運動が生み出す奇跡のホルモン「イリシン」とは?健康効果と分泌を高める方法を徹底解説

目次

1. はじめに:イリシンは本当に健康の魔法?話題のホルモンを科学する

近年、健康やフィットネスに関心のある人々の間で「イリシン」というホルモンが注目されています。運動によって筋肉から分泌されるこの物質は、まるでギリシャ神話の虹の女神イリスのように、私たちの体に様々な良い知らせをもたらす「メッセンジャー」として期待されています 1。この「イリス」という名前は単なる偶然ではなく、イリシンが筋肉の活動によって生み出され、その恩恵を体の他の組織や臓器へと伝えるという、まさにメッセンジャーとしての核心的な機能を比喩的に表しています。この伝達機能は、運動の効果が局所的な筋肉の変化に留まらず、全身の健康状態に影響を及ぼすメカニズムを理解する上で非常に重要です。しかし、その効果は本当に「魔法」と呼べるものなのでしょうか?本記事では、国外の最新の研究文献を基に、イリシンの正体、期待される健康効果、そして日常生活でイリシンの分泌を高める方法について、専門家の視点からわかりやすく解説します。イリシンに対する期待は大きいものの、科学的な探求の対象として捉え、過度な期待を抱くことなく、その可能性と限界を冷静に見極める姿勢が求められます。本稿では、現在進行中の研究も含め、エビデンスに基づいた情報を提供することを目指します 2

2. イリシンとは?運動が鍵を握る「メッセンジャーホルモン」の正体

イリシンは、私たちの体が持つ精巧なコミュニケーションシステムの一端を担う、興味深い分子です。その発見から生成メカニズムに至るまで、科学者たちの注目を集め続けています。

発見と命名

イリシンは、2012年にハーバード大学医学部のブルース・スピーゲルマン博士らの研究チームによって発見された、比較的歴史の浅いホルモンです 1。骨格筋細胞が運動などの刺激に応答して産生・分泌するサイトカインの一群である「マイオカイン」に分類されます。具体的には、細胞膜に存在するFNDC5(Fibronectin type III domain-containing protein 5)という前駆体タンパク質が、特定の酵素によって切断されることで生成され、血中に放出されます 1

その名前は、ギリシャ神話において神々の間の伝令使として活躍した虹の女神「イリス」にちなんで名付けられました 1。これは、イリシンが運動によって筋肉から放出され、まるでメッセンジャーのように全身の様々な組織(脂肪組織、脳、肝臓、骨など 1)に働きかけ、運動の多岐にわたる恩恵を伝えるという重要な役割を象徴しています。このネーミングは、イリシンの機能を直感的に理解する助けとなります。

生成メカニズム

イリシンの生成は、運動という生理的な活動と密接に関連しています。運動を行うと、筋肉細胞内でPGC-1α(peroxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator 1-alpha)と呼ばれるタンパク質の量が増加します 5。PGC-1αは、細胞内のエネルギー代謝やミトコンドリアの生合成を調節する重要な転写共役因子であり、持久的な運動能力の向上にも関与しています。このPGC-1αの増加が、FNDC5遺伝子のスイッチをオンにし、その発現を強力に促進します。結果として、FNDC5タンパク質の合成が活発になります 7

FNDC5タンパク質は、細胞膜を貫通する形で存在する膜結合型の前駆体です 4。このFNDC5タンパク質の細胞外部分が、まだ完全には特定されていないプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)によって特異的に切断されることで、イリシンとして遊離し、血流に乗って全身へと運ばれます 1。このFNDC5からイリシンが切り出されるプロセスは、他のいくつかの成長因子やホルモン様ポリペプチドが、それらの膜結合型前駆体から遊離する様式と類似しています 5。この切断酵素の特定は、イリシンの産生を人為的に調節する新たな治療戦略の開発に繋がる可能性があり、今後の研究が待たれる領域です。

特筆すべきは、イリシンのアミノ酸配列が、マウスからヒトに至るまで、哺乳類の間で100%同一であるという点です 4。これは、進化の過程でこの分子の構造が厳密に保存されてきたことを意味し、イリシンが生命維持や健康にとって非常に重要かつ基本的な生理学的役割を担っていることを強く示唆しています。もしこの分子が生存に必須でなければ、進化の過程で変異が蓄積しやすかったはずですが、そうはなっていないのです。この事実は、イリシン研究の普遍的な重要性を裏付けています。

