Society 5.0とは?未来社会の全貌と私たちが知るべき重要ポイントを徹底解説

目次

序論:Society 5.0への招待 – より高度化する社会とは何か?

現代社会は、かつてないスピードで変化を遂げています。その中で、日本が提唱する未来社会のコンセプト「Society 5.0(ソサエティ5.0)」が、国内外で注目を集めています。しかし、この言葉を聞いたことはあっても、具体的にどのような社会を指し、私たちの生活に何をもたらすのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

Society 5.0は、日本政府(内閣府)が2016年の「第5期科学技術基本計画」において初めて提唱した、日本が目指すべき未来社会の姿です 1。これは、人類の歴史における社会の発展段階として、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、そして私たちが現在経験している情報社会(Society 4.0)に続く、5番目の新しい社会のあり方を示しています 3

その核心的な定義は、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」とされています 1。では、なぜ今、Society 5.0なのでしょうか。その背景には、少子高齢化、地方の過疎化、環境問題の深刻化、頻発する大規模災害への対応といった、現在の情報社会(Society 4.0)だけでは解決が難しい、日本が直面する様々な社会的課題が存在します 1。情報社会では、情報が氾濫し、個人が必要な情報を見つけ出し分析する作業に多大な労力と時間が費やされたり、あるいは知識や情報が組織や分野間で十分に共有されず、新たな価値の創出が妨げられたりといった側面がありました 2。Society 5.0は、これらの課題を克服し、より豊かで持続可能な社会を実現するための国家的なビジョンなのです。

このSociety 5.0という概念は、単に次に到来するであろう技術革新の段階を予測するものではありません。むしろ、日本が直面する深刻な社会課題を明確に認識し、それらを解決するという明確な目的を起点として、その達成のためにどのような未来を創造すべきか、そしてそのためにどのような技術や社会システムが必要かを構想する、国家レベルの「未来創造」戦略と捉えることができます。多くの資料 1 が、Society 5.0を「経済発展と社会的課題の解決の両立」や「人間中心」と定義していることは、技術そのものが目的ではなく、あくまで社会をより良くするための手段であることを示唆しています。例えば、少子高齢化、地方の過疎化、エネルギー問題、防災といった具体的な課題が提唱の背景として挙げられていることからも 1、この戦略が課題解決志向であることがわかります。これは、技術の進歩が先行し、社会がそれに追随してきた過去の産業革命や情報社会のフェーズとは一線を画します。Society 5.0では、まず解決すべき社会的なゴールを設定し、その達成手段として最先端技術を能動的に活用するという強い意志が込められています。経団連がSociety 5.0を「創造社会」と位置づけ、「デジタル革新と多様な人々の想像・創造力の融合によって、社会の課題を解決し、価値を創造する社会」と提唱していること 1 も、この点を裏付けています。これは、技術を受動的に受け入れるのではなく、人々が主体となって、望ましい未来をデザインしていくという積極的な姿勢の表れです。したがって、Society 5.0は、技術の進展を待つのではなく、解決すべき社会課題から逆算して必要な技術開発や社会システム変革を促す、能動的な未来創造のビジョンと言えるでしょう。これは、単に次の社会ステージを予測するのではなく、国家として「どのような社会を創りたいか」という明確な目標を掲げている点で、過去の社会変革の捉え方とは根本的に異なるアプローチです。

本記事では、国内外の文献や専門家の意見、政府の報告書などを参照しながら、Society 5.0とは具体的にどのような社会なのか、私たちの生活や働き方にどのような変化をもたらす可能性があるのか、そしてこの新しい時代に向けて私たちが知っておくべき重要なポイントは何かを、分かりやすく、かつ深く掘り下げて解説していきます。読者の皆様がSociety 5.0の全体像を多角的に理解し、未来への備えを考えるための一助となることを目指します。

第1章:Society 5.0の全体像 – 人間中心の未来社会

Society 5.0が目指すのは、単なる技術的に進んだ社会ではなく、あくまで「人間」が中心となる、より豊かで質の高い生活を実現できる社会です。この章では、その核心となるコンセプトと、これまでの社会の進化との関連性について解説します。

1.1 サイバー空間とフィジカル空間の融合がもたらす変革

Society 5.0の最も根幹をなすアイデアは、現実世界(フィジカル空間)と仮想空間(サイバー空間)の高度な融合です。具体的には、フィジカル空間に設置された無数のセンサーやデバイス(IoT機器)を通じて、人々の活動、モノの状態、社会インフラの状況、自然環境といった様々な情報がリアルタイムで収集されます。この膨大なデータ(ビッグデータ)は、インターネットを介してサイバー空間に集積され、そこでAI(人工知能)が高度な分析や解析を行います。そして、その分析結果やAIによる最適な判断が、再びフィジカル空間にフィードバックされ、具体的なサービスやソリューションとして人々に提供されたり、社会システム全体の最適化に活用されたりします 1

この一連の仕組みは「サイバーフィジカルシステム(CPS)」と呼ばれ、IoTデバイス、センサー、アクチュエータ(物理的な動きを生み出す装置)、コンピュータネットワークなどが緊密に連携して機能する、近未来の社会インフラシステムとして構想されています 8

これまでの情報社会(Society 4.0)では、人間がサイバー空間に存在する情報にアクセスし、自ら分析・判断して行動に移す必要がありました。しかし、Society 5.0では、AIがこの情報処理の多くを代行し、人間はより創造的な活動や、より高度な意思決定、あるいは人間同士のコミュニケーションといった、人間にしかできない本質的な活動に注力できるようになると期待されています 2

この「サイバー空間とフィジカル空間の融合」は、単に技術的に二つの空間が接続されるという意味に留まりません。それは、現実世界のあらゆる要素や活動をデジタルデータとしてサイバー空間上に忠実に再現する「デジタルツイン」を構築し、その仮想空間上で様々なシミュレーションや未来予測を行うことを可能にします 7。例えば、新しい都市計画を立案する際に、実際に建設する前にサイバー空間で交通流やエネルギー消費、環境への影響などを詳細にシミュレーションし、最適な計画を策定することができます。また、災害発生時には、リアルタイムの被害状況データに基づいて、サイバー空間で避難経路の最適化や救援物資の効率的な配分をシミュレーションし、フィジカル空間での迅速かつ効果的な対応を支援することができます 11。このように、CPSは現実世界で試行錯誤するにはコストやリスクが高すぎる事象に対して、事前に影響を評価し、より効果的で安全な対策を講じることを可能にするのです。これは、従来、経験や勘に頼らざるを得なかった社会運営の多くの側面を、データとシミュレーションによって補強・代替し、社会運営の質そのものを根本から変革する可能性を秘めています。

1.2 経済発展と社会的課題解決の両立を目指す

Society 5.0が掲げるもう一つの重要な目標は、経済発展と社会的課題の解決を「両立」させることです。IoT、AI、ビッグデータ、ロボットといった先端技術を、製造業、医療、農業、交通、エネルギーといったあらゆる産業分野や、日々の社会生活の隅々にまで取り入れることで、新たな付加価値を創出し経済成長を促進すると同時に、現代社会が抱える様々な課題の解決を目指します 1

具体的に解決が期待される社会的課題としては、エネルギー・食糧需要の地球規模での増加、少子高齢化に伴う労働力不足や社会保障コストの増大、都市部への人口集中と地方の過疎化による地域間格差、地球温暖化などの環境問題、そして頻発する自然災害への対応などが挙げられます 1。Society 5.0では、これらの課題に対し、例えば、温室効果ガスの排出削減、食料の増産と食品ロスの削減、AIやロボットを活用した医療・介護による健康寿命の延伸、再生可能エネルギーの活用とエネルギー効率の向上、スマート農業やスマート工場による持続可能な産業化の推進、そして情報や富の再配分による地域間格差の是正などが期待されています 1

ここで重要なのは、経済成長と社会的課題の解決を、どちらかを優先すればもう一方が犠牲になるというトレードオフの関係として捉えるのではなく、両者を同時に達成することを目指している点です。この「両立」という目標設定自体が、Society 5.0の革新性を示しています。

この「経済発展と社会的課題解決の両立」という理念は、従来の経済成長モデルが直面してきた限界を深く認識し、持続可能性(サステナビリティ)を経済活動の根幹に据えるという、一種のパラダイムシフトを示唆しています。これまでの工業社会(Society 3.0)や情報社会(Society 4.0)では、経済成長を追求する過程で、環境負荷の増大、資源の枯渇、あるいは経済格差の拡大といった社会的な歪みが副次的に生じることが少なくありませんでした。Society 5.0がこれらの「両立」を明確に掲げることは、経済活動のあり方そのものを見直し、社会的価値や環境的価値を、従来の経済的価値と同等、あるいはそれ以上に重視する新しい資本主義の形を模索していると解釈できます。国連が採択したSDGs(持続可能な開発目標)の達成にSociety 5.0が貢献できるとされていること 6 や、環境負荷の削減や自然との共生を重視する点がその証左です。これは、短期的な利益追求型の経済モデルから、長期的な視点での持続可能性を重視した経済モデルへの転換を意味し、企業の評価軸や投資のあり方(例えばESG投資の拡大 12)にも大きな影響を与える可能性があります。

1.3 Society 1.0から4.0までの進化とSociety 5.0の位置づけ

Society 5.0をより深く理解するためには、人類の社会がこれまでどのように進化してきたかという歴史的文脈を把握することが重要です。内閣府の資料などによると、私たちの社会は以下のように発展してきたと考えられています 3

  • Society 1.0(狩猟社会): 人類が狩猟や採集によって食料を得ていた時代です。自然と共存し、小規模な集団で移動しながら生活していました。
  • Society 2.0(農耕社会): 農耕や牧畜が始まり、人々は定住するようになりました。食料生産が安定し、集落や国家が形成され、組織的な社会構造が生まれました。
  • Society 3.0(工業社会): 蒸気機関の発明に始まる産業革命以降、機械化による工業生産が社会の中心となりました。大量生産・大量消費が可能になり、物質的な豊かさが実現しましたが、一方で都市化の進展や公害問題なども顕在化しました。
  • Society 4.0(情報社会): コンピュータとインターネットの普及により、情報が爆発的に増加し、グローバルな規模で瞬時に共有されるようになりました。情報の価値が高まり、知識集約型の産業が発展しましたが、情報過多、サイバーセキュリティの脅威、デジタル格差といった新たな課題も生み出しました 2。特に、必要な情報を見つけ出し、分析・活用する能力が個人や組織に求められるようになり、その負担も増大しました。

Society 5.0は、これらの過去の社会の基盤の上に立ちつつ、特に情報社会(Society 4.0)が抱える課題を克服し、より人間が中心となる、持続可能で強靭な社会を目指すものとして位置づけられています 2。情報社会では、知識や情報が十分に共有されず新たな価値の創出が困難であったり、情報が氾濫し必要な情報を見つける作業に負担が生じたり、少子高齢化や地方の過疎化といった課題に十分対応できなかったり、といった問題点が指摘されていました 2。Society 5.0は、これらの課題に対して、サイバー空間とフィジカル空間の融合という新たなアプローチで解決を図ろうとするものです。

