PI3K/AKT経路の全貌:発見の歴史から最新のがん治療、疾患との関連まで徹底解説

目次

はじめに:生命活動の根幹を支える司令塔、PI3K/AKTシグナル伝達経路とは?

生命は、個々の細胞が外部環境からのシグナルを正確に受信し、適切に応答することで維持されている。この精緻なコミュニケーションを細胞内で仲介するのが、シグナル伝達経路と呼ばれる情報網である。その中でも、PI3K/AKT経路(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ/AKT経路)は、細胞の最も根源的な活動、すなわち成長、増殖、生存、そして代謝を司る中心的な司令塔として機能する 1。この経路は、インスリンのようなホルモン、上皮成長因子(EGF)などの成長因子、さらには細胞外マトリックスといった多種多様な外部からの刺激に応答して活性化され、細胞内の下流分子をリン酸化(特定の化学基を付加する反応)することで、生命活動の根幹をなす指令を伝達する 3

この経路は、細胞が「成長し分裂すべきか」「ストレス下で生き残るべきか」「あるいはプログラムされた細胞死(アポトーシス)を遂げるべきか」といった、運命を決定づける重要な判断を下すための「指揮統制システム」に例えることができる 3。正常な状態では、このシステムは厳密に制御され、組織の恒常性維持に貢献している。しかし、ひとたびこの経路に異常が生じると、その影響は甚大である。PI3K/AKT経路の過剰な活性化は、細胞に無限の増殖と死への抵抗性を与え、がんの発生と進行における中心的な役割を果たす 6。事実、多くのがん種において、この経路を構成する遺伝子の変異は最も頻繁に見られる異常の一つである 8

PI3K/AKT経路の重要性は、がんに留まらない。インスリンシグナルの主要な伝達経路であるため、その機能不全は2型糖尿病や肥満などの代謝疾患の根源的な原因となる 10。さらに近年の研究では、神経細胞の生存や免疫応答の調節、さらには細胞老化や寿命といった、より広範な生命現象への関与も明らかになりつつある 12

この経路が持つ普遍性は、その最大の強みであると同時に、最大の脆弱性でもある。全身のあらゆる組織で基本的な生命活動を支えているがゆえに、ひとたびその制御が破綻すると、がん、代謝疾患、神経変性疾患、免疫異常といった、多岐にわたる疾患を引き起こすのである。この事実は、PI3K/AKT経路を標的とした治療薬開発が、なぜ大きな期待を集めると同時に、深刻な副作用という困難な課題に直面するのかを物語っている。本稿では、この生命の根幹をなすPI3K/AKT経路について、その発見の歴史から、精緻な分子メカニズム、多様な疾患との関わり、そして最新の治療薬開発の動向まで、包括的かつ詳細に解説する。

発見の軌跡:偶然と探求が拓いたシグナル伝達研究の新時代

今日、生命科学の教科書に必ず登場するPI3K/AKT経路であるが、その全体像が明らかになるまでには、ウイルス学、がん研究、生化学といった異なる分野の研究者たちによる、数十年にわたる地道な探求の歴史があった。それは、偶然の発見から始まった点と点の研究が、やがて一本の壮大な線として結ばれていく、科学的発見のダイナミズムを象徴する物語である。

Aktの発見とその名の由来

PI3K/AKT経路の物語の一方の主役である「Akt」の発見は、1970年代後半のがん遺伝子研究に遡る。1977年、ジョンズ・ホプキンス大学のStephen P. Staalらは、AKR系統のマウスに自然発生した胸腺腫(thymoma)から、細胞をがん化させる能力を持つ新たなレトロウイルスを発見した 1。このウイルスは「AKT8」と名付けられ、そこから分離されたがん遺伝子は「v-Akt」と命名された 16。この「Akt」という一見不可解な名称は、ウイルスの由来である「AKR系統マウスのthymoma」の頭文字をとったものである 16

