I. はじめに:シティ・フットボール・グループ(CFG)とは? – その野心とグローバル戦略の序章
シティ・フットボール・グループ(City Football Group、以下CFG)は、現代サッカー界において最も影響力のある組織の一つとして、その名を轟かせています。単に複数のサッカークラブを所有するだけでなく、独自のビジネスモデルと明確なビジョンに基づき、世界規模でサッカー事業を展開するこの複合企業体は、ピッチ内外で革新的な取り組みを続けています。本稿では、CFGの設立背景からその理念、そして彼らがどのようにして現在の地位を築き上げたのか、その強さの秘訣を国内外の文献を参照しながら多角的に解説します。


A. CFG設立の背景とフェラン・ソリアーノCEOのビジョン
CFGが正式に設立されたのは2013年5月のことですが、その構想の萌芽は、設立以前のキーパーソンの思想に深く根差しています 1。グループの誕生と発展を理解する上で不可欠な人物が、FCバルセロナの元副会長であり、現在CFGの最高経営責任者(CEO)を務めるフェラン・ソリアーノ氏です 1。
ソリアーノ氏は、バルセロナ在籍時から、サッカークラブを核としたグローバルな事業体を構築するという野心的なビジョンを抱いていました。その構想には、バルセロナブランドの海外アカデミー設立から始まり、メジャーリーグサッカー(MLS)へのフランチャイズ展開も含まれていましたが、当時のバルセロナの内部事情により、これらの計画は完全には実現しませんでした 2。しかし、サッカー経営から一時離れた後、2012年後半にマンチェスター・シティFCのCEOに就任したことで、ソリアーノ氏のグローバル戦略への野望は再燃します。彼はMLSコミッショナーのドン・ガーバー氏との対話を再開し、その結果として2013年5月、ニューヨーク・シティFC(NYCFC)がMLSの20番目の拡張チームとして発表されるに至りました 2。このNYCFC設立の過程で、マンチェスター・シティとNYCFC双方を傘下に収める持株会社としてCFGが正式に設立されたのです。
この設立経緯は、CFGが単なる思いつきや偶発的なクラブ買収の連続によって生まれたのではなく、ソリアーノ氏という稀代の経営者による長期的かつ明確なビジョンに基づいた戦略的行動の結果であることを示しています。彼がバルセロナ時代に描いたものの、完全には実現できなかった壮大な構想が、マンチェスター・シティという新たなプラットフォームと、アブダビ・ユナイテッド・グループからの潤沢な資金力を得ることで、CFGという形で具現化したと言えるでしょう。これは、先進的なアイデアがいかにして適切な環境とリソースを得て実現可能になるかを示す好例です。そして、このCFGの成功は、後に他の投資家やグループがマルチクラブ・オーナーシップ(MCO)モデルを模倣する大きなきっかけとなり、サッカー界におけるクラブ経営のあり方そのものに一石を投じることになりました 3。ソリアーノ氏が実践した「ビジョンを描き、そのための戦略を緻密に立てて実践する」ことの重要性は、CFGの成功を通じて明確に示されています 4。
B. CFGの理念と目的:「グローバル・フットボール・エンターテイメント組織」を目指して
CFGの活動は、単にサッカークラブを運営し、試合に勝利することだけに留まりません。彼らはより広範な理念と野心的な目的を掲げています。CFGの公式ウェブサイトによれば、その目的は「サッカーを通じてより良い生活を実現する(To empower better lives through football)」ことであり、野心は「世界最高のスポーツエンターテイメント組織になること(To be the world’s best sports entertainment organisation)」です 5。この理念は、CFGがピッチ上の成功だけでなく、ファン体験、スポーツエンターテイメント、商業的機会、そしてコミュニティへの貢献といった多岐にわたる側面において、一貫したアプローチを開拓し提供することを目指していることを示しています 6。
CFGは、傘下の各クラブが「それぞれのファンとコミュニティに対して本物であり続け、面白いサッカーをし、ピッチ内外で世界最高の専門知識を応用するグローバル組織の一員であることから利益を得ることを保証する」というアプローチを取っています 6。ここで注目すべきは、「面白いサッカー(entertaining football)」6 という言葉であり、これはソリアーノCEOが繰り返し言及する「ビューティフル・フットボール」7 という概念と軌を一にしています。これは単なるスローガンではなく、CFG傘下のクラブ群に共通して浸透させようとしている特定のプレースタイルやフットボール哲学を示唆しており、グループ全体のブランドイメージの統一性と、特定のスタイルを好むファン層へのアピールに繋がる重要な要素と考えられます。
ソリアーノ氏の著書『Goal: The Ball Doesn’t Go In By Chance』で述べられた、クラブブランドの自然な進化としてのグローバル展開や、海外リーグでのフランチャイズクラブ設立の可能性といったアイデアは、まさにCFGの現在の姿を予見していたかのようです 2。外国人ファンへのアピールや、彼らに自国のクラブと提携したチームを応援させることで忠誠心を高めるという考え方も、CFGの戦略の根底にあると言えるでしょう。このアプローチは、エミリーオン・ビジネススクールのサイモン・チャドウィック教授によって「ディズニー化(Disneyfication)」と名付けられました 2。
CFGがサッカークラブ運営を超えた「スポーツエンターテイメント組織」としてのアイデンティティを志向していることは明らかです。そして、「サッカーを通じてより良い生活をエンパワーする」という理念 5 は、世界各地でのコミュニティ活動や社会貢献イニシアチブ 8 と具体的に結びついています。これは、単なる商業的成功を目指すだけでなく、企業としての社会的責任を果たし、持続可能な成長と社会からの広範な受容性を高めるための重要な戦略です。特に、後述するマルチクラブ・オーナーシップ(MCO)モデルに対する一部の批判 9 を考慮すると、こうした社会貢献活動は、CFGのブランドイメージを肯定的に保ち、批判を緩和する上で重要な役割を担っている可能性があります。
II. CFGビジネスモデルの核心:マルチクラブ・オーナーシップ(MCO)徹底解剖
CFGの強さの根幹を成すのが、マルチクラブ・オーナーシップ(Multi-Club Ownership、以下MCO)と呼ばれる革新的なビジネスモデルです。このセクションでは、MCO戦略の定義から、CFGがどのようにしてこのモデルを世界規模で展開し、シナジーを生み出しているのか、そしてその光と影について徹底的に分析します。
A. MCO戦略の定義とCFGによる展開
MCOとは、複数のサッカークラブを単一の組織や企業が所有・運営するビジネスモデルを指します 3。CFGは、まさにこのMCO戦略をサッカー界で先駆的に、かつ大規模に展開してきた組織です。2013年の設立当初、CFGはイングランドのマンチェスター・シティFCと、アメリカのメジャーリーグサッカー(MLS)に新規参入したニューヨーク・シティFC(NYCFC)を統括する持株会社としてスタートしました 2。
その後、CFGは驚異的なスピードでそのネットワークを拡大していきます。2014年初頭には、オーストラリアAリーグのメルボルン・ハートFC(後にメルボルン・シティFCに改名)の経営権を取得 2。同年には、日本の横浜F・マリノスへの少数株主としての資本参加も発表されました 10。さらに、2017年にはウルグアイのCAトルケ(後にモンテビデオ・シティ・トルケに改名)、スペインのジローナFCへと、その触手を南米やヨーロッパ大陸の他の主要リーグへと広げていきました 2。
CFGのMCO戦略は、単にクラブの数を増やすことだけが目的ではありません。世界各地に戦略的に配置されたクラブ群をネットワーク化し、それぞれが持つリソース(スカウティング情報、育成ノウハウ、商業的機会など)をグループ全体で共有・最適化することで、個々のクラブの価値向上はもちろんのこと、CFGグループ全体の企業価値を飛躍的に高めることを目指しています 12。
特筆すべきは、CFGのMCO戦略が時間とともに進化している点です。初期においては、マンチェスター・シティのブランドアイデンティティ(例えば、スカイブルーのキットや類似したエンブレムデザイン)を他のクラブ(NYCFC、メルボルン・シティFCなど)にも展開し、グループとしての統一感を前面に出す「シティ」ブランドのグローバルな浸透、いわゆる「ディズニー化」戦略が重視されていました 2。しかし、マンチェスター・シティ・アカデミーの成功や、若手選手の育成と移籍による収益の可能性が明らかになるにつれて、CFGの戦略は変化を見せ始めます。有望な若手選手を早期に発掘・育成し、グループ内のクラブで経験を積ませた後にトップクラブへ供給するか、あるいは高額な移籍金で他クラブへ売却するという、より持続可能で収益性の高い「タレント・サプライチェーン」の構築へと重点がシフトしてきたのです 2。この戦略的進化は、CFGが市場の変化や自らの成功体験から学び、柔軟に戦略を適応させている証左と言えるでしょう。このMCOモデルによって、CFGは単独のクラブでは達成困難な「規模の経済」と「範囲の経済」(例えば、グローバルなスカウティングネットワークの効率的運用や、複数の市場での同時多発的な商業展開など)を実現し、サッカー界における強力な競争優位性を確立しています 12。
B. 世界に広がるCFGネットワーク:主要傘下クラブとパートナークラブ
