現代のデジタル社会では、様々なソフトウェアやサービスが連携し、私たちの生活や仕事を支えています。この連携の中心的な役割を担っているのがAPI(Application Programming Interface)です。そして、APIを実際に利用する上で欠かせない概念が「APIエンドポイント」です。
しかし、「APIエンドポイントとは具体的に何を指すのか?」「普段目にするURLとは何が違うのか?」といった疑問を持つ方も少なくないでしょう。本レポートでは、APIの基本的な役割から説き起こし、APIエンドポイントの定義とその機能、そして一般的なURLとの共通点・相違点を、具体例やアナロジーを交えながら分かりやすく解説します。
APIの基本概念:ソフトウェア連携の「窓口」
API(Application Programming Interface)とは、あるソフトウェアの機能やデータを、別のソフトウェアから利用するための規約や仕組み(インターフェース)の総称です 1。異なるソフトウェア同士が互いに「会話」するためのルールセットであり、ソフトウェア間の連携を可能にする「窓口」や「架け橋」のような役割を果たします 1。
通常、サービス提供者が自社のサービス機能を使ってもらうためにAPIを公開します 1。API利用者は、このAPIを通じてサービス提供者に対して「リクエスト(要求)」を送り、サービス提供者はその要求に応じた処理を実行し、「レスポンス(応答)」を返します 1。例えば、オンラインショッピングサイトが決済を行う際に、外部の決済サービスのAPIを利用するケースなどが挙げられます。これにより、ショッピングサイトは自前で複雑な決済システムを構築することなく、安全かつ効率的に決済機能を提供できます 1。
APIを利用するメリットは多岐にわたります。開発者は、APIを通じて外部の機能やデータを活用することで、開発効率を大幅に向上させることができます 1。また、GoogleやFacebookなどのアカウントを利用したログイン認証(ソーシャルログイン)APIを活用すれば、ユーザーの利便性を高めつつ、セキュリティレベルの高い認証機能を比較的容易に導入できます 1。
APIには様々な種類がありますが、特にWebサービス間の連携で広く使われているのがWeb APIです 1。Web APIは、インターネット標準の通信プロトコルであるHTTP(Hypertext Transfer Protocol)やHTTPS(HTTP Secure)を用いて、Webサーバー上の機能やデータにアクセスします 1。
ここで重要なのは、APIが単なる機能の呼び出し口であるだけでなく、一種の**「契約」**として機能する点です。API提供者は、どのようなリクエスト形式を受け付け、どのようなデータ形式で応答を返すか、利用可能な機能は何か、といったルールを明確に定義します。API利用者はこの契約(仕様)に従うことで、提供される機能を確実に利用できます。この契約があるからこそ、異なる開発者や組織が作ったソフトウェア同士でも、円滑な連携が可能になるのです。
さらに、APIは**「抽象化レイヤー」**としての役割も担っています。API利用者は、APIの向こう側にあるシステムの内部構造や複雑な実装の詳細を知る必要がありません 8。定められた手順(API呼び出し)に従うだけで、目的の機能を利用したり、データを取得したりできます。これにより、開発者はAPIの利用に集中でき、より迅速かつ効率的にアプリケーションを構築することが可能になります。
APIエンドポイントとは:機能への具体的な「入口」
APIがソフトウェア間の連携を実現するための「窓口」全体を指すのに対し、APIエンドポイントは、そのAPIが提供する**特定の機能やデータにアクセスするための具体的な「入口」**を指します 9。これは、API通信システムにおける最終的な接点であり、API呼び出し(リクエスト)が実際に送受信されるデジタル上の場所(ロケーション)です 10。
多くの場合、APIエンドポイントはURL(Uniform Resource Locator)形式で表現されます 9。APIを利用したいプログラム(APIクライアント)は、この特定のURLに対してリクエストを送信することで、APIサーバー上の目的のリソース(データや機能)にアクセスします 11。
APIエンドポイントは、APIが提供する多種多様なリソースを整理し、利用者からのアクセスを制御する上で重要な役割を果たします 15。例えば、ある天気予報APIが「現在の天気取得」「週間予報取得」「過去の天気データ取得」という機能を提供する場合、それぞれに異なるエンドポイント(URL)が割り当てられます。利用者は、目的に応じたエンドポイントにアクセスすることで、必要な情報だけを効率的に取得できます 15。
