方のポイント:

どのデプロイメントオプションを選択するかは、以下の要素を総合的に考慮して決定する必要があります。

  • チーム/組織の規模: 小規模ならCloud、大規模ならData Centerが適している場合が多いです。
  • セキュリティとコンプライアンス要件: データを自社管理下に置く必要があるか、特定の認証基準を満たす必要があるかなど。厳格な要件がある場合はData Centerが有力候補となります。
  • インフラ管理能力とリソース: 自社でサーバーを運用・管理する体制と専門知識があるか。Cloudならインフラ管理は不要です。
  • 可用性とパフォーマンス要件: 高い可用性や大規模環境でのパフォーマンスが求められる場合はData Centerが適しています。
  • 予算: Cloudはユーザー数に応じた月額/年額課金、Data Centerはサブスクリプションライセンスです。初期投資と運用コストを比較検討します。

Server版の提供終了というAtlassianの戦略転換は、業界全体のクラウドシフトとサブスクリプションモデルへの移行の流れを反映しています。これにより、現在の主な選択肢は、俊敏性と管理の容易さを重視するならCloud、完全なコントロールと高可用性・大規模対応を求めるならData Centerとなります。この2つの明確な選択肢を提供することで、Atlassianは市場を効果的にセグメント化し、多様な顧客ニーズに対応しています。

5. GitHub、GitLabとの比較:Bitbucketの立ち位置

Bitbucketは強力なコードホスティングプラットフォームですが、市場にはGitHubやGitLabといった強力な競合サービスも存在します。それぞれの特徴を比較し、Bitbucketがどのような場合に最適な選択肢となるのかを考察します。

機能、価格、統合性、コミュニティの観点から比較

観点 (Aspect)BitbucketGitHubGitLab
主な強みAtlassianエコシステム(特にJira)との深い統合 4, 柔軟なデプロイオプション (Cloud/Data Center) 3世界最大の開発者コミュニティ, オープンソースのハブ, 洗練されたUI, 強力なCI/CD (GitHub Actions)DevOpsライフサイクル全体をカバーする単一アプリ 10, 強力な組み込みCI/CD (GitLab CI/CD), オンプレミス版も提供
Atlassian連携非常に深いネイティブ連携 4可能だが、Bitbucketほどのネイティブな深さはない可能
CI/CD機能Bitbucket Pipelines (組み込み) 6GitHub Actions (組み込み)GitLab CI/CD (組み込み、非常に高機能)
無料プランの寛容度ユーザー数制限あり (5人まで) 2ユーザー数無制限, プライベートリポジトリ無制限多くの機能が無料, ユーザー数制限あり (Self-Managed Freeは無制限)
コミュニティ規模GitHubより小規模 3世界最大活発だがGitHubよりは小規模
デプロイオプションCloud, Data Center 3Cloud, Enterprise Server (オンプレミス)Cloud (SaaS), Self-Managed (オンプレミス)
最適なユーザー像Jira/Atlassianツール中心のチーム, エンタープライズ, Data Centerが必要な組織オープンソースプロジェクト, 個人開発者, コミュニティ重視のチーム, Microsoftエコシステム利用者DevOps全体を単一ツールで管理したいチーム, CI/CD重視のチーム, オンプレミスで高機能な環境を求めるチーム

各サービスの特徴:

  • Bitbucket: 最大の武器は、Jiraを中心としたAtlassian製品群とのシームレスな連携です 4。これにより、課題管理からコード管理、ビルド、デプロイまでの一連のワークフローを効率化し、高いトレーサビリティを実現します。また、Data Centerオプションにより、オンプレミス環境での高可用性や厳格な管理を求める企業のニーズにも応えます 3。一方で、無料プランのユーザー数制限 2 や、オープンソースコミュニティにおける存在感はGitHubに及びません。
  • GitHub: 開発者コミュニティの規模と活発さが際立っており、オープンソースプロジェクトのホスティング先として圧倒的な地位を築いています。洗練されたUIや強力なCI/CD機能であるGitHub Actionsも魅力です。無料プランでもユーザー数無制限でプライベートリポジトリを利用できるなど、個人開発者や小規模チームにとっても非常に魅力的です。Microsoft傘下に入り、Azureなどとの連携も強化されています。
  • GitLab: 「単一アプリケーションでDevOpsライフサイクル全体をカバーする」というコンセプトを掲げ、ソースコード管理だけでなく、プロジェクト計画、CI/CD、監視、セキュリティスキャンなど、開発に関わる幅広い機能を一つのプラットフォームで提供しようとしています 10。特に組み込みのGitLab CI/CDは非常に強力で成熟しており、高く評価されています。オンプレミス版(Self-Managed)も提供しており、自社環境で包括的なDevOpsプラットフォームを構築したい場合に有力な選択肢となります。

