Storybook Component登録の最適解【2025年版】| チーム開発を効率化する事例満載の徹底ガイド

目次

なぜ今、Storybookが開発現場の「共通言語」なのか

現代のフロントエンド開発は、ますます複雑化しています 1。デザイナー、開発者、プロダクトマネージャー(PM)といった異なる職能のメンバーが連携する中で、コミュニケーションの齟齬、プロダクト全体でのユーザー体験(UX)の不統一、そして開発プロセスにおける依存関係によるボトルネックは、多くのチームが直面する共通の課題です 2

このような課題に対する強力な解決策として、Storybookは単なるツールを超えた存在感を示しています。Storybookは、UIコンポーネントを独立した環境で構築、テスト、文書化するための「フロントエンドの作業場(ワークショップ)」として機能します 5。これは、チーム全体が共有できるインタラクティブな空間を生み出し、職能間の壁を越える「共通言語」としての役割を果たします 7。まるでIKEAのカタログのように、最終製品を組み立てる前に、個々の部品(コンポーネント)を単体で確認し、テストし、その仕様を誰もが理解できるのです 8

本レポートの中心的なテーマは、StorybookをUIにおける「信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth)」として確立することです 1。これは単なる技術的なリポジトリを意味するものではありません。デザイナー、開発者、そしてビジネスサイドのステークホルダー全員が、静的なデザインモックアップではなく、実際に動作する「生きた」実装を参照することで、認識のズレや手戻りをなくし、組織全体の生産性を向上させる戦略的資産となるのです 10

Storybookがチーム開発にもたらす変革 – ビジネス価値とROIを理解する

Storybookの真価を理解するためには、その技術的な側面だけでなく、チームの開発プロセス全体、ひいてはビジネスにもたらす変革を捉えることが不可欠です。

コンポーネント駆動開発(CDD)とは?

Storybookが中核をなす開発手法が、コンポーネント駆動開発(Component-Driven Development: CDD)です。これは、まずボタンやフォームの入力欄といった再利用可能な小さな部品(コンポーネント)から開発を始め、それらを組み合わせてより大きな部品、最終的にはページ全体を構築していく「ボトムアップ」型のアプローチです 11。従来のページ単位で開発を進める「トップダウン」型とは対照的に、CDDは品質、スピード、効率性の面で本質的な利点を持っています 11

Storybookがもたらす具体的なビジネスメリット

Storybookを導入することで、開発チームは以下のような具体的なビジネスメリットを享受できます。

  • 品質向上: コンポーネントをアプリケーション本体から切り離して開発することで、チームは様々な状態やエッジケース(例えば、表示テキストが異常に長い場合や、データが存在しないnullの場合など)を容易にテストできます 2。これは、アプリケーション全体を動かさなければ再現が難しい状況をシミュレートできるため、開発サイクルの初期段階でバグを発見し、後の工程で発生する高コストな修正を未然に防ぐことに繋がります 13
  • 開発スピードの加速: Storybookは、モックデータやAPIレスポンスを擬似的に再現する機能と組み合わせることで、フロントエンド開発者がバックエンドチームの開発を待つことなく、並行して作業を進めることを可能にします 2。この依存関係の排除は、開発のボトルネックを解消し、製品の市場投入までの時間(Time-to-Market)を大幅に短縮します 13
  • チーム連携の強化: Storybookは、静的なデザインカンプや仕様書に代わる「動く仕様書」として機能します。デザイナーは、自身がデザインしたコンポーネントが実際にコードとしてどのように振る舞うかを確認でき 15、PMや他のステークホルダーは、自身の開発環境をセットアップすることなく、デプロイされたStorybookのURLにアクセスするだけで進捗を確認し、具体的なフィードバックを行えます 14。これにより、非常に効率的で質の高いコラボレーションのループが生まれるのです 10

デザインシステムの心臓部としてのStorybook

デザインシステムとは、単なるスタイルガイドではなく、再利用可能なコンポーネント、デザインの原則、実装ガイドラインなどを包括的にまとめた仕組みです 4。Storybookは、このデザインシステムの中核要素である「コンポーネントライブラリ」に命を吹き込み、組織全体が実際に触れて、閲覧し、利用できる形にするための不可欠なツールです 5