CFGのグローバルネットワークは、2024年現在、世界13クラブに及び、その地理的範囲は5大陸に広がっています 5。イングランドのプレミアリーグに君臨するマンチェスター・シティFCを筆頭に、アメリカ(ニューヨーク・シティFC)、オーストラリア(メルボルン・シティFC)、日本(横浜F・マリノス)、ウルグアイ(モンテビデオ・シティ・トルケ)、スペイン(ジローナFC)、中国(深圳鵬城FC、旧四川九牛足球倶楽部)、インド(ムンバイ・シティFC)、ベルギー(ロンメルSK)、フランス(トロワAC)、イタリア(パレルモFC)、そしてブラジル(ECバイーア)と、主要なサッカー市場および成長市場に戦略的にクラブを配置しています 2。
これら直接的な資本関係にあるクラブに加え、CFGはパートナークラブという形態でもネットワークを拡大しています。代表的な例として、ボリビアの強豪クルブ・ボリバルやフランスのヴァンヌOCなどが挙げられます 2。これらのパートナークラブに対しては、CFGは直接的な株式保有は行わないものの、スカウティング情報の共有、育成ノウハウの提供、あるいは経営面でのコンサルティングなどを通じて協力関係を築き、間接的にCFGネットワークの価値向上に貢献しています。このような柔軟なパートナーシップ戦略は、資本投下を抑えつつ、地理的なリーチを拡大し、特定地域の専門知識やタレントプールへのアクセスを確保する効率的な手段となっています。特に、クルブ・ボリバルのような南米の有力クラブとの提携は、同地域の豊富な若い才能を発掘する上で極めて重要な意味を持ちます。
以下に、CFGの主要な傘下クラブおよびパートナークラブをまとめた表を示します。
クラブ名 (日本語表記) | クラブ名 (英語表記) | 国 | 所属リーグ/ディビジョン (主なもの) | CFG参加形態 (主なもの) | CFG参加年 | 特記事項 (例) |
マンチェスター・シティFC | Manchester City FC | イングランド | プレミアリーグ | 旗艦クラブ、完全保有 (アブダビ・ユナイテッド・グループ経由) | 2008年 | プレミアリーグ、FAカップ、UEFAチャンピオンズリーグなど多数のタイトル獲得 15 |
ニューヨーク・シティFC | New York City FC | アメリカ | メジャーリーグサッカー (MLS) | 共同出資 (マンチェスター・シティFCとニューヨーク・ヤンキース) 17 後にCFGが主要株主 | 2013年 | MLSカップ優勝 (2021年) 17。米国市場開拓の拠点。 |
メルボルン・シティFC | Melbourne City FC | オーストラリア | Aリーグ・メン | 当初株式80%取得、後に100%保有 10 | 2014年 | Aリーグ優勝 (2020-21年) 19。オーストラリア及びアジア太平洋市場の拠点。旧メルボルン・ハートFC。 |
横浜F・マリノス | Yokohama F. Marinos | 日本 | J1リーグ | 少数株主として資本参加 (日産自動車が筆頭株主) 10 | 2014年 | J1リーグ優勝 (2019年、2022年) 20。日産自動車とのグローバルパートナーシップの一環。アジア市場でのプレゼンス強化。 |
モンテビデオ・シティ・トルケ | Montevideo City Torque | ウルグアイ | プリメーラ・ディビシオン (変動あり) | 買収 10 | 2017年 | 南米の若手タレント発掘・育成拠点。旧CAトルケ。 |
ジローナFC | Girona FC | スペイン | ラ・リーガ (変動あり) | 株式の過半数を取得 (ペレ・グアルディオラ氏のメディア・ベース社と共同経営) 10 | 2017年 | UEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得 (2023-24シーズン) 23。欧州主要リーグでの競争力強化。 |
深圳鵬城FC (旧 四川九牛) | Shenzhen Peng City FC | 中国 | 中国サッカー・スーパーリーグ (変動あり) | 株式取得 10 | 2019年 | 中国市場への本格参入拠点。2024年に深圳へ移転し改名 25。 |
ムンバイ・シティFC | Mumbai City FC | インド | インディアン・スーパーリーグ (ISL) | 株式の過半数を取得 10 | 2019年 | ISL優勝 (2020-21年、2022-23年リーグシールド) 26。インド市場開拓とアジア戦略の一環。 |
ロンメルSK | Lommel SK | ベルギー | チャレンジャー・プロ・リーグ (2部相当) | 買収 10 | 2020年 | 欧州における若手育成拠点。斉藤光毅選手が過去に在籍 29。 |
トロワAC | ES Troyes AC | フランス | リーグ・ドゥ (変動あり) | 買収 10 | 2020年 | フランスの若手タレント発掘・育成拠点。サヴィーニョ選手が形式上所属していた 31。 |
パレルモFC | Palermo FC | イタリア | セリエB (変動あり) | 株式の過半数を取得 10 | 2022年 | イタリア市場への進出。歴史あるクラブの再建と育成。 |
ECバイーア | Esporte Clube Bahia | ブラジル | カンピオナート・ブラジレイロ・セリエA | 株式の90%を取得 10 | 2023年 | 南米(特にブラジル)の巨大なタレントプールへのアクセス拠点。 |
クルブ・ボリバル | Club Bolívar | ボリビア | ボリビアリーグ | パートナークラブ 2 | 2021年 | CFG初のパートナークラブ。ボリビア国内最多優勝回数を誇る名門 13。南米でのスカウティングネットワーク強化。 |
ヴァンヌOC | Vannes OC | フランス | フランス全国選手権2 (4部相当) | パートナークラブ 2 | 2021年 | フランスにおける地域ネットワーク。トロワACとの関連性も指摘される 2。 |
イスタンブール・バシャクシェヒルFK | İstanbul Başakşehir F.K. | トルコ | スュペル・リグ | パートナークラブ (サッカー戦略、スカウト、コーチング方法論の改善協力) 2 | 2024年 | トルコ市場との連携。CFGのノウハウ提供。 |
ゲイラン・インターナショナルFC | Geylang International FC | シンガポール | シンガポールプレミアリーグ | パートナークラブ (東南アジア初のパートナークラブ) 2 | 2023年 | 東南アジア市場への足掛かり。将来的な戦略的パートナーシップへの発展可能性 2。 |
この広範かつ戦略的に構築されたクラブネットワークは、CFGが単なるクラブの集合体ではなく、一つの有機的なエコシステムとして機能していることを示しています。確立されたサッカー市場(イングランド、スペイン、イタリア、フランス)と、成長著しい新興市場(アメリカ、中国、インド、ブラジル)の両方をカバーすることで、CFGは多様なタレントプールへのアクセス、グローバルなブランド露出、そして新たな商業的機会の獲得を可能にしています。
さらに、CFGのクラブ買収やパートナーシップ締結の背後には、純粋なサッカービジネスの論理だけでなく、親会社であるアブダビ・ユナイテッド・グループの地政学的・経済的ネットワーク拡大という、より大きな戦略的意図が働いている可能性も指摘されています 39。例えば、中国市場への進出(深圳鵬城FCの買収)は、中国との経済的な結びつきを強化する狙いも含むかもしれません。これは、CFGの活動が単なるスポーツビジネスの枠を超え、より広範な国際関係や経済戦略の一翼を担っている可能性を示唆しており、その動向は引き続き注目されます。
C. MCOが実現するシナジー:スカウティング、選手育成、商業展開の連携
MCOモデルの最大の強みは、グループ全体でのリソース共有と最適化によって生まれるシナジー効果にあります。CFGはこのシナジーをスカウティング、選手育成、そして商業展開という三つの主要分野で巧みに活用し、グループ全体の競争力を高めています。
まず、スカウティングにおいては、グローバルなネットワークが絶大な威力を発揮します。CFGのディレクター・オブ・オペレーションズ・デベロップメントであるドン・ドランスフィールド氏が述べているように、「より多くのスカウトが、より多くの場所で、より多くの試合を観戦し、より多くの選手を観察し、より良いデータと情報を収集できる」体制が整っています 12。これにより、世界中の有望な才能を早期に発見し、獲得競争で優位に立つことが可能になります。収集されたデータはグループ内で共有され、選手の潜在能力や将来性に関するより正確な投資判断へと繋がります。
次に、選手育成においては、CFG傘下のクラブ群が、選手の成長段階や特性に応じた育成プラットフォームとして機能します。若手選手は、まず育成に特化したクラブ(例えば、ベルギーのロンメルSKやウルグアイのモンテビデオ・シティ・トルケなど)で実戦経験を積み、その後、より競争レベルの高いリーグのクラブへとステップアップしていくキャリアパスが用意されています 3。この過程で、選手は異なる国やリーグのサッカー文化に触れ、適応力を養うことができます。最終的には、マンチェスター・シティのようなトップクラブで活躍するか、あるいは市場価値が高まった段階で他クラブへ移籍し、CFGに多額の移籍金収入をもたらすこともあります 3。ブラジル人ウィンガーのサヴィーニョ選手は、CFG傘下のトロワACに加入後、オランダのPSVアイントホーフェン、そして同じくCFG傘下のジローナFCへのローン移籍を経て、その才能を開花させ、最終的にマンチェスター・シティへと移籍しました 31。このような事例は、CFGのMCOモデルが選手の才能を計画的に育成し、その価値を最大化する一種の「垂直統合モデル」として機能していることを示しています。