以下の表は、Society 1.0からSociety 5.0への進化の比較をまとめたものです。

表1: Society 1.0からSociety 5.0への進化の比較

社会の段階主要な活動・資源特徴・課題Society 5.0での進化・解決の方向性
Society 1.0 (狩猟社会)狩猟・採集自然との調和、小規模集団、移動生活(原点回帰としての自然との共生はSociety 5.0でも重視 6)
Society 2.0 (農耕社会)農耕・牧畜定住化、食料生産の安定、階層化(農業のスマート化による更なる安定供給と効率化 7)
Society 3.0 (工業社会)工業生産、機械化大量生産、都市化、物質的豊かさ、公害問題(スマートファクトリーによる効率化と持続可能な生産、環境負荷低減 2)
Society 4.0 (情報社会)情報、インターネットグローバル化、情報共有の高速化、情報過多、サイバーセキュリティ、デジタル格差、知識・情報の共有不足、必要な情報探索の困難 2IoTによるモノと人の接続、AIによる情報解析・最適提案、サイバー空間とフィジカル空間の融合による課題解決、格差是正、新たな価値創造 1
Society 5.0 (創造社会)データ、AI、創造性経済発展と社会的課題解決の両立、人間中心、持続可能性、強靭性、多様なウェルビーイングの実現 1Society 4.0の課題を克服し、テクノロジーを人間の幸福のために活用する社会。一人ひとりが想像力と創造力を発揮し、新たな価値を創造する 1

この表が示すように、Society 5.0は過去の社会の発展の延長線上にありながらも、情報社会が抱えていた限界や課題を乗り越え、より人間的で持続可能な社会の実現を目指すという点で、質的な転換を図ろうとしています。特に、情報社会(Society 4.0)との比較において、単に情報が流通するだけでなく、その情報がAIによって解析され、現実世界の具体的な課題解決や価値創造に結びつく点が大きな違いです。これにより、情報過多による混乱や、情報格差による不利益といった問題を軽減し、誰もがテクノロジーの恩恵を受けられる社会の実現が期待されます。

第2章:Society 5.0を支える核心技術

Society 5.0の実現は、単一の技術によって成し遂げられるものではなく、様々な最先端技術が相互に連携し、一つの大きなシステムとして機能することによって可能になります。本章では、その中でも特に重要な役割を果たすと考えられる核心的な技術について、それぞれの特徴とSociety 5.0においてどのような役割を担うのかを具体的に解説します。

2.1 IoT(Internet of Things):全てがつながる世界の実現

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とは、従来はインターネットに接続されていなかった様々な「モノ」、例えば家電製品、自動車、工場の設備、社会インフラ(道路、橋、電力メーターなど)、さらには農場のセンサーや個人のウェアラブルデバイスなどが、ネットワークに接続され、相互に情報をやり取りする仕組みのことです 1

このIoT技術により、モノの状態(温度、湿度、位置、稼働状況など)や動き、それらを取り巻く環境に関するデータをリアルタイムで収集・監視することが可能になります。また、収集した情報に基づいて、遠隔地からモノを操作したり、あるいはモノ同士が自律的に連携して動作したりすることも実現できます 1

Society 5.0においては、このIoTがフィジカル空間(現実世界)のあらゆる情報をサイバー空間(仮想空間)に送り込むための「感覚器」のような役割を担います。つまり、現実世界の出来事をデジタルデータとして捉え、後述するAIによる分析やビッグデータ活用のための源泉となる情報を大量に収集するのです 1

具体的な事例としては、自宅のエアコンや照明を外出先からスマートフォンで操作するスマートホーム 1、電力使用量をリアルタイムで把握し最適化するスマートメーター、工場の機械に取り付けられたセンサーが稼働状況や故障の予兆を監視する予知保全などが挙げられます。

2.2 AI(人工知能):人間を支援する知能

AI(Artificial Intelligence:人工知能)は、大量のデータからパターンやルールを学習し、人間のように認識、判断、予測、そして場合によっては実行までを行う技術です 1。近年では、特に機械学習や深層学習(ディープラーニング)といった技術の発展により、自然言語処理(人間の言葉を理解し生成する)、画像認識(写真や動画の内容を理解する)、音声認識(話し言葉を理解する)、そして複雑なデータからの情報分析といった能力が飛躍的に向上し、既に多くの分野で実用化されています 1

Society 5.0においてAIは、IoTによって収集された膨大なビッグデータを解析し、人間には処理しきれない複雑な情報の中から有益な知見を抽出したり、個々の状況に応じた最適な提案を行ったり、あるいはロボットや自動運転車といった物理的なデバイスを賢く制御したりする、「頭脳」としての中心的な役割を果たします 1

AIの活用により、人間は煩雑な情報処理作業や繰り返しの多い定型業務から解放され、より創造的な活動、高度な意思決定、あるいは人間同士の共感や協調が求められるような、人間にしかできない本質的な業務に集中できるようになると期待されています 2

事例としては、医療分野におけるレントゲン写真やCTスキャン画像からの病変検出支援 7、多言語間のリアルタイム自動翻訳、金融機関における不正取引の検知、個人の過去の購買履歴や閲覧履歴に基づいた商品や情報の推薦 11 などが挙げられます。

2.3 ビッグデータ:新たな価値を生む情報資源

ビッグデータとは、その名の通り、非常に「量(Volume)」が多く、「種類(Variety)」も多様で、かつ「生成・更新の速度(Velocity)」が速いといった特徴を持つ、従来のデータベース管理システムやデータ処理技術では扱うことが困難だった巨大なデータ群のことを指します 1。これらのデータは、IoTセンサー、スマートフォンのアプリ、ソーシャルメディアへの投稿、ウェブサイトの閲覧履歴、企業の業務システム、行政機関の公開データなど、社会のあらゆる場面から日々生成されています。総務省は、このビッグデータを「オープンデータ(国や地方公共団体が提供するデータ)」「産業データ(産業用機械が通信する際のデータなど)」「パーソナルデータ(個人情報を含むデータ)」の3つに分類しています 1

Society 5.0では、このビッグデータが、AIによる高度な分析の対象となることで、これまで人間が見過ごしていたり、気づかなかったりしたパターン、相関関係、あるいは隠れたニーズを発見し、新たな知見や価値(例えば、新製品・サービスの開発、業務プロセスの劇的な効率化、社会課題の革新的な解決策など)を生み出すための、いわば「21世紀の石油」とも言える重要な「資源」となります 1

事例としては、過去の気象データと農作物の生育データをAIが分析することで、より正確な収穫予測や最適な栽培計画を立案するスマート農業 13、都市部の交通流データとイベント情報、天候などを組み合わせて分析し、リアルタイムで渋滞を予測し迂回ルートを提案する交通システム 15、個人の日々の健康データ(歩数、睡眠時間、心拍数など)と過去の医療情報をAIが統合的に分析し、将来の疾病リスクを予測して個別化された予防策を提案するヘルスケアサービス 13 などが考えられます。

2.4 5G(第5世代移動通信システム):超高速・低遅延通信が拓く可能性

5G(Fifth Generation:第5世代移動通信システム)は、現在の4G/LTEに続く、次世代のモバイル通信技術であり、主に以下の3つの大きな特徴を持っています:「高速・大容量通信」、「超低遅延通信」、そして「多数同時接続」です 1

Society 5.0の実現において、5Gは、社会の隅々に設置された膨大な数のIoTデバイスが生成する大容量のデータを、遅延なくリアルタイムにクラウド上のAIプラットフォームに送受信し、AIによる迅速な分析と、その結果に基づくフィードバック(例えば、自動運転車への制御指示や、スマート工場内のロボットへの作業指示など)を可能にするための、いわば社会全体の「神経網」としての極めて重要な役割を担います 1

特に、「超低遅延」という特徴は、ほんのわずかな通信の遅れが重大な事故につながりかねない自動運転 18 や、遠隔地にいる医師がロボットアームを操作して行う遠隔手術 1、あるいは工場内で多数の機械やロボットがミリ秒単位で協調動作するリアルタイムな生産制御といった、ミッションクリティカル(任務遂行に不可欠)な応用分野において不可欠な技術となります。また、「多数同時接続」は、スマートシティにおいて無数のセンサーやデバイスが同時にネットワークに接続されるような環境を実現するために重要です。

事例としては、スタジアムでのスポーツ観戦において、複数のカメラアングルからの高精細な映像をリアルタイムでスマートフォンに配信するサービス、建設現場で遠隔操作される重機、あるいは拡張現実(AR)や仮想現実(VR)を活用した没入型の教育・研修コンテンツなどが挙げられます。

2.5 ロボット技術:多様な分野での活躍

ロボット技術は、センサーによって周囲の環境を認識し、AIによって状況を判断し、そしてアクチュエータ(駆動装置)によって物理的な作業を実行する、自律的な機械システムです 1

Society 5.0では、このロボット技術がAIとより高度に連携することで、これまで人間にしかできなかった複雑な作業を代替したり、人間と協調して作業を行ったり、あるいは人間の能力を拡張したりするなど、非常に多様な分野での活躍が期待されています。具体的には、製造業における精密な組み立て作業や危険な環境下での作業の代替、医療・介護現場での患者の移乗支援やリハビリテーション支援、農業における作物の収穫や選別作業の自動化による省力化、災害現場での被災者の捜索・救助活動など、特に人手不足が深刻な分野や、人間が行うには負担が大きい作業において、その貢献が期待されます 1

AIによる高度な判断力と、多様なセンサー(カメラ、LiDAR、触覚センサーなど)による精緻な環境認識能力を備えることで、ロボットはより複雑で変化の多い現実世界の状況に柔軟に対応し、自律的にタスクを遂行できるようになります 1

事例としては、工場の生産ラインでAIによる画像認識機能を搭載し不良品を自動的に検品するロボット 1、AIが天候や土壌の状態を分析し最適な農作業を行う農作業ロボット 1、高齢者の話し相手になったり生活支援を行ったりする介護支援ロボット 13、レストランで料理を運ぶ配膳ロボット 15、そして近年急速に普及が進んでいるドローン(無人航空機)による荷物の配送やインフラ点検、農薬散布、災害状況の空撮 11 などが挙げられます。

2.6 これらの技術はどう連携するのか?サイバーフィジカルシステム(CPS)の役割

これまで述べてきたIoT、AI、ビッグデータ、5G、ロボット技術といった核心技術は、それぞれが個別に機能するだけでなく、相互に密接に連携し合うことで、Society 5.0の社会システム全体を構成します。その連携の中核となる概念が「サイバーフィジカルシステム(CPS)」です 7

CPSは、現実世界(フィジカル空間)で起きていることをセンサー等でデジタルデータとして収集し、それをサイバー空間で分析・処理し、その結果を再びフィジカル空間にフィードバックして現実世界に働きかける、という一連のサイクルを継続的に実行するシステムです。具体的には、以下のようなプロセスで機能します。

