サッカースタジアム徹底分析!世界で最も大きいスタジアムと日本のスタジアムの差は何か?

目次

1. はじめに (Introduction): 世界のスタジアムの進化と日本サッカーへの示唆 (The Evolution of Global Stadiums and Implications for Japanese Football)

現代のスタジアムは、単にスポーツ競技が行われる場所という枠を超え、エンターテイメント、テクノロジー、そしてコミュニティの中心地へと劇的な進化を遂げています。ファンエクスペリエンスの最大化、収益源の多様化、持続可能性の追求、さらには地域社会との積極的な統合が、世界のスタジアムトレンドにおける重要なキーワードとなっています 1。特に欧米の先進的なサッカースタジアムでは、サッカー観戦に最適化された専用設計を基本としつつ、最新技術の導入や試合日以外の積極的な活用によって「稼げるスタジアム」としての機能を強化しています 4

このような世界の潮流は、スポーツビジネス全体の高度化と、ファンがスタジアムに求める価値の変化を如実に反映しています。かつてスタジアムは試合を「観る」ための場所でしたが、今日では多様な体験を「楽しむ」ための空間へと変貌を遂げつつあります。最先端テクノロジーを駆使した没入感のある演出、パーソナライズされたサービス提供の重視 1、そして試合日以外でもコンサートや各種イベントを通じて収益を上げる多角的な経営戦略 5 は、ファンが単なる観戦以上の付加価値を求め、クラブやスタジアム運営者が新たな収益機会を模索している現代のスポーツエンターテイメント業界全体の大きな流れと言えるでしょう。この「体験型消費」と「多角経営」へのシフトは、日本のスタジアムが国際的な競争力を持ち、さらなる発展を遂げるために避けては通れない道であり、ハード・ソフト両面での変革が急務であることを示唆しています。

さらに深刻なのは、スタジアムの質や機能における「スタジアム格差」が、そのままクラブの競争力格差に直結しかねない時代に突入しているという点です。レアル・マドリードやFCバルセロナといった世界のトップクラブが、巨額の投資をしてスタジアムの大規模改修を進めているのは、その好例です 5。これらの改修によって、特にプレミアムシートの拡充やネーミングライツ契約などを通じて、大幅な収益増が見込まれています 4。そして、その増えた収益は、有力選手の獲得・維持、育成システムへの投資、さらなる施設改善へと再投資され、クラブの競争力をスパイラル的に強化していくのです。日本のクラブが世界の舞台で伍していくためには、スタジアムを単なるコストセンターとしてではなく、収益を生み出す重要な「資産」として捉え直し、戦略的な投資を行っていくという視点への転換が不可欠です。この視点の欠如が、日本サッカーの国際的な競争力向上における潜在的な足枷となっている可能性も否定できません。

本レポートは、このような世界のスタジアムの進化を踏まえ、世界の先進的なサッカースタジアムと日本のスタジアムの現状を多角的に比較分析し、日本のサッカーが国際的なレベルでさらに発展していくために、スタジアムが果たすべき役割と求められる要素を明らかにすることを目的とします。具体的には、まず世界の巨大スタジアムの事例を概観し、その規模、設計思想、収益モデルを分析します。次に、日本の主要スタジアムの特性と課題を国際比較の観点から検証し、他スポーツのスタジアム・アリーナの成功事例から得られる示唆を探ります。最後に、これらの分析を踏まえ、日本サッカーの未来を築くための具体的なスタジアム戦略を提言します。

2. 世界の巨大サッカースタジアム:規模、設計思想、収益モデル (Global Megastadiums: Scale, Design Philosophy, and Revenue Models)

世界のサッカースタジアムは、その壮大なスケールと革新的な設計思想、そして巧みな収益モデルによって、単なる競技場を超えた存在感を放っています。ここでは、まず収容人数の観点から世界のトップクラスのスタジアムを概観し、続いて個別の先進事例を深掘りすることで、その戦略と成功要因を分析します。

2.1. 収容人数ランキングとスタジアム概要 (Capacity Rankings and Stadium Overviews)

世界のサッカースタジアムの中には、8万人から10万人以上という驚異的な収容人数を誇るものが存在します。これらのスタジアムは、単に物理的な大きさだけでなく、しばしば国の威信をかけたプロジェクトとして建設され、その国のサッカー文化の中心、あるいは象徴としての役割を担っています 11

表1:世界の巨大サッカースタジアム トップ10

順位スタジアム名収容人数所在地主な使用チーム・用途特徴(サッカー専用か多目的か等)
1綾羅島メーデー・スタジアム114,000人北朝鮮・平壌朝鮮民主主義人民共和国代表、同女子代表、4.25体育団サッカー、陸上競技、マスゲーム。元々は15万人収容として建設 12
2ミシガン・スタジアム107,601人米国・アナーバーミシガン・ウルヴァリンズ(アメリカンフットボール)主にアメリカンフットボール。サッカーの国際試合も開催 12
3オハイオ・スタジアム102,780人米国・コロンバスオハイオステート・バックアイズ(アメリカンフットボール)主にアメリカンフットボール。サッカーの試合も開催 12
4メルボルン・クリケット・グラウンド100,024人豪州・メルボルンオーストラリア代表(クリケット)、メルボルンFC、リッチモンドFCなど(オージールールズ)クリケット、オージールールズ、サッカーなど多目的 12
5カンプ・ノウ99,354人スペイン・バルセロナFCバルセロナサッカー専用。現在105,000人収容への大規模改修中 11
6FNBスタジアム94,736人南アフリカ・ヨハネスブルグ南アフリカ代表、カイザー・チーフスFCサッカー専用。「サッカーシティ」とも呼ばれ、2010年W杯決勝開催地 11
7ニュー・アドミニストレイティブ・キャピタル・スタジアム93,940人エジプト・新行政首都エジプト代表サッカー専用。エジプトの新首都に建設された最新スタジアム 12
8ローズボウル・スタジアム92,800人米国・パサデナUCLAブルーインズ(アメリカンフットボール)主にアメリカンフットボール。1994年W杯決勝開催地 12
9コットン・ボウル・スタジアム92,100人米国・ダラスダラス・トリニティFC主にアメリカンフットボール。サッカーの試合も開催 12
10ウェンブリー・スタジアム90,000人英国・ロンドンイングランド代表、FAカップ決勝などサッカー専用。象徴的なアーチを持つ「サッカーの聖地」 11

情報源: 主に12 (Wikipedia, 2025年5月3日更新データに基づく) および11 (Sporting News) から作成。収容人数は資料により若干の差異がある場合がある。

これらの巨大スタジアムは、その規模だけでなく、設計思想や歴史的背景においても多様性を示しています。例えば、綾羅島メーデー・スタジアムは、北朝鮮の国家的威信を示す巨大な建造物であり、サッカーだけでなくマスゲームや国家的な祝典にも使用される多目的スタジアムです 14。一方、カンプ・ノウはFCバルセロナという世界的なクラブの魂とも言えるサッカー専用スタジアムであり、現在「エスパソ・バルサ」という壮大なプロジェクトの下で、105,000人収容への大規模改修が進められています 8

南アフリカのFNBスタジアム(通称サッカーシティ)は、2010年FIFAワールドカップ決勝の舞台となり、「カラバッシュ(ひょうたん)」をモチーフとしたユニークなデザインで知られています 17。イギリスのウェンブリー・スタジアムは、イングランド代表のホームであり、象徴的なアーチを持つ「サッカーの聖地」として、FAカップ決勝など国内の主要な試合が開催されます 18。メキシコのエスタディオ・アステカは、ペレとマラドーナという2人の伝説的選手がワールドカップを掲げた唯一のスタジアムとして歴史に名を刻んでおり、過去2度のワールドカップ決勝が開催されました。2026年のワールドカップに向けて、ここも改修が進められています 22

その他にも、2022年FIFAワールドカップ決勝の舞台となったカタールのルサイル・スタジアム 11、マレーシアのブキット・ジャリル国立競技場 11、レアル・マドリードの本拠地であるスペインのサンティアゴ・ベルナベウ 11、そしてボルシア・ドルトムントの熱狂的な雰囲気で知られるドイツのシグナル・イドゥナ・パルク 11 など、世界には特色豊かな巨大スタジアムが数多く存在します。これらのスタジアムは、単に試合を観戦する場所としてだけでなく、その国のサッカー文化や歴史、さらには国民のアイデンティティを象徴するモニュメントとしての役割も果たしているのです。