商業展開においても、MCOは大きなメリットをもたらします。CFGは、世界中に広がるクラブネットワークを背景に、グローバル企業に対して魅力的なスポンサーシップ・プラットフォームを提供できます 12。例えば、スポーツ用品大手のプーマ社とは、マンチェスター・シティだけでなく、CFGグループ全体をカバーする包括的なパートナーシップ契約を締結しています 39。これにより、プーマは世界各地の多様なファン層にリーチでき、CFGは単独のクラブでは獲得困難な規模の大型契約を確保できます。ドン・ドランスフィールド氏は、新たなクラブや事業が加わることの相乗効果を「1+1=3になる」と表現しており 12、これはMCOが単なるクラブの足し算以上の価値を生み出すことを的確に示しています。
さらに、CFGは傘下クラブ間で戦術的アプローチ、トレーニング方法、運営ノウハウといった「知的財産」を共有し、グループ全体で一定の品質基準、いわば「シティ・ウェイ」のようなものを確立しようとしていると考えられます 6。シティ・フットボール・ジャパンの利重孝夫氏も、CFGが持つ「メソッドやシステムは素晴らしい」と述べており 4、これがグループ全体のパフォーマンス向上とブランドの一貫性維持に貢献しています。このように、CFGのMCO戦略は、スカウティング、選手育成、商業活動、そして運営ノウハウの各側面において、個々のクラブでは達成不可能な規模と範囲の経済性を実現し、強力なシナジーを生み出しているのです。
D. MCOの光と影:メリット、デメリット、そして直面する課題
CFGが推進するMCOモデルは、疑いなく多くのメリットをグループにもたらしています。リソースの最適活用、グローバルなスカウティング網の構築、効率的な選手育成とそれによる移籍金収入の獲得、多様な市場での商業展開、そして経営リスクの分散などは、その代表的な利点です 3。しかし、この革新的なビジネスモデルは、同時に様々な課題や批判にも直面しており、その「光と影」を客観的に理解することが不可欠です。
最大の懸念事項の一つは、スポーツにおける「公平性」への影響です。同一オーナーシップ下にある複数のクラブが同じリーグや大陸選手権で競合する場合、利益相反が生じる可能性が指摘されています 3。例えば、一方のクラブがもう一方のクラブに有利になるような選手の移籍や試合結果の操作が行われるのではないか、という疑念です。UEFA(欧州サッカー連盟)もこの問題を認識しており、同一オーナー下のクラブが同じ大会に出場する際の条件を設けるなど、規制の動きを見せています 9。
また、ファンの視点からは、クラブの「アイデンティティの希薄化」が深刻な問題として捉えられています 9。特に、歴史あるクラブが巨大なMCOの一部に組み込まれる際、そのクラブが長年培ってきた独自の文化や伝統、地域コミュニティとの繋がりが軽視され、単なるグローバル戦略の一コマ、あるいは若手選手の育成・供給拠点(いわゆる「フィーダークラブ」)として扱われることへの反発は少なくありません。スペインのジローナFCのサポーターが、CFGによる買収後のクラブアイデンティティについて複雑な感情を抱いている事例 44 や、一部のMCOでクラブが「食い物にされる(cannibalise a club)」といった過激な表現で批判されること 9 は、この問題の根深さを示しています。これは、CFGが公式に掲げる「各クラブがファンとコミュニティに対して本物であり続ける(authentic to its fans and community)」6 という理念と、MCOの構造的特性(グローバルな視点からの最適化)との間に、現実的なギャップや緊張関係が生じやすいことを示唆しています。
さらに、MCOの経営は非常に複雑であり 43、そのオーナーシップ構造が不透明であるとの批判も絶えません 9。多数のクラブを傘下に持ち、国境を越えて資金や選手が移動するMCOの全体像を把握することは容易ではなく、これが財務の透明性や説明責任に関する疑念を生む一因となっています。
CFGのような大規模MCOの台頭は、結果として、UEFAや各国サッカー協会、リーグ機構に対し、クラブ所有権のあり方、選手移籍のルール、そして競技の公平性を担保するための既存の規制を見直し、より複雑化した現代のクラブ所有構造に対応できる新たなルール作りを迫る「触媒」としての役割も果たしています 9。CFGの事例は、規制当局にとって、今後のMCO規制のあり方を検討する上で重要なケーススタディとなっているのです。このように、MCOモデルは効率性と成長を追求する一方で、スポーツの伝統的価値観、ファンの感情、そして既存の規制との間で、常にデリケートなバランスを取り続ける必要に迫られています。
III. 強さの源泉①:グローバルタレントの発掘・育成エコシステム
CFGの持続的な強さを支える最も重要な柱の一つが、世界中から才能ある若手選手を発掘し、独自の育成システムを通じてトップレベルのプレイヤーへと成長させるグローバルなタレントマネジメント・エコシステムです。このエコシステムは、シティ・フットボール・アカデミー(CFA)の哲学、データと経験を融合させたスカウティング、そしてCFGネットワーク内での計画的なキャリアパス提供という三位一体の戦略によって成り立っています。
A. シティ・フットボール・アカデミーの哲学と育成戦略
CFGにとって、傘下クラブのアカデミー、特にマンチェスター・シティFCに併設された最先端施設であるシティ・フットボール・アカデミー(CFA)は、単なる下部組織以上の戦略的意味を持っています。CFAは、トップチームで活躍できる一流選手の育成はもちろんのこと、CFGのサッカー哲学を理解し実践できる次世代のエリートコーチを育成することも視野に入れた、長期的な人材開発拠点として位置づけられています 41。
その育成アプローチは、「長期的、全体的、かつ統合的」と表現され、単にサッカーの技術指導に留まらず、選手の人間的成長も含めた全人格的な育成を目指しています 41。アカデミー内では、安全で多様性があり、誰もが受け入れられる包括的な文化を醸成し、若い選手たちが心身ともに健全に成長し、困難な状況にも適応できるレジリエントな大人へと発達することを支援しています 41。
特筆すべきは、CFAがCFGグループ全体で共有される「ビューティフル・フットボール」というプレースタイルを、年齢に応じたトレーニングとコーチングプログラムを通じて体系的に実施している点です 41。これは、幼少期からCFGが志向する特定のサッカースタイルと戦術的原則を選手たちに叩き込み、将来的にトップチームやグループ内の他のクラブへ移籍した際にスムーズに戦術へ適応できるようにすることを目的としています。これにより、戦術理解度が高く、グループのどのクラブでも即戦力に近い形で貢献できる選手を安定的に供給する体制を構築しようとしています。
さらに、CFAのビジョンには「次世代のエリートコーチの育成」という目標も明確に掲げられています 41。これは、選手育成というアカデミーの主目的に加えられた、非常に戦略的な要素です。CFGの哲学を深く理解し、それをピッチ上で実践できる指導者をグループ内で育成・確保することで、外部からの招聘に過度に依存することなく、長期的にCFGのサッカー文化と競争力を維持・拡大しようとする深謀遠慮な戦略と言えるでしょう。自前で育成したコーチは、グループ内の他クラブへ派遣され、CFGのサッカー哲学を世界中に広める役割も担う可能性があります。マンチェスター・シティ・アカデミーの成功は、CFGの戦略において、育成部門への投資が若手有望株の獲得と高額売却益という形で実を結ぶことを示しており、これがグループ全体の戦略転換を促した要因の一つともなっています 2。
B. データとスカウティング専門知識の融合による才能特定
現代サッカーにおけるタレント発掘は、長年の経験に裏打ちされたスカウトの「目利き」と、客観的なデータ分析能力の融合が不可欠となっています。CFGは、この両輪を効果的に活用し、世界中から才能ある若手選手を発掘する精度を飛躍的に高めています。
シティ・フットボール・アカデミー(CFA)では、「データとスカウティングの専門知識を組み合わせて、高いポテンシャルの確かな兆候を見抜き、才能ある個人を採用する」という方針を明確に打ち出しています 41。これは、単に統計データに依存するのではなく、経験豊富なスカウトが持つ質的な情報や直感と、データが示す客観的な傾向を突き合わせることで、より確度の高い判断を下そうとするアプローチです。スカウティングにおいては、技術データの利点と限界を認識し、常にバランスの取れた評価方法を開発することが重視されています 46。
CFGのグローバルなクラブネットワークは、このスカウティング戦略において大きなアドバンテージとなります。「より多くのスカウトが、より多くの場所で、より多くの試合を観戦し、より多くの選手を観察し、より良いデータと情報を収集できる」体制 12 は、大手クラブでも見逃しがちなニッチな市場や、まだ注目されていない地域に埋もれている「隠れた宝石」を発掘する能力を格段に向上させます。データ分析は、この広範なスカウティング活動から得られる膨大な情報を効率的にスクリーニングし、有望な選手を絞り込む上で重要な役割を果たします。CFGでフットボールデータ部門のディレクターを務めるローリー・ショー氏のような専門家が、このプロセスを統括しています 47。