その後、ウイルスが持つがん遺伝子(v-Akt)に対応する、正常な細胞が持つ遺伝子(細胞ホモログ)の探索が進められた。そして1991年、奇しくも3つの独立した研究グループが、ほぼ同時にこの細胞ホモログのクローニングに成功した 15。彼らはそれぞれ、この遺伝子がコードするタンパク質を「c-Akt」、「RAC(Related to A- and C-kinase)」、そして「PKB(Protein Kinase B)」と名付けた 15。これらの研究により、Akt/PKBがセリン/スレオニンキナーゼという、タンパク質をリン酸化する酵素の一種であることが確立され、がん化におけるその役割を解明するための道が拓かれたのである。

PI3Kの発見

Aktの発見と並行して、もう一方の主役である「PI3K」の探求は、生化学の分野で進められていた。1980年代半ば、タフツ大学のLewis C. Cantleyの研究室は、がん遺伝子産物や成長因子が細胞にどのような生化学的変化を引き起こすかを研究していた 18。彼らは、いくつかのがん遺伝子産物と共精製される、未知の脂質キナーゼ活性を発見した 18

そして1985年、彼らは画期的な発見を成し遂げる。この酵素、すなわちPI3Kが、それまで知られていなかった全く新しい化学反応を触媒することを見出したのである 18。それは、細胞膜を構成するリン脂質であるホスファチジルイノシトールのイノシトール環の3位の水酸基($-OH$)をリン酸化するという反応だった 18。当時、ホスファチジルイノシトールは、イノシトール三リン酸($IP_3$)を産生する別のシグナル伝達経路の中間体として知られていたが、3位がリン酸化された産物は前例がなく、全く新しいシグナル伝達物質の発見を意味していた。この発見は、細胞内シグナル伝達研究におけるパラダイムシフトの幕開けであった。

点と点が線になるまで

1990年代初頭、AktとPI3Kはそれぞれ独立した研究対象として存在していた。Cantleyらが発見した新しい脂質シグナルの重要性については、当初、がん研究や脂質シグナル研究のコミュニティから懐疑的な目で見られていた 18。これら二つの分子が、一つの壮大な経路の上流と下流を担う関係にあることが明らかになるには、インスリンシグナル伝達という、全く別の研究領域からの光が必要であった。

インスリンは血糖値を下げるホルモンとして知られ、その作用機序の解明は長年の重要な研究課題であった。研究者たちは、インスリン受容体の下流で働くシグナル伝達分子を精力的に探索していた 21。その過程で、インスリンがPI3Kを活性化することが示された。そして1995年、決定的とも言える発見がなされる。Richard Rothらの研究グループが、インスリンがAktを活性化することを報告したのである 1

この報告を機に、点と点が一気につながり始めた。インスリンがPI3KとAktの両方を活性化するならば、両者の間には直接的な関係があるのではないか。その後の研究で、PI3Kが産生する3位リン酸化イノシトールリン脂質(現在PIP3として知られる)こそが、Aktを活性化するために必須の分子であることが証明された 1。こうして、ウイルス学、生化学、内分泌学という異なる源流から始まった研究が合流し、「PI3K/AKTシグナル伝達経路」という、生命科学における最も重要な情報伝達経路の一つがその全貌を現したのである。この発見の物語は、基礎科学の異なる分野における探求がいかにして予期せぬ形で結びつき、医学を根底から変えるようなブレークスルーを生み出すかを示す好例と言えるだろう。

経路のメカニズムを解剖する:細胞内情報伝達のカスケード

PI3K/AKT経路は、細胞外のシグナルを細胞内の応答へと変換する、一連のドミノ倒しのような精緻なカスケード反応である。このカスケードは、細胞膜を舞台に始まり、細胞質を経て、最終的には核内の遺伝子発現に至るまで、細胞の隅々に指令を伝達する。その中心には、シグナルを開始する「アクセル役」のPI3K、指令を増幅し伝達する「司令塔役」のAKT、そして行き過ぎたシグナルを抑制する「ブレーキ役」のPTENという、3つの主要なプレーヤーが存在する。