どのような場合にBitbucketが最適か

上記の比較を踏まえると、Bitbucketが特に適しているのは以下のようなケースです。

  • Jira/Confluenceを既に深く利用しているチーム: Bitbucketを選ぶ最大のメリットは、これらのツールとの緊密な連携によるワークフローの効率化と可視性の向上です 6。課題とコードの関連付け、ステータスの自動更新など、日々の開発作業における摩擦を大幅に削減できます。
  • オンプレミスまたは高可用性な自己ホスト環境が必要な大企業: Bitbucket Data Centerは、厳格なセキュリティポリシーやコンプライアンス要件を持つ企業、あるいは大規模な開発組織が必要とするコントロール、スケーラビリティ、可用性を提供します 5
  • Atlassian製品群で開発プロセス全体を標準化したい組織: 複数のツールを組み合わせるのではなく、Atlassianプラットフォーム上で開発ワークフローを統一し、ツール間のシームレスな連携を最優先したい場合に適しています。
  • シンプルな組み込みCI/CDから始めたいチーム: Bitbucket Pipelinesは、比較的容易に導入・設定でき、CI/CDの第一歩を踏み出すのに適しています 13。ただし、より高度で複雑なパイプラインが必要な場合は、GitHub ActionsやGitLab CI/CDの方が機能的に優れている可能性があります。

結論として、Bitbucketの競争優位性は、最大のプラットフォームであること(GitHub)や、最も包括的なオールインワンDevOpsソリューションであること(GitLab)ではなく、広く普及しているAtlassianスイート、特にJiraとの深い統合にあります。Bitbucketは、この特定のエコシステム内で卓越した価値を提供することに特化しています。したがって、Bitbucketを選択するということは、多くの場合、広範なコミュニティサポート(GitHub)や、より機能豊富な内蔵DevOpsツールチェーン(GitLab)よりも、Atlassian製品との連携メリットを優先するという戦略的な判断を意味します。「最適な」選択は、チームが既存で使用しているツール、ワークフローの優先順位、そして将来的なスケーリング計画に大きく依存します。

6. 国内外のBitbucket活用事例

Bitbucketが実際にどのような組織やプロジェクトで利用されているのか、具体的な利用シーンや適したチーム像を探ります。(注: 提供された情報には具体的な企業名は含まれていないため、Bitbucketの特性に基づいた典型的な利用シナリオを解説します。)

日本国内での利用シーン

日本国内においても、Bitbucketは様々な開発現場で活用されていると考えられます。

  • Jiraを全社的に導入している企業での開発部門: 日本の大手製造業、金融機関、通信キャリア、ITサービス企業などでは、プロジェクト管理ツールとしてJiraが広く採用されています。こうした企業では、Jiraとの連携メリットを最大限に活かすために、ソースコード管理ツールとしてBitbucket(特にData Center版)を選択するケースが多いと考えられます。プロジェクト管理と開発プロセスを密接に連携させ、トレーサビリティや報告の効率化を図る狙いがあります。
  • 特定のセキュリティ要件を持つ企業: 金融機関や公共機関、あるいは機密性の高い情報を扱う研究開発部門などでは、ソースコードを外部のクラウドサービスに置くことを避け、自社の管理下にあるオンプレミス環境で厳密に管理したいというニーズがあります。このような場合、Bitbucket Data Centerが選択され、詳細なアクセス権限管理や監査ログ機能などが活用されていると考えられます。
  • 中小規模のソフトウェア開発会社やWeb制作会社: コストを抑えつつ、チームでの効率的なコード共有、レビュープロセス、基本的なCI/CDパイプラインを実現したいと考える中小企業では、Bitbucket CloudのFreeプランやStandardプランが利用されている可能性があります。特に5名以下の小規模チームであれば、Freeプランの範囲内で多くの機能を利用できます。
  • Atlassianパートナーによる支援: リックソフト 8 のようなAtlassianソリューションパートナーが日本国内に存在し、導入コンサルティング、技術サポート、トレーニングなどを提供しています。こうしたパートナー企業の存在も、国内企業におけるBitbucketの導入と活用を後押ししている要因の一つと考えられます。