さらに、CFGは、異なるタイプ、年齢層、地域、そして潜在能力レベルの選手をスカウティングすることで、一種の「タレントポートフォリオ」を構築していると考えられます。これは、金融におけるポートフォリオ戦略と同様に、一部の選手が期待通りに成長しなかったとしても、他の選手が成功することでグループ全体としてリスクを分散し、リターンを確保しようとするアプローチです。獲得した選手は、必ずしもマンチェスター・シティのようなトップクラブでプレーするとは限らず、CFGネットワーク内の様々なクラブのニーズや育成段階に応じて配置されます。このように、CFGのスカウティングシステムは、グローバルなリーチ、データドリブンな分析、そして戦略的なポートフォリオ管理を組み合わせることで、持続的なタレント供給と競争優位性の確保を目指しています。
C. CFGネットワーク内での選手キャリアパスと成功事例
CFGのマルチクラブ・オーナーシップ(MCO)モデルの大きな特徴の一つは、若手選手に対して、グループ内の多様なクラブとリーグを通じて計画的かつ段階的なキャリア形成の機会を提供できる点にあります。選手たちは、CFGのユニークなネットワークを通じて、質の高い相手と競争する機会を得るとともに、世界各国のサッカー文化に触れ、グローバルなゲームへと繋がる経験を積むことができます 41。
選手の成長段階やプレースタイル、ポジションなどの特性に合わせて、グループ内の最適なクラブへローン移籍または完全移籍させることで、選手は無理なくステップアップしていくことが可能です 3。例えば、日本のJリーグでプレーしていた板倉滉選手は、川崎フロンターレからマンチェスター・シティFCに移籍後、すぐにトップチームでプレーするのではなく、CFGネットワーク内のオランダのFCフローニンゲンやドイツのシャルケ04といったクラブへローン移籍し、ヨーロッパでの経験を積んでから、ボルシアMGへと完全移籍を果たしました 3。これは、CFGが選手のポテンシャルを最大限に引き出すために、いかに戦略的にネットワークを活用しているかを示す好例です。
最近の顕著な成功事例としては、ブラジル人ウィンガーのサヴィーニョ選手が挙げられます。彼はCFG傘下のフランスのトロワACに加入後、オランダのPSVアイントホーフェン、そして同じくCFG傘下であるスペインのジローナFCへとローン移籍を経験しました。特にジローナでの目覚ましい活躍は高く評価され、2024年夏にはグループの頂点であるマンチェスター・シティFCへの移籍が実現しました 31。このサヴィーニョ選手のキャリアパスは、CFGが才能ある若手を発掘し、グループ内の異なる環境で育成・評価し、最終的にトップクラブへ供給するか、あるいは市場価値を高めて他クラブへ売却するという、典型的な「タレントパイプライン」の成功パターンを示しています。
また、アルゼンチン人ストライカーのヴァレンティン・カステジャーノス選手も、CFGネットワークの恩恵を受けた一人です。彼はウルグアイのモンテビデオ・シティ・トルケからアメリカのニューヨーク・シティFCへと移籍し、MLSで得点王に輝くなど大きな成功を収めました。その後、スペインのジローナFCへのローン移籍を経て、イタリア・セリエAのSSラツィオへ高額な移籍金で売却されました 40。これは、CFGが南米で発掘した才能を北米で開花させ、欧州市場でその価値を最大化した事例と言えるでしょう。
CFG内での選手移動は、単に育成機会を提供するだけでなく、フィナンシャル・フェアプレー(FFP)規制への対応や、選手の市場価値を適切なタイミングで会計帳簿上に顕在化させるための戦略的なツールとしても機能している可能性があります。例えば、あるクラブから別のクラブへ名目上の移籍金を伴って選手を移籍させることで、帳簿上の利益を生み出したり、選手の評価額を実態に合わせて調整したりといった操作が行われているとの指摘も一部にはあります。マンチェスター・シティがCFG内のクラブから直接選手を獲得するケースは比較的少ないものの、ローン移籍は活発に行われており 40、これはトップチームのスカッドを過度に圧迫することなく、多くの有望株を保有し、様々な環境でその実力を見極めるための有効な手段となっています。
このように、CFGネットワーク内で多くの選手が成功体験を積み重ねることで、「CFG出身選手」という一種のブランドが確立されつつあります。これは、将来有望な若手選手がCFG傘下のクラブを選択する際の大きな魅力となるだけでなく、CFG傘下クラブから選手を獲得しようとする他のクラブにとっても、一定の品質が担保されているという信頼感に繋がる可能性があります。結果として、CFGは人材獲得競争において有利なポジションを築き、育成した選手の価値を最大化するという好循環を生み出しているのです。
D. マンチェスター・シティアカデミーの収益モデル:選手売却による利益
マンチェスター・シティFCのアカデミーは、世界トップクラスの選手育成機関であると同時に、クラブにとって極めて重要な収益源としても機能しています。アカデミーで育成された選手がトップチームに昇格し活躍するだけでなく、多くの選手が国内外の他クラブへ高額な移籍金で売却され、莫大な利益を生み出しているのです。
近年の実績は目覚ましく、マンチェスター・シティのアカデミーは過去3度の夏の移籍市場だけで、1億9000万ポンド(約300億円以上)を超える選手売却益を計上しています 48。特に、2020年にFAユースカップを制したチームのメンバーだけでも、約1億ポンド(約150億円以上)もの移籍金を生み出したと報じられており、これはアカデミーの育成能力の高さと、育成した選手の市場価値を的確に見極め売却するビジネス手腕の双方を証明しています 48。
この背景には、CFGが有望な10代前半の選手を積極的に獲得し、アカデミーで育成した後、多くを高額で売却するという戦略があります 2。アカデミー出身選手を売却して得た利益は、フィナンシャル・フェアプレー(FFP)規制が厳格化する現代サッカーにおいて、クラブ経営の持続可能性を高める上で極めて戦略的な意味を持ちます。自前で育成した選手の売却益は、会計上「純粋な利益」として計上されやすいため、移籍市場での大型補強資金を捻出したり、クラブ全体の収支バランスを改善したりするための貴重な原資となります。マンチェスター・シティが移籍市場で高額な移籍金を支払ってスター選手を獲得する一方で、アカデミーを通じてその投資の一部を回収し、あるいはさらなる投資のための資金を生み出しているというサイクルは、FFPの文脈において特に重要な戦略です 45。
マンチェスター・シティアカデミーにおけるこの「育成して売却する」モデルの成功は、CFGグループ全体の戦略にも影響を与えています。CFGが近年、育成を主眼とする比較的小規模なクラブ(例えばベルギーのロンメルSKやウルグアイのモンテビデオ・シティ・トルケなど)の買収に力を入れているのは 2、マンチェスター・シティアカデミーでの成功体験を他のクラブにも適用し、グループ全体としてタレントの育成と投資回収の効率を高めようとする狙いがあると考えられます。これにより、CFGは世界各地に複数の「タレント育成・売却ハブ」を保有し、グループ全体の収益性と持続可能性を強化する戦略を推進しているのです。
IV. 強さの源泉②:グローバルブランド構築と商業的成功
CFGの強さを語る上で欠かせないもう一つの要素は、巧みなグローバルブランド戦略と、それによってもたらされる商業的な成功です。統一された「シティ」ブランドの世界展開から、多角的なスポンサーシップ戦略、そして最新テクノロジーを駆使したファンエンゲージメントの革新に至るまで、CFGはサッカークラブの枠を超えたグローバルエンターテイメント企業としての地位を確立しつつあります。
A. 「シティ」ブランドの世界展開と「ディズニー化」戦略
CFGは、グループ設立初期の成長段階において、中核クラブであるマンチェスター・シティFCの伝統的なアイデンティティ(例えば、チームカラーのスカイブルーやエンブレムデザインの様式)に沿った共通のアイデンティティとブランドイメージを、新たに傘下に加わったクラブ群と共有することに重点を置きました 2。この戦略の代表例が、アメリカのニューヨーク・シティFC(NYCFC)やオーストラリアのメルボルン・シティFC(旧メルボルン・ハートFC)であり、これらのクラブはマンチェスター・シティと同様にスカイブルーのキットを着用し、エンブレムデザインにも類似性を持たせることで、一目で「シティファミリー」の一員であることが分かるように意図されました 2。
このアプローチは、CFGのCEOであるフェラン・ソリアーノ氏が標榜する、いわゆる「ディズニー化(Disneyfication)」戦略と軌を一にするものです 2。ディズニーがそのキャラクターやブランドを世界中に展開し、テーマパークや商品を通じて強力なブランドロイヤルティを構築しているように、CFGも「シティ」というブランドをサッカーが未だ十分に開拓されていない市場(例えば、設立当初のアメリカやオーストラリアのサッカー市場)へ積極的に進出させ、ブランドの浸透とファンベースの拡大を図ろうとしたのです。CFGは、この「シティ」ブランドの価値を非常に重視しており、チリのサンティアゴ・シティというクラブがマンチェスター・シティに類似したエンブレムを使用した際には、使用停止を求める警告書を送付するなど、ブランドイメージを積極的に擁護する姿勢も見せています 2。
この「シティ」ブランドのグローバル展開は、単なる視覚的な統一に留まりません。CFGは、フランチャイズという形で世界各地にクラブを設立・買収することで、ブランド価値の最大化と収益化を目指しています 39。しかし、このグローバル戦略は、画一的なブランドイメージの押し付けだけではありません。CFGは、「各クラブがその地域のファンやコミュニティに対して本物であり続けること(authentic to its fans and community)」6 を重視しており、これは「グローカリゼーション(Glocalization)」、すなわちグローバルな視点とローカルな特性の融合を目指す試みと言えます 39。例えば、マンチェスター・シティFCのキットサプライヤーであるプーマ社が、マンチェスターの豊かな音楽遺産(例えば、ファクトリー・レコードやハシエンダといったクラブカルチャー)からインスピレーションを得たデザインのユニフォームを製作したことは 39、グローバルブランドでありながら、そのルーツである地域の文化や歴史を尊重し、ローカルなファンからの共感を呼ぶことを意図した戦略の一例です。