イリシンは、筋肉を単なる運動器官としてだけでなく、全身の健康状態に影響を与える内分泌器官としても捉える「筋肉は内分泌器官である」という新しいパラダイムを支持する重要な分子の一つと言えるでしょう 1

3. イリシンがもたらす驚きの健康効果:科学的根拠に基づいたメリット

イリシンは、その発見以来、多岐にわたる生理作用が報告されており、健康増進における役割に大きな期待が寄せられています。ここでは、科学的な研究によって示唆されている主な健康効果について解説します。

脂肪を燃焼しやすくする?白色脂肪の褐色化と代謝改善

イリシンの最も注目されている効果の一つは、体脂肪の質を変化させる能力です。具体的には、エネルギーを貯蔵する役割が主である「白色脂肪細胞(WAT)」の一部を、エネルギーを燃焼して熱を産生する「褐色脂肪細胞(BAT)」に類似した性質を持つ「ベージュ脂肪細胞」へと変化させる「褐色化(browning)」を促進する作用が報告されています 1

この褐色化は、ミトコンドリア内に存在するUCP1(脱共役タンパク質1)という特殊なタンパク質の発現上昇を介して起こります 1。UCP1が増加すると、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化がATP産生から切り離され(脱共役)、エネルギーが熱として放出されるようになります。これにより、基礎代謝量が増加し、全体的なエネルギー消費が亢進すると考えられています。このメカニズムは、単に運動中のカロリー消費を増やすだけでなく、安静時のエネルギー消費をも高める可能性があり、体重管理やメタボリックシンドロームの予防において非常に重要です。

動物を用いた研究では、イリシンを投与したり、体内でイリシンの元となるFNDC5タンパク質を過剰に発現させたりすると、高脂肪食による体重増加が抑制され、血糖値のコントロール能力が改善し(耐糖能改善)、インスリンの効き目が良くなる(インスリン抵抗性改善)ことが示されています 1。これらの結果は、イリシンが肥満や2型糖尿病といった生活習慣病の予防や治療に応用できる可能性を示唆しています。インスリン抵抗性の改善は、2型糖尿病の根本的な問題に対処するものであり、単なる体重減少以上の意義を持ちます。

イリシンが脂肪細胞の褐色化を引き起こすメカニズムとして、脂肪細胞の表面に存在する特定の受容体(例えばインテグリンαV 12)にイリシンが結合することが起点となると考えられています。この結合をきっかけに、細胞内でAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)などのシグナル伝達経路が活性化され、最終的にUCP1遺伝子の発現が促進されるという経路が提唱されています 9

さらに興味深いことに、最近の研究では、イリシンが細胞外小胞(EVs)と呼ばれる微小なカプセルのようなものに内包されて運ばれることが示されています 12。EVsは、内部の物質を分解から保護し、特定の細胞へ効率的に送り届ける役割を持つと考えられています。イリシンがEVsを介して輸送されることは、その作用効率を高め、全身の標的組織へ効果的に到達するための洗練されたメカニズムである可能性があります。

脳の健康と認知機能への貢献:アルツハイマー病予防の可能性も

イリシンの恩恵は、体の代謝調節に留まらず、脳の健康や認知機能にも及ぶ可能性が示唆されています。いくつかの研究では、イリシンが血液脳関門(血液と脳組織との間の物質交換を厳しく制限するバリア)を通過できる可能性が指摘されており 4、筋肉で作られたイリシンが直接脳に作用する道筋があることを示しています。

特に注目されているのは、イリシンが脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現を増加させる作用です 4。BDNFは、神経細胞の生存、成長、分化を促し、記憶や学習といった認知機能において中心的な役割を果たすタンパク質です。運動が認知機能を高めることはよく知られていますが、イリシンによるBDNF産生の促進は、そのメカニズムの一端を説明するものと考えられます。これは、筋肉の活動(運動)が脳の健康に直接的な分子レベルでの繋がりを持つ「筋脳連関(muscle-brain axis)」の存在を強く裏付けるものです。