【国外事例】BBC iPlayerはいかにして部門間の壁を乗り越えたか

Storybookがもたらす戦略的価値を最もよく示す事例の一つが、英国放送協会(BBC)の動画配信サービス「BBC iPlayer」です。彼らが直面していた課題は、多くの組織が共感できるものでした。UXデザイナーと開発者の間に共通認識が欠如し、コンポーネントの再利用が進まず、結果としてライブラリの維持管理に膨大な時間が費やされていました 7

彼らの解決策は、まずサイト全体のコンポーネントを徹底的に洗い出す「コンポーネント監査」を実施し、その結果を基にStorybookを用いて一元化されたコンポーネントライブラリを構築することでした。このプロセスを通じて、これまで欠けていた「共通の理解」がチーム内に生まれ、コンポーネントの再発明ではなく再利用を促進する文化が醸成されたのです 20。この事例は、Storybookが単なる開発ツールではなく、組織のサイロ化を解消し、コラボレーションを促進する強力な触媒となり得ることを証明しています。

投資対効果(ROI)の分析

Storybook導入のROIを定量的に示すことは難しいものの、そのビジネス価値は明確に論証できます。

  • コスト削減: バグ修正サイクルの短縮、重複するコンポーネント開発の撲滅 21、そして長期的なメンテナンスコストの削減 13 により、開発全体のコストを大幅に抑制できます。
  • 市場投入までの時間短縮: 開発の並列化とレビューサイクルの高速化は、競合他社よりも迅速に新機能をリリースする能力に直結します 13
  • ブランド価値と顧客満足度の向上: Storybookを基盤としたデザインシステムによって実現される一貫したUIは、ユーザー体験(UX)を向上させ、ユーザーの信頼を獲得し、ブランドイメージを強化します 3

Storybookの導入は、単なるUI開発ツールの採用に留まらず、開発プロセスと組織文化の改善を促す強力なきっかけとなります。コンポーネントを独立して開発するという技術的な要請 22 は、必然的に、データを取得するロジックと表示に専念するロジックの分離(Presentational and Container Componentパターン)を促します 2。これにより、フロントエンド開発者はバックエンドAPIが完成するのを待つ必要がなくなり、モックデータを使って開発を進めることになります 2。その結果、開発が始まる前にフロントエンドとバックエンドチーム間でAPIの仕様(データの構造)について合意形成することが不可欠となります。このように、逐次的で依存関係の強い開発プロセスから、並列的で「契約(API仕様)ファースト」な開発モデルへと移行することは、プロジェクト全体を加速させ、統合リスクを低減させる根本的な改善です。つまり、Storybookが要求する「分離」という技術的制約が、組織とアーキテクチャにポジティブな変革をもたらし、大きなビジネス価値を生み出すのです。

Storybook導入の第一歩 – 失敗しないための環境構築と基本設定

Storybookの導入は驚くほど簡単ですが、初期設定の段階でいくつかの重要な意思決定を行うことが、長期的な成功の鍵を握ります。

Storybookの初期セットアップ

既存または新規のプロジェクトにStorybookを追加するには、プロジェクトのルートディレクトリで以下のコマンドを実行します 12

Bash

npx storybook@latest init

このコマンドは、プロジェクトで利用されているフレームワーク(React, Vue, Angularなど)を自動検出し、必要な依存パッケージをインストールし、初期設定ファイル群を生成します 24

設定ファイル.storybook/main.jsを理解する

生成された.storybookディレクトリ内にあるmain.js(またはmain.ts)は、Storybookの挙動を定義する中心的な設定ファイルです。主要な設定項目は以下の通りです。

  • stories: Storybookがコンポーネントのストーリーファイルをどこから探すかを指定します。通常、’../src/**/*.stories.@(js|jsx|ts|tsx)’のようなglobパターンで指定します 26
  • addons: Storybookの機能を拡張するアドオンのリストです。@storybook/addon-essentialsには、開発に不可欠な多くのアドオンが同梱されています 29
  • framework: Storybookがプロジェクトのフレームワークに合わせて自身を最適化するための設定です 27
  • staticDirs: 画像やフォントファイルなど、静的アセットを配置するディレクトリを指定します 27

ディレクトリ構成の最適解:コンポーネントへの「併設」がなぜ優れているのか

Storybookのストーリーファイル(.stories.tsxなど)をどこに配置するかは、非常に重要な決定です。主なアプローチは2つあります。

  1. 中央集権型: デフォルトで生成される/src/storiesのような専用ディレクトリに全てのストーリーファイルを集める方法。
  2. 併設型(Co-location): 各コンポーネントのファイル(例: Button.tsx)と同じディレクトリに、対応するストーリーファイル(例: Button.stories.tsx)を配置する方法。