さらに、CFGのブランドポートフォリオ戦略の巧みさも注目に値します。「シティ」の名を冠するクラブ(マンチェスター・シティ、ニューヨーク・シティ、メルボルン・シティなど)を中核に据えつつも、横浜F・マリノス 11 やジローナFC 23 のように、既に強力なローカルブランドと歴史を持つクラブについては、その独自のクラブ名を維持し、CFGのネットワークメリットを享受させつつ、既存のファンベースとの良好な関係を維持するという柔軟なアプローチを取っています。これにより、買収対象クラブの選定や、買収後の現地ファンとの関係構築において、より現実的で効果的なブランド戦略を推進することが可能になっているのです。
B. 多角的なスポンサーシップとパートナーシップ
CFGの商業的成功を支える大きな柱が、その多角的かつグローバルなスポンサーシップおよびパートナーシップ戦略です。CFGは、世界中に広がるクラブネットワークを最大限に活用し、多国籍企業にとって非常に魅力的なマーケティング・プラットフォームを提供することで、巨額の商業収入を生み出しています。
エティハド航空、プーマ、シスコシステムズ、日産自動車、アサヒビール(アサヒスーパードライ)といった世界的に著名な企業が、CFGの主要なグローバルパートナーとして名を連ねています 10。これらの企業は、CFG傘下の複数のクラブを通じて、北米、ヨーロッパ、アジア、オセアニア、南米といった広範な地域市場の多様なファン層にリーチすることが可能になります。例えば、マンチェスター・シティFC単独でも、2023/24シーズンには46ものブランドとスポンサー契約を締結しており、その総収入は2億9580万ドルを超えると報告されています。中でも、キットサプライヤーであるプーマ社との契約は年間8638万ドルにも上る大型契約です 51。
CFGのスポンサーシップ戦略の特筆すべき点は、単にグローバルな大型契約を追求するだけでなく、各地域クラブの特性や市場環境に合わせたローカルなパートナーシップも積極的に展開していることです。CFGは、世界10ヶ所にパートナーシップ専門の部門を設け、約60名の専門スタッフを配置しています 52。この専門チームが、いわば「ハウスエージェンシー(自社広告代理店)」のように機能し、CFGグループ全体のグローバルパートナーシップの獲得・管理を行うと同時に、傘下各クラブがそれぞれの地域でローカルスポンサーを獲得するための営業活動やコンサルティングを支援しています 52。
日本の横浜F・マリノスの事例を見ると、CFGのこのアプローチの有効性がよく分かります。横浜F・マリノスは、CFGのグローバルネットワークを通じて、世界中のスポンサーシップビジネスの最新トレンドや成功事例、ノウハウにアクセスすることができます 52。また、CFGの営業チームが、海外企業に対して横浜F・マリノスへのスポンサードを提案することもあり、実際に英国の人材紹介会社ヘイズ社とのパートナーシップ契約締結は、CFGの営業活動の成果の一つとして挙げられています 52。このような体制は、他のJリーグクラブでは容易に再現できない大きなアドバンテージとなっています。
さらに、CFGはデータ分析能力を選手獲得やパフォーマンス分析だけでなく、スポンサーシップの効果測定やアクティベーション戦略の最適化にも活用している可能性があります。ファンエンゲージメントに関するデータや試合の視聴者データなどを基に、パートナー企業に対してより効果的で測定可能なROI(投資対効果)を提示することで、スポンサー契約の価値を高め、長期的な関係構築に繋げていると考えられます。CFGの公式ウェブサイトでも、「データドリブン戦略」や「イマーシブ(没入型)なブランド体験」の提供といった言葉が用いられており 8、これはスポンサーシップビジネスにおいても先進的なアプローチを追求していることを示唆しています。社会貢献活動においても、パートナー企業と連携し、世界各地の社会問題解決に取り組むイニシアチブを提案するなど 54、単なる広告露出に留まらない、より深いレベルでのパートナーシップ構築を目指している点も特徴的です。
C. ファンエンゲージメントの革新:デジタル、eスポーツ、メタバースの活用
CFGは、伝統的なファンサービスに加えて、最新のテクノロジーを積極的に活用し、新たなファン層の開拓と既存ファンのエンゲージメント深化に取り組んでいます。その戦略は、デジタルコンテンツの充実、eスポーツへの参入、そしてメタバース空間の構築といった多岐にわたる革新的な試みに表れています。
CFG傘下のクラブは、ファンエンゲージメントを高めるための重要なミッションとして、デジタルメディア戦略を推進しています。例えば、横浜F・マリノスでは、チームの舞台裏に迫るドキュメンタリー動画を制作・配信し、ファンとの繋がりを強化しています 55。このようなオフィシャルでしか見られない独自コンテンツは、ファンのクラブへの愛着を深める上で効果的です。
また、CFGは若年層ファンへのアプローチ手段として、eスポーツにも早くから注目し、積極的に投資を行っています。マンチェスター・シティFCは独自のeスポーツチームを運営し、主要なeスポーツ大会で実績を上げています。横浜F・マリノスもCFGからのアドバイスを受け、FIFAシリーズのeスポーツプレーヤーと契約を結び、eスポーツイベントを主催するなど、活動の幅を広げています 55。eスポーツは、従来のサッカーファンとは異なる層にリーチできる可能性を秘めており、クラブブランドの認知度向上と新たなファン獲得に貢献しています。
さらにCFGは、ファンエンゲージメントの次なるフロンティアとして、メタバース空間の活用にも着手しています。特筆すべきは、ソニーグループとのパートナーシップにより実現した、マンチェスター・シティFCのホームスタジアム「エティハド・スタジアム」をバーチャル空間に忠実に再現したメタバースプラットフォーム「FavoriteSpace」の立ち上げです 56。このプラットフォームでは、ファンはアバターとしてバーチャルスタジアム内を自由に探索したり、他のファンと交流したりできるだけでなく、ソニーのHawk-Eyeトラッキングシステムから得られる膨大な試合データと3DCG技術を組み合わせることで、過去の試合のハイライトシーンをピッチ上の選手視点や俯瞰視点など、これまでにない多様なアングルから追体験できる「イマーシブハイライト」といった革新的なコンテンツを楽しむことができます 56。これは、試合観戦という中核的なファン体験をデジタル技術によって拡張し、新たな価値を提供する試みであり、特にスタジアムへの物理的なアクセスが困難な遠隔地のファンや、新しいテクノロジーに敏感な若年層のファンにとって大きな魅力となっています。
CFGは公式に、先進的なメタバース、Web3、そしてeスポーツ戦略を通じて、スポーツ、テクノロジー、エンターテイメントの交差点で新たなファン体験を創出することを目指すと表明しています 8。これらのデジタルプラットフォームやメタバース空間でのファン活動は、同時に詳細なファンデータの収集を可能にします。CFGは、これらのデータを活用し、個々のファンの嗜好や行動パターンに合わせてパーソナライズされたコンテンツやサービスを提供することで、エンゲージメントを一層高め、新たな収益機会を創出している可能性があります。これは、ファンとの関係を「視聴」から「参加・体験」へとシフトさせ、より深く、より長期的なものへと進化させる戦略と言えるでしょう 6。
D. 事例研究:横浜F・マリノスとCFG – 日本市場での展開と成果
CFGのグローバルなビジネスモデルが、文化や市場環境の異なる日本でどのように適用され、どのような成果と課題を生んでいるのかを具体的に示す事例として、横浜F・マリノスとの関係は非常に示唆に富んでいます。
横浜F・マリノスは、2014年にCFGとの資本提携を発表しました 11。これは、Jリーグクラブへの本格的な外資参入の先駆けとして大きな注目を集めました。この提携は、横浜F・マリノスの筆頭株主である日産自動車とCFGとのグローバルパートナーシップ締結が大きく関係しています 11。CFGは横浜F・マリノスの少数株主となり、資金提供だけでなく、経営ノウハウ、グローバルなスカウティングネットワーク、そしてブランド戦略といった多岐にわたるリソースを提供し始めました。
CFGの参入後、横浜F・マリノスではいくつかの重要な改革が断行されました。その一つが「クラブの意思決定能力の向上」です 11。従来のJリーグクラブにありがちだった、選手やメディア、サポーターの意向に左右されやすい経営体質から脱却し、より長期的かつ戦略的な視点に基づいた意思決定を行う体制を目指しました。これには、チームの平均年齢が高く、目指すサッカースタイルの実現が困難な状況を打破するため、中村俊輔選手や中澤佑二選手といったクラブのレジェンド的存在の選手たちを放出するという、痛みを伴う決断も含まれていました 11。この改革は当初、ファンやメディアから「名門の崩壊」などと大きな反発を招きましたが 11、CFGとクラブ経営陣は揺るぎませんでした。
もう一つの大きな改革が、「アタッキングフットボールの確立」です 11。これは、CFGがグループ全体で志向する「ビューティフル・フットボール」7 の実践とも言えます。2015年に就任したエリク・モンバエルツ監督の下で、目指すプレースタイルの浸透と、それに合致する選手の獲得・育成、そしてチームの若返りが図られました。モンバエルツ体制下では目立ったタイトル獲得には至らなかったものの、この期間に築かれた基盤が、後にアンジェ・ポステコグルー監督(現トッテナム・ホットスパーFC監督)の下での成功へと繋がったと評価されています 11。