アルツハイマー病などの神経変性疾患に対するイリシンの保護効果についても、動物モデルを用いた研究が進んでいます。これらの研究では、イリシンの投与が、アルツハイマー病の病態に関わるアミロイドβタンパク質の神経毒性を軽減し、脳内の炎症反応を抑制し、酸化ストレスによる神経細胞のダメージを軽減する効果が報告されています 6。アルツハイマー病は、アミロイドβの蓄積、神経炎症、酸化ストレスなど、複数の要因が複雑に絡み合って発症・進行すると考えられています。イリシンがこれらの複数の病理学的側面に同時に働きかけることができるという事実は、単一の経路を標的とする薬剤よりも包括的な効果をもたらす可能性を秘めており、神経変性疾患の予防や治療における新たなアプローチとして期待されます。

さらに、イリシンは脳内のドパミン経路にも影響を与え、うつ病やアパシー(意欲低下)といった精神神経症状を緩和する可能性も示唆されています 6。これは、イリシンの神経系への作用が認知機能だけでなく、気分や意欲といった情動面にも及ぶことを示しており、運動がもたらす精神的な恩恵の背景にあるメカニズムの一つかもしれません。

丈夫な骨を維持する:骨粗しょう症リスクへのアプローチ

イリシンは、骨の健康維持にも重要な役割を果たすことが明らかになってきました。骨は絶えずリモデリング(再構築)されており、骨を作る「骨芽細胞」と骨を壊す「破骨細胞」のバランスによってその強度が保たれています。研究によると、イリシンは骨芽細胞の増殖や分化を促進し、骨形成を刺激する一方で、骨吸収(破骨細胞による骨の分解)を抑制する可能性が示されています 1。骨形成を促進し、同時に骨吸収を抑制するという二重の作用は、骨密度を高める上で非常に効果的であり、単一の作用を持つ薬剤よりも包括的な骨保護効果が期待できます。

動物モデルを用いた研究では、運動時に筋肉から放出されたイリシンが直接骨に作用し、皮質骨のミネラル密度を高め、骨全体の強度を向上させることが確認されています 5。これらの効果は、特に加齢に伴ってリスクが高まる骨粗しょう症の予防や治療において、イリシンが有望なターゲットとなる可能性を示しています 6

さらに興味深いのは、イリシンが骨髄内に存在する骨髄間葉系幹細胞(BMSCs)の分化の方向性にも影響を与えるという知見です 18。BMSCsは、骨芽細胞だけでなく脂肪細胞にも分化する能力を持っていますが、加齢などにより脂肪細胞への分化が優位になると、骨形成能が低下し、骨髄内の脂肪化が進行して骨の健康に悪影響を及ぼします。イリシンは、Wntシグナル経路などを介して、BMSCsが骨芽細胞へと分化するのを促し、逆に脂肪細胞への分化を抑制することで、骨髄内の「骨と脂肪のバランス」を健全な状態に保つのに寄与する可能性が示唆されています 18。これは、既存の骨細胞に作用するだけでなく、新たな骨細胞の供給源にまで遡って影響を及ぼす、より根本的な骨代謝調節メカニズムと言えます。

これらの知見は、イリシンが筋肉、骨、そして脳の間のコミュニケーションを仲介する「筋骨脳連関(muscle-bone-brain axis)」における重要な分子であることを示しています 6。つまり、運動による筋肉の活動が、イリシンというメッセンジャーを介して、骨の健康や脳機能の維持にも貢献するという、全身的な健康増進のネットワークが存在することを示唆しています。

炎症を抑える力:様々な不調に関わる慢性炎症対策

私たちの体内で持続する微弱な炎症、いわゆる「慢性炎症」は、肥満、糖尿病、動脈硬化、がん、さらには老化そのものといった、多くの現代病の共通した基盤と考えられています。イリシンには、この慢性炎症を抑制する効果があることが、複数の研究によって示唆されています 6

具体的には、イリシンが炎症を引き起こす主要な細胞内シグナル伝達経路の一つであるTLR4/MyD88/NF-κB経路を抑制することが報告されています 6。TLR4は細胞表面にある受容体で、細菌由来の成分などを感知して炎症反応のスイッチを入れます。MyD88はその下流で働くアダプタータンパク質、そしてNF-κBは炎症性サイトカイン(IL-6やTNF-αなど、炎症を促進するタンパク質)の遺伝子発現をコントロールする中心的な転写因子です。イリシンがこの経路の上流部分から抑制することで、炎症性サイトカインの産生が効果的に減少し、結果として抗炎症作用が発揮されると考えられます。このように、炎症カスケードの根幹に近い部分を標的とすることで、広範な抗炎症効果が期待できるのです。

