Redmineとは?Jiraとの違いを徹底比較【2025年最新】プロジェクト管理の主流と非エンジニア向けTCO・アジャイル解説


目次

セクション1:プロジェクト管理の「今」と基本用語(非エンジニア向けガイド)

現代のビジネス環境において、「プロジェクト管理」はもはや特定の部門の専門スキルではありません。本レポートの主要な読者である非エンジニアの意思決定者や管理職の方々が、ツール選定という本題に入る前に、現代のプロジェクト管理における「共通言語」を理解することは不可欠です。このセクションでは、技術的な詳細ではなく、「なぜ(Why)」と「概念(Concept)」に焦点を当てて解説します。

1-1. なぜ今、プロジェクト管理ツールが「全社的な課題」なのか?

かつて、プロジェクト管理ツールはソフトウェア開発部門や建設現場など、専門的なタスクを管理するための固有の課題とされてきました。しかし現在、ビジネス環境の劇的な変化により、マーケティング、人事、経営企画といった非IT部門を含むあらゆる部門で、タスクとプロセスの管理ツールの見直しが迫られています。

この背景には、主に3つの大きな変化があります。

  1. リモート・ハイブリッドワークの常態化
    パンデミックを経て、オフィスへの出社を前提としない働き方が定着しました。物理的に離れた場所にいるチームメンバーが「今、誰が、何をしているか」という進捗状況を透明化し、非同期(Asynchronous)で作業を進めるための「共通の場所」として、プロジェクト管理ツールの役割が爆発的に増加しました 1。
  2. DevOpsと部門横断の壁の崩壊
    従来、ソフトウェアの「開発(Development)」と「運用(Operations)」は分断されがちでした。この壁を取り払い、両者が緊密に連携してビジネスの要求に迅速に応え続ける「DevOps」という考え方が主流となりました 3。この「サイロ(部門間の壁)を壊して連携する」という思想は、今や開発部門にとどまらず、マーケティング、営業、人事といった非IT部門にも拡大しています 5。新しいツールは、これら部門横断チームの「共通基盤」となることが求められています。
  3. データ駆動型の意思決定へのシフト
    過去の経験や勘に頼った意思決定から、プロジェクトの進捗、リソースの負荷、タスクのボトルネックといった具体的な「データ」に基づいて判断を下す「データ駆動型マネジメント」が不可欠になっています 5。優れたプロジェクト管理ツールは、チームの活動をリアルタイムで集計し、意思決定者に正確なインサイトを提供します。

1-2. 基本用語(1):「アジャイル」とは?(スクラムとカンバンのシンプルな違い)

「アジャイル(Agile)」という言葉を耳にする機会が急増していますが、非エンジニアにとっては最も理解しにくい概念の一つです。

アジャイルとは「素早い」「俊敏な」という意味で、厳格な手法(Methodology)そのものではなく、プロジェクトの途中で起こる「計画の変更」を恐れるのではなく、むしろ積極的に受け入れて柔軟に対応するための「考え方」や「哲学(マニフェスト)」を指します 3

このアジャイルという「考え方」を実現するために、いくつかの具体的な「手法」が生まれました。その代表が「スクラム」と「カンバン」です。

スクラム(Scrum)

スクラムは、アジャイルを実現するための最も代表的な「手法(フレームワーク)」の一つです 9

  • 比喩:「2週間後のディナーコース」のために動く厨房
  • 解説:スクラムでは、まず「スプリント(Sprint)」と呼ばれる1週間から4週間程度の短い固定期間を設定します 9。プロジェクトチームは、まず「スプリント計画ミーティング」を行い、その期間内に完成させる「料理(機能)」を具体的に計画します 11
  • スプリントが始まると、チーム(料理人)は毎日「デイリースクラム」と呼ばれる短時間の朝礼で進捗や問題点を共有します 12。スプリントの最終日には、完成した料理(機能)を関係者に見せる「スプリントレビュー(試食会)」を行い、フィードバックを得ます 12
  • スクラムは、「短期間で動くものを作り、フィードバックを得て、次の計画を立てる」というサイクルを高速で回すことに特化しています。後述するJiraは、このスクラムの実践に最適化されたツールです 11

カンバン(Kanban)

カンバンは、アジャイルを実現するもう一つの主要な「手法」です 3。そのルーツは、トヨタ自動車の生産方式である「かんばん方式」にあります 14

  • 比喩:「アラカルト(一品料理)専門」の厨房
  • 解説:カンバンには、スクラムのような「スプリント」という固定期間がありません 12
  • その代わり、「カンバンボード」と呼ばれるボードを使います 3。このボードは通常、「To Do(未調理)」「In Progress(調理中)」「Done(完成)」といった列(レーン)で構成されます。
  • カンバンの最大の特徴は、「WIP(Work in Progress)の制限」、つまり「調理中」のレーンに置ける皿の数(タスクの数)に上限を設けることです 3。これにより、特定のシェフ(担当者)への作業集中といった「ボトルネック」を可視化し、全体の作業の流れ(ワークフロー)をスムーズにし、効率を最大化することに焦点を当てます 3

1-3. 基本用語(2):「クラウド」と「オンプレミス」

プロジェクト管理ツールを導入する際、「どこに置くか」「誰が管理するか」という選択は、機能そのものと同じくらい重要です。これが「クラウド」と「オンプレミス」の違いであり、次の「TCO(総所有コスト)」に直結します。

クラウド(SaaS)

「Software as a Service」の略で、サービス提供者がインターネット上で管理・運用するサーバーに置かれたソフトウェアを、月額料金などで利用する形態です 15