活性化のスイッチ

シグナル伝達カスケードの最初のスイッチは、細胞の表面にある受容体に入れられる。インスリンやEGFといった成長因子が細胞外からやってくると、細胞膜に存在するそれぞれの受容体チロシンキナーゼ(RTK)に結合する 2。この結合が引き金となり、受容体は自分自身のチロシン残基をリン酸化(自己リン酸化)する 2。このリン酸化されたチロシン残基が、次のシグナル伝達分子を呼び寄せるための「ドッキング部位」として機能する。

主役たちの役割

PI3K (アクセル)

PI3Kは、触媒サブユニット(p110)と制御サブユニット(p85)からなるヘテロ二量体タンパク質である 1。通常、p85サブユニットはp110サブユニットの活性を抑制している。細胞が刺激を受けると、p85サブユニットが持つSH2ドメインと呼ばれる構造が、活性化された受容体のリン酸化チロシン残基や、IRSのようなアダプタータンパク質に結合する 1。この結合により、p85によるp110への抑制が解除され、PI3Kは細胞膜の直下で活性化される 2

活性化したPI3Kの役割はただ一つ、細胞膜に存在するリン脂質であるホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸(PIP2)をリン酸化し、ホスファチジルイノシトール-3,4,5-トリスリン酸(PIP3)という新たな分子を産生することである 1。このPIP3こそが、シグナルを次の段階へと伝える極めて重要な「セカンドメッセンジャー」として機能する。

AKT (司令塔)

AKT(別名PKB)は、普段は細胞質に不活性な状態で漂っているキナーゼである。AKTは、プレクストリン相同性(PH)ドメインと呼ばれる、PIP3に特異的に結合する構造を持っている 2。PI3Kによって細胞膜の内側にPIP3が産生されると、これが目印となり、AKTはPHドメインを介して細胞膜へと引き寄せられる(リクルートされる) 1

細胞膜への局在化は、AKTが完全に活性化するための必須のステップである。細胞膜において、AKTは2段階のリン酸化を受けることで、そのキナーゼ活性が最大化される 25

  1. まず、同じくPIP3によって細胞膜にリクルートされたPDK1というキナーゼが、AKTの活性化ループと呼ばれる領域にあるスレオニン308(T308)をリン酸化する 1
  2. 次に、mTORC2(mTOR複合体2)と呼ばれる別のキナーゼ複合体が、AKTのC末端ドメインにあるセリン473(S473)をリン酸化する 22

この2つのリン酸化が完了すると、AKTは完全に活性化され、司令塔としての役割を果たす準備が整う。

PTEN (ブレーキ)

細胞内のシグナル伝達は、常にONの状態では危険である。シグナルは必要に応じて迅速にOFFにされなければならず、そのための負の制御機構が不可欠である。PI3K/AKT経路における主要な「ブレーキ役」を担うのが、がん抑制遺伝子として知られるPTEN(Phosphatase and Tensin Homolog)である 1

PTENは、PI3Kとは正反対の機能を持つ脂質ホスファターゼである 1。すなわち、セカンドメッセンジャーであるPIP3の3位のリン酸基を脱リン酸化し、PIP2へと戻す反応を触媒する 1。これにより、AKTを細胞膜に繋ぎ止めていたシグナルが消去され、経路は不活性化される。PTENの機能が失われると、ブレーキが効かなくなった車のようにPIP3が細胞膜に蓄積し続け、AKTは恒常的に活性化され、細胞は無秩序な増殖へと暴走することになる。

下流への指令

完全に活性化されたAKTは、細胞膜を離れて細胞質や核内を移動し、RXRXXS/Tという共通の配列を持つ100種類以上の下流の基質タンパク質をリン酸化する 1。これにより、細胞の様々な機能が調節される。