グローバル企業における導入例

世界的に見ても、Bitbucketは多様な企業で利用されています。

  • Atlassian自身: 当然ながら、Atlassianは自社製品であるBitbucketを社内のソフトウェア開発プロセスで全面的に活用しています。
  • 大規模なソフトウェア開発チームを持つ企業: 数百、数千人規模の開発者が関わるような大規模プロジェクトでは、Bitbucket Data Centerがそのスケーラビリティ、パフォーマンス、高可用性を活かして採用されています。多数の並行開発、頻繁なビルド・テスト、厳格なアクセス管理などが求められる環境で利用されています。
  • 複数の開発ツールを連携させている企業: 現代の開発環境では、単一のツールで全てを賄うのではなく、目的に応じて複数のツールを組み合わせて利用することが一般的です。Bitbucketは、Jenkins 24 やCircleCI 25 といったCI/CDツール、Docker Hub 26 のようなコンテナレジストリ、PagerDuty 28 のようなインシデント管理ツール、Phrase 29 のような翻訳管理システム、Codecov 30 のようなコードカバレッジツールなど、様々なサードパーティツールとの連携が可能です。企業はBitbucketのAPIや連携機能を活用し、自社の既存ツールチェーンにBitbucketを組み込んで利用しています。

これらの利用例を見ると、Bitbucketの導入は、単にコードを置く場所としてだけでなく、多くの場合、Jiraを中心としたAtlassianエコシステムへの適合性や、他の開発・運用ツールとの連携性が重視されていることがわかります。Bitbucketは、開発エコシステム内での「接続役」としての役割を果たすことで、その価値を発揮していると言えます。その採用は、しばしば統合ニーズに基づいた戦略的な選択の結果なのです。

Bitbucketが適したプロジェクト・チーム像

以上の点を踏まえると、Bitbucketが特にその強みを発揮できるプロジェクトやチームは、以下のような特徴を持つと考えられます。

  • Atlassianツール(特にJira)中心のワークフローを持つチーム: 開発プロセス全体をAtlassian製品で統一し、ツール間の連携による効率化を最大限に享受したいチーム。
  • コードのセキュリティ、アクセス管理、レビュープロセスに厳格な要件を持つチーム: 特にPremiumプランやData Center版が提供する高度なセキュリティ機能や統制機能を必要とする、エンタープライズや規制産業のチーム。
  • オンプレミスでの運用が必須なチーム: データ主権やセキュリティポリシーにより、クラウド利用が制限され、自社インフラでの運用が必要なチーム(Data Centerを選択)。
  • 比較的小規模で、コストを抑えつつプライベートリポジトリと基本的なCI/CDを利用したいチーム: FreeプランやStandardプランの範囲内で、クローズドな環境でのチーム開発を行いたいスタートアップや中小企業。
  • オープンソースコミュニティとの連携よりも、クローズドなチーム内開発や企業内開発が中心のプロジェクト: 主なコラボレーションが組織内部で完結するタイプのプロジェクト。

7. まとめ:Bitbucketで開発ワークフローを強化する

Bitbucketは、Atlassianが提供する高機能なコードホスティングおよび共同開発プラットフォームです。単なるリポジトリサービスにとどまらず、現代のソフトウェア開発チームが直面する課題に対応するための様々な機能を備えています。