  1. データ収集(フィジカル空間からサイバー空間へ): まず、フィジカル空間に存在する様々なモノ(自動車、家電、工場設備など)やヒト(生体情報など)、そして環境(気温、湿度、交通状況など)に関する情報が、IoTセンサーやカメラなどを通じてリアルタイムで収集されます。これらのデータは、5Gのような高速・大容量の通信ネットワークを通じて、サイバー空間上のデータストレージやAIプラットフォームに送信されます 1
  2. データ蓄積・分析(サイバー空間): サイバー空間に集められた膨大なデータ(ビッグデータ)は、データベースに蓄積されるとともに、AIがこれを解析します。AIは、データの中からパターンを認識したり、将来の出来事を予測したり、あるいは特定の目的に対して最適な解決策や行動計画を導き出したりします 1
  3. フィードバック・実行(サイバー空間からフィジカル空間へ): AIによる分析結果や導き出された判断は、様々な形でフィジカル空間にフィードバックされます。例えば、人間に情報やアドバイスとして提示されたり(スマートフォンのアプリを通じて最適な移動ルートを提案するなど)、ロボットや自動運転車、工場の機械といったアクチュエータ(駆動装置)に具体的な指示として送られ、フィジカル空間で物理的な行動や制御として実行されたりします 2

この「データ収集 → 分析・知識化 → フィードバック・実行」という一連のサイクルが、社会の様々な場面で、継続的かつ自律的に繰り返されることで、社会システム全体の最適化、効率化、そして新たな価値の創造が実現されるのです。

Society 5.0におけるこれらの技術連携は、単に既存の作業を自動化するというレベルを超え、社会システム自体が「自律的に学習し、進化を続ける」という新しい段階を目指していると言えます。CPSのサイクル 2 は、一度きりの処理ではなく、継続的なループを形成します。AI技術、特に機械学習やディープラーニングは、入力されるデータから学習し、時間とともにその判断精度や性能を向上させる能力を持っています 1。また、ロボット技術もAIと組み合わさることで、ロボット自身が状況を分析し、より適切な行動を選択できるようになることが期待されています 1。これらの要素を組み合わせると、CPSは、事前にプログラムされた通りに受動的に動くだけでなく、実際の運用を通じて得られる新たなデータから継続的に学習し、自らの判断基準や行動パターンを改善・進化させていく可能性を秘めています。これは、例えばスマートシティが、刻々と変化する交通状況やエネルギー需要に応じて信号制御や電力配分をリアルタイムで最適化し続けたり、スマート工場が日々の生産データから自律的に生産プロセスを改善し、効率を高めたりするような、自己進化型の社会システムへと繋がることを示唆しています。この「学習し進化する」という側面は、Society 5.0が目指す社会の持続可能性と強靭性を高める上で、極めて重要な意味を持つと言えるでしょう。

以下の表は、Society 5.0を支える主要な技術とその役割をまとめたものです。

表2: Society 5.0を支える主要技術とその役割

技術概要Society 5.0における主な役割関連スニペット例
IoTモノがインターネットに接続され情報交換する仕組みフィジカル空間のデータ収集(センサー)、遠隔監視・制御1
AI (人工知能)データから学習し知的判断・実行を行う技術ビッグデータ解析、最適化、意思決定支援、自律制御1
ビッグデータ膨大かつ多様なデータの集まりAI分析の元データ、新たな知見・価値創出の源泉1
5G高速大容量・低遅延・多数同時接続が可能な通信技術IoTデバイスからの大量データ伝送、リアルタイム制御の実現1
ロボット技術AIと連携し自律的に作業や支援を行う機械システム労働力不足解消、危険作業代替、人間の能力拡張1
CPSサイバー空間とフィジカル空間を融合させたシステム上記技術を統合し、データ収集・分析・フィードバックのサイクルを実現するSociety 5.0の基盤システム7

この表からもわかるように、Society 5.0は個々の技術の単なる寄せ集めではなく、それらがサイバーフィジカルシステムという大きな枠組みの中で有機的に連携し、一体となって機能することで初めて実現される未来社会の姿なのです。

第3章:Society 5.0が実現する社会の具体例 – 私たちの生活はどう変わる?

Society 5.0は、抽象的な未来像に留まらず、私たちの日常生活や社会の様々な側面に具体的な変化をもたらすと期待されています。医療・健康、モビリティ(交通・物流)、ものづくり、農業、エネルギー、防災・減災、教育、そして都市のあり方(スマートシティ)といった多岐にわたる分野で、先端技術が活用され、より快適で質の高い、そして持続可能な社会の実現が目指されています。本章では、これらの分野ごとに、Society 5.0によってどのような未来が描かれているのか、国内外の具体的な事例や構想を参照しながら、私たちの生活がどのように変わる可能性があるのかを見ていきましょう。

まず、以下の表は、Society 5.0が各分野にもたらす主な変化と、それによって期待される効果をまとめたものです。この表を通じて、Society 5.0が単なる技術の進歩ではなく、私たちの実生活に密接に関わる具体的な変革であることを概観できます。

表3: Society 5.0による分野別変化と期待される効果

分野Society 5.0による主な変化期待される効果関連スニペット例
医療・健康AI診断支援、遠隔医療、個別化医療、ロボット手術、介護ロボット、見守りシステム、健康データの一元管理と活用 1病気の早期発見・予防、健康寿命の延伸、医療格差の是正、医療従事者の負担軽減、介護の質の向上、社会コストの抑制 21
モビリティ自動運転車(自家用車、バス、トラック)、ドローン配送、MaaS(Mobility as a Service)、AIによる交通最適化、リアルタイム交通情報共有 1交通渋滞緩和、交通事故削減、移動の利便性向上(特に高齢者や過疎地域)、物流効率化、ドライバー不足解消、環境負荷低減 21
ものづくりスマートファクトリー(AI・ロボットによる自動化・効率化)、サプライチェーン最適化、多品種少量生産への対応、熟練技術の継承 1生産性向上、コスト削減、品質向上、人手不足解消、個別ニーズへの柔軟な対応、国際競争力強化 11
農業スマート農業(ドローン・センサーによる精密農業、ロボット農機、AIによる生育管理・収穫予測)、生産・流通の最適化 1食料増産、品質向上、農業効率化、食料ロスの削減、人手不足解消、持続可能な農業 11
エネルギーAIによる電力需給最適化、再生可能エネルギーの安定供給、エネルギーの地産地消、スマートグリッド 1エネルギー安定供給、温室効果ガス排出削減、エネルギー効率向上、災害時のエネルギー確保 11
防災・減災AI・データ解析による災害予測、リアルタイム情報共有、ドローン・ロボットによる被災状況把握・救助、避難誘導最適化 1災害被害の軽減、迅速な救助・復旧、安全な避難の実現、インフラの強靭化 11
教育AIによる個別最適化された学習、STEAM教育、遠隔教育、デジタル教材の活用、学習ログの分析・活用 6教育機会の均等化、学習効果の向上、創造性・問題解決能力の育成、生涯学習の促進 66
スマートシティ都市インフラの効率化、交通システムの最適化、エネルギー管理、住民サービスの向上、デジタルツイン活用 7快適で活力に満ちた質の高い生活、持続可能な都市運営、災害対応力強化、地域課題解決 77

それでは、各分野における具体的な変化と期待される効果について、さらに詳しく見ていきましょう。

3.1 医療・健康:個別化医療と健康寿命の延伸

Society 5.0における医療・健康分野の変革は、私たちの健康や生活の質に直接的な影響を与える、非常に期待の大きい領域です。AIによる画像診断支援(例えば、がんの早期発見率向上 16)や、個人の遺伝子情報(ゲノム情報)を解析することによる、一人ひとりの体質や病気のリスクに合わせた個別化された予防法や治療法の提案が進むと考えられています 1

また、ウェアラブルデバイス(スマートウォッチなど)や家庭内に設置されたIoTセンサーを通じて、心拍数、睡眠パターン、活動量といった日常的な健康データが継続的に収集・分析され、それに基づいて個人の健康状態に合わせたアドバイスや、病気の予兆検知が行われるようになります 13。これにより、病気になる前の「未病」の段階からの介入や、生活習慣病の重症化予防が期待されます。

遠隔診療の普及も大きな柱の一つです。5Gなどの高速通信技術と高精細な映像伝送技術を活用することで、都市部から離れた過疎地域や離島に住む人々も、専門医の診察を自宅にいながら受けられるようになります 1。これは、医療資源の地域偏在という長年の課題を解決し、医療アクセスの格差是正に大きく貢献すると期待されています 16

手術の分野では、医師の操作を支援する手術支援ロボット(例えば「ダヴィンチ」16)の活用がさらに進み、より精密で患者の身体への負担が少ない低侵襲な治療が実現されるでしょう 16。介護分野では、高齢者の身体介助や移動支援を行う介護ロボットや、一人暮らしの高齢者の異常を自動で検知し迅速な対応を可能にする見守りシステム(パナソニックの「見守りセンサー」やソフトバンクの「Pepper」など 16)が、介護者と被介護者双方の負担を軽減し、高齢者の自立した生活を支援します 2

さらに、個人の医療情報や介護情報、健診データなどを電子化し、安全な形で連携・共有するためのプラットフォーム構築も進められています 1。これにより、例えば救急搬送時に患者の過去の医療情報に迅速にアクセスし最適な治療を行ったり、複数の医療機関や介護施設間での情報共有を円滑にして切れ目のないケアを提供したり、あるいは集積された匿名化データを活用して新たな治療法や医薬品の研究開発を加速したりすることが可能になります。

これらの変革は、単に個別の技術が導入されるというだけでなく、医療・健康に対する考え方そのものの転換を促すものです。従来の「病気になってから治療する」という対症療法的なアプローチから、「病気になる前に予防し(予防医療)、個々人の体質やライフスタイルに合わせた最適なケアを提供し(個別化医療)、そして個人自身が主体的に自らの健康管理に関与する(参加型医療)」という、よりプロアクティブで包括的な医療・健康モデルへのシフトを加速させると考えられます。多くの事例で「病気の早期発見・予防」7、「個別化医療」1、「健康寿命の延伸」2 がキーワードとして挙げられていることや、ウェアラブルデバイスによる日常的な健康データ収集 13 が個人参加を促すことは、このシフトを裏付けています。この新しい医療のあり方は、個人のQOL(生活の質)向上に直結するだけでなく、高齢化が急速に進む日本において、増大し続ける医療費や介護費といった社会保障コストの持続可能性を確保するという、社会全体の大きな課題解決にも繋がる可能性を秘めており、まさにSociety 5.0が掲げる「経済発展と社会的課題解決の両立」という理念を体現するものと言えるでしょう。

3.2 モビリティ:自動運転と快適な移動

私たちの日常生活や経済活動に不可欠な「移動」も、Society 5.0において大きな変革が期待される分野です。その中心となるのが、AIを搭載した自動運転技術の進化と普及です。運転操作の全てをシステムが行うレベル4やレベル5の完全自動運転車が実用化されれば、交通事故の大幅な削減、交通渋滞の緩和、そしてドライバーの運転負荷の軽減が期待されます 2

特に、高齢者や身体に障害を持つ方々、あるいは公共交通機関が不便な過疎地域に住む人々にとって、自動運転車は新たな移動の自由をもたらし、社会参加の機会を拡大する重要な手段となり得ます 2。実際に、福井県永平寺町では、過疎地域における高齢者の移動支援などを目的とした自動運転車の導入テストが行われています 25