  • mTOR(成長とタンパク質合成): AKTは、mTORC1複合体の負の制御因子であるTSC2やPRAS40をリン酸化して不活性化することで、mTORC1を活性化する 24。活性化したmTORC1は、S6K1や4E-BP1といったタンパク質をリン酸化し、タンパク質合成(翻訳)を強力に促進し、細胞のサイズ増大(成長)を引き起こす 23
  • GSK-3(代謝と細胞周期): AKTは、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK-3)をリン酸化し、その活性を抑制する 1。GSK-3はグリコーゲン合成を抑制する酵素であるため、AKTによるGSK-3の不活性化は、結果的にグリコーゲン合成を促進する。これはインスリンの血糖降下作用の重要な一部である。
  • FoxO転写因子(生存): AKTは、細胞死を誘導する遺伝子の転写を促進するFoxO(Forkhead box O)ファミリー転写因子をリン酸化する 1。このリン酸化により、FoxOは核内から細胞質へと排出され、機能できなくなる 25。これにより、細胞はアポトーシスから保護され、生存が促進される。
  • アポトーシス制御: AKTは、アポトーシスを促進するBadやBaxといったタンパク質を直接リン酸化して不活性化したり、アポトーシスの実行役であるカスパーゼ9の活性化を抑制したりすることで、細胞死のブレーキを多重にかける 2。さらに、がん抑制タンパク質p53の分解を促進するMDM2をリン酸化し、p53の機能を間接的に抑制することも知られている 1

これらの多岐にわたる下流への指令を通じて、PI3K/AKT経路は細胞の運命を統合的に制御しているのである。

表1:PI3K/AKT経路の主要構成因子とその機能
構成因子構造/サブユニット主要な機能役割主な制御因子
PI3K (クラスIA)制御サブユニット (p85)、触媒サブユニット (p110)脂質キナーゼPIP2をPIP3に変換し、シグナルを開始する (アクセル)RTK, GPCR, Ras (活性化)
PIP3リン脂質セカンドメッセンジャーAKTやPDK1を細胞膜にリクルートするPI3K (産生), PTEN (分解)
AKT (PKB)PHドメイン, キナーゼドメイン, C末端ドメインセリン/スレオニンキナーゼ下流の多数の基質をリン酸化し、多様な細胞応答を制御する (司令塔)PDK1, mTORC2 (活性化)
PTEN脂質ホスファターゼホスファターゼPIP3をPIP2に戻し、シグナルを終結させる (ブレーキ)遺伝子欠失/変異 (不活性化)
PDK1セリン/スレオニンキナーゼキナーゼAKTのT308をリン酸化し、部分的に活性化するPIP3 (活性化)
mTORC2キナーゼ複合体キナーゼAKTのS473をリン酸化し、完全に活性化する成長因子シグナル (活性化)

諸刃の剣:PI3K/AKT経路が関与する主要疾患

PI3K/AKT経路は、細胞の生存と増殖に不可欠な生命維持システムであるが、その制御が破綻したとき、それは生命を脅かす「諸刃の剣」となる。この経路の異常は、がんをはじめとして、糖尿病、神経変性疾患、免疫疾患など、現代社会が直面する多くの主要な疾患の発症と進行に深く関与している。その役割は、疾患や細胞の状況によって大きく異なり、時には正反対の作用を示すことさえある。この複雑性が、PI3K/AKT経路の理解と治療応用を困難にしている要因の一つである。

がん

PI3K/AKT経路の恒常的な活性化は、ヒトのがんにおいて最も頻繁に見られる分子異常の一つである 1。この経路は、がん細胞が生存し、増殖し、そして転移するために必要なほぼすべての能力(がんのホールマーク)の獲得を後押しする。