2.2. 先進事例分析:海外トップスタジアムの戦略 (Analysis of Leading Examples: Strategies of Top International Stadiums)

世界のトップクラブは、スタジアムを単なる競技施設ではなく、収益を生み出す多機能なエンターテイメントハブとして捉え、革新的な戦略を展開しています。

カンプ・ノウ (Camp Nou) とエスパソ・バルサ (Espai Barça):

FCバルセロナの本拠地カンプ・ノウは、「エスパソ・バルサ」という壮大なプロジェクトを通じて、単なるスタジアム改修を超えた都市開発に着手しています 8。このプロジェクトでは、スタジアムの収容人数を105,000人に拡大し、屋根を設置するだけでなく、太陽光パネルの導入による持続可能性も追求しています 16。さらに、隣接するパラウ・ブラウグラナアリーナ(多目的アリーナ)、クラブミュージアム、オフィス、ホテル、商業施設などを一体的に整備し、地域全体を活性化するハブとしての機能を持たせることを目指しています 8。

ファンエクスペリエンスの向上も重視されており、年間5000万ユーロの収益実績を持つミュージアムや公式ストアの拡充に加え、VIPホスピタリティ施設は従来の2,600席から9,000席以上へと大幅に拡張される計画です 8。

収益モデルとしては、スタジアム単体で年間3億5000万ユーロの収益を見込んでおり 8、スポティファイ社とのネーミングライツ契約(Spotify Camp Nou) 4 や、各種スポンサーシップ、プレミアムシート販売がその柱となります。試合日以外のイベント誘致も強化され、年間1000万人の来場者を目指し、バルセロナの新たな観光・交流拠点としての役割を担うことが期待されています 8。

サンティアゴ・ベルナベウ (Santiago Bernabéu) の大改修:

レアル・マドリードの本拠地サンティアゴ・ベルナベウもまた、最新鋭の多機能スタジアムへの変革を遂げました 30。開閉式の屋根、スタジアム全周を囲む360度ビデオボード、そしてサッカー以外のイベント開催を容易にするための格納式ピッチシステムといった最先端技術が導入され、外観もステンレス鋼板を用いたデザインで一新されました 31。

ファンエクスペリエンス向上のため、VIPエリアの刷新、新たな商業スペースや飲食施設の充実が図られ、スタジアムツアーも引き続き人気を集めています 10。

収益面では、試合日以外のイベント利用も含め、年間10億ユーロを超える収益を目指しており、2023-24シーズンにはスタジアム単体で既に3億ユーロ超の収益を記録しました 9。今後はコンサートやNFLの試合開催など、サッカー以外のイベントによる収益増も積極的に狙っています 9。マドリード中心部に位置するこのスタジアムは、都市のランドマークとしての存在感を一層高めています。

トッテナム・ホットスパー・スタジアム (Tottenham Hotspur Stadium):

ロンドンに位置するこのスタジアムは、サッカー専用設計を徹底しつつ、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の試合開催も可能な可動式ピッチを採用した、最新技術を駆使した多目的アリーナの好例です 34。特に、17,500人を収容する巨大な南スタンド(単層スタンド)は圧巻で、熱狂的な雰囲気を作り出します 2。豊富な飲食オプションやキャッシュレス決済システムの導入など、ファンエクスペリエンスの向上にも注力しています。NFLのロンドンゲーム開催や大規模コンサートなど、多様なイベントによる収益確保が戦略の柱となっています。

アリアンツ・アレーナ (Allianz Arena):

ドイツ・ミュンヘンにあるバイエルン・ミュンヘンのホームスタジアムは、発光するETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体)素材のエアークッションで覆われた外壁パネルが象徴的です。このパネルは、ホームチームのクラブカラー(バイエルン・ミュンヘンなら赤、かつて共用していたTSV1860ミュンヘンなら青)に合わせてスタジアム全体の色が変化するというユニークな特徴を持っています 35。設計思想としては、ピッチとの近さやスタンドの傾斜を重視した「クレーター」構造により、観客が試合に没入できる環境を創出しています 36。テクノロジー面では、最新のWi-Fi 6の導入、インテリジェントな交通・ゲート管理システム、キャッシュレス決済システムなどが整備されています 37。FCバイエルン・ミュージアムも併設されており 38、高い稼働率と多様なスポンサーシップによって安定した収益を上げています。

シグナル・イドゥナ・パルク (Signal Iduna Park):

ドイツ・ドルトムントにあるボルシア・ドルトムントのホームスタジアムは、特に「黄色い壁(Die Gelbe Wand)」として世界的に知られる南スタンドがもたらす圧倒的な雰囲気で有名です 32。ファン中心の設計思想が貫かれており、ヨーロッパ最大の立ち見席を含むこのスタンドは、熱狂的な応援空間を生み出しています。収益モデルとしては、試合運営収入、広告収入(ネーミングライツを含む)、そしてグッズ販売が主要な柱であり 39、ホスピタリティエリアも充実しています。

これらの事例から、世界のトップスタジアムは単に試合を行う場所ではなく、クラブのブランド価値を高め、多様な収益を生み出し、地域社会に貢献する多機能なプラットフォームへと進化していることがわかります。特に、アメリカのSoFiスタジアムに見られる360度吊り下げ型スクリーンやAIを活用した売店システム 2、あるいはアトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアムの開閉式ルーフやファンフレンドリーな安価な飲食提供 1 などは、テクノロジーとファンサービスを融合させた好例です。開閉式屋根、可動式ピッチ、格納式ピッチといった技術は、サッカー以外のイベント(コンサート、他スポーツ)の開催を容易にし、スタジアムの稼働率と収益性を飛躍的に向上させています 4

世界のトップスタジアムの動向を深く分析すると、いくつかの重要な示唆が浮かび上がってきます。第一に、スタジアム開発のスケールが、「スタジアム単体」の建設や改修から、「スタジアムを中心とした都市開発・地域開発」へと大きくシフトしている点です。カンプ・ノウの「エスパソ・バルサ」構想 8 や、日本の長崎で計画されている「長崎スタジアムシティ」 42 のように、スタジアムだけでなく、ホテル、商業施設、オフィス、アリーナなどを一体的に開発する動きが顕著です。これにより、試合日以外の集客力の向上、新たな雇用の創出、観光客誘致など、スタジアムを核とした広範な経済効果が期待されています 4。これは、スタジアムが地域社会の重要なインフラとして、スポーツ振興以上の多面的な役割を担うべきであるという認識の変化の表れと言えるでしょう。日本のスタジアム開発においても、単に競技施設を建設するという発想から脱却し、周辺地域との連携や複合開発を視野に入れた「まちづくり」の視点が不可欠となります。

第二に、スタジアムの「ソフトウェア」、すなわち運営ノウハウ、テクノロジー活用戦略、ファンエンゲージメント戦略の重要性が、物理的な施設である「ハードウェア」と同等、あるいはそれ以上に高まっている点です。スマートエントリーシステム、リアルタイムの情報提供、モバイルオーダーシステム、完全キャッシュレス決済、AR/VR技術の活用など、テクノロジーを駆使したファンエクスペリエンス向上の事例は枚挙にいとまがありません 1。また、データ分析に基づいたダイナミックプライシング(価格変動制)やパーソナライズされたサービスの提供が、収益向上に繋がることも示唆されています 4。これらの「ソフト」面の充実は、スタジアムの魅力を高め、リピーターを増やし、新たな収益機会を創出する上で不可欠です。したがって、日本のスタジアムが目指すべきは、最新のハードウェアを備えるだけでなく、それを最大限に活かすための運営戦略やデジタル戦略の高度化であり、これには専門的な知識を持つ人材の育成も含まれます。

第三に、スタジアムのネーミングライツ(命名権)が、単なる名称使用料の対価という関係から、スタジアムとスポンサー企業が互いのブランド価値を高め合う「ブランド共創パートナーシップ」へと進化している点です。Spotify Camp NouやAllianz Arenaといった事例では、スポンサーのブランドが施設全体に巧みに織り込まれ、スタジアム体験の一部となっています 4。これは、スタジアムの持つ集客力や情報発信力と、企業のマーケティング戦略が融合することで、新たな価値が生まれることを示しています。日本のスタジアムにおいても、ネーミングライツを単なる資金調達の手段として捉えるのではなく、地域やファンに対して新たな価値を提供し、共に成長していくための共創の機会として戦略的に活用していくべきでしょう。