  • 比喩:「賃貸マンション」
  • 解説:利用者は、月額利用料(家賃)を払うだけで、すぐにサービスを使い始めることができます 15。サーバーの購入(物件の購入)や、インフラ(水道・電気)の構築、日々のメンテナンス、セキュリティ対策は、すべて大家さん(サービス提供者)が行ってくれます 16
  • :本レポートで紹介する Jira Cloud 17

オンプレミス(On-Premise)

自社で購入したサーバー、または自社で契約したプライベートサーバーに、自分たちでソフトウェアをインストールして運用・管理する形態です 18

  • 比喩:「持ち家(注文住宅)」
  • 解説:最初にサーバーハードウェアの購入や設定(土地の購入と建設)といった大きな初期投資が必要です。さらに、日々のメンテナンス、セキュリティパッチの適用、システムのアップグレード(家の修繕、防犯対策)も、すべて自分たち(自社のIT部門)で行う必要があります 16
  • その代わり、間取りや内装(カスタマイズ)は自由自在であり、外部の人間を一切入れない(データを外部に出さない)ことで、極めて高いセキュリティレベルを維持できます 18
  • :本レポートで紹介する Redmine 19

1-4. 基本用語(3):「TCO(総所有コスト)」

非エンジニアの意思決定者がツール選定で犯しやすい最大の過ちは、「ライセンス料」だけでコストを比較してしまうことです。TCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)とは、その製品やサービスを導入してから廃棄するまでの生涯で、企業が支払う「すべてのコスト」の総額を指します 18

TCOは、大きく分けて2つのコストで構成されます。

  1. 直接コスト(見えるコスト):
    ソフトウェアの購入費用、月額ライセンス料、サーバーハードウェアの購入費用など、見積書や請求書に記載される明確なコストです 18。
  2. 間接コスト(隠れたコスト):
    これがTCOの罠です。導入や設定にかかる専門家の人件費、社員が新しいツールを学ぶための学習・トレーニング時間、日々の運用・メンテナンスを担当するIT部門の人件費、システムのアップグレード費用、さらにはサーバーの電気代まで、目に見えにくいすべてのコストが含まれます 18。

「無料」ツールが「有料」ツールより高くなる理由

RedmineとJiraの比較において、このTCOの概念が最も重要になります。

  • Redmine (オープンソース):
    ライセンス料という「直接コスト」は0円です 23。しかし、オンプレミスで運用するためのサーバー費用、導入・設定・カスタマイズを行うための専門家(Ruby on Railsの知識を持つエンジニア)の人件費、そして継続的なセキュリティ管理とメンテナンスの人件費という、極めて高額な**「隠れたコスト」**が発生します 19。
  • Jira (商用クラウド):
    月額利用料という「直接コスト」が明確に発生します 17。しかし、クラウド(SaaS)であるため、サーバー管理、メンテナンス、セキュリティ対策といった「隠れたコスト」の大部分は、月額料金に含まれており、自社で別途対応する必要はありません 15。

本当の比較軸は「無料 vs 有料」ではありません。**「TCOの内訳が『技術的人件費』中心(Redmine)か、『ライセンス費』中心(Jira)か」**という、コスト構造(ポートフォリオ)の違いなのです。

したがって、非エンジニアの意思決定者がツール選定時に問うべき真の質問は、「どちらが安いか?」ではありません。**「自社には、TCOを『人件費』として継続的に支払い続けるための、専門的な技術力が社内に潤沢にあるか?」**です。もし、その答えが「No」である場合、「無料」のRedmineを選んだ結果、専門家を外部から調達することになり、TCO(総所有コスト)はJiraのライセンス料の数倍に膨れ上がるリスクがあるのです 24


セクション2:Redmine(レッドマイン)とは?- 自由度の高いオープンソースの「職人」

Redmineの機能と、その「オープンソース」という思想がもたらすメリット、そしてTCOの観点からのデメリットを具体的に理解します。

2-1. Redmineの概要と基本アーキテクチャ

Redmineは、柔軟性が非常に高い、オープンソースのプロジェクト管理Webアプリケーションです 26

  • 定義:
    Redmineは、タスク管理、進捗管理、情報共有などをWebベースで行うためのツールです。
  • 技術背景:
    プログラミング言語「Ruby」で動作する「Ruby on Rails」というフレームワークで構築されています 26。これが、Redmineの導入やカスタマイズ、メンテナンスにRuby on Railsの専門知識が必要であると言われる理由です 19。
  • ライセンス:
    GNU General Public License v2 (GPL v2) というライセンス形態をとっています 26。これにより、Redmineのソースコードはすべて公開されており、誰でも無料で利用、コピー、改変、再配布することが可能です。
  • ホスティング:
    その成り立ちから、主に「オンプレミス」(自社サーバー)で運用されることが前提です 19。しかし、自社でのサーバー管理を避けたいユーザー向けに、RedmineUP Cloud 19 や RedmineCloud 26 のような、サードパーティ企業がRedmineの環境を提供するクラウド(ホスティング)サービスも存在します。

2-2. Redmineの主要機能(標準)