  • 発がんのメカニズム: 「アクセルが踏みっぱなし」の状態になったPI3K/AKT経路は、がん細胞に以下のような決定的な優位性を与える。
  • 持続的な増殖シグナル: mTORの活性化や、p21、p27といった細胞周期のブレーキ役を抑制することにより、細胞分裂を無秩序に促進する 1
  • アポトーシスの回避: FoxO、Bad、Bax、p53といった細胞死を誘導するタンパク質の機能を阻害し、がん細胞に「不死身」の能力を与える 1
  • 血管新生と転移: がん組織が成長するために必要な新たな血管の形成(血管新生)を促し、細胞の運動能や浸潤能を高めることで、他臓器への転移を助ける 1
  • 遺伝子異常: この経路の異常活性化は、主に以下の遺伝子変異によって引き起こされる。
  • PIK3CA遺伝子の活性化変異: PI3Kの触媒サブユニットp110αをコードするPIK3CA遺伝子には、特定の箇所にアミノ酸置換が起こる「ホットスポット変異」(例:E545K, H1047R)が知られている。これにより、上流からのシグナルがなくてもPI3Kが恒常的に活性化する 1。この変異は特に乳がんで高頻度に見られ、約30-40%の症例で検出される 7
  • PTEN遺伝子の機能喪失: がん抑制遺伝子であるPTENの機能が、遺伝子の欠失や不活性化変異によって失われると、経路の「ブレーキ」が効かなくなり、シグナルが暴走する 1
  • AKT遺伝子の増幅・変異: AKT遺伝子自体のコピー数が増加(増幅)したり、活性化変異が起きたりすることでも、経路は恒常的に活性化される 1
  • 薬剤耐性: PI3K/AKT経路は、強力な生存促進シグナルを供給するため、化学療法や他の分子標的薬による細胞死誘導効果を打ち消し、薬剤耐性の主要な原因となる 27
表2:PI3K/AKT経路の主要な遺伝子変異と関連するがん種
遺伝子変異の種類作用機序主ながん種
PIK3CA活性化ホットスポット変異 (H1047R, E545Kなど)p110αのキナーゼ活性を恒常的に上昇させる乳がん、子宮内膜がん、大腸がん、卵巣がん、頭頸部がん
PTEN機能喪失変異、遺伝子欠失、発現抑制PIP3の分解を阻害し、経路のブレーキを解除する子宮内膜がん、膠芽腫、前立腺がん、乳がん、黒色腫
AKT1活性化変異 (E17Kなど)、遺伝子増幅AKT1の細胞膜への局在化と活性化を促進する乳がん、大腸がん、卵巣がん、肺がん
PIK3R1機能喪失変異制御サブユニットp85αによるp110の抑制を解除する子宮内膜がん、膠芽腫

糖尿病と代謝疾患

PI3K/AKT経路は、インスリンがその代謝作用を発揮するための中心的なシグナル伝達経路である 10。したがって、この経路の機能不全は、2型糖尿病や肥満の病態の核心をなすインスリン抵抗性と直接的に結びついている。

  • インスリン抵抗性のメカニズム: 2型糖尿病や肥満の状態では、インスリンに対する細胞の応答性が低下する。これは、主要な代謝組織におけるPI3K/AKT経路のシグナル伝達が障害されることによって引き起こされる 10
  • 骨格筋・脂肪組織: インスリン刺激に応答したPI3K/AKT経路の活性化は、ブドウ糖輸送体であるGLUT4を細胞膜へと移動させ、血中からのブドウ糖の取り込みを促進する。インスリン抵抗性状態ではこのシグナル伝達が障害されるため、GLUT4の細胞膜への移行が減少し、食後の血糖値が下がりにくくなる 10
  • 肝臓: 肝臓では、PI3K/AKT経路は糖新生(肝臓でのブドウ糖産生)を抑制する役割を担う。インスリン抵抗性によりこの抑制が効かなくなると、肝臓は過剰にブドウ糖を産生し続け、特に空腹時の血糖値が上昇する原因となる 10

このように、各組織における経路の機能不全が複合的に作用し、高血糖という病態が形成される。さらに、高血糖や高インスリン血症自体がシグナル伝達経路をさらに障害するという「悪循環」に陥ることも知られている 10