物流分野においても、自動運転トラックによる長距離輸送の効率化や、ドローン、自動配送ロボットによる「ラストワンマイル」(最終拠点から届け先までの区間)の配送自動化が進むことで、ドライバー不足の解消や配送コストの削減、さらにはCO2排出量の削減にも貢献すると考えられています 11。例えば、ANAホールディングスは、離島や山間地域への医薬品や生活物資の輸送を念頭に、ドローンを活用した輸送ネットワークの構築に取り組んでいます 15

また、MaaS(Mobility as a Service)という概念も重要です。これは、電車、バス、タクシー、シェアサイクル、カーシェアリングといった様々な交通手段を、ICTを活用して一つのサービスとしてシームレスに統合し、利用者のニーズや状況に応じて最適な移動ルートや手段を検索・予約・決済まで一括して提供するものです 2。MaaSの進展により、人々はより効率的でストレスの少ない移動体験を享受できるようになります。

これらの実現のためには、リアルタイムの交通情報(車両の位置、速度、渋滞状況など)、気象情報、道路インフラの情報(工事情報、事故情報など)をAIが統合的に解析し、個々の車両への最適なルート指示や、交通システム全体の運行計画の最適化を行うことが不可欠です 1

Society 5.0におけるモビリティ分野の変革は、単に移動の効率化や利便性を向上させるだけに留まりません。それは、都市の構造や人々のライフスタイル、さらには社会全体のエネルギー消費構造にも大きな影響を与える可能性があります。例えば、自動運転の普及 2 は、個人の移動の自由度を飛躍的に高め、これまで困難だった長距離通勤の苦痛を軽減したり、通勤利便性に縛られない居住地の選択を可能にしたりするかもしれません。また、MaaSの進展 2 は、自家用車を所有する必要性を低下させ、都市部における駐車スペースの削減や、公共交通機関を中心としたよりコンパクトで効率的な都市デザインを促進する可能性があります。ドローンによる配送 11 は、従来の店舗のあり方や物流拠点の配置戦略にも変革をもたらすでしょう。これらの変化が複合的に作用することで、都市の空間利用効率が高まり、エネルギー消費の最適化(例えば、電気自動車へのシフトとスマートグリッドとの連携による電力需給の平準化など)にも繋がり得ます。結果として、Society 5.0のモビリティ変革は、より持続可能で、より人間中心の都市設計やライフスタイルへの移行を促す、強力な触媒となる可能性を秘めているのです。

3.3 ものづくり:スマートファクトリーと新たな生産体制

日本の基幹産業であるものづくり分野も、Society 5.0によって大きな変革期を迎えます。AIとロボット技術を高度に活用した「スマートファクトリー」の普及により、生産プロセスの抜本的な自動化、効率化、そして品質向上が進むと期待されています 1

スマートファクトリーでは、工場内のあらゆる機械や設備にIoTセンサーが取り付けられ、稼働状況、エネルギー消費量、製品の品質データなどがリアルタイムで収集されます。これらの膨大なデータをAIが分析することで、設備の故障を事前に予知してメンテナンス計画を最適化したり(予知保全)、製品の品質不良の原因を特定して改善策を講じたり、あるいは需要変動に応じて生産計画を柔軟に調整したりすることが可能になります 1

これにより、従来は困難だった多品種少量生産や、顧客一人ひとりの細かなニーズに合わせた個別カスタマイズ製品の製造にも、効率的に対応できるようになります 2。また、熟練技術者が長年の経験で培ってきた高度な技能やノウハウ(いわゆる「匠の技」)をAIが学習し、デジタルデータとしてモデル化することで、その技術を若手作業員に効果的に伝承したり、ロボットに再現させたりすることも可能になると期待されています 2

さらに、スマートファクトリーは工場内だけに留まらず、原材料の調達から製品の配送に至るまでのサプライチェーン全体でのデータ連携を促進します。これにより、より正確な需要予測に基づいた在庫の最適化、生産リードタイムの短縮、そしてサプライチェーン全体の強靭化が実現します 1

ものづくり分野におけるSociety 5.0の進展は、単に生産効率を極限まで追求するという従来型の発想からの転換を意味します。もちろん効率化は重要な要素ですが、それ以上に、顧客一人ひとりにとっての価値を最大化すること、そして持続可能な生産体制を構築することへと重点がシフトしていくと考えられます。「多品種少量生産」や「個別ニーズへの対応」1 といったキーワードは、画一的な製品を大量に生産するモデルからの脱却を示唆しています。また、「サプライチェーン最適化」1 や「熟練技術の継承」2 といった取り組みは、単にコストを削減するだけでなく、より高品質で付加価値の高い製品やサービスを、無駄なく、かつ安定的に供給するためのものです。これらは、顧客一人ひとりの具体的な要求にきめ細かく応える「マス・カスタマイゼーション」の実現や、必要な分だけを生産することによる資源の無駄削減といった、環境負荷を低減した持続可能な生産体制へと繋がります。したがって、Society 5.0におけるスマートファクトリーは、効率化を通じて得られたリソース(時間、コスト、人的資源など)を、より創造的で顧客中心の価値提供や、環境配慮型の新しい生産プロセスの開発といった、より本質的な活動に振り向けることを可能にするものと解釈できるでしょう。

3.4 農業:スマート農業による食の安定供給

食料生産を担う農業分野も、Society 5.0の技術によって大きな変革が期待されています。「スマート農業」と呼ばれるこの動きは、ドローン、各種センサー、AI、ロボット技術などを活用し、農作業の自動化・省力化、そしてデータに基づいた精密な農業経営を実現しようとするものです 1。例えば、北海道岩見沢市では、GPSと連動した自動操舵トラクタによる効率的な農業経営の実証実験が行われています 25

具体的には、ドローンや畑に設置されたセンサーが、気象データ(気温、湿度、降水量など)、土壌データ(水分量、肥料成分など)、作物の生育状況(葉の色、高さ、病害の兆候など)をリアルタイムで収集します。これらの膨大なデータをAIが分析することで、それぞれの区画や作物にとって最適な栽培管理(水やりのタイミングと量、肥料の種類と量、病害虫が発生しやすい条件の予測と対策など)や、最も効率的な収穫時期を予測し、農家に提案します 2。長野県塩尻市では、獣検知センサーや罠捕獲センサーを導入し、AIがデータを分析することで、イノシシやシカなどによる農作物被害を大幅に削減することに成功した事例もあります 11

また、ロボットトラクターによる耕うん作業の自動化、AIを搭載した自動収穫機による作物の収穫、ドローンによる広範囲への農薬や肥料の精密散布などが、深刻化する農業従事者の高齢化や人手不足の問題を解消し、経験の浅い人でも高品質な農作物を安定的に生産できるような農業経営を可能にすると期待されています 13

さらに、市場の需要情報や消費者の食のトレンドをAIが分析し、それに基づいて生産計画を最適化することで、過剰生産による価格の暴落を防いだり、逆に供給不足を回避したりすることが可能になります。これにより、食料の安定供給と同時に、世界的な課題となっている食品ロスの削減にも大きく貢献できると考えられています 1

スマート農業の推進は、単に食料生産の効率化や安定化に貢献するだけでなく、より多面的な価値をもたらす可能性を秘めています。「人手不足の解消」2 や「省力化」2 は、特に高齢化が進む農業従事者の肉体的・精神的な負担を大幅に軽減し、より安全で働きやすい環境を提供します。また、「経験が少なくても高品質な生産が可能になる」13 という点は、新規就農者の参入障壁を下げ、若者をはじめとする新しい世代の農業への関心を高めるきっかけとなるかもしれません。さらに、ドローンやセンサーを活用した精密農業による農薬や肥料の適量散布 7 は、土壌や水質への環境負荷を低減し、より持続可能な農業の実践に繋がります。これらの要素は、農業を単なる伝統的な食料生産の場から、最先端のテクノロジーを駆使した知的で魅力ある産業へと変貌させ、地方における新たな雇用創出や地域活性化(例えば、28で触れられている仙台市のドローン活用事業のような、農業分野以外への技術応用も含む)に貢献する可能性があります。これは、Society 5.0が目指す「持続可能な産業化の推進」や「地域間の格差是正」1 といった理念とも深く合致しています。

3.5 エネルギー:持続可能なエネルギー供給

エネルギーは、私たちの生活や経済活動を支える上で不可欠なものですが、地球温暖化対策や資源の枯渇、災害時の供給途絶リスクなど、多くの課題を抱えています。Society 5.0では、AIやIoTといった先端技術を活用し、より効率的で安定的、かつ環境負荷の低い持続可能なエネルギーシステムの構築を目指します。

具体的には、各地域の発電所(火力、水力、太陽光、風力など)の運転状況、工場やオフィスビル、各家庭における電力の使用状況、そして日々の気象情報(日射量、風速、気温など)といった膨大なデータをリアルタイムで収集し、AIがこれを統合的に分析します。この分析に基づいて、電力の需要と供給を高い精度で予測し、発電量を最適にコントロールしたり、余剰電力を効率的に蓄電したり、あるいは電力不足が予測される地域へ融通したりすることで、エネルギーの安定供給と無駄の削減を両立させます 1

特に、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーは、天候によって出力が大きく変動するという課題がありますが、AIによる高精度な発電量予測と、蓄電池や電気自動車(EV)のバッテリーなどを活用したスマートグリッド技術(次世代送電網)を組み合わせることで、その不安定性を補い、再生可能エネルギーの導入を一層拡大していくことが期待されています 16

また、エネルギーの「地産地消」も重要なキーワードです。各地域で太陽光パネルや小型風力発電機などを設置し、そこで作られたエネルギーをその地域内で消費する、あるいは近隣の地域間で融通し合うといった分散型エネルギーシステムを構築することで、大規模発電所への依存度を減らし、送電ロスを低減するとともに、災害時にもエネルギー供給が途絶しにくい強靭なシステムを目指します 2

さらに、水素エネルギーの製造・貯蔵・利用技術の開発や、電気自動車(EV)の普及と充電インフラの整備なども、運輸部門をはじめとする様々な分野での温室効果ガス排出削減に大きく貢献すると考えられています 20

Society 5.0におけるエネルギー戦略は、単にエネルギー供給の安定化や効率化を追求するだけに留まりません。それは、地球規模の課題である気候変動対策と、国家の存立基盤であるエネルギー安全保障という二つの大きな目標を統合的に捉え、より分散型で、かつ市民参加型の新しいエネルギー社会システムの構築を目指していると言えます。「温室効果ガス排出削減」2 は、Society 5.0のエネルギー戦略における明確な目標として掲げられており、気候変動への対応が最重要課題の一つであることがわかります。また、「エネルギーの地産地消」や「分散型エネルギーシステム」2 というコンセプトは、従来の大規模集中型の発電・送電システムへの過度な依存を減らし、個々の地域が主体的にエネルギーを管理し、災害時などにおけるエネルギー供給のレジリエンス(強靭性)を高めることを意図しています。これは、エネルギー安全保障の観点からも極めて重要です。さらに、個々の家庭や企業の電力使用状況をAIが分析し、節電や効率的なエネルギー利用に関する最適な提案を行う 27 ということは、エネルギーの需要家側が、単にエネルギーを消費するだけでなく、エネルギー管理に積極的に参加する「プロシューマー(生産活動を行う消費者)」のような新しい役割を担う可能性を示唆しています。これらの動きは、エネルギー供給を一部の大規模事業者に依存する従来の構造から、多様な主体が参加し、地域レベルでエネルギー需給の最適化を図る、より民主的で持続可能なエネルギーシステムへの転換を促すものです。この方向性は、日立東大ラボが提言する、需要側と供給側のバランスを重視したエネルギーシステムのあり方 29 とも共鳴しています。