APIエンドポイントの設計は、APIの使いやすさ、すなわち**開発者体験(Developer Experience)**に大きく影響します。エンドポイントのURLが、どのような機能を提供するのか直感的に理解しやすい命名規則(例: /users や /products など)に従っていること、APIのバージョン情報(例: /v1/ や /v2/)が明示されていることなどは、開発者がAPIを効率的に利用する上で重要です 11。
また、APIエンドポイントはセキュリティとパフォーマンスの観点からも重要です。各エンドポイントは外部からのアクセスを受け付けるため、潜在的な攻撃対象となり得ます。そのため、適切な認証・認可メカニズムを実装し、不正なアクセスから保護する必要があります 10。さらに、特定のAPIエンドポイントへのアクセスが集中すると、システム全体のパフォーマンス低下を招く可能性があるため、適切な監視と負荷分散が求められます 10。
APIエンドポイントへのリクエストでは、単にURLにアクセスするだけでなく、HTTPメソッド(GET, POST, PUT, DELETEなど)を組み合わせて操作内容を指定するのが一般的です 7。例えば、/users というエンドポイントに対して、GETメソッドを使えばユーザーリストの「取得」、POSTメソッドを使えば新規ユーザーの「作成」といった具体的なアクションを指示できます。このように、APIエンドポイント(URL)が操作対象の「名詞(Noun)」を示し、HTTPメソッドが実行したい「動詞(Verb)」を示すと考えると、その役割がより明確になります。
URLの基本概念:Web上の「住所」
URL(Uniform Resource Locator)は、インターネット上に存在する情報資源(ウェブページ、画像、ファイルなど)の場所を一意に示すための**「住所」**のようなものです 17。私たちが普段Webブラウザのアドレスバーに入力したり、メールやチャットで共有したりする http:// や https:// で始まる文字列がURLです 21。
URLは、いくつかの構成要素から成り立っています 17。主要な要素は以下の通りです。
- スキーム (Scheme): 通信プロトコル(通信手順のルール)を指定します。Webで最も一般的に使われるのは http と、暗号化された安全な通信を行う https です 20。他にもファイル転送用の ftp やメールクライアントを起動する mailto などがあります 20。
- オーソリティ (Authority): スキーム名の後に :// で区切られ、リソースが存在するサーバーなどの情報を示します。通常、以下の要素が含まれます。
- ホスト名/ドメイン名 (Host/Domain Name): アクセス先のコンピュータ(サーバー)を識別する名前です(例: www.example.com)20。IPアドレスが直接使われることもあります 20。
- ポート番号 (Port): サーバー上の特定の通信の「窓口」番号です。スキームごとに標準のポート番号(HTTPは80、HTTPSは443)が決まっており、標準ポートの場合は通常省略されます 20。
- パス (Path): サーバー上のリソース(ファイルやディレクトリ)の場所を示します(例: /path/to/document.html)20。
- クエリパラメータ (Query Parameters): パスの後に ? を付けて記述され、サーバーに追加情報を渡すために使われます。キー=値 のペアで構成され、複数ある場合は & で連結されます(例: ?search=keyword&page=2)20。
- フラグメント (Fragment): # の後に記述され、ページ内の特定の箇所(セクションなど)を示します(例: #section-3)。この情報はサーバーには送信されず、ブラウザがページ表示後に該当箇所へ移動するために使用します 20。
URLは、単にWebページを表示するだけでなく、様々な目的で利用されています。ファイルダウンロードの場所を示したり、レポートや論文で情報源や参考文献の出典を明記したりする際にも不可欠です 21。また、友人や同僚に特定の情報を共有するためにURLをコピー&ペーストしたり、よく訪れるサイトをブックマーク(お気に入り登録)したりする際にも活用されます 24。
さらに、URLの構造はWebサイトの階層構造を反映することが多く、検索エンジンがサイトの内容を理解するのを助けるため、SEO(検索エンジン最適化)の観点からも重要視されます 24。
URLが持つ重要な特性の一つは、人間とコンピュータ双方にとっての**「共通言語」**として機能する点です。人間は、URLに含まれるドメイン名やパスから、そのリソースの内容をある程度推測したり、覚えたり、他者と共有したりすることができます 21。一方、コンピュータ(ブラウザなど)は、URLの厳密な構造を解析し、スキームに基づいて通信プロトコルを選択し、ホスト名からサーバーの場所を特定し、パスやクエリパラメータを使って特定のリソースを正確にリクエストすることができます 20。この二面性により、広大なインターネット上の情報を効率的に発見し、アクセスすることが可能になっています。分かりやすく構造化されたURLは、技術的な処理を容易にするだけでなく、ユーザー体験や検索エンジンによる評価にも好影響を与えるのです 16。