神経変性疾患と免疫応答

PI3K/AKT経路の役割は、脳や免疫系といった、より複雑なシステムにおいても重要である。

  • 神経生物学: この経路は、神経細胞を様々なストレスから保護し、アポトーシスを抑制することで、神経細胞の生存に中心的な役割を果たす 12。そのため、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患において、この経路の機能低下が神経細胞死の一因となる可能性が示唆されている。一方で、脳内の免疫細胞であるミクログリアなどにおける経路の活性化は、神経炎症を惹起し、病態を悪化させる可能性も指摘されている 12。また、この経路はオートファジー(細胞内の不要なタンパク質などを分解・再利用する自食作用)の古典的な制御因子であり、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβの蓄積に、その機能不全が関与していると考えられている 32
  • 免疫学: PI3K/AKT経路は、免疫細胞の発生、分化、機能維持に不可欠である 13。マクロファージや好中球といった自然免疫細胞から、T細胞やB細胞といった獲得免疫細胞まで、ほぼ全ての免疫細胞がその生存と活性化をこの経路に依存している 13。例えば、ヘルパーT細胞が特定の機能を持つ細胞(例:Th17細胞)へと分化する過程や、細胞傷害性T細胞がウイルス感染細胞を攻撃するための分子を発現する過程は、PI3K/AKT経路によって厳密に制御されている 33。がんの文脈では、がん微小環境内でこの経路が活性化すると、免疫応答を抑制する細胞(制御性T細胞など)を誘導し、がん細胞が免疫系から逃れるのを助ける。このため、PI3K阻害剤は、がん細胞を直接攻撃するだけでなく、免疫抑制を解除する「免疫賦活薬」としての側面も期待されている 30

細胞老化と寿命

PI3K/AKT経路は、個体の老化や寿命を制御する上でも、二面性を持つ極めて重要な役割を担っている。

  • 生存促進と抗老化: アポトーシスを抑制し、細胞の生存を促進するこの経路の基本的な機能は、個体の寿命を延ばす方向に働くと考えられる 36。事実、線虫やショウジョウバエなどのモデル生物を用いた研究では、この経路の活性を抑制すると寿命が延びることが示されており、栄養制限による寿命延長効果の一部も、この経路の抑制を介していると考えられている。
  • 細胞老化の誘導と老化促進: その一方で、この経路の過剰な活性化は、細胞を「細胞老化」と呼ばれる不可逆的な増殖停止状態に陥らせることがある 36。細胞老化は、がん遺伝子の活性化などのストレスに対するがん抑制機構として機能するが、老化細胞は加齢とともに体内に蓄積し、炎症性物質を分泌することで、慢性炎症や様々な加齢関連疾患の原因となると考えられている 38

この経路の作用が、細胞の生存を促すのか、それとも老化を誘導するのかは、シグナルの強度や持続時間、そして細胞が置かれている状況によって決定される。例えば、がん遺伝子RASの活性化によって引き起こされる強力な老化誘導シグナルに対し、同時にPI3K/AKT経路が活性化すると、その老化プログラムを抑制し、細胞をがん化へと向かわせることがある 40。このように、PI3K/AKT経路は、細胞の運命を決定する「文脈依存的なスイッチ」として機能し、その複雑な制御ネットワークの理解は、がんや老化といった根源的な生命現象の解明に不可欠である。

最新の研究動向と臨床応用:PI3K/AKT阻害剤の現在と未来

PI3K/AKT経路ががんをはじめとする多くの疾患の中心的な役割を担うことが明らかになるにつれ、この経路を標的とした分子標的薬の開発が世界中で精力的に進められてきた。数十年にわたる研究開発の末、いくつかの阻害剤が臨床の現場で使われるようになった一方で、その開発は多くの困難にも直面している。ここでは、PI3K/AKT阻害剤の現状と、臨床開発における課題、そして今後の展望について解説する。

臨床で使われる阻害剤

現在、米国食品医薬品局(FDA)によって承認され、臨床応用されているPI3K/AKT経路阻害剤は、主に特定のがん種の治療に用いられている。特に、乳がん領域での開発が先行している。