3.6 防災・減災:テクノロジーで命と暮らしを守る

地震、台風、豪雨、洪水など、自然災害が頻発・激甚化する日本において、防災・減災対策の高度化は喫緊の課題です。Society 5.0では、AI、IoT、ビッグデータ、ロボットといった先端技術を最大限に活用し、災害による被害を最小限に抑え、迅速な救助・復旧活動を可能にすることで、国民の生命と暮らしを守ることを目指します。

具体的には、人工衛星からの観測データ、ドローンによる空撮映像、地上に設置された各種センサー(気象レーダー、地震計、河川の水位計、建物の傾斜センサーなど)から収集される膨大なリアルタイムデータをAIが統合的に解析し、災害(地震の発生確率、津波の到達予測、豪雨による土砂災害や河川氾濫の危険度など)の発生予測精度を大幅に向上させることが期待されています 2

災害発生時には、個人のスマートフォンやデジタルサイネージなどを通じて、刻々と変化する被災状況や避難所の開設状況、そして個人の位置情報や状況に応じた最適な避難経路をリアルタイムで提供し、安全かつ迅速な避難行動を支援します 2

また、ドローンや災害対応ロボット、あるいは救助隊員が装着するアシストスーツなどを活用することで、人間が立ち入ることが困難な危険な場所での被災状況の迅速な把握、瓦礫に埋もれた被災者の捜索・救助活動、そして避難所への救援物資(食料、水、医薬品など)の効率的な配送などが可能になります 1

さらに、道路、橋、トンネル、電線、水道管といった社会インフラに設置されたセンサーが、災害による損傷状況をリアルタイムで検知し、その情報を一元的に管理・共有することで、復旧作業の優先順位付けや作業計画の最適化を図り、社会機能の早期回復を支援します 1

Society 5.0における防災・減災システムは、単に災害が発生した後の対応に重点を置くのではなく、災害サイクルのあらゆる段階を網羅する、より包括的かつプロアクティブなアプローチへと進化すると言えます。従来の防災対策は、どちらかというと災害発生後の「対応(救助、復旧、避難所運営など)」に多くのリソースが割かれがちでした。しかしSociety 5.0では、AIによる高精度な「災害予測」16 や、IoTセンサーによるインフラや自然環境の常時「状態把握」1 によって、被害が発生する前、あるいは被害が拡大する前にプロアクティブ(先見的)に対応し、被害を未然に防ぐ、あるいは最小限に抑える「予防」の側面が格段に強化されます。そして、万が一災害が発生した場合には、「リアルタイムな情報共有」2 やAIによる「最適な避難誘導」2 によって、被害の軽減と迅速な初動対応を可能にします。さらに重要なのは、災害対応を通じて収集された詳細なデータや対応の履歴が、その後の都市計画の見直しやインフラ設計の改善にフィードバックされ、将来の災害に対する社会全体の「強靭性(レジリエンス)」を継続的に高めていくという視点です 17。このように、Society 5.0の防災は、個別の災害への単発的な対応ではなく、経験から学び、システムを改善し続けることで、社会全体の災害対応能力を持続的に向上させていく、ダイナミックな学習システムとして構想されていると言えるでしょう。

3.7 教育:一人ひとりに最適化された学び

教育分野においても、Society 5.0は大きな変革をもたらす可能性を秘めています。AIやICT(情報通信技術)を最大限に活用することで、従来の一律的な集団教育から、学習者一人ひとりの能力、進捗度、興味関心、さらには学習スタイルに合わせた「個別最適化された学習(アダプティブラーニング)」の提供が進むと考えられています 6

具体的には、AIが学習者の解答パターンや学習履歴を分析し、つまずいている箇所を特定して補足的な教材を提示したり、得意な分野ではより発展的な課題を提供したりするなど、きめ細やかな指導を実現します。また、オンライン学習プラットフォームや多様なデジタル教材が普及することで、時間や場所に制約されることなく、誰もが高品質な教育コンテンツにアクセスできるようになり、都市部と地方、あるいは経済的な事情による教育機会の格差是正にも貢献すると期待されています 7

教育内容においては、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術・リベラルアーツ(Art)、数学(Mathematics)を統合的に学ぶ「STEAM教育」が推進され、これからの社会で求められる論理的思考力、問題解決能力、そして創造性を育むことが重視されます 7

さらに、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といった技術を活用した、より実践的で没入感のある体験型学習(例えば、歴史的建造物のバーチャル見学や、危険な化学実験のシミュレーションなど)も可能になります 7。そして、個々の学習活動の記録(スタディ・ログ)を電子データとして蓄積・分析し、学習効果の可視化や、より効果的な指導方法の開発、あるいは個人の才能や適性発見に役立てることも構想されています 21

Society 5.0における教育改革は、単に新しい技術を導入するという表面的な変化に留まらず、教育のあり方そのものを根本から見直す動きと言えます。これまでの教育が、主に知識や情報を効率的に伝達することに重点を置いていたとすれば、Society 5.0が目指す教育は、学習者一人ひとりの内に秘められた潜在的な能力や好奇心を引き出し、生涯にわたって主体的に学び続け、新たな価値を創造していく力を育む「学習者中心」のパラダイムへの転換を目指しています。「個別最適化された学習」6 や「主体的・対話的で深い学び」7 といったキーワードは、教師から生徒へという一方向的な知識伝達型の集団教育からの脱却を明確に示唆しています。また、STEAM教育 7 の推進は、既存の学問分野の垣根を越えて知識やスキルを統合し、現実社会の複雑な課題に対して自ら問いを立て、解決策を探求していく能力を重視する姿勢の表れです。「学習ログの活用」21 は、個々の学習プロセスをデータに基づいて客観的に把握し、より効果的な学習方法の発見や、個人の強みや適性に基づいた将来のキャリア形成支援へと繋がる可能性を秘めています。これらの要素を総合的に考えると、Society 5.0における教育の究極的な目的は、単に知識を詰め込むことではなく、変化の激しい未来社会を主体的に生き抜き、そこで新たな価値を創造していくための「学び続ける力」そのものを育むことにあると言えるでしょう。これは、Society 5.0が「創造社会」であるという定義 6 とも深く呼応しています。

3.8 スマートシティ:より快適で持続可能な都市

スマートシティは、ICT(情報通信技術)やAI、IoTといった先端技術を都市インフラや市民サービスに全面的に導入し、都市全体の効率的な運用と管理、そして住民の生活の質の向上を目指す取り組みです 7。Society 5.0の理念を、都市という具体的な空間で具現化する先行的な実現の場として、世界各国で様々なプロジェクトが進められています 37

スマートシティでは、都市内に張り巡らされたセンサーやカメラから収集される膨大なデータ(交通量、エネルギー消費量、大気汚染状況、ゴミの量、公共施設の利用状況など)をリアルタイムで分析し、都市機能の最適化を図ります。例えば、AIが交通状況を分析して信号機を最適に制御することで交通渋滞を緩和したり 7、建物のエネルギー消費パターンを学習して空調や照明を自動調整することで省エネルギー化を推進したり、あるいはゴミ収集車の最適な巡回ルートを算出したりします 37

また、住民のニーズや行動データを分析することで、より個別化された行政サービスや生活支援サービスの提供も可能になります。例えば、高齢者の見守りサービス、子育て支援情報のプッシュ通知、個人の健康状態に合わせた運動プログラムの提案などが考えられます 37

さらに、都市の3Dモデルをサイバー空間上に構築する「デジタルツイン」技術を活用し、新しい都市計画のシミュレーションを行ったり、災害発生時の被害状況をリアルタイムで予測したり、あるいは老朽化したインフラの維持管理計画を最適化したりすることも期待されています 7

スマートシティの構想は、単に都市に最新技術を導入して機能的に高度化させるという側面に留まりません。それは、住民が主体的に都市運営に参加し、地域の課題解決や新たな価値創造に貢献できるような、持続可能な地域社会運営モデルの実験場としての役割も期待されています。例えば、スマートシティガイドブック 37 では、「地域の関係者との対話と機運醸成」、「市民ニーズの把握」、「多様な主体が参加するプロジェクト推進主体(コンソーシアム)の組成」といった、住民や地域社会の主体的な関与を重視する記述が多く見られます。また、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念や、デジタル技術を活用して地方創生を目指すデジタル田園都市国家構想との連携 37 も、トップダウンの技術導入だけでなく、地域の多様な主体が参画する包摂的なアプローチの必要性を示唆しています。スマートシティは、新しい技術やサービスを実際の都市環境で実証し、住民からのフィードバックを得ながら継続的に改善していく「生きた実験室(リビングラボ)」としての機能を持つことができます。これにより、住民自身が地域の課題解決や新たな価値創造に主体的に関与し、テクノロジーを自分たちの手で活用していく、ボトムアップ型のイノベーションが生まれやすくなるでしょう。これは、Society 5.0が掲げる「人間中心」であり「創造社会」であるという理念とも深く合致し、技術と社会が相互に作用しながら進化していくダイナミックなプロセスを可能にするものと期待されます。

第4章:Society 5.0実現に向けた国内外の動きと課題

Society 5.0の実現は、日本一国だけの取り組みに留まらず、国際的な大きな潮流とも深く関わっています。この壮大なビジョンを現実のものとするためには、政府による強力なリーダーシップ、地方自治体や企業による具体的な実践、そして国際社会との連携が不可欠です。しかし、その道のりには、技術開発、人材育成、法制度の整備、倫理的な配慮など、乗り越えるべき多くの課題も存在します。本章では、Society 5.0実現に向けた日本国内の具体的な取り組みを紹介するとともに、SDGs(持続可能な開発目標)との関連や諸外国の先進的な戦略との比較、そして私たちが直面する多岐にわたる課題について、国内外の文献や報告書を参照しながら掘り下げていきます。

4.1 日本政府の取り組み:戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)やムーンショット型研究開発制度など

日本政府は、内閣府を中心に、Society 5.0の実現を国家戦略の重要な柱と位置づけ、科学技術・イノベーション政策を強力に推進しています 1。その具体的な取り組みとして、以下のような大型の研究開発プログラムや基盤整備が進められています。