3. 日本のサッカースタジアムの現状と国際比較 (The Current State of Japanese Football Stadiums and International Comparison)

日本のサッカースタジアムは、近年進化を見せつつも、世界のトップレベルと比較すると依然として多くの課題を抱えています。ここでは、Jリーグの主要スタジアムの特性と課題を整理し、海外スタジアムとのギャップを観戦環境、収益性、多機能性の観点から分析します。さらに、日本特有の構造的な問題点についても考察します。

3.1. Jリーグ主要スタジアムの特性と課題 (Characteristics and Challenges of Major J.League Stadiums)

日本のサッカースタジアムの中で、収容人数でトップクラスに位置するのは、サッカー専用スタジアムである埼玉スタジアム2002(約6.3万人収容)13 とパナソニックスタジアム吹田(約4万人収容)49 です。一方、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)は約7.2万人という国内最大級の収容人数を誇りますが、陸上トラックが併設されています 13。同様に、東京の国立競技場も約6.8万人を収容可能ですが、多目的利用を前提とした施設です 13。これらのスタジアムは、前述の世界のトップクラスの巨大スタジアムと比較すると、規模が小さいか、あるいはサッカー専用ではない場合が多く、この点が観戦体験や運営効率に影響を与えています。

設計と設備面では、依然としてサッカー専用スタジアムの不足が大きな課題です。J1クラブがホームスタジアムとして使用する施設の約半数が陸上競技場であり、ピッチと観客席の間にトラックが存在するため、距離が遠く、試合の臨場感が損なわれがちです 55。日本サッカー協会が定めるスタジアム標準においても、ピッチとの近さやスタンドの傾斜の重要性が指摘されていますが 55、この基準を満たすスタジアムは限られています。

また、施設の老朽化と改修の必要性も無視できません。現在のJリーグスタジアムの多くは、2002年のFIFAワールドカップ日韓大会や、各都道府県で開催されてきた国民体育大会に合わせて建設または大規模改修されたものが中心であり 55、建設から年月が経過し、老朽化が進んでいる施設も少なくありません。川崎市の等々力陸上競技場のように、メインスタンドの改修が進められる例もありますが 56、全体として見れば課題は山積しています。

一方で、近年では新設スタジアムの動向に明るい兆しが見られます。パナソニックスタジアム吹田 49、サンガスタジアム by KYOCERA 50、そして2024年に開業したエディオンピースウイング広島 13 など、サッカー専用でファンエクスペリエンスを重視したスタジアムが次々と登場しています。これらの新しいスタジアムは、ピッチとの近さ、全席を覆う屋根、最新の設備などを特徴とし、日本のスタジアム文化に新たな基準を提示しています。

表2:日本の主要サッカースタジアム一覧

スタジアム名収容人数所在地主な使用Jクラブ建設年/改修年サッカー専用か否か主な特徴・課題
国立競技場約68,000人東京都新宿区日本代表など2019年多目的(陸上トラック有)最新設備、木材活用。サッカー観戦時のピッチとの距離、多目的故の雰囲気作りが課題 13
横浜国際総合競技場(日産スタジアム)約72,327人神奈川県横浜市横浜F・マリノス1998年多目的(陸上トラック有)国内最大級の収容人数、2002年W杯決勝開催地。ピッチとの距離、観戦環境の改善が課題 13
埼玉スタジアム2002約63,700人埼玉県さいたま市浦和レッズ、日本代表2001年サッカー専用日本最大のサッカー専用スタジアム、良好な観戦環境。アクセスが課題との声も 13
エコパスタジアム約50,889人静岡県袋井市ジュビロ磐田など2001年多目的(陸上トラック有)大規模収容可能。ピッチとの距離、サッカー専用スタジアムへの待望論。
豊田スタジアム約43,739人愛知県豊田市名古屋グランパス2001年サッカー専用傾斜のあるスタンド、開閉式屋根(現在は固定)。Jリーグ屈指の観戦環境 50
パナソニックスタジアム吹田約39,694人大阪府吹田市ガンバ大阪2015年サッカー専用寄付金で建設、ピッチとの近さ(約7m)、全席屋根。最新設備、環境配慮 49
県立カシマサッカースタジアム約39,170人茨城県鹿嶋市鹿島アントラーズ1993年/2001年改修サッカー専用日本初の本格的サッカー専用スタジアム。クラブハウス併設、地域医療貢献も 50
ノエビアスタジアム神戸約28,996人兵庫県神戸市ヴィッセル神戸2003年(球技場化)球技専用開閉式屋根。ラグビーとの兼用。臨場感ある観戦が可能 50
エディオンピースウイング広島約28,520人広島県広島市サンフレッチェ広島2024年サッカー専用都心型スタジアム、最新設備、ミュージアム併設。ピッチとの近さ(約8m)、全席屋根 13
サンガスタジアム by KYOCERA約21,623人京都府亀岡市京都サンガF.C.2020年サッカー専用ピッチとの近さ(約7.5m)、全席屋根、クライミング施設併設。駅直結 50

情報源: 各スタジアムの公式情報、報道記事、および1313。収容人数はJリーグ開催時のものなど、資料により差異がある場合がある。

3.2. 海外スタジアムとのギャップ:観戦環境、収益性、多機能性 (The Gap with International Stadiums: Spectator Environment, Profitability, Multi-functionality)

日本のサッカースタジアムは、世界の先進的なスタジアムと比較して、観戦環境、収益性、そして多機能性の面で顕著なギャップが存在します。

観戦環境:

まず、ピッチとの距離と臨場感において大きな差があります。海外のサッカー専用スタジアムでは、観客席がピッチに非常に近く設計されており、例えばパナソニックスタジアム吹田では最前列からタッチラインまで約7メートル 50、エディオンピースウイング広島では約8メートル 61 といった近さを実現しています。これに対し、日本の多くのスタジアム、特に陸上競技場を兼用している施設では、ピッチと観客席の間に陸上トラックが存在するため、その距離が40メートル前後にもなることがあり、選手の声やボールを蹴る音、競り合いの迫力などが伝わりにくく、試合との一体感や迫力が大きく損なわれています 55。UEFA(欧州サッカー連盟)が発行するスタジアム品質ガイドラインにおいても、良好な視線(Cバリューと呼ばれる指標で評価される)の確保や、スタンドの適切な傾斜が、観客をできるだけピッチに近づけるために重要であると強調されています 77。

次に、屋根のカバー率も重要な要素です。海外の先進的なスタジアムでは、観客席の全席、あるいは大部分が屋根で覆われているのが一般的です。京都のサンガスタジアム by KYOCERA 50 やドイツのアリアンツ・アレーナ 36 はその好例です。屋根は、雨天や強い日差しといった天候の影響を軽減し、快適な観戦環境を提供するだけでなく、スタジアム内の歓声が反響しやすくなるため、音響効果を高め、スタジアム全体の一体感を醸成する役割も果たします。Jリーグのスタジアム基準でも屋根の設置が求められていますが 78、既存の陸上競技場などでは、その基準を達成することは容易ではありません。

収益性:

試合日収入の規模においても、大きな隔たりがあります。海外のトップクラブは、チケット販売、スタジアム内での飲食やグッズ販売、そして高付加価値なホスピタリティサービスによって、莫大な試合日収入を得ています 5。一方、日本のJクラブの場合、浦和レッズのような国内屈指の人気クラブであっても、そのチケット収入やグッズ収入の規模は、海外のトップクラブと比較すると依然として小さいのが現状です 79。

さらに、試合日以外の収益という点でも差は歴然です。海外のスタジアムは、コンサート、他のスポーツイベント、企業イベント、展示会、スタジアムツアー、クラブミュージアムの運営などを積極的に行い、年間を通じて高い稼働率を維持し、収益を上げています 4。しかし、日本のスタジアム、特に地方自治体が所有する施設では、このような多角的な活用が遅れている場合が多く、スタジアムのポテンシャルを十分に活かしきれていないのが実情です 55。Jリーグクラブの多くが財政的に厳しい状況にあり、一部では破産リスクも指摘されている中 80、スタジアムからの収益力向上は喫緊の課題と言えます。

多機能性と地域貢献:

海外では、スタジアムが単なるスポーツ施設としてだけでなく、地域活性化の核としての役割を担う事例が増えています。スタジアムを中心に、商業施設、ホテル、オフィス、クリニック、レジャー施設などを併設する複合的な都市開発が進められています 4。これにより、試合日以外でも人々が集い、新たな雇用や経済効果を生み出すことが期待されています。日本でも、長崎スタジアムシティ 42 や、プロ野球の事例ですがエスコンフィールドHOKKAIDO 46 のような複合型施設が登場し始めていますが、まだ少数派であり、今後の展開が注目されます。

表3:海外スタジアムと日本スタジアムの比較

比較項目海外先進事例の平均/傾向日本のJ1スタジアムの平均/傾向
平均収容人数5万人~10万人超(トップリーグ)約2万人~4万人(J1)
サッカー専用率高い(特に新設・改修スタジアム)低い(陸上競技場兼用が多い 55
ピッチと客席の平均距離近い(数m~10m程度)遠い(陸上トラックがある場合40m前後も 55
屋根カバー率(平均)高い(全席または大部分をカバー)低い~中程度(Jリーグ基準で1/3以上 78
試合日収入規模巨大(トップクラブは年間数百億円規模 5限定的(Jクラブは数億円~数十億円規模 79
試合日以外の活用度高い(コンサート、他イベント多数)低い~中程度(施設による差が大きい)
VIP施設充実度非常に高い(多様なプレミアムシート、ラウンジ)限定的~中程度(新設スタジアムでは向上傾向)
テクノロジー導入度高い(Wi-Fi、アプリ、キャッシュレス、データ活用)普及途上(新設スタジアム中心に導入進む)

情報源: 本レポート全体からデータを集約。特に115

この表は、日本のスタジアムが世界の先進事例と比較して、多くの面で改善の余地があることを明確に示しています。

3.3. 日本特有の構造的問題点 (Specific Structural Issues in Japan)

日本のサッカースタジアムが抱えるギャップの背景には、日本特有の構造的な問題が存在します。

第一に、自治体所有と公共施設としての位置づけが挙げられます。Jリーグのスタジアムの多くは地方自治体が所有する公共施設であり、その建設目的は必ずしもサッカー興行に特化したものではありませんでした 55。国民体育大会や全国高等学校総合体育大会(インターハイ)といった、広範な市民利用や他競技の開催を前提として建設・改修された陸上競技場が、そのままJリーグのホームスタジアムとして使用されているケースが多く、これがピッチまでの距離が遠い、観戦環境がサッカーに最適化されていないといった問題の根本的な原因となっています 55

第二に、その結果として生じる陸上トラック問題は、サッカー専用スタジアムの実現における最大の障害の一つです。陸上トラックの存在は、観客とピッチの間に物理的な距離を生み出し、試合の一体感や迫力を著しく削いでしまいます。川崎市の等々力陸上競技場のように、陸上トラックを廃止してサッカー専用スタジアムへと改修する計画も存在しますが 55、その実現には多額の費用と、陸上競技関係者を含む多様なステークホルダーとの合意形成という高いハードルが伴います。

第三に、Jリーグのスタジアム基準と現実の乖離も課題です。Jリーグはクラブライセンス制度の中で、スタジアムの収容人数、屋根の設置率、天然芝であることなどを基準として定めています 78。これらの基準はリーグ全体の質の向上を目指すものですが、特に地方のクラブにとっては、その達成が財政的にも物理的にも困難な場合があります。日本の人口減少や少子高齢化といった社会構造の変化も、特に地方における集客力の維持という観点から、スタジアム基準の達成をより難しくしている側面があります 78

そして第四に、収益性の課題と税金投入という問題があります。天然芝の維持管理には多額の費用がかかり、また、公共施設としての制約やサッカー以外のイベント誘致のノウハウ不足などからスタジアムの稼働率が低い場合、多くのスタジアムが赤字運営となり、その補填に多額の税金が投入されているという厳しい現実があります 55。市民からは「稼げるスタジアム」への転換を求める声が上がっていますが 46、そのための具体的なノウハウや投資余力が不足しているのが現状です。

これらの構造的問題を深く考察すると、日本のスタジアム問題の根源には、単なる施設の問題を超えた、より本質的な要因が横たわっていることが見えてきます。それは、「日本におけるサッカー文化の成熟度」と、「スポーツ施設に対する社会全体の投資意識」の差です。多くのスタジアムがサッカー興行以外の目的で建設されたという事実は 55、歴史的に見てサッカーが常に地域社会の最優先事項ではなかったことを示唆しています。また、Jリーグのスタジアム基準が、欧州(特にドイツ)の基準を参考にしつつも、日本の実情(人口動態やサッカーの日常への浸透度)と必ずしも合致していない可能性も指摘されています 78。欧州では、サッカークラブが地域コミュニティの核として深く根付き、スタジアムはその象徴として多額の投資が比較的受け入れられやすい土壌が存在します 84。一方、日本では「公共施設」としての公平性や多目的性が優先され、特定のスポーツ(この場合はサッカー)への特化した投資が、必ずしも社会全体の理解を得やすいとは言えない側面があります。したがって、スタジアム改革を真に推進するためには、施設の物理的な改修だけでなく、サッカーが持つ価値や、スタジアムが地域にもたらす多面的な便益(経済効果、コミュニティ形成、健康増進など 46)に対する社会全体の理解と合意形成を促進していく必要があります。

また、「サッカー専用」か「多目的」かという二元論的な議論に終始するのではなく、現代の技術や設計思想が「サッカーを核とした多機能複合型」という第三の道を可能にしている点にも注目すべきです。陸上トラック問題は長らく日本のスタジアム議論の中心でしたが 55、トッテナム・ホットスパー・スタジアムのNFL兼用ピッチ 34 や、レアル・マドリードのサンティアゴ・ベルナベウにおける格納式ピッチ 31 といった海外の事例、あるいは日本の新しいスタジアム構想である長崎スタジアムシティ 42 などは、サッカーに最適な観戦環境を維持しつつ、他の用途にも柔軟に対応できる設計が可能であることを示しています。これは、可動式ピッチや開閉式屋根といったテクノロジーの進化 4 と、スタジアムを単なる競技場ではなく「都市の装置」として捉える設計思想の変化 4 の賜物です。日本のスタジアムに関する議論は、単に陸上トラックを無くすかどうかという点に留まらず、最新技術を駆使して「サッカーの聖地」としての機能と「地域の賑わい拠点」としての機能を両立させる、より創造的な解決策を模索していくべきでしょう。

最後に、Jリーグが定めるスタジアム基準は、クラブの成長を促す「目標」であると同時に、現状とのギャップから一部のクラブにとっては「足枷」となっている可能性も否定できません。Jリーグのスタジアム基準、特に収容人数や屋根の設置義務は、地方のクラブにとっては厳しいものであるとの指摘があります 78。また、Jリーグクラブの破産リスクや、J1への昇格・残留のための過度な支出傾向も警告されています 80。理想的なスタジアム基準を掲げることはリーグ全体の質の向上に繋がる一方で、その画一的な適用は、資金力の乏しいクラブをさらなる財政難に追い込む危険性もはらんでいます。ライセンス制度の趣旨を維持しつつも、各クラブの地域性や経営規模に応じた猶予期間の設定、改修や新設に向けた財政的・技術的サポートの提供、そして基準達成に向けた具体的なロードマップの共同策定など、より現実的かつ育成的なアプローチが求められるのではないでしょうか。

4. 異種スポーツから学ぶスタジアムの可能性 (Learning from Other Sports: Stadium Potential)

サッカースタジアムの未来を考える上で、国内外の他スポーツの施設運営から得られる知見は非常に貴重です。特に、日本国内で独自の進化を遂げているプロ野球スタジアムやBリーグアリーナ、そしてエンターテイメント性が高い海外の他スポーツ施設は、ファンエクスペリエンスの向上や収益化戦略において多くの示唆を与えてくれます。

4.1. 国内外の野球場・アリーナとの比較分析 (Comparative Analysis with Baseball Stadiums and Arenas in Japan and Abroad)

日本のプロ野球スタジアム:

東京ドーム 87、阪神甲子園球場 87、みずほPayPayドーム福岡 87、ベルーナドーム 87、そして近年大きな注目を集めているエスコンフィールドHOKKAIDO 18 など、日本のプロ野球スタジアムはそれぞれ特色ある発展を遂げています。