APIエンドポイントとURLの共通点:アドレスとしての役割
APIエンドポイントと一般的なURLは、異なる目的を持つものの、いくつかの重要な共通点を持っています。
最も基本的な共通点は、APIエンドポイントが通常URL形式で表現されることです 9。つまり、APIエンドポイントは、私たちが普段目にするWebページのURLと同じ基本的な書式に従っています。
どちらも、インターネット(またはネットワーク)上の特定のリソースが存在する「場所」または「アドレス」を指し示すための文字列であるという点で共通しています 9。Webページであろうと、APIが提供する特定のデータや機能であろうと、それを一意に特定するための識別子として機能します。
構造的にも共通点が見られます。APIエンドポイントのURLも、一般的なURLと同様に、スキーム(通常は https)、ホスト名(APIを提供するサーバーのドメイン名)、そしてパス(特定の機能やデータリソースを示す部分)といった要素で構成されています 11。
さらに、リクエストの内容を詳細化するために、クエリパラメータが使われる点も共通しています 11。例えば、検索APIのエンドポイントに ?query=… のようなパラメータを付加して検索キーワードを指定したり、一般的なWebサイトのURLに ?sort=price のようなパラメータを付けて表示順序を指定したりすることがあります。また、APIエンドポイントのパスの一部にパラメータを埋め込む形式(例: /users/{userId})もよく見られます 11。
これらの共通点を踏まえると、APIエンドポイントはURLという既存の仕組みを**「特殊な用途」**に適用したものと理解できます。URLはWeb上のあらゆるリソースを指し示す汎用的な仕組みですが 17、APIエンドポイントはその中でも特に、プログラム(ソフトウェア)が他のプログラムの機能やデータにアクセスするという特定の目的のために設計されたURLです 11。APIは、インターネット上で普遍的に利用されているURLというアドレス指定方法を流用することで、システム間の連携を容易に実現しているのです 14。したがって、「APIエンドポイント vs URL」という対立する概念ではなく、「一般的なURL vs APIエンドポイントURL(特定の目的を持つURLの一種)」と捉えるのがより正確です。この理解は、URLの構造やHTTP/HTTPSといったプロトコルに関する知識をAPIエンドポイントにも適用する上で役立ちます。
APIエンドポイントとURLの主な違い:目的と利用者の明確な区別
APIエンドポイントと一般的なURLは、形式や構造に共通点がある一方で、その目的、想定される利用者、やり取りされる内容において明確な違いがあります。
1. 主な目的の違い:プログラムによる操作 vs 人間による閲覧
- APIエンドポイント: 主な目的は、ソフトウェア(プログラム、アプリケーション)が他のソフトウェアの特定の機能を利用したり、データを交換したりすることです 1。プログラムからのリクエストを受け付け、多くの場合、JSON(JavaScript Object Notation)やXML(Extensible Markup Language)といった構造化されたデータ形式で応答を返すことが想定されています 8。
- 一般的なURL: 主な目的は、人間がWebブラウザなどのツールを使って、Webページ、画像、ドキュメントといった情報を閲覧・アクセスすることです 17。通常、人間が視覚的に理解しやすい形式(HTMLで記述されたWebページなど)で情報が表示されます。
2. 想定される利用者の違い:プログラム vs 人間
- APIエンドポイント: 主な利用者はプログラム(APIクライアントと呼ばれるソフトウェア)です 8。
- 一般的なURL: 主な利用者は人間(Webサイトを閲覧するエンドユーザー)です 8。
3. やり取りされる内容の違い:データ/機能 vs 視覚的コンテンツ
- APIエンドポイント: やり取りされるのは、プログラムが処理しやすいように構造化されたデータ(JSON、XMLなど)や、特定の機能実行の指示とその結果(成功・失敗ステータスなど)が中心です 7。
- 一般的なURL: やり取りされるのは、主に人間が視覚的に消費するためのコンテンツ、例えばHTMLで記述されたWebページ、画像ファイル、動画ファイルなどです 17。
4. 対話方法の違い:HTTPメソッドの活用 vs 主にGETリクエスト