  • Alpelisib (Piqray): PI3Kのp110αサブユニットを選択的に阻害する、PI3Kα阻害剤である。ホルモン受容体陽性(HR+)、HER2陰性で、かつPIK3CA遺伝子に変異を持つ手術不能または再発乳がんの治療薬として、ホルモン療法薬フルベストラントとの併用で承認されている 41
  • Inavolisib (Itovebi): Alpelisibと同様のPI3Kα阻害剤。HR+、HER2-、PIK3CA変異陽性の転移性乳がんに対して、CDK4/6阻害剤パルボシクリブおよびフルベストラントとの3剤併用療法として承認された 41
  • Capivasertib (Truqap): AKTを直接阻害するAKT阻害剤である。HR+、HER2-で、PIK3CAAKT1、またはPTENのいずれかに遺伝子異常を持つ転移性乳がんに対して、フルベストラントとの併用で承認されている 41
  • Idelalisib (Zydelig) & Copanlisib (Aliqopa): これらはPI3Kのp110δサブユニットを選択的に阻害する薬剤である。p110δは主に免疫細胞に発現しているため、これらの薬剤は慢性リンパ性白血病や濾胞性リンパ腫といった血液がんで高い効果を示し、承認されている 14。これは、特定のアイソフォームを標的とすることの有効性を示す好例である。
表3:主要なPI3K/AKT経路阻害剤の概要
薬剤名 (商品名)標的FDA承認状況と適応主要な臨床試験主な有効性と副作用
Alpelisib (Piqray)PI3Kα選択的阻害剤承認済:HR+, HER2-, PIK3CA変異陽性の転移性乳がん (フルベストラント併用)SOLAR-1無増悪生存期間の延長。高頻度の高血糖、発疹、下痢。
Inavolisib (Itovebi)PI3Kα選択的阻害剤承認済:HR+, HER2-, PIK3CA変異陽性の転移性乳がん (パルボシクリブ、フルベストラント併用)INAVO120無増悪生存期間および全生存期間の延長。高血糖、下痢、口内炎。
Capivasertib (Truqap)Pan-AKT阻害剤承認済:HR+, HER2-, PIK3CA/AKT1/PTEN異常陽性の転移性乳がん (フルベストラント併用)CAPItello-291無増悪生存期間の延長。下痢、発疹、高血糖。
Idelalisib (Zydelig)PI3Kδ選択的阻害剤承認済:再発慢性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫などStudy 116高い奏効率。重篤な肝毒性、大腸炎、肺炎などの免疫関連有害事象。

臨床開発における挑戦

PI3K/AKT経路は合理的な治療標的であるにもかかわらず、特に固形がんを対象とした阻害剤の臨床開発は、期待されたほどの成功を収めてきたとは言いがたい 42。その背景には、この経路が持つ生理学的な重要性と複雑性に起因する、いくつかの根深い課題が存在する。

  • オンターゲット毒性: PI3K/AKT経路は、インスリンシグナル伝達を介した糖代謝の制御に不可欠である。特に、p110αはインスリン応答の中心的な役割を担うため、AlpelisibのようなPI3Kα阻害剤は、高頻度で高血糖を引き起こす 41。このほか、発疹や下痢といった副作用も多く、これらが用量制限毒性となり、治療の継続を困難にすることがある。
  • フィードバック機構と耐性獲得: 細胞内のシグナル伝達ネットワークは、一つの経路を遮断すると、別の経路が活性化して補おうとする、頑健なフィードバック機構を備えている。PI3Kα阻害剤によって高血糖が引き起こされると、体はインスリンを過剰に分泌する。この過剰なインスリンが、別のPI3Kアイソフォーム(PI3Kβなど)を介して再びPI3K/AKT経路を活性化させてしまい、薬剤の効果を減弱させるという、皮肉な適応的耐性メカニズムの存在が指摘されている 6
  • 弱いドライバーがん遺伝子: がんの発生や維持を単独で強力に駆動する遺伝子を「ドライバーがん遺伝子」と呼ぶ。PIK3CA変異は、一部のがんにおいては比較的弱いドライバーであり、そのがん化能を発揮するためには、他の遺伝子変異との協調が必要な場合がある 42。このような場合、PI3Kを単独で阻害するだけでは、がんの増殖を十分に抑制できない可能性がある。