この抗炎症作用は、特に肥満に伴って脂肪組織で生じる慢性的な低度炎症や、それが引き金となるインスリン抵抗性、さらには動脈硬化の進展といった病態の改善に寄与する可能性があります 20。脂肪組織における慢性炎症はインスリン抵抗性の主要な原因の一つであることが知られており、イリシンがこの炎症を鎮めることで、インスリン感受性が改善し、代謝全体の健康状態が向上するという好循環が生まれると考えられます。

その他期待される効果(心血管系など)

上記に挙げた効果以外にも、イリシンは心血管疾患(CVDs)のリスク低減に関連する可能性が示されています 6。これは、イリシンが持つインスリン抵抗性の改善効果や脂質代謝の調節作用、さらには抗炎症作用などが複合的に働くことで、動脈硬化の進行を遅らせたり、血圧を安定させたりする効果が期待されるためです。肥満やメタボリックシンドロームは心血管疾患の強力な危険因子であり、イリシンがこれらの基礎疾患の改善に寄与することで、間接的に心血管系を保護すると考えられます。ただし、イリシンが心血管系に直接的にどのような作用を及ぼすのか、その詳細なメカニズムについては、まだ十分に解明されていない点も多く、今後のさらなる研究が待たれます 14

これらの多様な健康効果をまとめると、以下のようになります。

Table 1: イリシンの主な健康効果と関連研究

健康効果 (Health Benefit)主な作用メカニズム (Key Mechanism of Action)関連文献例 (Example References)
脂肪燃焼促進・体重管理 (Fat Burning/Weight Mgt)白色脂肪の褐色化 (UCP1↑)、エネルギー消費増大、インスリン抵抗性改善 (Browning of white fat (UCP1↑), increased energy expenditure, improved insulin resistance)1
脳機能改善・神経保護 (Brain Health/Neuroprotection)BDNF産生促進、神経炎症抑制、抗酸化作用、アミロイドβ毒性低減 (Increased BDNF, reduced neuroinflammation, antioxidant effects, reduced amyloid-β toxicity)4
骨の健康維持・骨粗しょう症予防 (Bone Health/Osteoporosis Prev.)骨芽細胞活性化、骨形成促進、骨吸収抑制の可能性、BMSCの骨芽細胞への分化誘導 (Osteoblast activation, bone formation promotion, potential bone resorption inhibition, BMSC differentiation to osteoblasts)1
抗炎症作用 (Anti-inflammatory Effect)TLR4/MyD88/NF-κB経路抑制、炎症性サイトカイン産生低下 (Inhibition of TLR4/MyD88/NF-κB pathway, reduced pro-inflammatory cytokine production)6
心血管保護の可能性 (Potential Cardiovascular Protection)代謝改善(インスリン抵抗性、脂質異常)を通じた間接的効果 (Indirect effects via metabolic improvements (insulin resistance, dyslipidemia))6

この表は、イリシンが持つ多面的な可能性を簡潔に示しており、今後の研究の進展とともに、さらに多くの項目が加わることも期待されます。

4. イリシンを増やすには?今日からできる実践的な方法

イリシンの持つ様々な健康効果を享受するためには、体内でその分泌を促すことが重要です。現在知られている、イリシンを増やすための実践的な方法について解説します。

運動の種類と効果:最適なトレーニングは?