これらの多くはドーム型であり、全天候に対応できる利点を活かして、野球の試合日以外にもコンサートや展示会など多様なイベントを積極的に開催し、それが重要な収益源となっています 87。特にエスコンフィールドHOKKAIDOは、スタジアム単体ではなく、ホテル、商業施設、エンターテイメント施設などを併設した広大なボールパーク構想「Fビレッジ」の中核として位置づけられています。これにより、試合のない日でも多くの人々を惹きつけ、地域経済にも大きな効果をもたらしていると評価されています 46。

また、ファンサービスやテクノロジー導入にも積極的で、大型ビジョンの設置、キャッシュレス決済の推進、多様なシートバリエーションの提供などが行われています 46。

日本のBリーグアリーナ:

Bリーグの成長と人気拡大に伴い、横浜アリーナ 98、有明アリーナ 102、そして琉球ゴールデンキングスの本拠地である沖縄アリーナ 81 など、5000人から1万人規模の近代的で多機能なアリーナの建設が進んでいます 103。

特に沖縄アリーナは、最新の映像・音響設備、快適なVIPラウンジ、多様な観客席を備え、単に試合を「観る」だけでなく、エンターテイメントとして「体験する」施設を目指しています 81。バスケットボールの試合以外にも、コンサートやMICE(会議・研修・国際会議・展示会等)など、多目的な利用が重視されています。ファンエンゲージメントを高めるためのテクノロジー活用(専用アプリやSNSとの連携など)や、地域貢献活動にも力が入れられています。

海外の他スポーツ施設(例: NFLスタジアム):

アメリカンフットボールのNFLスタジアムは、その巨大な収容人数に加え、VIPスイートやクラブシートといったプレミアムエリアが非常に充実しており、これらが莫大な収益を生み出す源泉となっています 4。また、スタジアム内の高速Wi-Fi環境の整備、巨大な高精細スクリーン、モバイルアプリとの連携など、最新テクノロジーの導入によるファンエクスペリエンスの向上は目覚ましく、観客に途切れることのない情報提供とエンターテイメントを提供しています 1。さらに、スタジアム周辺にエンターテイメント地区を開発し、試合日以外でも人々が集うエリアを形成することも一般的な戦略となっています。

4.2. 他スポーツの成功事例に学ぶべき点 (Key Learnings from Successful Venues in Other Sports)

これらの他スポーツ施設の成功事例から、日本のサッカースタジアムが学ぶべき点は多岐にわたります。

「ボールパーク構想」の導入: エスコンフィールドHOKKAIDOの成功が示すように、スタジアムを単体で捉えるのではなく、周辺施設と一体となった複合的な魅力を持つエリアとして開発し、試合日以外の集客と新たな収益源を確保する視点が重要です 81。これは、スタジアムを地域のにぎわい創出の核とする考え方です。

徹底したファンファーストの追求: 多様なニーズに応える観客席のバリエーション、充実した飲食メニューとスムーズな提供システム、快適なアメニティ(トイレの数や清潔さなど)、分かりやすい場内案内とスムーズな動線設計、そして最新テクノロジーを活用した情報提供やエンターテイメント演出など、あらゆる面でファン満足度を最大限に高める努力が求められます 1

多目的利用の柔軟性と積極性: サッカーの試合開催を主軸としつつも、コンサート、展示会、企業イベント、地域住民向けの行事など、サッカー以外のイベントを積極的に誘致し、スタジアムの年間稼働率を高めることが収益性向上に繋がります。そのためには、開閉式屋根や可動席、床転換システムなどの設備投資も戦略的に検討する必要があります 87

テクノロジー活用の深化: スタジアム内の完全キャッシュレス化、公式スタジアムアプリの開発・普及、質の高い無料Wi-Fi環境の整備はもはや標準装備と言えます。さらに一歩進んで、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)技術を用いた新たな観戦体験の提供、AI(人工知能)を活用したパーソナライズされた情報提供やサービスの実現など、より高度なテクノロジー活用が期待されます 1

多様な収益モデルの確立: 伝統的なチケット収入への依存から脱却し、収益源を複線化することが不可欠です。高付加価値なプレミアムシートやホスピタリティパッケージの販売、スタジアムのネーミングライツ契約、多様なカテゴリーのスポンサーシップ獲得、試合日以外の施設レンタル収入、さらにはスタジアム運営ノウハウを活かしたコンサルティング事業など、あらゆる可能性を追求すべきです 4

他スポーツ、特に日本国内のプロ野球やBリーグの成功事例は、日本のスポーツファンがスタジアムやアリーナにどのような「体験価値」を求めているのか、その具体的なヒントを示しています。エスコンフィールドHOKKAIDO 81 や沖縄アリーナ 81 は、単に競技を観戦する場所としてだけでなく、食事や買い物、様々なエンターテイメントを楽しめる空間としての価値を追求し、多くのファンを魅了しています。これらの施設が提供する、飲食の充実、多様な観戦スタイルへの対応、試合以外の楽しみの創出といった要素は、Jリーグスタジアムが見習うべき点を多く含んでいます。Jリーグが実施した観戦者調査においても、試合後のスタジアム体験の満足度の低さなどが課題として指摘されており 110、他スポーツにおける「試合日全体のエンターテイメント化」戦略は、この課題解決の糸口となり得ます。Jリーグスタジアムは、他スポーツの成功要因を丹念に分析し、サッカー特有の文化や情熱と融合させることで、ライト層やファミリー層といった新たなファン層を開拓し、「試合+α」の魅力を高めていくことができるはずです。

また、スタジアムの「多目的利用」は、単に施設の空き時間を埋めるための対症療法的な手段ではなく、スタジアム自体が持つ「ブランド価値」と「集客力」を最大限に引き出すための戦略的アプローチとして捉えるべきです。プロ野球のドーム球場がコンサート開催によって大きな収益を上げているのは 87、その収容力と天候に左右されないという利便性があるからです。同様に、海外のサッカースタジアムも、NFLの試合や世界的なアーティストの大規模コンサートを誘致することで、国際的な知名度と収益性を高めています(例:トッテナム・ホットスパー・スタジアム 34)。これは、スタジアムが持つ「場」の力を、サッカー以外の魅力的なコンテンツにも展開することで、新たな価値を創造する試みと言えます。日本のサッカースタジアムも、どのようなイベントであればそのスタジアムの特性(立地条件、規模、雰囲気など)を最大限に活かせるのか、どのようなイベントが地域社会やファン層に響くのかを戦略的に検討し、積極的な誘致活動を行う必要があります。そのためには、イベントの種類に応じて柔軟に対応できる施設設計や運営体制の構築も求められます。

5. 日本サッカー発展のためのスタジアム戦略:求められる要素 (Stadium Strategy for Japanese Football Development: Essential Elements)

日本サッカーがさらなる高みを目指すためには、スタジアム戦略の抜本的な見直しが不可欠です。単に試合を行う場としてだけでなく、ファンを魅了し、収益を生み出し、地域社会に貢献する多機能な拠点としてのスタジアム像を追求する必要があります。ここでは、そのために求められる要素を「最高の観戦体験の提供」「稼げるスタジアムへの転換」「テクノロジーが拓く未来のファンエンゲージメント」の3つの観点から具体的に考察します。

5.1. 「最高の観戦体験」を提供するスタジアム設計 (Designing Stadiums for the “Ultimate Spectator Experience”)

ファンがスタジアムに足を運ぶ最大の動機は、そこでしか味わえない特別な観戦体験です。そのため、スタジアム設計においては、以下の要素が極めて重要となります。

ピッチとの近さと一体感: 理想は、陸上トラックを排したサッカー専用設計です。最前列の観客席からピッチまでの距離を最小限に抑えることで(例えば、欧州のトップスタジアムでは数メートル、国内ではパナソニックスタジアム吹田で約7メートル 50、エディオンピースウイング広島で約8メートル 61)、選手の息づかいやボールの音、激しいコンタクトプレーの迫力を間近に感じることができます。また、スタンドの傾斜を適切に設定すること(例えば、MLSのLower.com Fieldでは37度の急勾配を実現 112)で、後方席からでもピッチ全体を見渡しやすく、どの席からも試合に集中できる臨場感あふれる空間を創出することが求められます 55

快適な座席と視界: 全席個席化はもちろんのこと、長時間の観戦でも疲れにくい、十分な幅と足元のスペースが確保された座席が望ましいです。UEFAの基準では、背もたれの高さは最低30cmとされています 77。また、スタジアム内の柱が視界を遮ることのないよう、カンチレバー方式の屋根構造などを採用し、どの席からもストレスなくプレーを追える設計が重要です 114