  • 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP): これは、Society 5.0の実現や、日本の経済・産業競争力にとって重要な社会課題の解決を目指し、府省庁の垣根を越え、産業界、学術界、政府が一体となって基礎研究から実用化、さらには事業化までを一気通貫で推進するプログラムです 7。第3期(2023年度~2027年度)では、例えば、個人の健康・医療情報を統合的に活用し、個別化医療や予防医療を推進する「統合型ヘルスケアシステムの構築」13 や、エンジンの熱効率を飛躍的に向上させる「革新的燃焼技術」10 など、多岐にわたるテーマが設定されています。
  • ムーンショット型研究開発制度: これは、従来の延長線上にはない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を支援し、日本発の破壊的イノベーションの創出を目指すものです 7。例えば、「2050年までに、人が活動範囲と時間を気にすることなく、安全・安心に生活し、活動できる社会を実現」するために、AIとロボットが共進化し、人間と自然に共生するロボット群を開発するといった、Society 5.0の未来像を背景に持つ野心的な目標が設定されています 19
  • 研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE): SIPや各省庁の研究開発施策で生まれた革新的な技術シーズを、具体的な社会課題の解決や新しい事業の創出へと繋げるための「橋渡し」を支援するプログラムです 7
  • スマートシティの推進: 内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省などが連携し、全国各地でスマートシティのモデル事業を支援するとともに、都市OS(オペレーティングシステム)などの共通基盤となるリファレンスアーキテクチャの整備を進めています 37
  • データ連携基盤の整備: Society 5.0の根幹となるのは、分野や組織を越えたデータの自由な流通と活用です。このため、異なるシステム間でもデータを容易に連携可能にするための共通技術(データ連携コネクタなど)の研究開発や、政府や自治体が保有する公共データを民間が利用しやすい形で公開するオープンデータの推進が行われています 10
  • 人材育成: Society 5.0を担う人材の育成も急務です。初等中等教育におけるSTEAM教育(科学・技術・工学・芸術・数学を統合的に学ぶ教育)の推進、大学におけるAI・データサイエンス教育の強化、社会人の学び直しを支援するリカレント教育の充実、そして産業界と教育機関が連携した実践的な教育プログラムの提供などが進められています 6
  • 規制・制度改革: 新しい技術やサービスがスムーズに社会に導入されるよう、既存の規制がイノベーションの障壁となっている場合には、その見直しや特区制度の活用が進められています。また、自動運転、ドローン、オンライン診療といった新しい分野については、安全性と利便性のバランスを考慮しながら、新たなルール作り(例えば、オンライン診療の恒久化に向けた動き 53)も行われています 23

これらの日本政府によるSociety 5.0推進戦略は、特定の技術開発に偏るのではなく、多角的なアプローチを特徴としています。SIP 7 やムーンショット型研究開発制度 7 のような、国が主導するトップダウン型の大型研究開発プログラムが推進される一方で、それらの成果が社会に広く実装され、持続的に発展していくための基盤整備(データ連携基盤の構築 10、人材育成システムの改革 6、規制・制度の現代化 23)も両輪として進められています。さらに、これらのプログラムの多くで「産学官連携」が不可欠な要素として強調されていること 7 は、Society 5.0のような複雑で広範な社会変革は、単独の組織やセクターの努力だけでは達成困難であり、多様な主体間の緊密な協調と連携によって初めて実現可能になるという政府の認識を反映しています。これは、単に個別の技術を開発するだけでなく、それらが社会の中で有機的に結びつき、新たな価値を生み出し続けるための「イノベーション・エコシステム」全体を構築しようとする政府の強い意志の表れと言えるでしょう。

4.2 地方自治体や企業の先進事例

Society 5.0の実現は、政府によるトップダウンの構想だけでなく、実際に地域社会や産業界で活動する地方自治体や企業が、それぞれの抱える具体的な課題解決のニーズと、それを実現するためのボトムアップの試行錯誤を通じて具体化が進んでいます。

地方自治体の取り組み:

全国各地の地方自治体では、スマートシティ関連事業として、2023年時点で157地域において229もの事業が進行しており、地域特性に応じた多様な取り組みが見られます 28。

  • 防災・減災分野の先進事例:
  • 宮城県仙台市では、東日本大震災の教訓を踏まえ、ドローンや4G/5G通信、AI、IoT技術を組み合わせた防災・減災プラットフォームの構築を進めています。具体的には、災害時にも安定した通信を確保するためのプライベートLTE通信網の整備や、橋梁などのインフラ点検業務に球殻ドローン(球状のガードで覆われたドローン)を一部活用する実証実験を開始するなど、先進的な取り組みを行っています 28
  • 行政サービス効率化の事例:
  • 東京都渋谷区では、区役所のICT基盤を全面的に刷新し、職員が私物のデバイスを業務に利用するBYOD(Bring Your Own Device)や、コミュニケーションツール「Teams」などを活用することで、利便性とセキュリティを両立させた業務環境を構築し、職員のワークスタイル改革を推進しています 28
  • 兵庫県姫路市では、住民税システム、住民記録システム、都市計画データなど、市が保有する様々なデータを部署横断的に集約し、一元的に分析する「行政情報分析基盤」を構築しました。これにより、例えば入園希望児童数の高精度な予測を行い、待機児童問題の解消や保育所の適正配置といった、データに基づいた政策立案・評価を実現しています 28
  • 埼玉県さいたま市では、AIを活用することで、年間約8,000人の応募がある保育所の利用調整業務(約300施設への振り分け)にかかる時間を、従来の人の手による1,500時間から、わずか数秒へと劇的に短縮することに成功しました 11
  • 地域産業活性化・生活支援の事例:
  • 佐賀県みやき町では、ふるさと納税型クラウドファンディング(GCF)を活用し、ドローンによる圃場撮影とAIによる画像解析を組み合わせたスマート農業を推進し、ピンポイントでの害虫駆除を可能にするなど、一次産業の活性化に取り組んでいます 28
  • 長野県塩尻市では、水田周辺に獣検知センサーや罠捕獲センサーを設置し、イノシシなどの鳥獣を検知するとサイレンやフラッシュ光で追い払うと同時に、農家や狩猟会に地図付きでメール通知するシステムを導入。これにより、稲作被害を前年度比で65%削減し、翌年度には被害面積ゼロを達成するなど、大きな成果を上げています 11
  • 福井県永平寺町では、過疎地域の高齢者の移動支援などを目的に、自動運転車の導入テストが進められています 25
  • 北海道岩見沢市では、GPSと連動した自動操舵トラクタを導入し、農業経営の効率化を図っています 25
  • 和歌山県では、5G通信を活用した遠隔医療の実証実験が行われ、医療アクセスの改善が試みられています 25
  • 宮城県石巻市では、ICT建設機械を導入することで、高齢者でも安全かつ効率的に作業できる建設現場環境を整備しています 25
  • このほかにも、「デジタル田園都市国家構想交付金(地方創生推進タイプSociety5.0型)」の採択事業として、自動運転レベル4の実装、農村地域での無人ドローン配送、市街地での無人ロボット配送、量子コンピュータを活用したAIオンデマンドバスによるMaaS(Mobility as a Service)の構築、遠隔診療基盤の整備、5Gを活用したリモート農業など、全国各地で多様なプロジェクトが進行中です 24

企業の取り組み:

多くの企業も、Society 5.0の実現に向けて、自社の技術やサービスを活用した新しい価値創造に取り組んでいます。

  • 運輸・物流分野:
  • ANAホールディングスは、離島や山間地域における医薬品や生活物資の効率的な輸送を目指し、ドローンを活用した輸送ネットワークの構築を進めています 15
  • 生活サービス分野:
  • JR東日本、都営交通、東京メトロなどは、子どもが交通系ICカード(SuicaやPASMO)で自動改札を通過すると、利用駅や通過時刻などが保護者に通知される「見守りサービス」を提供しており、子どもの安全確保に貢献しています 20
  • 建設機械・鉱業分野:
  • コマツマイニングは、建設機械や鉱山機械に搭載されたセンサーから得られる稼働データ(IoTデータ)を収集し、機械学習(AI)を用いて分析することで、機械の稼働率向上や故障予知保全を実現しています 56
  • 製造業・ITソリューション分野:
  • 日立製作所は、経団連と共にSociety 5.0の推進に積極的に関わっており、自社のものづくり文化を変革し、従来の「良いものを作れば売れる」という発想から、製品やサービスが顧客の生活や事業の発展にどのように貢献できるかという「顧客価値中心」の考え方へとシフトしています 57。また、東京大学と共同で「日立東大ラボ」を設立し、Society 5.0を支えるエネルギーシステムのあり方などに関する研究開発も行っています 29
  • 経済団体としての取り組み:
  • 経団連は、会員企業に対し、Society 5.0とSDGsとの連携(「Society 5.0 for SDGs」)、産業全体の高付加価値化、既存産業の保護ではなくスタートアップ振興への軸足移行(大企業による「出島」形式のイノベーション組織設立など)、そしてAIを活用しやすい組織文化への変革などを提言し、産業界全体の取り組みを後押ししています 1

これらの地方自治体や企業の先進事例を見ていくと、Society 5.0の実現は、国レベルの壮大な構想だけでなく、それぞれの地域や企業が抱える具体的な課題解決のニーズと、それを実現するための技術的・組織的な試行錯誤によって、一歩ずつ具体化が進んでいることがわかります。特に、45のスーパーシティ事例で、市民の99.2%が賛成した背景に「きめ細やかな事前説明」があったと指摘されている点や、37のスマートシティガイドブックで「地域の関係者との対話と機運醸成」「プロジェクト推進主体(コンソーシアム)の組成」といった住民参加や多様なステークホルダー間の連携の重要性が強調されている点は示唆に富んでいます。これらのことから、Society 5.0は、全国一律の画一的なモデルをトップダウンで展開するのではなく、それぞれの地域の特性や住民のニーズに応じて多様な形で社会実装が進められており、その成功のためには、技術導入の初期段階からの丁寧な合意形成プロセスと、官民連携をはじめとする強固な連携体制の構築が不可欠な鍵となっていると言えるでしょう。