Bitbucketの強みの再確認

本レポートで見てきたように、Bitbucketの主な強みは以下の点に集約されます。

  • Atlassianエコシステムとの深い統合: 特にJiraとのシームレスな連携は、課題管理とソースコード管理を結びつけ、開発ワークフローの効率化とトレーサビリティを劇的に向上させます。
  • 強力なコードレビュー機能: プルリクエストを中心とした高度なレビュー機能(インラインコメント、承認、マージチェックなど)は、コード品質の向上とチーム内コラボレーションを促進し、開発プロセスの標準化を支援します。
  • 組み込みCI/CD (Bitbucket Pipelines): 追加のツール設定の手間なく、リポジトリ内でビルド、テスト、デプロイの自動化を実現し、開発サイクルの高速化に貢献します。
  • 柔軟なデプロイメントオプションとエンタープライズレベルのセキュリティ: Cloud版による手軽な導入から、Data Center版によるオンプレミスでの高可用性・高セキュリティ運用まで、組織のニーズに合わせた選択が可能です。詳細な権限管理や高度なセキュリティ機能も充実しています。

導入検討のポイント

Bitbucketの導入を検討する際には、以下の点を考慮することが重要です。

  • チームの規模と将来的な成長: 現在および将来のユーザー数、リポジトリ数、CI/CD利用量などを予測し、最適な料金プラン(Free, Standard, Premium)を選択します。
  • 既存のツールスタック: 特にJiraやConfluenceなど、他のAtlassian製品の利用状況は、Bitbucket導入のメリットを大きく左右します。
  • セキュリティ、コンプライアンス、インフラ要件: クラウド利用の可否、データ管理ポリシー、必要なセキュリティレベルなどを評価し、Cloud版とData Center版のどちらが適しているかを判断します。
  • CI/CDのニーズ: Bitbucket Pipelinesの機能と制限(特にビルド時間)が、チームの自動化要件を満たしているかを確認します。より高度なCI/CD機能が必要な場合は、他の専門ツールとの連携も視野に入れます。
  • 競合サービスとの比較: GitHubやGitLabと比較して、チームが最も重視する要素(エコシステム連携、コミュニティ、オールインワン機能、価格など)に基づいて、最適なプラットフォームを選択します。

Bitbucketは、特にJiraをはじめとするAtlassian製品を既に活用している、あるいはこれから活用しようとしているチームにとって、コード管理からデプロイまでの一連の開発プロセスをスムーズに連携させ、生産性と品質を向上させるための非常に強力な選択肢となります。自社の状況と要件を慎重に評価し、Bitbucketが提供する価値を最大限に引き出す導入計画を立てることが成功の鍵となるでしょう。