イリシンは「運動ホルモン」とも呼ばれるように、身体活動、特に筋肉の収縮を伴う運動によって最も効果的に分泌が促進されます。運動を行うと、筋肉細胞内でPGC-1αというタンパク質の発現が高まり、これがFNDC5遺伝子の活性化を介してイリシンの産生・分泌へとつながることは既に述べたとおりです 5。したがって、どのような運動がイリシン分泌に効果的かを理解することは、その恩恵を最大限に引き出すために不可欠です。

有酸素運動

ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳といった、ある程度の時間をかけて継続的に行う中強度の有酸素運動は、血中のイリシンレベルを上昇させることが報告されています 7。例えば、ある研究では、12週間の高強度インターバル形式の有酸素運動(サイクリング)を行った結果、血漿イリシン濃度が安静時の約3.6 ng/mlから運動後には約4.3 ng/mlへと上昇したことが示されています 22。重要なのは、一過性ではなく、ある程度の期間、持続的に運動を行うことです。

筋力トレーニング

スクワットや腕立て伏せ、ダンベル体操などのレジスタンス運動(筋力トレーニング)も、筋肉に負荷をかけて収縮させることでPGC-1αを活性化し、イリシンの産生を促すと考えられています 7。筋力トレーニングは、筋肉量を増加させる効果もあります。筋肉はイリシンを産生する「工場」であるため、筋肉量が増えること自体が、イリシン産生能力の向上に繋がり、長期的にはより多くのイリシンを分泌できる体質作りに貢献する可能性があります。

高強度インターバルトレーニング(HIIT)の効果

近年、特にイリシン分泌促進効果の観点から注目されているのが、高強度インターバルトレーニング(HIIT)です。HIITは、全力に近い高強度の運動を数十秒から数分間行い、その後短い休息または低強度の運動を挟み、これを数セット繰り返すトレーニング方法です。複数の研究やメタアナリシス(複数の研究結果を統合して分析する手法)において、HIITは、持続的な中強度有酸素運動や他の運動プロトコルと比較して、血清イリシンレベルをより顕著に上昇させる効果が示されています 7。この背景には、HIITのような強度の高い運動が、筋肉に対してより大きな代謝的ストレスを与え、PGC-1α経路をより強力に活性化する可能性が考えられます。短時間で効率的にイリシンの分泌を促したい場合には、HIITは非常に有効な選択肢と言えるでしょう。

ただし、イリシンの分泌反応は、運動の種類や強度、継続時間だけでなく、個人の体力レベル、年齢、性別、さらには体重状況によっても異なる可能性があることに注意が必要です。例えば、あるメタアナリシスでは、運動によるイリシン増加効果は、過体重(BMIが25以上30未満)の人々では顕著であったものの、肥満(BMIが30以上)の人々では統計的に有意な変化が見られなかったり、40歳未満の群でより効果が高かったりする可能性が示唆されています 7。これは、肥満や加齢に伴う代謝機能の変化が、イリシン産生システムの応答性に影響を与えている可能性を示しています。したがって、画一的な運動プログラムではなく、個々の状態に合わせた運動の種類や強度を選択し、継続することが、イリシン分泌を最適化する上で重要となります。結局のところ、どのような運動であれ、筋肉に適切な刺激を与え、PGC-1αの活性化を促すことがイリシン産生の鍵となるため、自身が楽しみながら継続できる運動を見つけることが最も大切です。

寒冷刺激も有効?イリシン分泌の意外なトリガー

運動以外にも、イリシンの分泌を促す可能性のある興味深い生理的刺激として「寒冷暴露」が挙げられます。いくつかの研究によると、人間が寒さを感じて体がブルブルと震える「シバリング(身震い)」という現象が起こると、血中のイリシン濃度が上昇することが確認されています 23

このシバリングによるイリシン分泌の増加量は、運動によって刺激される分泌量と同程度に達する可能性も示唆されています 23。シバリングは、体温を維持するために筋肉が不随意に収縮して熱を産生する反応です。この筋肉の収縮が、運動時と同様にイリシンの分泌を促すと考えられます。この事実は、イリシンが進化の過程で、元々は寒冷環境に適応し、褐色脂肪組織の活性化などを通じて効率的に熱を産生するためのホルモンとして機能していた可能性を示唆しています。つまり、運動によるイリシン分泌は、このより原始的な寒冷適応反応のメカニズムが、別の形の身体活動(意図的な運動)に応用された結果であるとも考えられるのです。

ただし、イリシン増加を目的として意図的に寒冷暴露を行うことの現実性や安全性については、慎重な検討が必要です。研究で見られるような顕著なシバリングを引き起こすほどの寒冷刺激は、体にとって大きなストレスとなり得ますし、特に心血管系に問題を抱える人にとってはリスクが伴う可能性もあります。したがって、現時点では、寒冷刺激を積極的にイリシン増加策として推奨するには至っていませんが、運動以外の生理的刺激がイリシン分泌に関与するという点は、イリシンの多面的な役割を理解する上で非常に興味深い知見です。