本レポートでは、**併設型(Co-location)**のアプローチを強く推奨します。その理由は、中央集権型のディレクトリ構成は、実際のコンポーネントのディレクトリ構造とは別に、もう一つの「ストーリー用のディレクトリ構造」を作り出してしまい、この2つを同期させ続けることが開発者の負担になるためです 30

コンポーネントを修正する際、そのストーリーファイルやテストファイルがすぐ隣にあれば、開発者は自然にそれらを更新するようになります。これにより、コンポーネントは自己完結し、発見しやすくなります。このアプローチは、Storybookが陳腐化し、信頼性を失うという最も一般的な失敗パターンを防ぐための、最も効果的な戦略の一つです 30

ディレクトリ構成の選択は、単なる好みの問題ではありません。それは、Storybookがチーム内で長期的に維持され、成功するかどうかを直接左右する戦略的な決定です。Storybookが組織で失敗する最大の理由は、メンテナンスの負担が大きくなることです 21。開発者は、締め切りに追われる中で、ストーリーの更新に追加の労力(例えば、全く異なるディレクトリ構造に移動してファイルを探すなど)が必要な場合、その作業をスキップしがちです 31。併設型のアプローチは、この心理的な障壁を完全に取り除きます。ストーリーファイルを、スタイルシートやテストファイルと同様に、コンポーネントを構成する不可欠な一部として扱うことで、メンテナンスを促す「最も抵抗の少ない道」を築きます。この一見小さな技術的選択が、組織の文化とプロセスに大きなプラスの影響を与えるのです。

コンポーネント登録の核心 – 命名規則と階層化のベストプラクティス

Storybookを効果的な「UIの辞書」にするためには、コンポーネントとストーリーの命名規則、そして階層構造を戦略的に設計することが不可欠です。

命名規則の4原則

国外のベストプラクティスに基づき、命名における4つの基本原則を定義します 32

  1. 論理的 (Logical): コンポーネントの機能が明確にわかる名前を付けます(例: CollapsiblePanelではなくAccordion)。
  2. 拡張可能 (Scalable): 将来的なバリエーションの追加を許容する命名パターンを採用します(例: サイズにはsmall, mediumではなく、Tシャツサイジングsm, md, lgを用いる)。
  3. シンプル (Simple): 名前は1〜2単語で簡潔に保ち、詳細は階層構造で表現します。
  4. 標準的 (Standardized): 業界で一般的に使われる標準的な名前(Button, Card, Modalなど)に従うことで、新しいメンバーでも直感的に理解できる語彙体系を構築します 32

特に重要なのは、Figma、コード、そしてStorybookの間で命名規則の一貫性を保つことです。これにより、デザイナーと開発者が同じ言葉でコミュニケーションできるようになります 32

Storybookの階層構造をマスターする

ストーリーファイルのmeta情報(デフォルトエクスポート)にあるtitleプロパティを使い、/を区切り文字として用いることで、クリーンで整理された階層構造を作成できます 34

例: title: ‘Design System/Atoms/Button’

この設定により、「Button」コンポーネントは「Design System」というカテゴリの中の「Atoms」というグループに配置されます。これにより、誰にとっても直感的でナビゲーションしやすいコンポーネントライブラリが実現します 34

Storyの命名:コンポーネントの状態を明確に表現する

Defaultのような曖昧なストーリー名は避けるべきです 35。代わりに、各ストーリーがどの特定の状態やバリエーションを表しているのかが明確にわかる名前を付けます。

例(UserRegisterFormコンポーネントの場合)36:

  • EmptyForm: 初期状態(入力なし)
  • WithInputData: ユーザーがデータを入力した状態
  • ValidationError: バリデーションエラーが発生した状態
  • SubmissionSuccess: 登録が成功した後の状態
  • ServerError: サーバーエラーが返された状態

この命名規則を実践することで、ストーリーはコンポーネントが取りうる全ての状態を網羅した包括的なカタログとなり、テストケースとしても機能します 22

サイドバーの表示順を制御する storySort

デフォルトでは、Storybookのサイドバーはファイルの読み込み順に表示されますが、.storybook/preview.jsファイルでstorySortオプションを設定することで、この順序を論理的に制御できます。例えば、概要ページを最初に表示し、次にデザインの基本要素(Atoms, Molecules)、そしてより複雑なコンポーネント、という順に並べることで、ユーザー体験を大幅に向上させることができます 34