CFGのネットワークは、選手獲得の面でも具体的な成果をもたらしました。例えば、U21ブラジル代表で10番を背負っていたアデミウソン選手(当時)のような、以前であれば獲得が難しかったであろう有望な外国人選手をCFGのスカウティング網を通じて獲得することに成功しています 11。
これらの改革とCFGからの支援が実を結び、横浜F・マリノスは2019年にJ1リーグで優勝を果たし 20、2022年にも再びリーグタイトルを獲得するなど 21、国内屈指の強豪クラブとしての地位を再確立しました。
しかし、CFGのグローバルな手法を日本市場に適用する上では、文化的な翻訳とローカライズの重要性が浮き彫りになりました。シティ・フットボール・ジャパンの代表を務める利重孝夫氏は、CFGの持つ優れたメソッドやシステムをそのまま日本に持ち込むのではなく、「日本仕様にカスタマイズする必要もあれば、場合によっては日本のやり方の方が優れていることもある」と述べ、グローバルスタンダードと日本のローカルな実情との間で「ベストな着地点」を見極めることに尽力したと語っています 4。この細やかな調整と適応が、横浜F・マリノスにおけるCFGモデルの成功を支えた重要な要因の一つと言えるでしょう。
横浜F・マリノスの事例は、グローバル資本によるクラブ改革が、既存のファンの感情やクラブが長年培ってきた伝統と衝突する可能性を孕んでいること、そして、その変革を成功させるためには、明確なビジョン、揺るぎない実行力、そして最終的にはピッチ上での結果が不可欠であること、さらには丁寧なコミュニケーションと長期的な視点でのファンとの対話、理解醸成が重要であることを示唆しています。
V. 強さの源泉③:データとテクノロジーによるフットボールの革新
CFGの強さを支える三つ目の源泉は、データとテクノロジーを積極的に活用し、フットボールのあらゆる側面に革新をもたらそうとする先進的な姿勢です。選手のリクルートからパフォーマンス分析、戦術立案、さらにはファンエンゲージメントに至るまで、CFGは最先端技術を駆使して競争優位性を確立しようとしています。
A. CFGにおけるデータサイエンスチームの役割
CFGは、グループ全体の戦略的意思決定を支える中核機能として、データサイエンスを明確に位置づけています。そのために、高度な専門知識を持つ人材を集め、専門のデータエンジニアリングおよびデータサイエンスチームを組織しています。このチームのトップには、ハーバード大学で研究科学者および講師としての経歴を持つローリー・ショー氏がフットボールデータ部門のディレクターとして就任しており 47、グループ傘下の全クラブにおける選手リクルートやパフォーマンス分析の意思決定をサポートしています。
マンチェスター・シティFC単体で見ても、バークレイやデロイトといった他分野で実績を積んだリー・ムーニー氏がデータサイエンティスト集団を統括し 59、その下には、ボルトン・ワンダラーズFC時代に「データ分析の先駆者」と評されたブライアン・プレスティッジ氏や、ジョゼップ・グアルディオラ監督がバルセロナB時代から信頼を寄せる戦術分析の専門家カルレス・プランチャート氏など、各分野のエキスパートが名を連ねています 59。
このように、CFGがサッカー界の伝統的な知見だけでなく、学術界や他産業で培われた先進的な分析手法や思考法を持つ人材を積極的に登用し、専門チームを構築している事実は、CFGがデータ活用において業界の最前線を走ろうとする強い意志の表れです。この中央集権的かつ専門的なデータサイエンスチームの存在は、グループ内で収集・分析される膨大なデータの種類、形式、評価基準などを標準化し、クラブ間で比較可能な形で共有するための強固な基盤を構築していることを示唆しています。これにより、より効率的で一貫性のある、そして何よりもデータに基づいた客観的な意思決定がグループ全体で可能になるのです。
B. 選手リクルート、パフォーマンス分析、戦術へのデータ活用
CFGでは、フットボール運営のあらゆる側面にデータ分析が深く浸透しています。選手リクルートにおいては、データに基づく洞察をスカウティングのワークフローに統合し、より情報に基づいた客観的な獲得判断を行っています 46。グローバルなスカウティングネットワークから得られる膨大な選手情報と、詳細なパフォーマンスデータを組み合わせることで、潜在的な才能や、特定の戦術的役割に適した選手を効率的に見つけ出すことが可能になります。
日々のトレーニングにおいても、データは重要な役割を果たします。マンチェスター・シティFCの最先端の練習施設では、様々な位置にカメラが設置され、練習中の選手のプレーを詳細に記録し、データを収集しています 59。これらのデータは、選手のコンディション管理、個々の技術的課題の特定、そしてトレーニングメニューの最適化などに活用されます。例えば、選手の個人技術向上を目的としたトレーニングにおいても、統計データを活用することで、より具体的で効果的な指導が可能になるとされています 59。
試合分析や戦術立案においても、データは不可欠なツールです。相手チームのプレースタイル、強みや弱点、特定の戦術パターンなどをデータに基づいて詳細に分析し 59、それに対応するための自チームの戦術を構築します。近年注目されている「ゴール期待値(xG)」のような、単なるゴール数やアシスト数よりもプレーの質や将来のパフォーマンスを予測する上で有用とされる先進的な分析指標も積極的に導入されており、マンチェスター・シティFCがxG分析に精通するピート・クレマース氏を招聘したことは、その証左と言えるでしょう 59。
さらに、データ分析は選手の能力やポテンシャルを客観的に評価し、移籍市場における適正な市場価値を算定する上でも重要な役割を果たしています。これにより、CFGは選手獲得時の過剰な支払いを回避し、逆に選手売却時にはその価値を最大限に高めることが可能になります。英国のスポーツコンサルタンシーであるAnalytics FCが、マンチェスター・シティFCに所属する選手の契約交渉をサポートするために、詳細なデータ分析レポートを提供した事例も報告されており 60、これは選手側だけでなく、クラブ側も同様の客観的評価に基づいた交渉戦略を展開している可能性を示唆しています。
C. 最先端技術の導入:AI、トラッキングシステム、3DCGの活用
CFGは、データ収集・分析能力をさらに高度化し、新たな洞察を得るために、AI(人工知能)を含む最先端テクノロジーの導入にも極めて積極的です。これは、ピッチ上のパフォーマンス向上と、ファンエンゲージメントの革新という両面において、CFGが業界のパイオニアであり続けようとする姿勢の表れです。
特筆すべきは、ソニーグループ傘下のHawk-Eye Innovations社が提供する高精度なトラッキングシステムの活用です。このシステムは、スタジアムに設置された複数のカメラ映像から、ボールや選手の動きをリアルタイムでデータ化し、選手の詳細な位置情報や運動量を捉えることができます 56。CFGは、このトラッキングデータを基に、選手の動きを3DCGで忠実に再現し、従来のテレビ中継などでは見ることのできなかった多様な角度から試合のプレーを分析することを可能にしています 56。これにより、コーチングスタッフは選手のポジショニングの微妙なズレや、スペースの生まれ方、戦術的な意図などをより深く理解し、具体的な改善指導に繋げることができます。また、選手自身も、客観的なデータと映像を通じて自身のプレーを振り返ることで、戦術理解度や状況判断能力の向上を図ることができます。
GPSを搭載したウェアラブルデバイスも、選手のフィジカルデータ(走行距離、スプリント回数、心拍数など)を収集し、コンディション管理や怪我の予防、トレーニング負荷の最適化に活用されています 59。シティ・フットボール・アカデミーにおいても、これらの革新的なテクノロジーは積極的に導入され、若い選手たちのデータ収集、分析、そしてそれに基づいた教育に役立てられています 41。
将来的には、AI技術のさらなる活用が期待されています。CFGがAI技術の導入を進めることで 61、選手の成長曲線の予測、特定のトレーニングや戦術がもたらす効果のシミュレーション、怪我のリスク評価、さらにはスカウティング対象となる膨大な選手データベースからの有望株の自動推薦など、より高度で予測的な分析や意思決定プロセスの自動化・効率化が進む可能性があります。AIは、人間のアナリストやコーチの能力を拡張し、これまで見過ごされてきたパターンや相関関係を発見し、より迅速で精度の高いオペレーションを実現するための強力なツールとなるでしょう。CFGがこれらの最先端技術をいち早く導入し、フットボールのあり方そのものを変革しようとしていることは間違いありません。
VI. CFGの財務と持続可能性:成長と課題のバランス
CFGの野心的なグローバル戦略と積極的な投資は、グループに大きな成長をもたらす一方で、財務面での課題も抱えています。このセクションでは、CFGの収益構造、投資戦略、そしてサッカー界の財務規律であるファイナンシャル・フェアプレー(FFP)との関係性について分析し、その持続可能性を探ります。
A. グループ全体の収益構造と主要クラブの貢献度
CFGの収益構造を分析すると、グループ全体の収益が旗艦クラブであるマンチェスター・シティFCに大きく依存している実態が明らかになります。2023-24シーズンのCFG全体の総収益は9億3310万ポンド(約1770億円)に達しましたが、そのうちマンチェスター・シティFCが生み出した収益は7億1500万ポンド(約1360億円)と、実に全体の約77%を占めています 62。これは、マンチェスター・シティFCがプレミアリーグでの成功、UEFAチャンピオンズリーグでの活躍、そしてグローバルな商業展開を通じて莫大な収益を上げていることを示しています。