食事でイリシンは増やせる?現在の研究状況

食事の内容がイリシンの分泌に直接的な影響を与えるかどうかについては、まだ研究が始まったばかりの段階であり、明確な結論は出ていません。しかし、いくつかの研究では、特定の食事パターンや栄養素が血中イリシン濃度に影響を及ぼす可能性が示唆されています。

例えば、メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうち2つ以上を合併した状態)の被験者を対象とした研究では、食後の血糖値上昇が緩やかな食品を中心とした低グリセミックインデックス食(LGID)を摂取したグループにおいて、他の食事介入グループと比較して、血中イリシン濃度が統計的に有意に上昇したという報告があります 25。また、同じ研究では、植物性タンパク質の摂取量や飽和脂肪酸の摂取量が、イリシン濃度に対して正の相関を示す可能性も示されています 25

これらの結果は興味深いものの、解釈には注意が必要です。LGIDがイリシン濃度を上昇させたメカニズムとして、食事中の特定の成分が直接イリシン分泌を刺激したというよりは、LGIDがインスリン抵抗性を改善し、全体的な代謝状態を良好にすることで、筋肉の機能やイリシン産生システムがより効率的に働くようになったという間接的な効果である可能性も考えられます。植物性タンパク質や飽和脂肪酸とイリシンの関連についても、その詳細なメカニズムや、他の集団においても同様の結果が得られるのかどうかについては、さらなる検証が必要です。

現時点では、運動や寒冷刺激(シバリング)ほど明確で再現性の高いイリシン増加効果が、特定の食事療法や栄養素によって確立されているわけではありません。食事は全身の健康状態に多大な影響を与えるため、バランスの取れた健康的な食生活を心掛けることは非常に重要ですが、イリシン分泌を特異的に高めることを主目的とした食事戦略については、今後の研究の進展を待つ必要があります。

これらのイリシン分泌を促す方法をまとめると、以下のようになります。

Table 2: イリシン分泌を促す主な方法と特徴

方法 (Method)主なメカニズム (Key Mechanism)イリシン増加効果 (Reported Impact on Irisin)特徴・注意点 (Characteristics/Notes)関連文献例 (Example Refs)
高強度インターバルトレーニング (HIIT)筋肉でのPGC-1α活性化 (PGC-1α activation in muscle)大幅増の可能性 (Potential significant increase)時間効率が高い、過体重者で効果的との報告。強度高いため注意 (Time-efficient, reported effective in overweight. High intensity requires caution)7
有酸素運動 (Aerobic Exercise)筋肉でのPGC-1α活性化 (PGC-1α activation in muscle)増加 (Increase)持続的な実施が重要、中強度でも効果期待 (Consistent implementation important, moderate intensity can be effective)7
筋力トレーニング (Resistance Training)筋肉でのPGC-1α活性化、筋肉量増加 (PGC-1α activation, increased muscle mass)増加 (Increase)筋肉量維持・増加にも貢献 (Also contributes to muscle mass maintenance/increase)7
寒冷暴露(シバリング)(Cold Exposure – Shivering)筋肉の不随意収縮 (Involuntary muscle contraction)運動と同程度の可能性 (Potential similar to exercise)熱産生メカニズムと関連、実践には注意が必要 (Related to thermogenesis, practical application requires caution)23
特定の食事療法(例:低GI食)(Specific Diets e.g. LGID)間接的な代謝改善効果の可能性 (Potential indirect metabolic improvement effects)一部で増加報告 (Increase reported in some cases)メタボリックシンドローム患者での報告。直接的効果は研究途上 (Reported in MetS patients. Direct effects under research)25

この表は、現時点で考えられるイリシン増加策を比較検討する上で参考になりますが、個々の状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。