今後の展望

これらの課題を克服するため、PI3K/AKT経路阻害剤の研究開発は、より洗練されたアプローチへとシフトしている。

  • 標的選択性の向上: 毒性を軽減し、効果を高めるために、より特異性の高い薬剤の開発が進められている。
  • アイソフォーム選択的阻害剤: 全てのPI3Kを阻害する「pan-PI3K阻害剤」から、Alpelisibのような特定のアイソフォーム(α、β、δ、γ)のみを標的とする阻害剤へと開発の主流が移っている 29
  • 変異型選択的阻害剤: 正常なPI3Kは阻害せず、がん細胞が持つ変異型PI3Kのみを選択的に阻害する薬剤の開発も進められている。これが実現すれば、正常細胞への影響を最小限に抑え、副作用を劇的に軽減できる可能性がある 29
  • 合理的な併用療法: 耐性機構を克服し、治療効果を最大化するために、他の薬剤との併用が今後の治療の鍵となると考えられている 42
  • 乳がんにおけるホルモン療法やCDK4/6阻害剤との併用は、すでにその有効性が証明されている 41
  • 高血糖という代謝性の副作用を管理するために、糖尿病治療薬であるメトホルミンやSGLT2阻害剤を併用する臨床試験も行われている 42
  • この経路が持つ免疫調節機能に着目し、免疫チェックポイント阻害剤などの免疫療法と組み合わせることで、相乗効果を狙う戦略も有望視されている 30
  • 患者選択の最適化: 薬剤の効果が期待できる患者を、治療開始前に正確に特定することが極めて重要である。PIK3CA変異の有無だけでなく、耐性に関わる可能性のある他の遺伝子変異(例:KRAS, TP53)なども考慮に入れた、より精密なバイオマーカーに基づく患者選択(プレシジョン・メディシン)が、今後の成功に不可欠となる 42

おわりに:PI3K/AKT経路研究が拓く未来の医療

PI3K/AKTシグナル伝達経路の物語は、生化学的な好奇心から始まった一つの酵素活性の発見が、いかにしてヒトの健康と疾患の理解を根底から変え、新たな治療法の創出へと繋がっていくかを示す、現代生命科学の縮図である。この経路は、細胞の成長、生存、代謝という最も基本的な生命活動を司るマスターレギュレーターとして、その精緻な制御メカニズムと、破綻した際の甚大な影響を我々に教えてくれた。

がん細胞がこの経路を「乗っ取る」ことで無限の増殖能を獲得するメカニズムの解明は、分子標的治療という新しいがん治療のパラダイムを切り拓いた。AlpelisibやCapivasertibといった薬剤の臨床応用は、特定の遺伝子変異を持つ患者に対して個別化された治療を提供するプレシジョン・メディシンの成功例である。しかし同時に、高血糖などのオンターゲット毒性や、複雑なフィードバック機構による耐性獲得といった課題は、生命の根幹をなすシステムに介入することの難しさを浮き彫りにした。

しかし、挑戦は新たな革新を生む。変異型選択的阻害剤の開発、副作用を管理するための併用療法、そして免疫療法との組み合わせといった次世代の戦略は、この経路をより安全かつ効果的に標的とするための道筋を示している。さらに、糖尿病、神経変性疾患、老化といった、がん以外の広範な疾患におけるこの経路の役割の解明は、将来的にはこれらの疾患に対する全く新しい治療アプローチの可能性を秘めている。

PI3K/AKT経路の研究は、これからも生命の謎を解き明かし、未来の医療を形作っていく上で、中心的な役割を果たし続けるであろう。その探求の道のりは、生命の複雑さと美しさ、そして科学がもたらす希望を我々に示し続けてくれるに違いない。

引用文献

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