Redmineは、多くの機能を標準で搭載しています。

  1. (1) 柔軟な「チケット(課題)」管理システム:
    Redmineの核となる機能です。プロジェクトで発生する「やるべきこと」をすべて「チケット(Issue)」として登録し、その進捗を追跡します 27。この「チケット」は、エンジニアの「バグ」や「機能開発」だけでなく、マーケティング部門の「ブログ記事執筆」や、総務部門の「備品発注」など、あらゆるタスクとして定義できます。このチケットに含める項目(カスタムフィールド)や、チケットの状態(例:「新規」→「進行中」→「レビュー」→「完了」)といったワークフローを、プロジェクトごとに柔軟に設定できるのが最大の特徴です 26。
  2. (2) 複数プロジェクトのサポート:
    単一のRedmineインストール環境(一つのRedmine)で、無制限にプロジェクトを作成し、管理できます 26。さらに、大きなプロジェクトを管理しやすいよう、プロジェクトの下に「サブプロジェクト」を階層構造で作成することも可能です 27。
  3. (3) 進捗の可視化:ガントチャートとカレンダー:
    標準機能として「ガントチャート」が搭載されています 26。これは、各チケット(タスク)の開始日と終了日、タスク間の依存関係、そしてプロジェクトの節目となる「マイルストーン」(中間目標や期限)を、時系列の横棒グラフで視覚的に管理する機能です 28。
  4. (4) 情報集約機能:Wikiとフォーラム:
    プロジェクトごとに専用の「Wiki(ウィキ)」機能が用意されています 26。これにより、プロジェクトのルール、議事録、マニュアルといったナレッジ(知識)を、プロジェクトメンバーが共同で編集・蓄積していくことができます 29。また、掲示板機能である「フォーラム」も備えています 26。
  5. (5) SCM連携(開発者向け):
    Git, Subversion (SVN), Mercurialといったソースコードのバージョン管理システム(SCM)と標準で連携できます 26。
  6. (6) その他:
    その他にも、柔軟な「ロールベースのアクセス制御」(例:メンバーには閲覧のみ、マネージャーには編集権限を付与)26、タスクに費やした時間を記録する「時間追跡(タイムトラッキング)」26、プロジェクト内のニュースやお知らせの共有、文書やファイルの管理機能 26 などを備えています。

2-3. メリット(Pros)- なぜRedmineは選ばれるのか?

多くの最新ツールが登場する中でも、Redmineが(特に日本では)根強く支持され続けるのには、明確な理由があります。

  1. (1) コスト:ライセンス料が「無料」
    オープンソースであるため、何人のユーザーが使おうと、いくつのプロジェクトを管理しようと、ソフトウェアのライセンス費用は一切かかりません 23。
  2. (2) オンプレミスとデータ管理:「持ち家」の安心感
    自社のサーバー(オンプレミス)で運用できることが、最大のメリットの一つです 20。社外秘の機密情報や、規制の厳しい業界(例:政府、医療、金融)のデータを、外部のクラウドサーバーに置くことを許可されていない組織にとって、Redmineはデータを完全に自社の管理下に置ける、数少ない選択肢となります 17。
  3. (3) 最高のカスタマイズ性:「職人」の道具
    ソースコードがすべて公開されているため、理論上、自社の特殊な業務プロセスや帳票に合わせて、「何でも」変更・追加が可能です 20。既存のツールに業務を合わせるのではなく、業務にツールを完璧に合わせ込むことができます。
  4. (4) 柔軟性:手法を選ばない
    Redmineは、特定の手法(アジャイルなど)をユーザーに強制しません。ガントチャートを使った伝統的なウォーターフォール管理 27、チケットシステムを使った純粋なタスク管理 29、そして後述するプラグインを使ったアジャイル管理 17 まで、一つのツールで柔軟に対応が可能です。

2-4. デメリットと「隠れたコスト」(Cons)

Redmineのメリットは、そのままデメリット(TCO)の裏返しでもあります。

  1. (1) 導入と維持の「TCO」:「無料」の本当の対価
    セクション1-4で警告した通り、Redmineのライセンスは無料ですが、その運用には「Ruby on Rails」の専門知識を持つエンジニアが必須です 19。彼らが導入設定、継続的なサーバーメンテナンス、セキュリティパッチの適用、そしてアップグレード作業を行わなければなりません。この「隠れたコスト」(専門家の高額な人件費、または外部委託費)は、Jiraのライセンス料を容易に上回る可能性があります 22。
  2. (2) ユーザーインターフェース(UI):
    UIは機能的ではありますが、多くの海外レビューにおいて「時代遅れ」「洗練されていない」「直感的でない」と指摘されています 31。非エンジニアのユーザーにとっては学習コストが高く、組織内での普及を妨げる一因となる可能性があります 32。
  3. (3) サポート体制の不在:
    オープンソースであるため、Atlassian(Jiraの提供元)のような公式のサポート窓口や、障害発生時のSLA(サービス品質保証)はありません 23。問題が発生した場合、その解決はすべてコミュニティフォーラム 23 での自己調査か、自社の技術力に依存します(有償版のEasy Redmine 34 などは除く)。
  4. (4) アジャイル機能の欠如:
    標準機能では、Jiraが提供するような洗練された「スクラムボード」や「カンバンボード」は搭載されていません 35。アジャイル管理を行うには、サードパーティ製のプラグインを別途導入・設定する必要があります。

2-5. 【実例】Redmineの活用フロンティア(非IT分野)

Redmineは「ソフトウェア開発ツール」というイメージ 28 が根強いですが、その本質は「業界を問わない、柔軟なチケット管理システム」です。この柔軟性に着目し、海外では非IT分野での活用事例が報告されています 36