コンポーネント階層化モデル比較

チームがStorybookの階層をどのように構築するかは、プロジェクトの成功に大きく影響します。以下に代表的なモデルとその特徴を示します。

モデル名説明長所短所最適なケース
アトミックデザインAtoms, Molecules, Organisms… のように、UIを構成要素の粒度で分類する古典的なモデル 5デザインシステムの構築に適しており、再利用性を強く意識させる。厳格すぎることがあり、どの分類に属するかで議論が生じやすい。専任のチームが管理する公式なデザインシステムの構築。
機能ベースCheckout/AddressFormのように、プロダクトの機能や画面に沿って分類する。プロダクトチームにとって直感的で、担当機能に関連するコンポーネントを見つけやすい。異なる機能間で類似コンポーネントが重複して作られる可能性がある。特定のプロダクト開発に集中するアジャイルチーム。
ドメインベースUserManagement/UserTableのように、ビジネスのドメイン(関心領域)で分類する。大規模で複雑なアプリケーションの構造と一致し、スケーラビリティが高い。明確なドメイン境界の定義が必要。複数のプロダクトやサービスで構成される大規模なエンタープライズシステム。

この選択は単なる整理術ではなく、チームがコンポーネントをどのように捉え、再利用を促進するかに影響を与える戦略的な決定です。プロジェクトの規模、チームの構成、そして将来の目標を考慮して、最適なモデルを選択することが、後の大規模な再編成という痛みを伴う作業を避ける鍵となります。

実践的Storyの書き方 – 再利用性とテスト性を高める高度なテクニック

コンポーネントをただ登録するだけでなく、そのストーリーをいかに実践的に記述するかが、Storybookの価値を最大限に引き出す鍵となります。

Component Story Format (CSF) 3.0の活用

現代のStorybookでは、オブジェクト指向のアプローチを用いたCSF 3.0形式が標準です。これは、metaオブジェクトをデフォルトエクスポートし、各ストーリーを名前付きでエクスポートする構文です。この形式は、よりクリーンで再利用性が高く、メンテナンスしやすいという利点があります 22

argsとargTypesでコンポーネントをインタラクティブにする

  • args: ストーリー内でコンポーネントに渡すプロパティ(props)を定義します 37
  • argTypes: 各argの挙動を細かく制御するための設定です。これを定義することで、Storybook UI上の「Controls」アドオンが有効になり、ユーザーはUI上で直接プロパティ値を変更して、コンポーネントの表示がリアルタイムに変わるのを確認できます。これにより、Storybookは静的なカタログから、インタラクティブな「遊び場(プレイグラウンド)」へと進化します 38

play関数によるユーザーインタラクションのシミュレーション

play関数は、Storybookの非常に強力な機能です。これは、ストーリーがレンダリングされた後に実行されるスクリプトで、クリックやフォーム入力といったユーザーの操作をシミュレートできます 37

例えば、ログインフォームのストーリーで、play関数を使って「メールアドレスとパスワードを入力」→「送信ボタンをクリック」→「成功メッセージが表示されることを確認」という一連の操作を自動化できます。これにより、ストーリー自体がコンポーネント単位の強力なE2E(End-to-End)テストとして機能し、コンポーネントの振る舞いを保証します 39

APIモッキングによる完全な分離

コンポーネントを真に分離するためには、API呼び出しのような外部依存を断ち切る必要があります。msw-storybook-addonのようなツールを使うことで、ストーリー内でAPIリクエストをモック(擬似的に再現)できます 14。これにより、開発者はバックエンドの実装状況に一切依存せず、ローディング中、エラー発生時、データ取得成功時といった、あらゆる状態のUIを確実かつ効率的に開発・テストできます。

Autodocsによるドキュメント自動生成

tags: [‘autodocs’]という一行をストーリーのmeta情報に追加するだけで、Storybookはコンポーネントのコード(特にTypeScriptの型定義)からプロパティの情報を自動的に抽出し、美しいドキュメントページを生成します 41。このAutodocs機能は、ドキュメント作成の手間を劇的に削減し、常にコードと同期された最新の仕様書を提供します 5