屋根による全天候型対応と音響効果: 観客席の大部分、あるいは全体を覆う屋根の設置は、雨天時や夏場の強い日差しを避け、天候に左右されずに快適な観戦環境を提供するために不可欠です。さらに、屋根はスタジアム内の歓声や応援の音を効果的に反響させ、スタジアム全体の一体感を高める音響効果も期待できます 50

多様な観戦スタイルへの対応: サッカー観戦の楽しみ方は人それぞれです。熱狂的に応援したいサポーターのための立ち見応援エリア、家族連れが安心して観戦できるファミリーシート、グループで楽しめるグループシート、そして静かにじっくりと試合を分析したいファン向けのエリアなど、多様なニーズに応える座席設定が求められます。また、近年重要性が増しているVIPエリアやホスピタリティラウンジの充実も、新たなファン層の開拓や収益向上に繋がります 4

アクセシビリティの確保: 高齢者や障害を持つ人々を含め、誰もが安全かつ快適にスタジアムを利用できるよう、ユニバーサルデザインの導入は必須です。車椅子席の適切な配置と十分な数の確保、手すり付きのスロープやエレベーターの設置、多機能トイレの整備など、細やかな配慮が求められます 65。2019年に完成した日本の国立競技場のユニバーサルデザイン設計は、この点で多くの示唆を与えてくれます 65

これらの要素を追求することで、「また来たい」と思わせる魅力的な観戦空間を創り出し、ファンの満足度向上とリピーター増加に繋げることができます。

5.2. 「稼げるスタジアム」への転換:収益源の多様化と地域共創 (Transforming into “Profitable Stadiums”: Diversifying Revenue Streams and Community Co-creation)

スタジアムが持続的に発展し、クラブ経営を支えるためには、試合開催日以外の収益源を確保し、「稼げるスタジアム」へと転換することが不可欠です。

試合日以外のスタジアム活用: スタジアムの稼働率を年間を通じて高めるため、サッカーの試合がない日にも積極的にイベントを誘致・開催します。具体的には、国内外の有名アーティストによるコンサート、大規模な展示会や見本市、企業向けの会議やセミナー、地域住民が参加する祭りやイベント、さらには結婚式やパーティーといったユニークな利用も考えられます。また、スタジアムツアーや併設されたクラブミュージアムの運営も、安定した収益源となり得ます 4。鹿島アントラーズがカシマサッカースタジアムで実施している各種イベントは、その好例と言えるでしょう 76

プレミアムシートとホスピタリティ: VIPルーム、スカイボックス、ビジネスラウンジといった高付加価値なプレミアムシートエリアを充実させ、法人顧客や富裕層の需要を取り込むことが重要です。これらのエリアでは、質の高い飲食サービスの提供や特別な観戦体験の演出が求められます 4。川崎市の等々力陸上競技場に設けられたスカイテラスや、埼玉スタジアム2002のビューボックスは、国内における先進的な取り組み事例です 56

飲食・物販の強化: スタジアム内での飲食やグッズ販売は、ファンエクスペリエンス向上と収益確保の両面で重要です。多様なメニューの提供、地元食材を活かしたオリジナル料理の開発、スマートフォンアプリを利用したモバイルオーダーシステムの導入、そして完全キャッシュレス決済への移行などが求められます。また、クラブの魅力を反映した限定グッズの開発や、オンラインストアとの連携強化も、物販収益の最大化に繋がります 1

ネーミングライツとスポンサーシップ: スタジアムのネーミングライツ(命名権)販売は、大規模な収益確保の手段となります。また、スタジアム内の看板広告だけでなく、特定のエリアやサービスに関するスポンサーシップなど、多様なスポンサーシップパッケージを開発することも重要です。場内に設置されたデジタルサイネージを効果的に活用することで、広告価値を高め、スポンサーにとって魅力的な提案を行うことができます 4

複合施設化による相乗効果: スタジアム単体ではなく、ホテル、商業施設、オフィス、クリニック、レジャー施設などを併設し、スタジアムを核とした「スタジアムシティ」や「ボールパーク」のような複合的なエリアを形成することで、大きな相乗効果が期待できます。これにより、試合日以外でも地域住民や観光客を広範囲から呼び込み、新たな賑わいと収益機会を創出することができます 42。長崎スタジアムシティ 42 や、プロ野球のエスコンフィールドHOKKAIDO 46 は、日本における複合型施設の先進事例として注目されます。

地域社会との連携: スタジアムを、単にプロスポーツの興行施設としてだけでなく、地域住民の交流拠点、災害時の防災拠点、健康増進の場として積極的に活用していく視点が重要です。地元の祭りやイベントと連携した企画の実施や、Jリーグが推進する「ホームタウン活動」の理念をスタジアム運営にも活かし、地域社会との良好な関係を構築することが求められます 46。鹿島アントラーズがカシマサッカースタジアムに併設した「アントラーズスポーツクリニック」は、プロの医療ノウハウを地域住民に還元する優れた事例です 56

「最高の観戦体験」は、単に物理的な快適さだけで実現されるものではありません。ピッチとの近さや屋根の設置は、確かに物理的な快適性に大きく寄与します 77。しかし、例えばシグナル・イドゥナ・パルクの「黄色い壁」が醸し出す熱狂的な雰囲気 32 や、Jリーグのホームタウン活動が示すような地域との深いつながり 85 は、ファンの「心理的な満足度」や「帰属意識」に強く訴えかける要素です。また、テクノロジーを活用したパーソナライズされた情報提供なども 1、ファンが「自分は特別扱いされている」と感じ、エンゲージメントを深める上で効果的です。したがって、日本のスタジアム設計・運営においては、物理的なスペックの向上に加えて、ファンの感情に訴えかけ、クラブや地域との繋がりをより強く実感できるような「ソフト面」の仕掛けを、これまで以上に重視していく必要があります。

5.3. テクノロジーが拓く未来のファンエンゲージメント (The Future of Fan Engagement Opened Up by Technology)

最新テクノロジーの導入は、ファンエンゲージメントを新たな次元へと引き上げ、スタジアム体験をより豊かで便利なものに変える可能性を秘めています。

スマートスタジアム化: スタジアム全体をカバーする高速かつ安定したWi-Fi環境の整備は、あらゆるデジタルサービスの基盤として必須です 3。さらに、IoT(モノのインターネット)センサーやAI(人工知能)を活用することで、スタジアム運営の効率化を図ることができます。例えば、場内の混雑状況をリアルタイムで把握し、観客を空いているエリアへ誘導したり、トイレや売店の清掃・補充タイミングを最適化したりすることが可能になります 1

スタジアムアプリの活用: スマートフォン向けの公式スタジアムアプリは、ファンエンゲージメントの中核を担うツールとなり得ます。チケットの購入やデジタルチケットとしての利用、座席までのナビゲーション、飲食物のモバイルオーダー、試合のリアルタイム情報(スタッツ、リプレイ映像など)の提供、ファン投票やクイズといった参加型コンテンツの配信、さらにはAR/VR技術と連携した特別な体験の提供など、アプリを通じて一元的なサービスを提供することで、ファンの利便性と満足度を大幅に向上させることができます 1

キャッシュレス化の推進: スタジアム内の売店やグッズショップにおける支払いを完全にキャッシュレス化することは、ファンにとっては会計の待ち時間短縮という利便性向上に繋がり、運営側にとってはレジ業務の効率化や現金管理コストの削減といったメリットがあります 1

データ分析とパーソナライゼーション: ファンの購買履歴、アプリの利用状況、スタジアム内での行動データなどを収集・分析し、その結果に基づいて個々のファンの嗜好に合わせた情報、サービス、プロモーションを提供することで、より深いエンゲージメントを構築できます。これにより、顧客ロイヤルティの向上と、新たな収益機会の最大化が期待できます 1

没入型観戦体験: スタジアム内に設置される大型ビジョンや、客席を取り囲むように配置されるリボンビジョン、そして高品質な音響システムは、試合中の演出を強化し、観客の興奮を高めます 34。さらに、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といった最新技術を活用することで、座席にいながらにして別角度からのリプレイ映像を見たり、選手の詳細なスタッツ情報を重ねて表示したりするなど、これまでにない新たな観戦スタイルを提案することも可能です 2