  • 建設業(Construction):
    ある海外の建設会社が、Microsoft Project(伝統的な建設・工学管理ツール)の代替としてRedmineを検討した事例がコミュニティで報告されています 38。この事例では、Redmineの「チケット」を「タスク(作業)」、「バージョン」を「マイルストーン(工程期限)」と読み替えることで、ソフトウェア開発用語を建設プロジェクト管理に適用しようと試みています 38。
  • 医療(Healthcare):
    2020年のパンデミック下において、研究所、製薬会社、医療機器メーカーなどは、従来の管理手法の限界に直面しました。その解決策として、Redmineをベースにしたクラウドサービス(RedmineUP Cloudなど)を導入し、複数の部門や組織をまたいだプロジェクトの調整に活用するケースが報告されています 39。
  • 政府(Government):
    Redmineの拡張性とオンプレミスの強みを示す最大の事例として、カザフスタン政府が挙げられます。同政府は、国全体のプロジェクト管理基盤として、Redmineの商用版(フォーク)である「Easy Project」を採用しました 40。この中央集権システムは、30,000件以上の国家プロジェクトを管理するために稼働しています 40。
  • その他:
    非営利団体 (NPO) 37 や、ハンガリーの大学におけるソーラーボート開発チーム 40 など、予算が限られている一方で、タスク管理の透明性を高めたい組織にも採用されています。

セクション3:Jira(ジラ)とは?- アジャイル開発の「デファクトスタンダード」

次に、Redmineの最大の比較対象であり、アジャイル開発市場の「標準(デファクトスタンダード)」となっているJiraを分析します。Jiraの強みは、その「商用(アトラシアン)エコシステム」にあります。

3-1. Jiraの概要とエコシステム

Jira(ジラ)は、オーストラリアに本社を置くAtlassian(アトラシアン)社が開発・提供する、商用のプロジェクト管理ソフトウェアです 41

  • 定義:
    アジャイルチームによるソフトウェア開発を支援するために設計された、バグ追跡・課題追跡・プロジェクト管理ツールです。
  • 歴史:
    2002年に、元々は開発者のための「バグトラッカー(バグ管理ツール)」としてリリースされました 7。その後、アジャイル開発手法(特にスクラム)の普及とともに進化を遂げ、現在ではアジャイルプロジェクト管理ツールの市場リーダーとみなされています 35。
  • 技術背景:
    JiraはJava(プログラミング言語)で書かれています 41。
  • ホスティング:
    現在、Jiraの主流は、Atlassianが管理する「Jira Cloud」(SaaS版)です 42。かつてはオンプレミス版(Jira Server)も提供されていましたが、Atlassianはクラウドファースト戦略を鮮明にしており、既存のオンプレミス版は「Jira Data Center」という高額なライセンス体系に移行し、将来的なサポート縮小・終了が予定されています 43。

3-2. Jiraの主要機能

Jiraの機能は、Redmineとは対照的に「アジャイル開発」に強くフォーカスしています。

  1. (1) 強力な「ネイティブ」アジャイル機能:
    Jiraの最大の強みであり、Redmineとの決定的な違いです。
  • スクラムボードとカンバンボード:プラグインを一切必要とせず、標準機能として、洗練されたドラッグ&ドロップ操作が可能なスクラムボードとカンバンボードを提供します 11
  • バックログ管理:アジャイル開発、特にスクラムにおいて不可欠な「バックログ」(将来やるべきタスクの優先順位付きリスト)を管理するための専用機能が充実しています 11
  1. (2) 高度な可視化とレポーティング
  • ロードマップ:プロジェクトの長期的な計画、機能リリースの予定、タスク間の依存関係を、非エンジニアにも分かりやすく視覚化する「ロードマップ」機能が標準で搭載されています 7
  • インサイトとレポート:「バーンダウンチャート(スプリント終了までに、あとどれだけの作業が残っているかを示すグラフ)」や「ベロシティチャート(チームが1スプリントでどれだけの作業量をこなしたかを示すグラフ)」など、アジャイルチームのパフォーマンスを測定・改善するために不可欠な十数種類のレポートが、標準で組み込まれています 7
  1. (3) Atlassianエコシステムとのシームレスな連携:
    Jiraは単体で完結するツールではなく、「Atlassianエコシステム」という強力な連携網の中核を成しています。
  • Confluence:Jiraが「タスク(What)」を管理するツールなら、Confluenceは「ドキュメント(Why, How)」を管理するツールです。JiraのタスクとConfluenceの議事録や仕様書をシームレスに連携させることができます 46
  • Bitbucket:Atlassianが提供するGitリポジトリ(SCM)です。Jiraの「タスク」とBitbucketの「ソースコードの変更」を自動で連携させます 17
  • Marketplace:Atlassian Marketplaceには、6,000を超えるサードパーティ製のアプリ(プラグイン)が登録されています 7。これにより、Figma(デザインツール)45 やSlack(チャットツール)2 など、現代の業務で使われるほぼ全てのツールとJiraを連携させることが可能です。
  1. (4) AI機能の統合:
    Atlassianは「Rovo」というAI技術に多額の投資を行っています 46。AIが大きなタスクを自動で小さなサブタスクに分解したり 7、JQL(Jira Query Language)という高度な検索をAIが支援したり 35、AIによるタスクの自動割り当て 48 など、最新のAI機能が次々とJira Cloudに統合されています。

3-3. メリット(Pros)- なぜJiraはデファクトスタンダードなのか?