チーム開発を加速させるワークフローと自動化

Storybookを導入するだけでは不十分です。それを開発ワークフローに深く統合し、自動化の力を活用することで、その価値は飛躍的に高まります。

「腐らせない」ための運用戦略

Storybook導入における最大の失敗要因は、時間と共にメンテナンスされなくなり、実際のコードと乖離して「腐ってしまう」ことです 31。これを防ぐには、Storybookのメンテナンスを開発プロセスに不可欠な要素として組み込む文化と仕組みが必要です。

  • 完了の定義(Definition of Done): UI関連のタスクを完了させるための条件に、「Storybookのストーリーを作成・更新すること」を明記します。
  • CIによる強制: CI/CDパイプラインにstorybook test-runnerを組み込みます。これは、全てのストーリーがエラーなくレンダリングされるかをチェックする「スモークテスト」として機能し、もし壊れたストーリーがあればビルドを失敗させます。これにより、Storybookが常に動作可能な状態に保たれることを保証します 31

自動テストによる品質保証の徹底

  • ビジュアルリグレッションテスト: これは、全てのストーリーのスクリーンショットを撮影し、変更前の「ベースライン」画像と比較することで、意図しない見た目の変化(リグレッション)を自動で検出するテスト手法です 42。UIのバグをピクセル単位で捉えることができ、品質保証の強力な武器となります。
  • 【ツール徹底比較】Chromatic vs. Percy vs. Applitools: Storybookと連携する主要なビジュアルリグレッションテストツールを比較します。
機能ChromaticPercy (by BrowserStack)Applitools
コア技術ピクセル比較。TurboSnapで変更のないストーリーをスキップし高速化 [43]。ピクセル比較。マルチブラウザサポートが強力 [44]。Visual AI。人間の知覚を模倣し、意味のある変更のみを検出。誤検知が少ない [45, 46]。
Storybook連携Storybookメンテナーが開発。最も深く、シームレスな連携 [47, 48]。良好な連携。CI/CDへの統合が容易 [44]。Storybookアドオンを提供。AIによる高度な分析が可能 [45]。
メンテナンス承認ワークフローがシンプル。UIレビュー機能が強力 [49]。承認ワークフローを提供。AIによる類似差分の自動グルーピングなど、メンテナンスを自動化する機能が豊富 [46]。
価格モデルスナップショット数に基づく。無料プランあり [47]。スナップショット数に基づく。BrowserStackのバンドルも [50]。高機能な分、エンタープライズ向けで高価な傾向 [50]。
最適なケースStorybook中心の開発フローで、開発者体験と速度を重視するチーム [48]。複数のブラウザでの厳密なテストカバレッジを求めるチーム [44]。動的コンテンツが多く、誤検知を最小限に抑えたい大規模なエンタープライズ [46]。
  • アクセシビリティ(a11y)テストの自動化: @storybook/addon-a11yを導入することで、業界標準のアクセシビリティチェックツール「Axe」が全てのストーリーに対して自動的に実行されます。問題点がStorybookのUI上で直接指摘されるため、開発の初期段階でアクセシビリティを確保する文化が根付きます 6

デザイナーと開発者のモダンな連携フロー

理想的なワークフローはFigmaから始まります。デザイナーはFigma上でコンポーネント、バリアント、そしてデザイントークン(色やフォントサイズなどの変数)を定義します 33。AnimaやBuilder.ioのFusionといったツールは、このFigmaのデザインデータからStorybookのストーリーコードを自動生成する機能を提供します 33。さらに、デザイントークンをFigmaから抽出し、コードで利用されるCSS変数などに自動で同期させるパイプラインを構築することも可能です 54。これにより、デザインと実装の間の手作業をなくし、一貫性を保ちます。

CI/CD連携:プルリクエスト毎のStorybookデプロイ

GitHub ActionsなどのCI/CDツールを設定し、プルリクエストが作成されるたびに、そのブランチのコードに基づいたStorybookを自動でビルドし、一時的なURLにデプロイするワークフローを構築します 17。これにより、レビュアー(開発者、デザイナー、PM)は、コードを読むだけでなく、実際に変更されたUIをブラウザで操作しながらレビューできます。これは、レビューの質と速度を劇的に向上させる、極めて効果的なプラクティスです 14