- APIエンドポイント: リソースに対する操作を明確に指示するため、HTTPメソッドを使い分けることが一般的です。例えば、データの取得にはGET、新規作成にはPOST、更新にはPUTやPATCH、削除にはDELETEといったメソッドが意図的に使用されます 7。
- 一般的なURL: 人間がブラウザでアクセスする場合、通常は情報を「取得」して表示することが目的なので、暗黙的にGETメソッドが使われることがほとんどです。(Webフォームの送信などでPOSTメソッドが使われることもありますが、APIほど多様なメソッドを意識的に使い分けることは稀です。)
これらの違いをまとめると、以下の表のようになります。
特徴 (Feature) | APIエンドポイント (API Endpoint) | 一般的なURL (General URL) |
主な目的 (Primary Purpose) | プログラム間のデータ交換、機能実行 (Data exchange, function execution) | 人間による情報閲覧・アクセス (Information browsing/access) |
想定利用者 (Intended User) | プログラム (APIクライアント) (Program (API Client)) | 人間 (エンドユーザー) (Human (End User)) |
典型的なリソース (Typical Resource) | 特定のデータセット、API機能 (Specific dataset, API function) | Webページ、画像、ドキュメント (Web page, image, document) |
返される形式 (Return Format) | 構造化データ (JSON, XML等) (Structured data (JSON, XML, etc.)) | HTML、画像ファイル等 (HTML, image files, etc.) |
主な対話方法 (Interaction Method) | HTTPメソッド (GET, POST, PUT, DELETE等) を活用 (Utilizes HTTP methods) | 主にGETリクエスト (ブラウザ経由) (Primarily GET requests) |
根本的な違いは、URLというアドレスが示すものに対する**「意味」と「期待される動作」のレイヤーが異なる**点にあります。例えば、https://example.com/products というURLがあったとします。これが一般的なWebページのURLであれば、ブラウザでアクセスすると商品一覧がHTMLで表示されるでしょう。しかし、もしこれがAPIエンドポイントとして定義されていれば、プログラムがGETリクエストを送ると商品のリストがJSON形式で返され、POSTリクエストを送ると(適切なデータと共に)新しい商品が登録されるかもしれません 7。
このように、URLの文字列自体は同じでも、それがAPIエンドポイントなのか、それとも一般的なWebページのURLなのかという「目的」によって、どのように対話し、何が返ってくるかという期待値が全く異なります。APIエンドポイントは、プログラム間の明確な通信規約(APIという契約)に基づいて動作するように設計されているのです。したがって、単にURLを知っているだけでは不十分であり、そのURLがどのような目的で提供されているのか(APIエンドポイントなのか、Webページなのか)を理解することが、正しく利用するための鍵となります。
具体例で見るURLとAPIエンドポイント
言葉による説明だけでは掴みきれない違いを、具体的な例を通して見ていきましょう。
一般的なウェブページのURL例:
- URL: https://developer.mozilla.org/ja/docs/Learn/Common_questions/What_is_a_URL 20
- 解説: これは、MDN Web DocsというWeb開発者向けドキュメントサイトにある、「URLとは何か?」という記事ページの場所を示しています。
- 目的: 人間がWebブラウザでこのURLにアクセスし、ページの内容を読んでURLについての知識を得ること。
- 期待される動作: ブラウザがこのURLに対してGETリクエストを送信します。サーバーはリクエストを受け取り、該当する記事のHTMLコンテンツを返します。ブラウザはそのHTMLを解釈・描画し、人間が読める形式で画面に表示します。
APIエンドポイントのURL例:
- 例1:架空のユーザー管理API
- URL: https://api.example.com/v1/users (/v1/ はAPIのバージョン1を示す) 11
- 解説: ユーザー情報のリストを取得したり、新しいユーザーを作成したりするためのAPIエンドポイント。
- 目的: プログラム(例: Webアプリケーションのバックエンド、モバイルアプリ)がユーザーデータにアクセスしたり、ユーザー情報を操作したりすること。