「稼げるスタジアム」の実現は、クラブや自治体単独の努力だけでは限界があります。海外のスタジアム開発プロジェクトでは、多くの場合、投資ファンドや専門のコンサルタントが初期段階から関与し、高度な事業計画が策定されています(例:FCバルセロナの「エスパソ・バルサ」プロジェクト 8)。ホテルや商業施設などを併設する複合施設化は 42、不動産開発、商業施設運営、ホテル経営など、サッカー以外の専門知識を持つ多様なプレイヤーの参画が成功の鍵となります。また、先進的なテクノロジーの活用も 1、IT企業やテクノロジースタートアップとの連携が不可欠です。日本で「稼げるスタジアム」を増やしていくためには、従来の自治体主導型やクラブ単独での取り組みから脱却し、民間企業の持つ資金力、斬新なアイデア、そして専門的なノウハウを積極的に取り入れ、リスクとリターンを共有するオープンな事業スキームを構築していく必要があります。

テクノロジーの導入は、あくまで「手段」であり、「目的」そのものではありません。ファンの利便性向上や新たな体験価値の創出に真に貢献するテクノロジーを、費用対効果を十分に考慮しつつ、戦略的に選択・導入することが重要です。多くの先進技術が紹介されていますが 1、全てを導入すれば良いというわけではありません。例えば、キャッシュレス決済の導入 1 は、ファンの利便性向上と運営効率化に直結しやすいため優先度が高いと言えますが、高度なAR/VR体験の提供 2 については、導入コストや実際の利用率などを慎重に検討する必要があります。AIを活用したチケット販売の最適化やファンエンゲージメントの向上効果は期待できるものの 94、導入コストやデータプライバシーに関する課題も考慮しなければなりません。日本のスタジアムは、自らのファン層の特性やスタジアムの規模、財政状況などを総合的に踏まえ、どのテクノロジーが最も効果的かを見極める冷静な判断が求められます。単に流行に飛びつくのではなく、それがスタジアムの抱える課題解決や新たな価値創造に繋がるかという本質的な視点が不可欠です。

6. 提言:日本サッカーの未来を築くスタジアム像 (Recommendations: A Stadium Vision to Build the Future of Japanese Football)

日本サッカーが世界水準へと飛躍し、国民的スポーツとしての地位を確固たるものにするためには、スタジアムのあり方を根本から見直し、未来志向のスタジアム像を構築していく必要があります。ここでは、ハード面、ソフト面、そして官民連携の3つの側面から具体的な提言を行います。

6.1. ハード面での具体的改善策 (Concrete Improvement Measures for Hardware)

サッカー専用スタジアムへの段階的移行と既存施設の改修促進:

まず、新設されるスタジアムについては、原則としてサッカー専用設計とすることを基本方針とすべきです。具体的には、ピッチと観客席の近接性、観戦しやすい適切なスタンド傾斜、そして天候に左右されない観戦環境を提供する全周屋根(あるいはそれに準ずる高いカバー率)を標準仕様とすることが望まれます。UEFAのスタジアム品質ガイドライン 77 や、国内の成功事例であるパナソニックスタジアム吹田、サンガスタジアム by KYOCERA、エディオンピースウイング広島などの設計思想 49 は、大いに参考になります。

一方、既存の陸上競技場をホームスタジアムとして使用しているクラブに対しては、陸上トラック部分への可動席の設置や、スタンド自体の改修によるピッチへの近接化など、比較的低コストで観戦環境を大幅に改善できる改修策を検討し、その実現を促進すべきです。川崎市の等々力陸上競技場の改修計画 82 は、様々な意見があるものの、議論の対象として重要です。

多様な規模と機能を持つスタジアムモデルの提示:

全てのクラブが一律に巨大なスタジアムを目指す必要はありません。J1のトップクラブが目指すべき国際基準を満たした2.5万人~4万人規模で複合機能も充実したモデル、J2やJ3のクラブが地域密着型で運営効率を重視した1万人~2万人規模のモデルなど、各クラブのカテゴリーや地域特性、財政状況に応じた複数の標準的なスタジアムモデルを開発し、提示・推奨することが有効です。

表4:日本のスタジアムの課題と海外の先進事例からの示唆

課題海外の先進事例における解決策/アプローチ日本への適用可能性と具体的方策
ピッチとの距離が遠く臨場感に欠けるサッカー専用設計、急傾斜スタンド、ピッチレベルシートの導入(例:トッテナム・ホットスパー・スタジアム、MLSの多くの新スタジアム)新設スタジアムは原則専用設計。既存陸上競技場は可動席設置やスタンド改修を検討。Jリーグのスタジアム基準でピッチとの近さをより重視。
収益性が低い(特に試合日以外)多目的利用(コンサート、他スポーツ、企業イベント)、スタジアムツアー、ミュージアム併設、プレミアムシート・ホスピタリティの充実(例:サンティアゴ・ベルナベウ、カンプ・ノウ)試合日以外のイベント誘致専門チームの設置、魅力的なスタジアムツアーの開発、地域ニーズに合った商業・飲食施設の併設、多様なプレミアム商品の開発。
多機能性が乏しい開閉式屋根、可動式・格納式ピッチの導入による柔軟なスペース活用、複合施設化(ホテル、商業施設、オフィス等)(例:メルセデス・ベンツ・スタジアム、長崎スタジアムシティ構想)新設時は多機能性を考慮した設計。既存施設でも可能な範囲での多目的スペース確保。官民連携による周辺一体開発の推進。
老朽化が進んでいる施設が多い定期的な大規模改修、最新技術の導入による近代化、ファンエクスペリエンス向上のための継続的な投資(例:オールド・トラッフォードの改修計画、多くの欧州トップクラブ)国や自治体による改修補助制度の拡充。クラブ自身も中長期的な改修計画を策定し、資金を積み立てる。
テクノロジー導入の遅れスマートスタジアム化(高速Wi-Fi、スタジアムアプリ、キャッシュレス決済、データ分析によるパーソナライズ)(例:アリアンツ・アレーナ、SoFiスタジアム)Wi-Fi環境整備を最優先。段階的なキャッシュレス化。Jリーグ主導での共通プラットフォームアプリ開発支援。データ活用人材の育成。

情報源: 本レポートのセクション2.2, 3.2, 3.3, 5.1, 5.2, 5.3から課題と解決策を抽出。

質の高い天然芝/ハイブリッド芝ピッチの維持管理技術の共有と支援: 美しいピッチは選手のパフォーマンス向上だけでなく、観客の満足度にも繋がります。南長野運動公園総合球技場で見られるような、日照や通風を考慮した設計や高度な散水システムといったピッチ管理技術 56 の情報をJリーグ全体で共有し、必要に応じて技術的・財政的支援を行うべきです。

環境配慮型スタジアムの推進: 持続可能な社会の実現に向けて、スタジアムも環境負荷低減に貢献する必要があります。太陽光発電システムの導入 57、雨水の有効活用 65、地元産木材の積極的な利用 54、省エネルギー設備の導入など、サステナビリティを重視した設計・運営を推進します。この点では、国立競技場の先進的な取り組み 65 が参考になります。

6.2. ソフト面(運営・イベント活用・地域連携)での革新 (Innovation in Software: Operations, Event Utilization, Community Partnership)

優れたハードウェア(施設)も、それを活かすソフトウェア(運営)が伴わなければ真価を発揮できません。

スタジアム運営の専門人材育成とノウハウ共有: 効果的なスタジアムマネジメント、魅力的なイベントの企画・誘致、戦略的なマーケティング、最新テクノロジーの活用といった分野で専門知識を持つ人材の育成が急務です。Jリーグや関連団体が主導する研修プログラムの充実や、海外の専門家との連携強化、成功事例の共有などを積極的に行うべきです。

「スタジアム株式会社」のような独立採算型運営組織の設立支援: 地方自治体が所有するスタジアムであっても、その運営は民間のノウハウを最大限に活かせる独立した組織に委託することで、収益性の向上と柔軟な意思決定を促進できます。このような運営形態の導入を支援する制度作りが求められます。

試合日以外のイベントカレンダーの戦略的構築: スタジアムの立地や特性、地域のニーズ、そして市場の動向を詳細に分析し、年間を通じたイベントカレンダーを戦略的に構築する必要があります。国内外のアーティストによるコンサート、大規模な展示会や見本市、eスポーツ大会、フードフェスティバル、市民参加型のスポーツイベントなど、多様なコンテンツを計画的に誘致・開催することで、スタジアムの稼働率と収益性を高めます。