【応用編】大規模開発とモノレポでのStorybook活用術

プロジェクトの規模が拡大すると、Storybookの運用にも新たな課題が生じます。

大規模コンポーネントライブラリの課題

コンポーネントの数が数百、数千になると、Storybookのビルド時間が長くなったり、目的のストーリーを見つけるのが困難になったりします。また、複数のチームやプロジェクトでコンポーネントを共有する場合、依存関係の管理が複雑になります 55

モノレポにおけるStorybookアーキテクチャ

多くの大規模フロントエンドプロジェクトでは、複数のパッケージ(ライブラリやアプリケーション)を単一のリポジトリで管理する「モノレポ」という構成が採用されます。モノレポ環境でStorybookを構築するには、主に2つのアーキテクチャパターンがあります 56

  1. 単一ルートStorybook: モノレポのルートに.storybook設定を一つだけ配置し、全てのパッケージからストーリーを読み込む方法。セットアップは比較的簡単ですが、リポジトリが巨大化するとビルドが遅くなり、単一障害点になり得ます。
  2. パッケージ毎のStorybook + Composition: 各パッケージが自身のStorybookインスタンスを持ち、アプリケーション側のStorybookが「Composition」機能を使って、依存するライブラリのStorybookを動的に読み込んで表示する方法。よりモジュール化されておりスケーラブルですが、設定が複雑になり、各Storybookのポート番号管理などが必要になります 57

どちらのパターンを選択するかは、チームの規模、プロジェクトの複雑さ、そしてモノレポ内で複数のフレームワーク(ReactとVueなど)を扱うかどうかに依存します。一般的に、小〜中規模であれば単一ルートで始め、規模の拡大に伴いCompositionへの移行を検討するのが現実的なアプローチです。

Storybookを開発文化の中心に

本レポートで解説してきたベストプラクティスは、Storybookを最大限に活用するための道筋を示しています。

キーポイントの再確認

  • ストーリーの併設: メンテナンス性を高めるため、ストーリーファイルはコンポーネントファイルの隣に配置する。
  • 明確な命名規則: チーム全員が理解できる、論理的で一貫した命名規則を確立する。
  • 状態ベースのストーリー: コンポーネントが取りうる全ての状態をストーリーとして記述する。
  • 徹底的な自動化: テスト、ドキュメント生成、デプロイメントを自動化し、手作業を排除する。

ツールから文化へ

最終的に、Storybookの導入を成功させることは、単なる技術的なタスクではなく、組織文化の変革です。それは、チーム全員からの賛同と、コラボレーションを重視し、コンポーネントを第一に考えるマインドセットへのコミットメントを必要とします。戦略的に導入・運用されたとき、Storybookは一開発者のためのユーティリティツールから、品質、連携、そして効率性を促進する、ハイパフォーマンスな製品開発文化の中心的な柱へと昇華するのです 15