- 期待される動作:
- プログラムが GET https://api.example.com/v1/users というリクエストを送信すると、サーバーは登録されているユーザーのリストをJSON形式(例: “)で返す。
- プログラムが POST https://api.example.com/v1/users というリクエストを、新しいユーザー情報(例: {“name”: “Charlie”, “email”: “charlie@example.com”})をリクエストボディに含めて送信すると、サーバーは新しいユーザーを作成し、成功した旨を示すステータスコード(例: 201 Created)と、作成されたユーザー情報(例: {“id”: 3, “name”: “Charlie”,…})をJSON形式で返す。
- 例2:猫の豆知識API
- URL: https://catfact.ninja/fact 15
- 解説: 猫に関する豆知識(Fact)をランダムに1つ取得するためのAPIエンドポイント。
- 目的: プログラムが、例えばWebサイトやアプリに表示するために、猫の豆知識データを取得すること。
- 期待される動作: プログラムが GET https://catfact.ninja/fact というリクエストを送信すると、サーバーは猫の豆知識とその文字数を含むJSONデータ(例: { “fact”: “A cat can jump up to five times its own height in a single bound.”, “length”: 65 })を返す。
- 例3:Qiitaユーザー情報取得API
- URL: https://qiita.com/api/v2/users/{username} ({username} は実際のユーザー名に置き換える) 16
- 解説: プログラミング知識共有サービスQiitaの、特定のユーザーの公開情報を取得するためのAPIエンドポイント(バージョン2)。
- 目的: プログラムが、特定のQiitaユーザーのプロフィール情報や投稿記事数などを取得すること。
- 期待される動作: プログラムが GET https://qiita.com/api/v2/users/example_user というリクエストを送信すると、サーバーは example_user というユーザーの公開情報をJSON形式で返す。
構造と意味の違い:
これらの例から、APIエンドポイントのURLにはいくつかの特徴が見られます。
- パスに api やバージョン情報 (v1, v2 など) が含まれることが多いです 11。これは、通常のWebサイトのURLと区別し、APIの仕様変更に対応しやすくするためです。
- パスが、操作対象のリソース(users, fact, posts 13 など)を具体的に示している場合が多いです。
- 同じURL(パス)でも、HTTPメソッド(GET, POSTなど)によって実行される操作が異なることが明確に定義されています。
一方で、一般的なWebページのURLのパスは、サイト内のコンテンツ階層(カテゴリ/サブカテゴリ)や記事のタイトルなどを反映していることが多く、通常はGETメソッドでのアクセスが前提とされています 24。
重要なのは、URLの**「見た目」だけでは、それがAPIエンドポイントなのか、一般的なWebページのURLなのかを常に判別できるとは限らない**ことです。例えば、https://example.com/products というURLは、人間向けの製品一覧ページかもしれませんし、プログラム向けの製品リストを返すAPIエンドポイントかもしれません。どちらであるかは、そのURLが提供される文脈や、APIであればその仕様書(ドキュメント)を確認しない限り判断できません 11。開発者がAPIを正しく利用するためには、どのURLがエンドポイントであり、どのHTTPメソッドをサポートし、どのようなデータを送受信するのかが記載されたAPIドキュメントが不可欠なのです 11。
アナロジーで理解するAPI、エンドポイント、URL
API、APIエンドポイント、URLの関係性を、より身近なものに例えてみましょう。これらのアナロジーは、それぞれの概念の役割を直感的に理解する助けとなります。
1. レストランのアナロジー
- API: レストラン全体の注文システム。これには、メニュー、注文を受け付けるウェイター、注文を処理する厨房、そして料理を運ぶウェイターという一連の流れと、その間のルール(注文方法、支払い方法など)が含まれます [User Query 拡張]。APIは、このようにサービス(料理)を提供するための仕組み全体を指します。
- APIエンドポイント: メニューに載っている個々の料理名や注文コード。例えば、「カルボナーラを注文する」という特定の指示がエンドポイントに相当します [User Query 拡張]。これは、数ある料理の中から特定のものを指定して注文するための明確な方法(例: GET /menu/pasta/carbonara)です。