引用文献

  1. Bitbucketとは【用語集詳細】 – SOMPO CYBER SECURITY, 5月 5, 2025にアクセス、 https://www.sompocybersecurity.com/column/glossary/bitbucket
  2. Bitbucketの使い方や評判を徹底解説、GitHubとの比較も紹介!, 5月 5, 2025にアクセス、 https://freelance.shiftinc.jp/column/bitbucket/
  3. Bitbucket – Wikipedia, 5月 5, 2025にアクセス、 https://ja.wikipedia.org/wiki/Bitbucket
  4. it-trend.jp, 5月 5, 2025にアクセス、 https://it-trend.jp/development_tools/12003#:~:text=Bitbucket%E3%81%AF%E3%80%81%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%80%81%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%81%AA%E3%81%A9,%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%92%E9%81%82%E8%A1%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
  5. Bitbucketとは?価格や機能・使い方を解説 – ITトレンド, 5月 5, 2025にアクセス、 https://it-trend.jp/development_tools/12003
  6. Bitbucket の概要, 5月 5, 2025にアクセス、 https://bitbucket.org/product/ja/guides/getting-started/overview
  7. Bitbucketとは?意味をわかりやすく簡単に解説 – xexeq.jp, 5月 5, 2025にアクセス、 https://xexeq.jp/blogs/media/it-glossary821
  8. Jira を使用するチームのために開発されたコード管理および CI/CDツール『Bitbucket』 – リックソフト, 5月 5, 2025にアクセス、 https://www.ricksoft.jp/atlassian/bitbucket/
  9. Bitbucket で開発環境を改善: 開始するための 4 つのステップ, 5月 5, 2025にアクセス、 https://bitbucket.org/product/ja/guides/basics/four-starting-steps
  10. BitbucketとGitHubの違いをわかりやすく解説 – trends, 5月 5, 2025にアクセス、 https://trends.codecamp.jp/blogs/media/difference-word225
  11. Jira を使用するチームのための Git ソリューション – Bitbucket, 5月 5, 2025にアクセス、 https://bitbucket.org/product/ja
  12. チーム向け Atlassian Bitbucket Git コード管理ツール, 5月 5, 2025にアクセス、 https://www.atlassian.com/ja/software/bitbucket
  13. Bitbucket Pipelines 機能紹介ビデオ – YouTube, 5月 5, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=ktfv6esUu1A
  14. Bitbucket UI の紹介 – Atlassian, 5月 5, 2025にアクセス、 https://www.atlassian.com/ja/software/bitbucket/guides/basics/bitbucket-interface
  15. Bitbucket – リリース情報 – リックソフト, 5月 5, 2025にアクセス、 https://www.ricksoft.jp/atlassian/bitbucket/bitbucket-whats-new.html
  16. Bitbucket Overview, 5月 5, 2025にアクセス、 https://bitbucket.org/product/guides/getting-started/overview
  17. プランと請求の管理 | Bitbucket Cloud | アトラシアン サポート – Atlassian Support, 5月 5, 2025にアクセス、 https://support.atlassian.com/ja/bitbucket-cloud/docs/manage-your-plan-and-billing/
  18. ワークスペースへのアクセス権を付与する | Bitbucket Cloud – Atlassian Support, 5月 5, 2025にアクセス、 https://support.atlassian.com/ja/bitbucket-cloud/docs/grant-access-to-a-workspace/
  19. チュートリアル: Bitbucket と Git を使用する – Atlassian Support, 5月 5, 2025にアクセス、 https://support.atlassian.com/ja/bitbucket-cloud/docs/tutorial-learn-bitbucket-with-git/
  20. How to use Bitbucket Cloud – Git Tutorial – YouTube, 5月 5, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=M44nEyd_5To&pp=0gcJCdgAo7VqN5tD
  21. Bitbucket Cloud での Git の使用方法についてのチュートリアルです。 | Atlassian Git Tutorial, 5月 5, 2025にアクセス、 https://www.atlassian.com/ja/git/tutorials/learn-git-with-bitbucket-cloud
  22. Git Tutorial – Git Crash Course using BitBucket – YouTube, 5月 5, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=1tC6Z57AOkY
  23. Git Tutorial for Beginners – How to Use Bitbucket or Github – YouTube, 5月 5, 2025にアクセス、 https://m.youtube.com/watch?v=aX-OgdL84YE&t=0s
  24. Bitbucket – Tutorials – YouTube, 5月 5, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/playlist?list=PLaD4FvsFdarSyyGl3ooAm-ZyAllgw_AM5
  25. Bitbucket との連携 – CircleCI, 5月 5, 2025にアクセス、 https://circleci.com/docs/ja/bitbucket-integration/
  26. Bitbucket で自動構築 — Docker-docs-ja 24.0 ドキュメント, 5月 5, 2025にアクセス、 https://docs.docker.jp/docker-hub/bitbucket.html
  27. GitHub や BitBucket からの自動ビルド設定 | Docker ドキュメント, 5月 5, 2025にアクセス、 https://matsuand.github.io/docs.docker.jp.onthefly/docker-hub/builds/link-source/
  28. Bitbucket Integration Guide – PagerDuty Knowledge Base, 5月 5, 2025にアクセス、 https://support.pagerduty.com/main/lang-ja/docs/bitbucket
  29. Bitbucket Cloud (TMS) – Phrase, 5月 5, 2025にアクセス、 https://support.phrase.com/hc/ja/articles/5709653950492-Bitbucket-Cloud-TMS
  30. Bitbucket Tutorial – Quick Start – Codecov, 5月 5, 2025にアクセス、 https://docs.codecov.com/v5.0/docs/bitbucket-tutorial
  31. Bitbucket Tutorial – Quick Start – Codecov, 5月 5, 2025にアクセス、 https://docs.codecov.com/v4.6/docs/bitbucket-tutorial
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