4.3 国際的な視点:SDGsとの連携、諸外国の戦略(Industrie 4.0、中国の取り組み等)との比較

Society 5.0は日本発のコンセプトですが、その目指す方向性や活用される技術は、グローバルな課題意識や国際的な技術開発競争と深く結びついています。

  • SDGsとの連携:
    Society 5.0は、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献する概念として、日本政府や経済界によって強く意識されています 1。経済発展と社会的課題の解決を両立し、人間中心の社会を目指すというSociety 5.0の基本理念は、貧困、飢餓、健康、教育、エネルギー、気候変動、不平等など、SDGsが掲げる17の目標の多くと共通の方向性を持っています。特に経団連は「Society 5.0 for SDGs」というスローガンを掲げ、企業が事業活動を通じてSDGs達成に貢献することを奨励しており、具体的な経済評価に関する報告書も発行されています 1。
  • ドイツのIndustrie 4.0との比較:
    ドイツが2011年頃から推進している「Industrie 4.0」は、主に製造業におけるスマート化、つまり工場内の機械や設備をネットワークで繋ぎ、AIやIoTを活用して生産プロセスを最適化する「スマート工場」の実現を目指す国家戦略です 4。これに対し、Society 5.0は、製造業だけでなく、医療、交通、農業、エネルギー、教育、行政サービスといった、社会全体のあらゆる分野を対象とし、より包括的な社会変革を目指すコンセプトであるという点で異なります 4。ただし、両者ともにサイバーフィジカルシステム(CPS)の活用を核とし、データ駆動による効率化や新たな価値創造を目指すという点では共通項も多く、実際にはほぼ同じ意味合いで使われるケースも見られます 4。近年、欧州委員会は「インダストリー5.0」という新たなコンセプトを提唱しており、これはサステナビリティ、人間中心、レジリエンス(強靭性)といった価値を重視する点で、日本のSociety 5.0と非常に近い理念を共有しています 59。国際的な連携や標準化活動において、日本は展開のスピードが課題であるとの指摘もあります 61。
  • 中国の戦略との比較:
    中国は、「中国製造2025(Made in China 2025)」や「新基建(新型インフラ整備:5G基地局、AI、データセンター、IoTなど)」といった国家戦略を強力に推進し、AI、5G、IoT、ビッグデータといった先端技術分野で急速な国際的影響力を高めています 56。Society 5.0もこれらの先端技術を核心としていますが、中国の戦略が国家主導による産業競争力の強化やデジタル経済圏の構築、そして国内の監視体制強化といった側面に重点を置いているのに対し、Society 5.0は「人間中心」の理念や「社会的課題の解決」をより前面に押し出し、国民一人ひとりのウェルビーイング向上を重視している点が特徴として挙げられます。ただし、両国ともに国家レベルでデジタル変革を推進している点、そしてそのための技術基盤整備に注力している点は共通しており、具体的な政策目標や推進体制、そしてその成果については、今後も詳細な比較分析と注視が必要です 65。
  • 米国のスマートシティ戦略との比較:
    米国では、連邦政府レベルでの包括的な「スマートシティ戦略」というよりは、運輸省(DOT)による「Smart City Challenge」のような特定の課題解決型プロジェクト支援 22 や、国立標準技術研究所(NIST)によるスマートシティ・コミュニティのフレームワーク策定支援 22 など、個別の取り組みや研究機関による指針作りが活発です。米国のスマートシティ構想も、交通渋滞の緩和、温室効果ガス(GHG)排出量の削減、公共サービスへのアクセシビリティ向上、そして市民生活の質の向上などを目指しており、その達成手段としてICTやビッグデータを活用する点で、Society 5.0の目指す方向性と多くの共通点を持っています 22。特に、米国都市計画協会(APA)の報告書 39 では、スマートシティの理想として、技術、コミュニティ、自然の公平な統合、人間中心のアプローチ、倫理観と公平性の重視、そして市民参加型の共創が強調されており、これらは日本のSociety 5.0が掲げる理念と強く通底しています。
  • 国際的な評価と認知度:
    OECD(経済協力開発機構)やWEF(世界経済フォーラム)といった国際機関も、日本のSociety 5.0に注目しており、その経済効果やSDGsとの関連性、社会への影響などに関する分析や評価を含む報告書も発行されています 12。しかしながら、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資やSDGsといった、より国際的に定着した概念と比較すると、Society 5.0の国際的な認知度はまだ十分とは言えないという指摘もあります 12。海外の学術界からも、Society 5.0が日本の新たな成長モデルとなり得るのか、あるいは既存の資本主義システムやイノベーションのあり方とどのように関連し、どのような変革をもたらすのかといった、分析的かつ時には批判的な視点からの議論が活発に行われています 60。

これらの国際的な動向を踏まえると、Society 5.0は、SDGsのようなグローバルな課題解決への貢献を明確に意識しつつ、ドイツのIndustrie 4.0や米中のスマートシティ戦略といった他国の先進的な取り組みを参考にしながらも、「人間中心」という日本独自の価値観を前面に打ち出すことで、国際社会における差別化を図ろうとしていると言えます。しかし、その先進的な理念が、具体的な政策や社会実装の成果として国際社会にどれだけ説得力を持って示せるか、そしてそれが他国にとっても普遍的な価値として受け入れられ、共感を呼ぶかが、今後のSociety 5.0の国際的な評価を左右する重要な鍵となるでしょう。単なる技術導入競争や経済覇権争いではなく、どのような社会を未来に築きたいのかという、より根源的な哲学が問われているのです。

4.4 実現への課題:技術開発、人材育成、法制度、倫理的課題(プライバシー、セキュリティ、デジタル格差、雇用への影響)

Society 5.0が目指す未来社会は魅力的なものである一方、その実現までには乗り越えるべき多くの課題が存在します。これらの課題は、技術的な側面に留まらず、人材の育成、法制度の整備、そして倫理的な問題への対応といった、社会システム全体の変革を伴う複雑なものです。

  • 技術開発の課題:
    Society 5.0の基盤となるのは先端技術ですが、その開発と社会実装にはいくつかの課題があります。まず、多様なデータを分野横断的に収集・分析・活用するための「データ基盤」の整備が、一部海外諸国と比較して遅れているとの指摘があります 21。具体的には、異なるシステム間でデータをスムーズに連携させるための標準化や、必要なデータがどこに存在し、どのようにアクセスできるのかを容易に把握できる仕組み(言葉と意味=データの共通化・連結)の構築が求められています 10。また、AI、ビッグデータ解析技術、サイバーセキュリティ技術、次世代ネットワーク技術、ロボティクス、省電力デバイス、革新的な素材・ナノテクノロジーといった、Society 5.0を支える個々の基盤技術についても、継続的な研究開発と性能向上が不可欠です 10。
  • 人材育成の課題:
    新しい社会システムを構想し、それを支える技術を開発・運用し、そしてその恩恵を社会全体に行き渡らせるためには、それに適した人材の育成が急務です。特に、AIやビッグデータを理解し、それを活用して現実社会の課題を解決できる人材、そして多様な専門性を持つメンバーから成るチームの中でリーダーシップを発揮し、新しい価値を創造できる人材の育成が強く求められています 1。そのためには、従来の文系・理系といった枠組みにとらわれない分野横断的な知識の習得、AI・数学・情報科学・生命科学といった分野の基礎教育の強化(例えば全大学生への必修化)、世界レベルで活躍できるトップ人材の戦略的育成、そして社会人がいつでも新しい知識やスキルを学び直せるリカレント教育システムの整備などが不可欠とされています 6。しかし現状では、デジタル人材の育成は進められているものの、実際にどのようなスキルを持つ人材がどれだけ育成されているのか、企業や社会のニーズと合致しているのかといった実態把握が難しく、政策効果の十分な検証が今後の課題であるとの指摘もあります 52。また、国民全体のICT活用スキルを底上げするための機会提供も重要です 50。
  • 法制度・ガバナンスの課題:
    AI、自動運転、ドローン、遠隔医療といった新しい技術やサービスが社会に広く普及するためには、それらが安全かつ公正に利用されるための法制度や社会的なルール(ガバナンス)の整備が不可欠です。イノベーションがもたらす便益を最大限に享受しつつ、同時にそのリスクを社会が適切にコントロールし、個人の権利(財産、生命、心身の安全、プライバシーなど)、民主主義、公正な競争といった基本的な社会的価値が損なわれないようにするための、新しいガバナンスモデルの設計が求められています 54。これは、単に既存の規制を緩和するのではなく、むしろ人権の保障や安全・公正の確保といった「達成すべきゴール(目標)」を明確にした上で、その達成手段については柔軟性を持たせる「ゴールベースの法規制」への転換を意味します 54。特に、AIや自動運転システムのように、自律的に判断し行動する可能性がある新しい技術については、事故が発生した場合の責任の所在をどう考えるか(規制・制裁・責任の一体的改革)が大きな法的論点となっており、従来の法体系では対応しきれないケースも想定されるため、継続的な議論とアジャイルな(機敏な)法整備が求められています 55。また、国境を越えてデータが流通する現代においては、個人データの保護と利活用をいかにバランスさせるかという国際的なルール作りも重要な課題です 57。巨大な影響力を持つデジタル・プラットフォーム事業者に対する適切な規律のあり方についても、国際的な議論が続いています 73。
  • 倫理的課題:
    Society 5.0の進展は、効率性や利便性の向上だけでなく、倫理的な側面からの深い考察も要求します。
  • プライバシー保護: あらゆるモノがインターネットに繋がり(IoT)、個人の行動や生体情報が大量に収集・分析されるようになると、プライバシー侵害のリスクが高まります 11。一度匿名化されたデータであっても、他の情報と組み合わせることで個人が再特定されるリスクも指摘されています 75
  • セキュリティ確保: サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合することで、サイバー攻撃の影響が現実世界のインフラ(電力、交通、医療など)や個人の安全に直接及ぶ危険性が増大します。情報システムの脆弱性を狙った情報流出やハッキング、重要インフラの機能停止といった脅威への対策が不可欠です 21。政府も「サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーク(CPSF)」を策定し、産業分野ごとの対策を推進しています 50
  • AI倫理(公平性・透明性・説明責任): AIによる意思決定が、学習データに含まれる偏り(バイアス)を反映して、特定の人々に対して不公平な結果をもたらしたり、差別を助長したりする可能性があります 75。また、AIの判断プロセスが複雑で人間には理解できない「ブラックボックス」化してしまうと、なぜそのような結論に至ったのかという説明責任を果たすことが難しくなります。これらの課題に対応するため、日本政府は「人間中心のAI社会原則」を策定し、AIの開発・利用における公平性、透明性、説明責任の確保を求めています 77
  • 監視社会への懸念: 街中に設置されるAI監視カメラや、顔認識技術、行動分析AIなどが普及することで、個人の行動が常に監視され、プライバシーが侵害されるだけでなく、自由な言動が抑制される「監視社会」へと繋がるのではないかという懸念も表明されています 75
  • 社会的受容性と合意形成の課題:
    どれほど優れた技術やシステムであっても、それが社会に受け入れられ、人々に信頼されなければ、広く普及し定着することはありません。現状では、Society 5.0というコンセプトや、それを構成する個々の新技術に対する国民の認知度や理解度が必ずしも高くないという調査結果もあります 83。新しい技術に対する漠然とした不安感を払拭し、そのメリットだけでなくリスクについても丁寧な情報提供を行い、社会全体でオープンな議論を重ね、幅広い合意形成を図っていくプロセスが不可欠です 83。
  • デジタル格差(デジタルデバイド)の課題:
    Society 5.0がもたらす恩恵を、一部の人々だけでなく、社会のあらゆる層が享受できるようにするためには、デジタル格差の問題への対応が極めて重要です。年齢、地域(都市部と地方)、所得、あるいは障害の有無などによって、情報通信技術(ICT)へのアクセス機会や、それを活用するためのスキル(デジタルリテラシー)に格差が生じると、Society 5.0の進展がむしろ社会的な不平等を拡大させてしまう可能性があります 84。政府も「誰一人取り残さない」デジタル社会の実現を掲げ、高齢者や障害者のICT利活用支援、地方における情報通信インフラ整備といった包摂的な取り組みを進めています 24。
  • 雇用への影響とスキルシフトの課題:
    AIやロボット技術の進化は、人間の仕事を代替する可能性も指摘されており、特に定型的な業務や肉体労働を中心とした職種においては、雇用の減少や失業リスクへの懸念があります 85。一方で、AIやロボットを開発・管理・運用する新しい職種や、人間ならではの創造性やコミュニケーション能力が求められる仕事の重要性が増すとも言われています。この変化に対応するためには、既存のスキルが陳腐化することを見据え、社会全体で新しいスキルを習得するための教育訓練システム(リスキリング)を構築し、労働市場の流動性を高めていく必要があります 6。労働政策研究・研修機構(JILPT)の報告書によると、日本の職場事例では、AI導入後も雇用は比較的安定的であるものの、従業員のタスク内容が変化したり、AI技術を活用するための新たなスキル習得が必要になったりするケースが多く見られると指摘されています 93。