  1. (1) アジャイル開発の「正解」:
    アジャイル、特にスクラムを「教科書通りに正しく」実践したいチームにとって、Jiraはベストプラクティス(最善の実践方法)が詰まったツールです 11。
  2. (2) 優れたUI/UXと非エンジニアの使いやすさ:
    Redmineと比較して、モダンで直感的なユーザーインターフェース(UI/UX)を備えています 17。これにより、エンジニア以外のメンバー(例:プロダクトマネージャー、デザイナー、マーケター)にとっても導入のハードルが低いです 49。
  3. (3) 強力なエコシステムと拡張性:
    前述のConfluence(文書)やBitbucket(コード)との強力な連携は、ソフトウェア開発のライフサイクル全体(計画、開発、テスト、リリース、運用)をカバーします 17。
  4. (4) 充実したサポートとスケーラビリティ:
    商用ツールであるため、Atlassian本体や正規パートナー企業 47 からの手厚いサポートが受けられます(プランによる)17。Fortune 1000(全米トップ1000企業)49 や、Zoom 35、Air France-KLM 35 といったグローバルな大企業での全社導入にも耐えうる、高度なスケーラビリティとセキュリティ(SOC2, ISO 27001など)50 を備えています。

3-4. デメリット(Cons)

  1. (1) コスト(ライセンス料):
    TCOが「ライセンス費」中心であるため、コストが明確な反面、高額になりがちです。無料プラン(10ユーザーまで)もありますが 17、チームの規模が拡大したり、高度な機能(Premium, Enterpriseプラン)が必要になったりすると 17、月額費用は急速に増加します 24。
  2. (2) 高機能ゆえの複雑さ:
    JiraはRedmineとは異なる意味で「複雑」です 20。非常に高機能であるため、すべての機能を使いこなすには相応の学習コストがかかります。特に管理者にとっては、詳細なワークフロー設定や権限管理が複雑になる場合があります 45。
  3. (3) 「クラウドロックイン」とオンプレミスの終焉:
    Atlassianのクラウドファースト戦略 43 により、ユーザーはAtlassianのクラウド(AWS上で稼働 42)にデータを預けることが半ば強制されます。データを自社サーバーから絶対に動かせない、あるいは動かしたくない組織にとって、オンプレミス(Data Center)の選択肢が縮小し、高額になっている現状は、Jiraを採用できない最大の理由となります 43。

3-5. 【実例】Jiraは開発者だけのものではない(非IT分野)

Redmineと同様に、Jiraも非IT部門での活用が進んでいます。Atlassian自身が、Jiraを従来の「開発ツール」から「全社のためのワークマネジメントツール」7 へと意図的に進化させており、この戦略は成功を収めています 6

  • マーケティング(Marketing):
    Jiraは、キャンペーン管理、コンテンツ制作、イベント企画などに広く使われています 7。特にカンバンボードを使い、「To Do(企画)→ In Progress(制作中)→ Review(レビュー中)→ Published(公開済)」といったコンテンツのワークフローを管理するのに最適です 54。Atlassian自身のイベントマーケティングチームも、Jiraを活用して大規模イベント「Team ’25」を計画した事例を公開しています 55。
  • 人事(Human Resources):
    Jiraの強力な「ワークフロー」機能は、人事部門の定型業務にも応用されています 52。例えば、採用プロセス(「応募受付」→「書類選考」→「一次面接」→「最終面接」→「オファー」→「採用」)54 や、新入社員のオンボーディング(入社手続き、PC手配、研修受講などのタスク管理)52 にJiraが活用されています。
  • 財務(Finance):
    予算の承認プロセスや、経費の追跡 52 など、明確な承認フローと証跡(ログ)が求められる業務にもJiraが適しています。

セクション4:【徹底比較】Redmine vs Jira – 6つの視点で選ぶ「あなたのチーム」に最適なツール

これまで分析した内容を、意思決定者である読者のために、6つの明確な比較軸で整理し、両者の違いを明確にします。

4-1. 視点1:アジャイル(スクラム・カンバン)管理

  • Jira:「ネイティブ」かつ「強力」。
    Jiraはアジャイル開発(特にスクラム)を実践するために設計されたツールです。スクラムボード、カンバンボード、バックログ管理、そしてバーンダウンチャートなどのアジャイル特有のレポート機能が、標準機能として極めて強力かつ洗練されています 11。
  • Redmine:「プラグイン」で「可能」。
    Redmineの標準機能は、ガントチャート(ウォーターフォール)とチケット管理が中心です 27。アジャイル管理を行うには、サードパーティ製(有償または無償)の「Agileプラグイン」を別途探し出し、自社で導入・設定する必要があります 17。これらのプラグイン(例:RedmineUP Agile 57, Redmine Agile 58)を導入すれば、Redmine上でもドラッグ&ドロップ式のカンバンボードやスクラムボード、バーンダウンチャートが利用可能になりますが、その機能性や洗練度、エコシステムとの連携(例:Confluenceとの連携)は、Jiraのネイティブ機能には及びません。
  • 結論:
    アジャイル開発を「本格的に導入したい」あるいは「すでに実践している」チームにとっては、Jiraが圧倒的に優位です。Redmineは、「既存の管理手法(ガントチャートなど)を維持しつつ、アジャイルの要素(カンバン)も取り入れたい」といったハイブリッドな使い方に適しています。

4-2. 視点2:コスト(初期費用とTCO)