地域資源(観光、文化、産業)との連携強化: スタジアムを単独の施設として捉えるのではなく、地域の観光ハブとして機能させることを目指します。周辺の観光地、文化施設、地場産業と連携した共同プロモーションや、スタジアム訪問と組み合わせたツアー商品の開発、地域特産品を扱うショップの併設などが考えられます。エディオンピースウイング広島の、平和公園や市内観光施設との連携を意識した取り組みは注目に値します 63

ファンエンゲージメントプログラムの高度化: 収集したファンデータの分析に基づき、個々のファンに対してパーソナルなコミュニケーションを図り、特別な体験を提供することが重要です。効果的なロイヤルティプログラムの設計、スタジアムアプリを通じた双方向のやり取りの活性化、限定イベントへの招待などが考えられます。Jリーグが実施した観戦体験分析レポート 110 から得られる知見を積極的に活用し、ファンのニーズを的確に捉えた施策を展開すべきです。

6.3. Jリーグ、自治体、民間が連携した次世代スタジアム構想 (A Next-Generation Stadium Concept through J.League, Local Government, and Private Sector Collaboration)

次世代のスタジアムを実現するためには、関係する多様なステークホルダーの連携が不可欠です。

官民連携(PPP/PFI)によるスタジアム整備・運営モデルの推進: スタジアムの建設や大規模改修には莫大な資金が必要となるため、資金調達、リスク分担、そして効率的な運営を実現する上で、多様な官民連携スキーム(PPP: Public Private Partnership / PFI: Private Finance Initiative)を積極的に活用すべきです。長崎スタジアムシティ 42 や川崎新アリーナ計画 43 のような、民間企業が主導する民設民営の動きは、今後のモデルケースとして参考になります。

スタジアム建設・改修のための新たな資金調達スキームの検討: 従来の自治体予算やクラブの自己資金だけに頼るのではなく、スポーツ振興くじ(toto)の助成金活用範囲の拡大、クラウドファンディングによる市民参加型の資金調達、スタジアム建設のための特別目的債(スタジアム債)の発行、地域貢献を目的とした投資ファンドの組成など、新たな資金調達スキームを多角的に検討・導入する必要があります。パナソニックスタジアム吹田が、その建設資金の多くを個人や企業からの寄付金によって賄った事例は 50、日本におけるユニークな資金調達の成功例として特筆すべきです。

国・スポーツ庁による戦略的支援と規制緩和: 国やスポーツ庁は、スタジアム・アリーナ改革を国家戦略の一環として位置づけ、より積極的な支援策を講じるべきです。具体的には、スタジアム建設・改修に対する財政支援制度の拡充、関連する税制優遇措置の導入、容積率の緩和といった都市計画上の配慮、そして複合施設開発や多目的利用を促進するための関連法規制の見直しなどが求められます。スポーツ庁が推進する「スタジアム・アリーナ改革」 43 を、さらに加速・深化させていく必要があります。

「スタジアム特区」のような先進的取り組みを許容する制度設計: 特定の地域において、大胆な複合開発や多機能化、運営の自由度を高める実験的な取り組みを可能にする「スタジアム特区」のような制度を設けることも検討に値します。これにより、先進的なスタジアムモデルの創出を後押しし、成功事例を全国に波及させることが期待できます。

日本のスタジアム改革の成功は、単一の施策によって達成されるものではありません。「ハードウェアの進化」「ソフトウェアの革新」「制度・システムの最適化」という三つの要素が、互いに連携し、相乗効果を生み出す「三位一体」の取り組みが不可欠です。まず、サッカー専用化や設備の近代化といったハード面の改善は、魅力的な観戦体験を提供する上での基本的な土台となります(6.1で詳述)。しかし、どれほど素晴らしい施設であっても、それを最大限に活かす運営ノウハウや魅力的なコンテンツといったソフト面の充実が伴わなければ、まさに「宝の持ち腐れ」となってしまいます(6.2で詳述)。そして、これらのハード・ソフト両面の取り組みを力強く後押しし、その実現を加速させるためには、資金調達手段の多様化や大胆な規制緩和といった制度的なサポートが不可欠となるのです(6.3で詳述)。Jリーグ、各クラブ、地方自治体、そして国や関連省庁、さらには民間企業が、それぞれの役割と責任を明確に認識し、緊密に連携しながら、この三つの要素を同時に推進していく必要があります。これは一朝一夕に成し遂げられるものではなく、長期的な視点と戦略的なロードマップに基づいた、息の長い取り組みが求められます。

さらに、スタジアム改革は、単にサッカー界内部の課題解決に留まるものではありません。それは、「地方創生」「都市再生」「国民の健康寿命延伸」「国際交流の促進」といった、より広範な社会的課題の解決にも貢献しうる大きなポテンシャルを秘めています。ホテルや商業施設を併設した複合型スタジアム 42 は、新たな雇用機会を創出し、地域経済を活性化させる力を持っています(地方創生・都市再生への貢献)。スタジアムにクリニックや健康増進施設を併設する試み 46 は、地域住民の健康寿命延伸に直接的に貢献します。また、国際試合や大規模なエンターテイメントイベントの誘致は、国際交流を促進し、開催都市の国際的な魅力を高めることに繋がります。Jリーグが長年培ってきたホームタウン活動 85 は、スタジアムを新たな活動拠点とすることで、さらに多様なコミュニティプログラムを展開し、地域社会の絆を深めることができるでしょう。このように、スタジアム改革の意義を、サッカーファンや関係者だけでなく、広く社会全体に訴求し、多様なステークホルダーからの理解と協力を得ることが、プロジェクトを成功に導くための重要な鍵となります。スタジアムは、もはや単なるスポーツ施設ではなく、地域社会を豊かにする「社会インフラ」として再定義されるべきなのです。

7. おわりに (Conclusion): スタジアム改革がもたらす日本サッカーの飛躍 (The Leap Forward for Japanese Football through Stadium Reform)

本レポートで詳述してきたように、スタジアムは、日本サッカーが次のステージへと飛躍するための、極めて重要な鍵を握っています。単に試合を行う場所というだけでなく、ファンに最高の観戦体験を提供し、クラブに安定的な収益をもたらし、そして地域社会に新たな価値を創造する拠点としての可能性を秘めているのです。

観戦体験の劇的な向上は、より多くのファンをスタジアムに呼び込み、サッカーへの関心を高めます。収益力の強化は、クラブ経営の安定化に繋がり、選手育成やチーム強化への投資を可能にし、ひいては日本サッカー全体の競争力向上に貢献します。そして、地域社会への貢献は、サッカーが地域に深く根付き、愛される存在となるための基盤を築きます。これら多面的な価値を持つスタジアムを実現することこそが、Jリーグの魅力を一層高め、日本サッカーを新たな高みへと導く道筋となるでしょう。

そのためには、本レポートで示したように、海外の先進事例に学びつつも、それを鵜呑みにするのではなく、日本の気候風土、文化、社会経済状況といった独自の特性を活かした、日本ならではのスタジアム像を追求していく必要があります。ピッチと観客席の近さ、快適な観戦環境といった普遍的な要素は取り入れつつも、例えば日本の「おもてなし」の精神を活かしたホスピタリティや、Jリーグが長年培ってきた「地域密着」の強みを最大限に発揮できるようなコミュニティ機能の充実など、日本独自の付加価値を追求すべきです 59

世界のトップスタジアムも、一度完成したら終わりではなく、時代の変化やファンのニーズに応じて、数十年ごとに大規模な改修や建て替えを行っています 11。テクノロジーの進化やファンの嗜好の変化は日進月歩であり、スタジアムもまた、それに合わせて継続的に進化し、適応していく必要があります。将来の拡張性や改修の容易さ、新たな技術トレンドへの対応力などを、スタジアムの初期設計段階から織り込んでおくこと、そして完成後も定期的な効果検証と改善サイクルを確立していくことが、スタジアムの価値を持続的に高めていく上で不可欠です 4

スタジアム改革は、決して容易な道のりではありません。しかし、Jリーグ、各クラブ、自治体、政府、そして民間企業が、それぞれの役割を認識し、知恵と力を結集して、この壮大なプロジェクトに一丸となって取り組むならば、必ずや道は拓けます。その継続的な努力と戦略的な投資こそが、日本サッカーの明るい未来を切り拓き、国民に夢と感動を与え続ける存在へと押し上げる原動力となるでしょう。スタジアム改革は、日本サッカーの未来への投資であり、その果実を享受するのは、私たち自身、そして次世代のサッカーファンなのです。

引用文献

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