引用文献

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  3. UIコンポーネントの役割と重要性 | ホームページ制作会社NTT …, 11月 3, 2025にアクセス、 https://www.ntttp-dlead.com/homepage-sakusei-blog/homepage-knowledge/user-interface-components.html
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  6. Storybook is the industry standard workshop for building, documenting, and testing UI components in isolation – GitHub, 11月 3, 2025にアクセス、 https://github.com/storybookjs/storybook
  7. 5 Storybook Examples from the Best Products – UXPin, 11月 3, 2025にアクセス、 https://www.uxpin.com/studio/blog/storybook-examples/
  8. 【初心者向け】Storybookって何?ReactとViteで始めるコンポーネント開発の新世界 – note, 11月 3, 2025にアクセス、 https://note.com/bonobono_eng/n/nf9b452c70e23
  9. コンポーネントライブラリ とは?なぜUI開発に使う必要がある? – UXPin, 11月 3, 2025にアクセス、 https://www.uxpin.com/studio/jp/blog-jp/ui-component-library/
  10. Is Storybook worth using as a tool for React.js frontend development? – Softcrylic, 11月 3, 2025にアクセス、 https://www.softcrylic.com/blogs/is-storybook-worth-using-as-a-tool-for-react-js-frontend-development/
  11. コンポーネント駆動開発(CDD)とは?エンジニアとデザイナー …, 11月 3, 2025にアクセス、 https://wb-hp.com/blog/2020/10/12/cdd.html
  12. Storybook React: A Beginner’s Tutorial to UI Components – Snipcart, 11月 3, 2025にアクセス、 https://snipcart.com/blog/storybook-react-tutorial-example
  13. What Is Storybook? Benefits for UI Development in 2025 | Pagepro, 11月 3, 2025にアクセス、 https://pagepro.co/blog/what-is-storybook/
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  25. Storybookの環境構築|【React + Atomic Design】作りながら学ぶ!コンポーネント指向開発, 11月 3, 2025にアクセス、 https://www.techpit.jp/courses/109/curriculums/112/sections/841/parts/3119
  26. Add a component to Storybook | Front-Commerce Developers, 11月 3, 2025にアクセス、 https://developers.front-commerce.com/docs/3.x/guides/add-component-to-storybook/
  27. Main configuration | Storybook docs, 11月 3, 2025にアクセス、 https://storybook.js.org/docs/api/main-config/main-config
  28. Configure Storybook | Storybook docs, 11月 3, 2025にアクセス、 https://storybook.js.org/docs/configure
  29. 3. Configure Storybook | kickstartDS docs, 11月 3, 2025にアクセス、 https://www.kickstartds.com/docs/guides/create/storybook/
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  35. storybook のストーリーの命名のベストプラクティスを考えたい – Zenn, 11月 3, 2025にアクセス、 https://zenn.dev/pandanoir/scraps/b54eddddaae23f
  36. Using storybook for complex components by mocking dependencies – Medium, 11月 3, 2025にアクセス、 https://medium.com/@maffelu/using-storybook-for-complex-components-a155a27627f6
  37. How to write stories | Storybook docs – JS.ORG, 11月 3, 2025にアクセス、 https://storybook.js.org/docs/writing-stories
  38. Controls | Storybook docs, 11月 3, 2025にアクセス、 https://storybook.js.org/docs/essentials/controls
  39. Component tests | Storybook docs – JS.ORG, 11月 3, 2025にアクセス、 https://storybook.js.org/docs/8/writing-tests/component-testing
  40. Storybook + MSW を実プロジェクトに導入してわかった「地味に詰まる」ポイント集 – ecomott blog, 11月 3, 2025にアクセス、 https://www.ecomottblog.com/?p=17195
  41. Automatic documentation and Storybook | Storybook docs – JS.ORG, 11月 3, 2025にアクセス、 https://storybook.js.org/docs/writing-docs/autodocs
  42. Visual Testing – Storybook Tutorials, 11月 3, 2025にアクセス、 https://storybook.js.org/tutorials/intro-to-storybook/react/en/test/
  43. Mastering the Design-to-Code Flow with Figma, Storybook, and Angular (Part 2), 11月 3, 2025にアクセス、 https://push-based.io/article/mastering-the-design-to-code-flow-with-figma-storybook-and-angular-part-2
  44. Automated Design System – Storybook and Figma library – Anima, 11月 3, 2025にアクセス、 https://www.animaapp.com/lp/design-system-automation
  45. Figma to Storybook – Builder.io, 11月 3, 2025にアクセス、 https://www.builder.io/workflows/figma-to-storybook
  46. Design token automation from Figma to Storybook | Blog – Matthew Rea, 11月 3, 2025にアクセス、 https://matthewrea.com/blog/design-token-automation-from-figma-to-storybook/?ref=storybookblog.ghost.io
  47. Storybookの活用方法:開発プロセスを効率化するツールを使ってみよう – 株式会社デパート, 11月 3, 2025にアクセス、 https://depart-inc.com/blog/development-tools-storybook/
  48. Using Storybook in a Monorepo – Kamran Ayub, 11月 3, 2025にアクセス、 https://kamranicus.com/using-storybook-in-a-monorepo/
  49. [RFC] Proposal to add first-class support for monorepos in a probably easy way · storybookjs storybook · Discussion #22521 – GitHub, 11月 3, 2025にアクセス、 https://github.com/storybookjs/storybook/discussions/22521
  50. Bootstrapping Storybook – The Candid Startup, 11月 3, 2025にアクセス、 https://www.thecandidstartup.org/2025/01/13/bootstrapping-storybook.html
  51. Storybook best practices for making the most out of Nx, 11月 3, 2025にアクセス、 https://nx.dev/docs/technologies/test-tools/storybook/guides/best-practices
  52. Setting up a Storybook with React-Native-Web in a monorepo – Design Systems Collective, 11月 3, 2025にアクセス、 https://www.designsystemscollective.com/setting-up-a-storybook-with-react-native-web-in-a-monorepo-36c074ce7088
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