  • Jira:「見えるコスト」中心のTCO。
    Jiraのコストは、主に「ライセンス費用」です 17。TCOは「(プランに応じた)月額ライセンス料 × ユーザー数」で明確に計算できます。Jira Cloud(SaaS)を利用する場合、サーバー管理費、メンテナンス人件費、アップグレード作業費といった「隠れたコスト」は最小限に抑えられます 16。
  • Redmine:「隠れたコスト」中心のTCO。
    Redmineのライセンス料は0円です 23。しかし、TCOは「オンプレミスサーバーの構築・維持費用 + 導入・設定・継続的な保守管理を行う専門エンジニアの人件費」で構成されます 19。
  • TCO分析:
    Redmineの商用版であるEasy Redmine社が公開したTCOシミュレーション 24 は、興味深い結果を示しています。例えば、500ユーザーで5年間利用するケースなど、特定の条件下では、Jira CloudのTCOがRedmine(Easy Redmine)のTCOを上回る可能性がある一方で、Jiraのオンプレミス版(Data Center)のTCOは、他の選択肢(Jira Cloud, Easy Redmine)を圧倒的に上回り、極めて高額になることが示されています 24。
  • 結論:
    「Redmineは無料だから安い」「Jiraは有料だから高い」という単純な比較は無意味です。比較すべきは、**「自社の技術的人件費(Redmineの隠れたコスト)」 vs 「Jiraのライセンス費(Jiraの見えるコスト)」**という、TCOの内訳(コストポートフォリオ)です。

4-3. 視点3:非エンジニアの「使いやすさ」(UI/UX)

  • Jira:「直感的」。
    モダンで洗練されたUI、ドラッグ&ドロップによる直感的な操作性 45 は、非エンジニア(プロダクトマネージャー、マーケター、人事)からも高く評価されています 49。マーケティングやHR向けの専用テンプレート 48 が用意されている点も、全社導入を後押しします。
  • Redmine:「機能的だが、古い」。
    RedmineのUIは、機能的ではあるものの、「時代遅れ」と評価されることが多く 32、特に非エンジニアのユーザーにとっては「直感的でない」「学習コストが高い」と感じられる可能性があります 31。ただし、Redmineに習熟した一部の技術者からは、「JiraはUIがごちゃごちゃしている」「Redmineの方が少ないクリック数で作業が終わる」といった、RedmineのシンプルなUIを評価する声もあります 23。
  • 結論:
    非エンジニアのメンバーを幅広く巻き込んだ「全社的な」ツール導入を目指す場合、UI/UXと初期学習コストの観点から、Jiraに大きなアドバンテージがあります 49。

4-4. 視点4:カスタマイズ性と拡張性

  • Redmine:「無限の自由(と責任)」。
    オープンソースであるため、ソースコードレベルでの改変が可能です 20。これは、自社の極めて特殊な業務フローや独自のレポート帳票に、システムを「完璧に」合わせ込むことができることを意味します。ただし、そのカスタマイズの実装と、将来のバージョンアップ時の維持管理は、すべて自社の責任(コスト)となります。
  • Jira:「エコシステム内の柔軟性」。
    商用製品であるため、ソースコードの変更はできません。その代わり、Atlassian Marketplaceで提供される6,000以上の豊富なアプリ(プラグイン)47 と、強力なワークフロー自動化エンジン 35 を組み合わせることで、実務上ほとんどの要求に対応可能です。
  • 結論:
    Redmineのカスタマイズ性は「DIY(日曜大工)」に例えられます。ゼロから作りたいならRedmineです。一方、Jiraの拡張性は「レゴブロック」に例えられます。高品質で多種多様な既製の部品を組み上げて、高性能な城を築きたいならJiraです。

4-5. 視点5:ホスティング(クラウド vs オンプレミス)

  • Jira:「クラウド・ファースト」。
    Jiraの戦略は明確に「クラウド中心」です。Atlassianの最新のイノベーション(AI機能など)は、すべてJira Cloudに集中して投資されています 46。オンプレミス版(Data Center)も存在はしますが、ライセンス料は極めて高額であり 24、Atlassianの戦略的な将来性も不透明です 43。
  • Redmine:「オンプレミスが主流」。
    Redmineの最大の存在価値の一つは、オンプレミス運用が基本であることです 17。厳格な業界規制(医療、金融)や、国家の機密情報(政府)、企業の知的財産を守るため、データを自社サーバーから一切出せない、あるいは出したくない組織にとって、Redmine(およびEasy Redmine 50 のようなオンプレミス対応の商用版)は、Jiraのクラウド移行が進む中で、ますます強力な選択肢となっています。

4-6. 視点6:企業規模とサポート

  • Jira:**「大企業・全社導入」**に強い。
    Fortune 1000 49 での豊富な採用実績が示す通り、数万人規模の全社導入にも耐えうるスケーラビリティを備えています。Atlassianや正規パートナーによる、24時間365日対応のエンタープライズサポート(プランによる)17 も、大企業にとっては不可欠な要素です。
  • Redmine:**「中小企業・技術部門」**に強い。
    ライセンス料が無料であることから、技術力のある中小企業 49 や、特定の技術部門が、自分たちの裁量で自律的にツールを導入・運用するケースに適しています。サポートは、公式の窓口ではなく、コミュニティフォーラムや自社の技術力に依存します 31。