- 一般的なURL: レストランの住所(例: 東京都渋谷区…)。レストラン(Webサイト全体)がどこにあるかは分かりますが、その住所だけでは特定の料理を注文する方法(APIエンドポイント)までは分かりません 20。
2. オフィスビルのアナロジー
- API: 大きなオフィスビルの受付システムや内線電話網全体。訪問者が目的の部署や担当者と連絡を取るための手続きやルール全体がAPIに相当します [User Query 拡張]。
- APIエンドポイント: 特定の部署の部屋番号や内線番号(例: 人事部の内線123番)。特定の機能(部署)にアクセスするための具体的な連絡先がエンドポイントです [User Query]。例えば、「人事部の従業員リストを取得する」ための内線番号(例: GET /departments/hr/employees)のようなものです。
- 一般的なURL: ビルの住所(例: 〇〇ビル、中央区…)。建物全体の場所は示しますが、特定の部署に直接アクセスする方法(エンドポイント)は含まれていません 20。
3. 電話のアナロジー
- API: 電話網全体の仕組み。電話機、交換機、通信のルール(プロトコル)など、通話を可能にするシステム全体です。
- APIエンドポイント: 特定のサービスや機能に繋がる専用の電話番号 11。APIクライアント(プログラム)はこの番号(URL)に電話をかけ(リクエストを送信し)、応答を待ちます。
- 一般的なURL: 電話帳に載っている様々な連絡先。個人の家の電話番号、会社の代表番号、そしてAPIエンドポイントの電話番号も含まれるかもしれませんが、電話帳全体はより広範な連絡先情報(URL)を含んでいます。
これらのアナロジーは、API、エンドポイント、URLの基本的な関係性や役割を理解する上で非常に役立ちます。しかし、アナロジーには限界があることも認識しておく必要があります。現実世界の例えは、技術的な概念を単純化してくれますが、HTTPメソッドの使い分け(GETとPOSTの違いなど)、JSONのような特定のデータ形式、HTTPSによる暗号化通信といった、実際のAPI通信における重要な技術的詳細までは正確に表現できません 7。電話番号にはGETやPOSTの区別はありませんし、部屋番号が構造化されたデータを返してくれるわけでもありません。
したがって、アナロジーはあくまで理解の第一歩として活用し、より深く正確に理解するためには、プロトコル、メソッド、データ形式といった技術的な側面にも目を向けることが重要です。
まとめ:APIエンドポイントの本質
本レポートでは、APIエンドポイントとは何か、そして一般的なURLとどのように異なるのかを解説してきました。最後に、その本質を改めて整理します。
APIエンドポイントとは、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)が提供する広範な機能やデータの中から、特定のものにアクセスするために明確に定義された「具体的な入口」であり、通常はURL形式で表現されます 9。これは、APIというソフトウェア間の「契約」における、個々のサービス項目(特定の機能やデータセット)を指定するための「住所」または「識別子」と考えることができます 12。
URLとの関係性においては、全てのAPIエンドポイントはURL(またはURI)ですが、全てのURLがAPIエンドポイントではありません 14。APIエンドポイントは、主に人間が情報を閲覧するために使われる一般的なURLとは異なり、プログラム(ソフトウェア)が他のプログラムとデータ交換や機能実行を行うという、特定の目的に特化されたURLなのです 14。
その設計思想の根底には、プログラムによる利用を主たる前提としている点があります 8。人間がブラウザでアクセスするのではなく、ソフトウェアが自動的にアクセスし、決められた手順(プロトコルやメソッド)に従ってデータを送受信することを想定しています。
このプログラムによる利用という前提があるからこそ、APIエンドポイントは、ソフトウェア間の自動的な連携、リアルタイムなデータ同期、既存機能の拡張などを可能にし、現代の多くのWebサービスやアプリケーション開発において不可欠な基盤技術となっています 1。
結論として、APIエンドポイントは、ソフトウェア開発の世界において、異なるシステム間で効率的かつ安全に特定の機能やデータをやり取りするための、**明確に定義された「通信窓口(URL)」**であると言えます。その設計、実装、そして管理は、API全体の使いやすさ、安全性、そしてパフォーマンスに直結する、極めて重要な要素なのです。
引用文献
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