マンチェスター・シティFCに次いで収益貢献度が高いのは、スペインのジローナFCで、同シーズンには5960万ポンド(約113億円)の収益を上げています 63。ジローナFCがUEFAチャンピオンズリーグ出場権を獲得するなど、競技面での成功を収めたことが収益増に繋がったと考えられ、これはマンチェスター・シティFC以外のクラブでも、ピッチ上での成功が大きな収益源となり得ることを示唆しています。
しかし、CFG傘下の他の多くのクラブは、依然として赤字経営であるか、収益規模が比較的小さいのが現状です。2020-21シーズンのデータでは、マンチェスター・シティFCを除くCFG所属のクラブは全て赤字であったと報告されています 64。例えば、アメリカのニューヨーク・シティFCや日本の横浜F・マリノスといった、比較的大きな市場に位置するクラブの収益成長は期待されるものの、グループ全体の収益構造を多角化し、マンチェスター・シティFCへの過度な依存から脱却するためには、これらのクラブの収益性をいかに向上させるかがCFGにとっての大きな課題となります。
マンチェスター・シティFCが生み出す巨額の収益の一部が、グループ内の他のクラブへの投資(選手獲得資金の提供、トレーニング施設の整備、運営費の補填など)に再分配されている可能性は十分に考えられます。これは、MCOモデルを通じてグループ全体の価値を高めるという大義名分のもと、成長途上にあるクラブや赤字クラブへの投資を正当化するロジックとなり得ますが、同時に、グループ全体の財務的健全性を維持するためには、各クラブが自立的に収益を上げられる体制を早期に構築することが求められます。
B. 投資戦略と財務的課題:赤字計上とその背景
CFGは、その設立以来、グローバルなクラブネットワークの構築と拡大のために、積極的な投資戦略を継続してきました。これには、新規クラブの買収、既存クラブのインフラ整備、トップレベルの選手やコーチングスタッフの獲得などが含まれます。こうした先行投資の結果として、CFGはグループ全体として継続的に赤字を計上しています。
2023-24シーズンには、CFGは1億2220万ポンド(約232億円)の税引前損失を計上し、これにより設立(2013年)以来の累積損失は約9億7280万ポンド(約1850億円)という巨額に達しています 62。2020-21シーズンにおいても、CFGは5290万ポンド(約100億円)の赤字を計上していました 64。
これらの赤字の主な原因としては、まず新規クラブ買収に伴う多額の投資が挙げられます。例えば、イタリアのパレルモFC、ブラジルのECバイーア、インドのムンバイ・シティFCの買収には、合計で7700万ポンド(約146億円)の費用がかかったと報じられています 65。また、グループ全体の人件費の高さも、収益性を圧迫する大きな要因となっています。2023-24シーズンのCFGの総人件費は6億6430万ポンド(約1260億円)に達しており 63、これは特にトップレベルで競争するクラブを抱えるMCOにとって構造的な課題です。選手の獲得競争は激しく、好成績を維持するためには高額な年俸を支払わざるを得ない状況があります。マンチェスター・シティFC単体で見ても、売上高に対する賃金比率がUEFAの推奨値を大幅に上回っているとの指摘もありました 64。
CFGのこのような投資戦略は、初期に大きな投資を行い、後にそれを上回るリターンを目指す、いわゆる「Jカーブ効果」を期待したものと解釈できます。短期的な収益性よりも、長期的な市場シェアの拡大とブランド価値の向上を優先していると言えるでしょう。しかし、サッカービジネスは本質的に不確実性が高い分野です。チームの成績は常に変動し、パンデミックのような予測不可能な事態が発生する可能性もあり、また規制環境が変化するリスクも伴います。したがって、CFGの積極的な投資が将来的に確実に回収され、持続的な収益を生み出すフェーズに移行できるかどうかは、依然として大きな財務的課題であり、その手腕が問われるところです。アカデミーからの選手供給による人件費抑制や、育成クラブでのコスト効率の良いタレント育成、そしてデータに基づいた効率的な選手獲得といった取り組みが、この人件費コントロールの難題を緩和する上で、ますます重要性を増してくるでしょう。
C. ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)規制との向き合い方と論争点
CFG、特にその旗艦クラブであるマンチェスター・シティFCの積極的な財務戦略は、欧州サッカー界の財務規律であるファイナンシャル・フェアプレー(FFP)規制との関連で、長年にわたり大きな注目と論争の的となってきました。FFPは、クラブが収入以上の支出をすることを制限し、サッカー界全体の財務的健全性を維持することを目的としていますが、CFGのビジネスモデルや資金調達方法は、この規制の枠組みの中で常に精査の対象となっています。
マンチェスター・シティFCは、過去にUEFAからFFP違反で告発され、法廷闘争を繰り広げた経緯があります 45。最終的にスポーツ仲裁裁判所(CAS)によって、UEFAによる2年間の欧州カップ戦出場禁止処分は覆され、一部の嫌疑は証拠不十分または時効とされましたが、調査への協力姿勢についてはCASからも強く非難されました 45。さらに、2024年現在も、マンチェスター・シティFCはイングランド・プレミアリーグから100件以上の財務規則違反の疑いで告発されており、その審理の行方が注目されています 63。
これらの論争は、CFG(マンチェスター・シティFC)がFFP規制の限界を試す存在と見なされていることを示しており、規制当局との間には依然として緊張関係が存在します。MCOモデルは、グループ内での資金移動や、グループ全体のスポンサーシップ契約を個々のクラブに戦略的に配分することなどを通じて、個々のクラブの収支を調整しやすい構造を持つ可能性があります。これが、FFPの基本精神である「各クラブの自立的経営と公平な競争」と潜在的に矛盾するのではないか、という点が、規制当局から特に厳しい監視を受ける要因の一つとなっています。CFGの複雑なクラブネットワークとグループ内での資金の流れは、FFPの監視を困難にし、透明性に関する疑念を招きやすい側面があることは否定できません。
一方で、FFP規制そのものに対する批判も存在します。FFPが結果的に、既に潤沢な資金を持つビッグクラブに有利に働き、新規投資による小クラブの成長を阻害し、リーグ内の格差を固定化しているのではないか、という議論です 45。また、FFPがEUの競争法に違反するのではないかという法的な論点も提起されています 45。
CFGのような大規模MCOの台頭は、結果として、FFP規制がより複雑なクラブ所有形態やグローバルな資金の流れに効果的に対応できるよう、さらなる進化を遂げる必要性を浮き彫りにしています。45や45で提案されているようなFFP改革案(例えば、クラブの収益規模に応じた段階的な規制、サラリーキャップ制度の導入、より透明性の高い違反調査と一貫した罰則適用など)は、こうした背景から生まれてきたものです。将来的には、個々のクラブ単位の財務規制だけでなく、MCOグループ全体に対する連結ベースでの財務健全性評価や、グループ内取引に関するより厳格なルールの導入などが検討される可能性も否定できません。CFGの事例は、今後のFFPのあり方、そしてサッカー界全体のガバナンスを占う上で、重要な試金石であり続けるでしょう。
VII. CFGの未来図:次なる一手とサッカー界への長期的影響
CFGは、これまでの10年余りでサッカー界に大きな変革をもたらしてきましたが、その野心的な歩みはまだ道半ばです。新市場への展開、グループを率いるリーダーが描く将来像、そしてMCOモデル自体の進化は、CFGのみならず、世界のサッカー界全体に長期的な影響を与え続けるでしょう。
A. 新市場への展開(アフリカ市場など)と成長戦略
CFGのグローバル戦略において、次なるフロンティアとして注目されるのが、成長著しいアフリカ市場です。アフリカ大陸は、豊富な若いサッカーの才能と、急速に拡大する経済という二つの大きなポテンシャルを秘めています。CFGがこの未開拓市場に関心を示していることは、いくつかの動きから見て取れます。
例えば、CFGはナイジェリアにおいて「CFG AMナイラ債券ファンド」を導入するなど、金融面での足がかりを築き始めています 66。これは、単にサッカークラブを買収するだけでなく、現地の金融市場の発展に貢献し、より広範な経済的・社会的関与を通じてアフリカ市場に浸透しようとする、多角的なアプローチの現れかもしれません。過去には、エジプトの有力クラブ買収の噂が報じられたこともあり 68、アフリカ大陸でのクラブネットワーク構築への意欲が窺えます。
アフリカ市場への進出は、大きな可能性を秘める一方で、政治・経済の不安定さ、インフラの未整備といった特有のリスクも伴います。CFGがこの市場で成功を収めるためには、単なるクラブ運営に留まらず、現地のサッカーインフラの整備支援や、教育・社会貢献活動と連携することで、これらのリスクを軽減し、地域社会からの信頼を得ながら持続可能な事業モデルを構築していく必要があるでしょう。日本貿易振興機構(ジェトロ)なども、アフリカの社会課題解決に資する技術やサービスを持つスタートアップ企業の支援に乗り出しており 69、外部環境としてもアフリカ市場への関心は高まっています。