【挿入テーブル1:Redmine vs Jira 6つの視点での比較】

比較軸Redmine(レッドマイン)Jira(ジラ)
1. アジャイル対応要プラグイン 35
標準はガントチャート。Agileプラグインの導入・設定が別途必要。
標準・強力 11
アジャイル開発のために設計。洗練されたスクラム/カンバンボード、アジャイルレポートが標準搭載。
2. TCOモデル「隠れたコスト」(人件費)19
ライセンス料0円。TCOは「サーバー費+専門エンジニアの人件費(導入・保守)」。
「見えるコスト」(ライセンス費)17
TCOは「月額ライセンス料×ユーザー数」。クラウド版なら保守人件費は最小。
3. 非エンジニアのUI/UX学習コストが高い 31
機能的だが「時代遅れ」と評されるUI。非エンジニアには直感的でない可能性。
直感的 45
モダンで洗練されたUI。ドラッグ&ドロップ操作。非IT部門向けテンプレートも豊富 48
4. カスタマイズ性無限(ソースコード) 20
「DIY」。ソースコード改変により理論上何でも可能。ただし実装・維持は自己責任。
豊富(エコシステム) 45
「レゴ」。6,000以上のアプリとワークフロー自動化で、ほとんどの要求に対応可能。
5. ホスティングオンプレミス中心 17
「持ち家」。自社サーバーでの運用が基本。データ管理とセキュリティの完全なコントロール。
クラウド中心 43
「賃貸」。Jira Cloudが主流。オンプレミス版(Data Center)は高額で戦略的に縮小傾向。
6. 最適規模/サポート中小・部門(コミュニティ) 31
技術力のある中小企業や特定部門での利用。サポートはコミュニティベース。
大企業・全社(商用サポート) 17
Fortune 1000での実績。スケーラビリティとAtlassianによる公式サポート。

セクション5:【2025年以降】プロジェクト管理の最新トレンドとツールの未来

ツール選定は、現在の機能比較だけで行うべきではありません。3年後、5年後のプロジェクト管理のトレンドを踏まえたとき、そのツールが組織の戦略的価値を高め続けることができるかを見極める必要があります。

5-1. トレンド1:「アジャイルは死んだ」のか? – 「ハイブリッド型」管理の台頭

  • 市場の動向:
    海外のプロジェクト管理専門家の中には、厳格すぎる「純粋なアジャイル」への関心は薄れており、「アジャイルは死んだ」とさえ言及する声もあります 59。2025年以降の現実的なトレンドは、純粋なアジャイルや、旧来の純粋なウォーターフォール(ガントチャートによる計画)ではなく、両者の「良いところ」をプロジェクトの特性に応じて組み合わせた**「ハイブリッド型(Hybrid)」**管理が主流になるという分析です 8。
  • Jiraの立ち位置:
    Jiraは「アジャイルの王様」として市場を席巻しました。しかし、このハイブリッド型のトレンドに対応するため、アジャイル機能だけでなく、ロードマップ機能 7 や、より広範なプランニング機能(Jira Product Discoveryなど 60)の強化を進めています。
  • Redmineの立ち位置:
    Redmineは、奇しくも、標準でガントチャート(ウォーターフォール)26 と柔軟なチケット管理システムを持ち、プラグインでカンバン(アジャイル)56 を追加できるという、生まれながらにして「ハイブリッド型」の機能セットを持っています。
  • 分析:
    この「ハイブリッド型」への回帰は、Redmineにとって逆転の追い風となる可能性があります。Jiraが「アジャイル」という特定の哲学や手法(Opinionated Software)を組織に求めるのに対し、Redmineは手法を強制しません。「アジャイル」には馴染まない伝統的な業務(例:総務、法務、経理)や、ウォーターフォール型が適しているプロジェクト(例:建設、インフラ)とも高い親和性を持っています。全社的な「ハイブリッド型」の管理基盤として、Redmineが持つ柔軟性(ガント+チケット+カンバン)が、再評価される価値があります。

5-2. トレンド2:AIによる自動化とデータ駆動型マネジメント

  • 市場の動向:
    AI(人工知能)がプロジェクト管理ツールに深く統合され、タスクの自動化、計画の最適化、リスクの予測、レポートの自動要約、データ分析などを行うのが標準になります 5。2025年のState of Agileレポートでも、AIと機械学習の統合が主要なトレンドとして挙げられています 61。
  • Jiraの立ち位置:
    この分野ではJiraが圧倒的に優位です。Atlassianは「Rovo」などのAI機能に巨額の研究開発投資を行っています 46。AIがJira上のタスクを自動で分解し 7、Jira, Confluence, Bitbucketを横断してAIが情報を検索・要約する 46 といった機能は、すでにJira Cloudに実装され始めています。
  • Redmineの立ち位置:
    オープンソースであるRedmineには、AI開発を主導する「中央集権的な」戦略はありません。AI機能の実装は、個々のサードパーティ製プラグインや、Easy Redmine 37 のような商用フォークの独自の努力に依存します。
  • 分析:
    AIを活用した生産性向上やデータ駆動型マネジメントの進化スピードにおいては、Atlassianのような巨大プラットフォーマー(Jira)が、コミュニティベース(Redmine)を圧倒的にリードし続ける可能性が極めて高いです。

5-3. トレンド3:DevOpsと部門横断(非IT部門)への拡大

  • 市場の動向:
    ビジネスの俊敏性を決める上で、開発(Dev)と運用(Ops)のサイクルを高速化する「DevOps」 3 の成熟度が、企業の競争力を左右します。現代の管理ツールには、タスク管理だけでなく、コード(Git)62、ビルド・デプロイ(CI/CD)62、インシデント管理 6 まで、開発ライフサイクル全体をシームレスにサポートすることが求められます。
  • Jiraの立ち位置:
    Jiraは、自らを「Open DevOps」ワークフローの「背骨(Backbone)」であると明確に位置づけています 35。Bitbucket(コード)、Confluence(文書)、Statuspage(インシデント広報)、Opsgenie(インシデント対応)42 など、Atlassianエコシステム全体でDevOpsのライフサイクルを強力にサポートします。
  • Redmineの立ち位置:
    Redmineも標準でSCM(Git, SVN)連携 26 は可能ですが、これはあくまで「リポジトリの閲覧」や「コミットとチケットの紐付け」といった基本的なレベルにとどまります。CI/CDパイプラインとの高度な連携や、DevOpsライフサイクル全体を管理するソリューションとしては、Jiraのエコシステムに比べて弱いです。
  • 分析:
    DevOpsの成熟度を全社的に高め、開発スピードを企業の競争力に直結させたい組織にとって、JiraのAtlassianエコシステムは、Redmineよりもはるかに強力なソリューションを提供します 35。