これらの多岐にわたる課題を総合的に見ると、Society 5.0の実現における最大のボトルネックは、個々の技術開発のハードルそのものよりも、むしろ人間社会側の適応、すなわち人材育成システムの変革、法制度や倫理規範の現代化、そして社会全体の合意形成といった側面にあると言えるかもしれません。技術は急速に進歩しても、社会の制度や人々の意識、価値観がそれに追いつかなければ、技術の持つポテンシャルを最大限に活かすことはできず、むしろ予期せぬ混乱や格差の拡大を招くリスクすらあります。したがって、技術開発と並行して、これらの「人間社会側の適応」をいかに迅速かつ効果的に進められるかが、Society 5.0の成否を分ける重要な鍵となります。

さらに、Society 5.0がその核心に掲げる「人間中心」という理念は、ここで挙げたプライバシー保護、AI倫理、デジタル格差、雇用への影響といった多岐にわたる課題すべてにおいて、技術の設計思想の段階から、社会実装のプロセス、そして運用ルールに至るまで、一貫して追求されなければならない基本的な指針です。例えば、効率性のみを追求した結果、個人のプライバシーが過度に侵害されたり、AIシステムが特定の属性を持つ人々に対して無意識のうちに不利益な判断を下したりするような事態は、決して「人間中心」とは言えません。これらの課題への対応は、単に技術導入に伴う付随的な問題解決としてではなく、Society 5.0の根幹をなす「人間中心」という価値観を、社会のあらゆる側面に具体的に組み込んでいくという、より本質的な取り組みとして捉える必要があります。「人間中心のAI社会原則」77 の策定や、アジャイル・ガバナンス 55 に関する議論は、まさにこの理念を具体的な形にしようとする重要な試みです。この「人間中心」という理念が一貫して追求されなければ、Society 5.0は、一部の専門家や企業だけが恩恵を受ける技術主導の社会、あるいは意図せずしてディストピア的な側面を持つ社会へと陥ってしまう危険性すら孕んでいるのです。

第5章:私たちがSociety 5.0時代に向けて知っておくべきこと・備えるべきこと

Society 5.0の到来は、政府や企業、研究機関だけの取り組みによって進むものではありません。それは、私たち一人ひとりの日常生活、働き方、学び方、そして価値観にも深く関わってくる、社会全体の大きな変革です。この新しい時代を、より豊かに、そして主体的に生き抜くためには、私たち自身が何を知り、どのように備えていくべきなのでしょうか。本章では、個人レベルで求められるスキルや心構え、そしてテクノロジーとの賢い付き合い方について考えていきます。

5.1 新たな社会で求められるスキルとマインドセット

Society 5.0のような変化の激しい時代においては、従来型の知識やスキルだけでは対応しきれない場面が増えてくると予想されます。AIやロボットが多くの定型業務や情報分析を担うようになる中で、人間にしかできない、あるいは人間だからこそ価値を発揮できる能力の重要性がますます高まります。

  • 求められる人材像とスキル:
    専門家の間では、AIやビッグデータといった新しい技術を理解し、それを道具として使いこなしながら、現実社会の複雑な課題を発見し、解決策を創造できる人材、そして多様なバックグラウンドを持つ人々と協働し、チームとして成果を上げていく中でリーダーシップを発揮できる人材が求められるようになると言われています 6。
    具体的に必要とされるスキルとしては、まずデジタルリテラシーが挙げられます。これは、AI、IoT、ビッグデータといった先端技術の基本的な仕組みを理解し、それらを日常生活や仕事の中で適切に活用できる能力です 6。加えて、複雑化する社会の中で本質的な課題を見つけ出し、既存の枠にとらわれない創造的な解決策を生み出す問題発見・解決能力 6、大量の情報の中から真偽を見極め、多角的な視点から論理的に考察し、的確な判断を下す批判的思考力・論理的思考力 6 も不可欠です。また、多様な価値観を持つ人々と円滑に意思疎通を図り、協力して目標を達成するためのコミュニケーション能力・協調性 6、そして新しいアイデアやサービスを構想し、それを具体的な形にしていく創造性・想像力 6 も、AIには代替されにくい人間ならではの重要な能力です。
    さらに、技術や社会の変化のスピードが非常に速いため、一度身につけた知識やスキルがすぐに陳腐化してしまう可能性があります。そのため、常に新しいことを学び続ける意欲と能力、すなわち変化への適応力と生涯学習の姿勢が極めて重要になります 6。政府もリカレント教育(社会人の学び直し)の機会充実を政策として掲げています 6。
  • 求められるマインドセット:
    スキルだけでなく、物事の捉え方や心構えといったマインドセットも、新しい時代を生きる上で重要になります。まず、新しい技術や変化に対して、それを恐れたり拒絶したりするのではなく、むしろ積極的に受け入れ、より良い未来を創造するために活用しようとする技術への前向きな姿勢が求められます 57。また、グローバル化が進み、多様な価値観を持つ人々が共存する社会においては、自分とは異なる意見や背景を持つ人々を理解し、受け入れる多様性の尊重というマインドセットが不可欠です 6。そして、高度な技術が社会に大きな影響を与えるようになるからこそ、その利用が社会全体や他者にどのような影響を及ぼすのかを常に考慮し、責任ある行動をとる倫理観と社会的責任感も、これまで以上に重要になるでしょう。

Society 5.0で求められるスキルセットを考えるとき、それは単に特定の技術的専門性を指すのではありません。AIやロボットが多くの定型業務や高度な分析業務を代替するようになる可能性が示唆されている中で 2、むしろAIには代替されにくい、人間ならではの普遍的な能力、例えば他者への共感力、独創的なアイデアを生み出す創造性、情報を鵜呑みにせず多角的に吟味する批判的思考力、そして複雑な状況下で倫理的な判断を下す能力などの重要性が増してきます。692で「想像力」「創造力」が、77で「問題解決能力」「主体的・対話的で深い学び」が強調されているのは、まさにこの点を反映しています。したがって、Society 5.0で真に価値を発揮するのは、AIを単に使いこなす技術的スキルに加えて、AIと効果的に協調し、AIでは補うことができない人間独自の価値を提供できる「人間とAIの協調能力」であると言えるでしょう。今後の教育も、単にAIに仕事を奪われないためのスキルを教えるという発想から、AIを良きパートナーとして共に新しい価値を生み出せるような人材を育成する方向へと、その重点をシフトしていく必要があると考えられます。

5.2 テクノロジーとの賢い付き合い方

Society 5.0では、私たちの生活のあらゆる場面でテクノロジーとの接点が増え、その恩恵を享受できる機会が拡大します。しかし、その一方で、テクノロジーに振り回されたり、意図せず不利益を被ったりしないためには、私たち自身がテクノロジーと賢く付き合っていくリテラシーを身につけることが不可欠です。

  • 情報の真偽を見極めるリテラシー:
    AIが生成する文章や画像、動画も含め、インターネット上には真偽不明な情報や意図的に誤解を招くような情報が溢れています。特にAIは、もっともらしい嘘の情報を生成することもあります。そのため、情報を鵜呑みにせず、常に批判的な視点を持ち、情報の出所や根拠を確認する習慣を身につけることが、これまで以上に重要になります。
  • プライバシーとセキュリティ意識の向上:
    スマートフォン、ウェアラブルデバイス、スマート家電など、身の回りのあらゆるものがインターネットに繋がることで、私たちの個人情報や行動データが大量に収集・活用されるようになります。これらのデータの価値を正しく理解し、安易に提供することを避け、利用規約をよく確認する、パスワード管理を徹底する、不審なメールやウェブサイトに注意するといった、基本的なセキュリティ対策を怠らないことが、自らのプライバシーと安全を守る上で不可欠です 11。
  • アルゴリズムバイアスへの理解:
    AIによる判断や推薦は、学習データに含まれる偏り(バイアス)の影響を受ける可能性があり、必ずしも常に中立・公正であるとは限りません 75。例えば、過去のデータに基づいて採用候補者を推薦するAIが、無意識のうちに特定の性別や人種に偏った結果を出してしまうといったケースも考えられます。AIが出した結果を鵜呑みにせず、それがどのようなデータやロジックに基づいているのかを意識し、時には疑問を持つ姿勢が大切です。
  • デジタルデトックスの重要性:
    常にスマートフォンやコンピュータに接続され、情報に囲まれた生活は、便利である反面、精神的な疲労やストレス、あるいは集中力の低下などを引き起こす可能性も指摘されています。意識的にデジタル機器から離れる時間(デジタルデト

引用文献

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  61. インダストリー5.0とは?「次世代の自動化製造」に取り組むメリットや課題、各国の取り組みや歴史的背景を解説 – エムタメ, 6月 1, 2025にアクセス、 https://mtame.jp/column/industry_5/
  62. ポストコロナ時代における 「科学技術・イノベーション政策」を問う – 国立情報学研究所, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.nii.ac.jp/event/upload/NII20th_20201203_Ueyama.pdf
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  84. 「日本型スマートシティ」の鍵を握るアーキテクチャーの構築と標準化【第23回】 – デジタルクロス, 6月 1, 2025にアクセス、 https://dcross.impress.co.jp/docs/column/column20171122-01/001202.html
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  86. Society 5.0とは?目指す社会像や実現のための技術、具体的な取り組み事例について解説, 6月 1, 2025にアクセス、 https://service.paycierge.com/column/about-society5-0/
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  88. 行政 DX 推進における地方自治体のデジタルデバイド 現状と課題への考察 – 三重大学, 6月 1, 2025にアクセス、 https://mie-u.repo.nii.ac.jp/record/2001278/files/2024MH0013.pdf
  89. 総務省 – 地方創生, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.chisou.go.jp/sousei/about/mirai/list03/pdf/ministry_soumu.pdf
  90. 第5次呉市長期総合計画 令和7年度 構成事業集, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.city.kure.lg.jp/uploaded/attachment/102681.pdf
  91. 安田 孝美 – 研究者総覧 – 名古屋大学, 6月 1, 2025にアクセス、 https://profs.provost.nagoya-u.ac.jp/html/100001770_ja.html
  92. 限界を迎えた現代社会を解放する、Society 5.0 – 世界経済フォーラム, 6月 1, 2025にアクセス、 https://jp.weforum.org/stories/2019/01/society-5-0/
  93. www.jil.go.jp, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.jil.go.jp/institute/reports/2024/documents/0228.pdf
  94. 「AI技術の導入が雇用環境へ及ぼす影響の評価手法に関する調査研究 …, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/prj/hou/hou089/hou089.html
  95. 日本と世界の課題2023【テーマ別】―歴史の転換点に立ち、未来を問う, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.nira.or.jp/paper/my-vision/2023/issues23-theme.html
  96. 2023 年4月 11 日 – 一般社団法人 日本経済団体連合会, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/027_honbun.pdf
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