また、アフリカのような新興市場への投資は、CFGの親会社であるアブダビ・ユナイテッド・グループにとって、経済的なリターン追求だけでなく、地域における影響力の拡大や国家ブランドイメージの向上といった、いわゆる「ソフトパワー」外交の一環としての戦略的意味合いも持つ可能性があります 39。アフリカは多くの国々がその影響力を競う場であり、CFGを通じたスポーツ投資は、アラブ首長国連邦(UAE)のプレゼンスを高め、アフリカ諸国との良好な関係を構築するための一つの有効な手段となり得るのです。
B. フェラン・ソリアーノCEOが語るCFGの将来像とフットボールの未来
CFGの戦略と将来像を理解する上で、グループの舵取りを担うフェラン・ソリアーノCEOの発言は極めて重要です。彼の言葉からは、CFGが目指すサッカーのあり方と、組織としての長期的なビジョンが垣間見えます。
ソリアーノCEOは繰り返し、「我々が育てたいのは“ビューティフル・フットボール”だ」と語っています 7。これは、単に勝利至上主義に陥るのではなく、観客を魅了する攻撃的で美しいプレースタイルをグループ全体で追求するという、明確なフットボール哲学を示しています。この哲学は、CFG傘下の各クラブのアイデンティティ形成や、ファン獲得戦略においても中心的な役割を果たしていると考えられます。
また、ソリアーノ氏はCFGの戦略の独自性を強調し、「継続することが大切だ。目的は収益の額ではなく、組織として持続可能な成長を続け、その結果として成功を収めることだ」と述べています 71。マンチェスター・シティFCの移籍戦略についても、「変わっていない。主な目的は勝利と財務的持続可能性の維持だ」と語っており 72、短期的な利益追求よりも、長期的な視点での組織の安定と成長、そしてピッチ上での成功を重視する姿勢が一貫しています。
「地域社会に深く根差している」71 という言葉も、ソリアーノ氏のビジョンを理解する上で重要です。これは、CFGがグローバルなブランド基準やフットボール哲学を追求する一方で、傘下の各クラブがそれぞれの地域コミュニティとの繋がりを大切にし、ローカルなアイデンティティを尊重しようとする意志の表れです。この「グローバル」と「ローカル」のバランスをいかに巧みに取り、両立させていくかが、CFGの持続可能性と社会からの受容性を高める上での鍵となるでしょう。
現在のCFGがグループ全体として大きな累積赤字を抱えている状況 62 を踏まえると、ソリアーノ氏の言う「持続可能な成長」という言葉は、将来的には現在の投資フェーズから脱却し、MCOモデル自体が財務的に自立し、安定的に利益を生み出す「完成形」を目指していることを示唆しています。これを達成するためには、傘下各クラブの収益力の一層の向上、アカデミーを中心とした効率的なタレントパイプラインによる移籍収益の最大化、そしてグローバルスポンサーシップのさらなる拡大などが不可欠となります。ソリアーノCEOが描くCFGの将来像は、単なる巨大サッカーコングロマリットではなく、魅力的なサッカーと持続可能な経営を両立させる、真のグローバル・フットボール・エンターテイメント組織の実現にあると言えるでしょう。
C. MCOモデルの進化と、CFGがサッカー界に与える影響の考察
CFGは、マルチクラブ・オーナーシップ(MCO)モデルのパイオニアとして、その進化を牽引し、世界のサッカー界に多大な影響を与え続けています。MCOという形態自体はCFG以前にも存在しましたが、CFGほど戦略的かつグローバルに、そして大規模に展開した例はありませんでした。
現在、MCOを採用するオーナーや投資グループは増加傾向にあり、2024年5月の時点で147のオーナーまたはグループが世界で400近いクラブを支配していると報告されています 9。しかし、その中で明確な成功例として挙げられるのは、CFGとレッドブル・グループのみであるとの見方が一般的です 73。これらの成功の鍵は、単に複数のクラブを所有することではなく、それを支える「巨大な資本力」、明確な「長期的ビジョン」、そして選手育成からトップチーム強化、商業展開までを一気通貫で管理する「垂直統合型の運営メソッド」にあると分析されています 73。
CFGの成功は、MCOモデルが単なるクラブの寄せ集めではなく、戦略的に統合されたグローバルプラットフォームとして機能し得ることをサッカー界に証明しました。これにより、他の投資家や企業もMCOモデルに関心を持つようになり、サッカークラブへの投資が新たな局面を迎えています。
しかし、その一方で、MCOモデルの「成功の方程式」は決して単純ではありません。CFGやレッドブルのような成功例が存在する一方で、多くのMCOが財政難や運営の失敗に直面している現実も指摘されています。フランスのボルドーやナンシー、ベルギーのKVオーステンデといったクラブが、MCO傘下で深刻な経営問題に陥った事例は 9、MCOモデルの成功にはCFGが持つような圧倒的な資本力、明確なビジョン、そして高度な運営ノウハウが不可欠であり、安易な模倣では成功はおろか、クラブを危機に陥れる危険性すらあることを示唆しています。結果として、MCOの世界においても、リソースと実行能力に優れた「勝ち組」と、そうでない「負け組」との間で二極化が進む可能性があります。
CFGのようなグローバルMCOの台頭がサッカー界に与える長期的な影響として懸念されるのは、才能ある選手、潤沢な資金、そしてメディアやファンの注目が、一部のメガクラブやエリートネットワークにさらに集中し、国内外のリーグにおける競争格差を一層拡大させる可能性です。ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)規制が、現状ではむしろ既存のビッグクラブに有利に働き、格差を固定化しているとの批判がある中で 45、MCOの存在はこの傾向をさらに強めるかもしれません。これは、サッカーというスポーツのエコシステム全体の健全性にとって、長期的に取り組むべき重要な課題となるでしょう。CFGが今後どのように進化し、これらの課題にどう向き合っていくのかは、世界のサッカー界の未来を占う上で、引き続き大きな注目を集めることになります。
VIII. まとめ:シティ・フットボール・グループの強さの秘訣と、そのビジネスモデルから学ぶべきこと
シティ・フットボール・グループ(CFG)の驚異的な成長と影響力の背景には、単一の要因ではなく、複数の戦略的要素が複雑かつ巧みに絡み合った「強さの秘訣」が存在します。本稿で国内外の文献を通じて明らかにしてきたように、その核心は以下の諸点に集約されます。
第一に、明確かつ野心的なビジョンです。フェラン・ソリアーノCEOを中心とする経営陣は、単なるサッカークラブ運営に留まらず、「世界最高のスポーツエンターテイメント組織」を目指すという壮大な目標を掲げ、それを実現するための長期的な戦略を着実に実行してきました。このビジョンが、グループ全体の行動指針となり、一貫性のある事業展開を可能にしています。
第二に、戦略的なマルチクラブ・オーナーシップ(MCO)モデルの構築と運用です。世界各地にクラブネットワークを広げ、スカウティング、選手育成、戦術共有、商業展開といった多岐にわたる分野でシナジーを創出しています。初期のブランド統一戦略から、近年のタレント・サプライチェーン構築へと重点を移すなど、市場環境や自らの成功体験に応じて戦略を柔軟に進化させている点も特筆すべきです。
第三に、グローバルなタレントマネジメント・エコシステムの確立です。最先端のシティ・フットボール・アカデミーを中核に、データとスカウトの専門知識を融合させた才能発掘システム、そしてCFGネットワーク内での計画的なキャリアパス提供を通じて、世界中から有望な選手を育成し、トップチームへの供給、あるいは高額な移籍金での売却による収益化を実現しています。
第四に、先進的なデータとテクノロジーの徹底活用です。選手リクルート、パフォーマンス分析、戦術立案、コンディション管理、さらにはファンエンゲージメントに至るまで、フットボール運営のあらゆる側面にデータサイエンスと最新技術を深く浸透させ、意思決定の質と効率を飛躍的に高めています。AIやメタバースといった未来技術への投資も、その先進性を象徴しています。
第五に、強力な商業展開とグローバルブランド構築です。統一された「シティ」ブランドの世界展開と、各地域の特性を活かした「グローカリゼーション」戦略を両立させ、多国籍企業との大型スポンサーシップ契約を次々と獲得しています。デジタル技術を駆使した革新的なファンエンゲージメントも、ブランド価値向上と収益拡大に大きく貢献しています。
CFGのビジネスモデルは、他のスポーツ組織はもちろんのこと、グローバル展開を目指す一般企業にとっても多くの普遍的な教訓を含んでいます。明確なビジョンに基づく長期戦略の重要性、ネットワークを活用したシナジーの創出、イノベーションへの積極的な投資、そしてローカルな市場特性を理解した上でのブランド構築などは、業種を問わず参考にすべき視点と言えるでしょう。
しかし、CFGの成功物語は、光ばかりではありません。本稿で触れたように、MCOモデルが抱える競技の公平性に関する倫理的な課題、ファンのアイデンティティやクラブの伝統との衝突、そしてファイナンシャル・フェアプレー(FFP)規制との緊張関係など、克服すべき課題も山積しています。CFGが今後、これらの課題にどう向き合い、持続可能な成長を真に実現できるのか、そしてMCOモデルがサッカー界の未来にどのような影響を与え続けるのかは、引き続き注視していく必要があります。
シティ・フットボール・グループの挑戦は、サッカービジネスの新たな地平を切り拓いたと言っても過言ではありません。その革新的なビジネスモデルと、それを支える強さの秘訣を理解することは、現代スポーツビジネスの動向、そしてグローバル化する世界のエンターテイメント産業の未来を読み解く上で、極めて重要な示唆を与えてくれるでしょう。
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