セクション6:結論と推奨 – あなたの組織に最適なツールの選び方

本レポートでは、RedmineとJiraを、機能、コスト(TCO)、トレンドの観点から徹底的に分析しました。最後のセクションとして、非エンジニアの意思決定者に対し、具体的な行動(どのツールを選ぶか)に結びつく、明確な判断基準を提供します。

6-1. サマリー:Redmineを選ぶべきチーム、Jiraを選ぶべきチーム

Redmineが適しているケース(推奨シナリオ)

  1. 「TCO」より「ライセンスコスト(0円)」を最優先し、かつ、社内にRuby on Railsの専門家が常駐している中小企業や技術系スタートアップ 49
  2. 「オンプレミス」が必須であり、法律、規制、または社内ポリシーにより、データを自社サーバーで厳格に管理する必要がある組織(例:医療、金融、政府系、建設業、特定の製造業)17
  3. 自社の業務フローが極めて特殊であり、既存のツールのワークフローでは対応しきれず、ソースコードレベルでの深いカスタマイズが必須であるチーム。
  4. アジャイル開発が中心ではなく、ガントチャート(ウォーターフォール)やWiki、柔軟なチケット管理を「ハイブリッド」に、かつ「シンプルに」使いたいチーム 20

Jiraが適しているケース(推奨シナリオ)

  1. 「アジャイル(スクラム)」を本格的に導入・実践し、そのパフォーマンスを最大化したいソフトウェア開発チーム 17
  2. 非エンジニア(マーケティング、人事、法務など)を含む**「全社的な」プロジェクト管理基盤**として、直感的なUIと豊富なテンプレートを求める組織 6
  3. 「DevOps」を全社的に推進し、Confluence(文書)やBitbucket(コード)とのシームレスなエコシステム連携を重視する企業 35
  4. 導入・運用の「隠れたコスト」を嫌い、TCOを「ライセンス費」として明確に予算化し、Atlassianの商用サポートを必要とする中堅〜大企業 17

6-2. 最終選定のためのチェックリスト

ツール選定は「機能の多さ」で行うべきではありません。「自社の文化、スキル、そしてTCOの支払い方」に合っているかで選ぶべきです。以下の質問に「はい」「いいえ」で答えることで、自組織の進むべき方向性が見えてきます。

【挿入テーブル2:導入シナリオ別推奨ツール・チェックリスト】

ツール選定のための8つの質問はいいいえ
1. 社内にRuby on Railsの専門家がおり、継続的な保守・運用が可能か?→ Redmine→ Jira
2. ライセンス費用(月額)の予算は一切なく、TCOは「人件費」で支払うか?→ Redmine→ Jira
3. 法律や規制により、データは100%自社サーバー(オンプレミス)に置く必要があるか?→ Redmine→ Jira
4. 導入の主な目的は「アジャイル(スクラム)開発」の本格実践か?→ Jira→ Redmine
5. 非エンジニア(マーケティング、人事)がエンジニアと「同じ」ツールで作業する必要があるか?→ Jira→ Redmine
6. Confluence (文書) やBitbucket (コード) とのシームレスなエコシステム連携が必須か?→ Jira→ Redmine
7. 障害発生時、開発元(Atlassian)の公式な商用サポートが必要か?→ Jira→ Redmine
8. 最新のAI機能(タスク自動化、AI要約など)を積極的に活用したいか?→ Jira→ Redmine
【診断結果】「はい」が1〜3に多い場合
あなたの組織は Redmine がTCOと要件の両面で最適である可能性が高いです。
「はい」が4〜8に多い場合
あなたの組織は Jira が組織の成長性と生産性を最大化する可能性が高いです。

6-3. 最終結論:オープンな「Redmine」 vs エコシステムの「Jira」

RedmineとJiraは、どちらが優れているかという問題ではなく、その根底にある「哲学」が異なります。

Redmineの価値は、それが「オープンソース」であること、すなわち**「自由」「データコントロール」**にあります 20。これは、高い技術力を持つチームや、厳格なデータ管理が求められる非IT分野(例:カザフスタン政府の事例 40)において、Jiraのクラウドサービスにはない絶対的な価値を提供します。

Jiraの価値は、それが「Atlassianエコシステム」であること、すなわち**「連携」「ベストプラクティス」**にあります 35。アジャイル、DevOps、そして非IT部門 6 までをも巻き込む「全社的なワークフロー」を、AIの力 48 を借りながら「教科書通りに」構築するプラットフォームとして、市場をリードし続けるでしょう 35

あなたの組織が、TCOを「人件費」として支払い**「自由」と「データコントロール」を選ぶのか。

それとも、TCOを「ライセンス費」として支払い「連携」と「ベストプラクティス」**を選ぶのか。

このレポートが、その戦略的な判断の一助となることを願っています。

引用文献

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