5. イリシンの研究:今後の展望と注意点

イリシンは、その発見以来、多くの期待を集めてきましたが、科学的な理解はまだ発展途上にあり、いくつかの課題や注意点も存在します。

ヒトでの研究の現状と課題

イリシンの研究が始まった当初、特にヒトにおけるその存在や生理的役割については、いくつかの議論がありました 3。例えば、イリシンの前駆体であるFNDC5タンパク質をコードする遺伝子の開始コドン(翻訳開始を指示する遺伝情報)が、ヒトでは一般的なATG配列ではなく、稀なATA配列であるという遺伝学的な特徴が指摘されました。これにより、ヒトではFNDC5タンパク質が効率的に作られないのではないか、ひいてはイリシンも十分に産生されないのではないかという疑問が呈されました 3。また、初期の一部の研究では、培養したヒトの筋細胞を電気刺激で収縮させても、FNDC5遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA:タンパク質の設計図)の発現量に変化が見られなかったという報告もあり、ヒトにおける運動とイリシンの関連性に疑問符が投げかけられました 3

しかし、その後の研究の進展、特に質量分析法(MS:物質の質量を精密に測定することで分子を同定・定量する技術)という、より高感度かつ特異的な分析技術の導入により、これらの初期の疑問は大きく解消される方向に向かいました。質量分析法を用いた研究によって、ヒトの血漿中にもイリシンが実際に存在し、その平均的な濃度は約3.6 ng/mlであること、そして運動(例えば、高強度の有酸素インターバルトレーニング)によってその濃度が約4.3 ng/mlへと有意に上昇することが明確に示されました 4。さらに、ヒトのFNDC5遺伝子に見られる非標準的なATA開始コドンからでも、効率的にFNDC5タンパク質が翻訳され得るメカニズムも提唱されています 5。これらの発見は、科学が初期の疑問や矛盾を、より洗練された技術や新たな知見によって克服していくプロセスの一例と言えます。

それでもなお、動物モデル(主にマウス)で見られるようなイリシンの顕著な生理効果(例えば、劇的な体重減少や代謝改善など)が、ヒトにおいてどの程度忠実に再現されるのかについては、まだ完全には明らかになっていません。また、特に高齢者におけるイリシンの役割や血中濃度と健康状態との関連については、研究結果が一貫していない部分も見受けられます 2。高齢者は、若年者と比較して基礎疾患の保有率が高く、生理機能も多様であるため、イリシンの作用や応答性がこれらの要因によって修飾される可能性があります。したがって、ヒト、特に多様な背景を持つ集団におけるイリシンの真の役割を解明するためには、今後も質の高い大規模な臨床研究が不可欠です。

測定方法の標準化の重要性

イリシン研究におけるもう一つの重要な課題は、血中などの生体試料中のイリシン濃度を測定する方法の信頼性と標準化です。研究の初期段階では、特定の抗体を用いてイリシンを検出・定量するELISA(酵素免疫測定法)キットが広く用いられてきました。しかし、市販されているELISAキットの中には、その特異性(イリシンだけを正確に捉えているか)や正確性(測定値が真の値に近いか)について疑問が呈されるものもありました 5。異なるキット間での測定値のばらつきや、イリシン以外の類似物質を誤って検出してしまう可能性などが指摘され、これが研究結果の不一致の一因となった可能性も否定できません。

前述の通り、質量分析法のような、抗体に依存しない、より精密で客観的な測定方法が開発・応用されるようになったことで、より信頼性の高いイリシン濃度データが得られるようになってきました 11。しかし、異なる研究室や研究グループ間で結果を正確に比較し、イリシンに関する知見を積み重ねていくためには、標準化された測定プロトコル(試料の採取方法、処理方法、測定手順、標準物質の利用など)を確立し、広く共有することが依然として極めて重要です。

最近では、採血を必要としない、より非侵襲的なイリシン測定法として、唾液中のイリシン濃度を評価する研究も進められています 8。唾液は採取が容易であり、被験者の負担も少ないため、この方法が実用化され、血中濃度との良好な相関関係が確立されれば、大規模な疫学研究や、運動効果のモニタリングなどをより簡便に行えるようになる可能性があります。ただし、唾液を用いた測定についても、その信頼性や標準化は今後の課題です。

治療薬としての可能性と限界

イリシンが持つ脂肪燃焼促進、神経保護、骨代謝改善、抗炎症作用といった多様な生理効果は、肥満、2型糖尿病、アルツハイマー病などの神経変性疾患、骨粗しょう症といった、現代社会が直面する多くの慢性疾患に対する新たな予防薬や治療薬としての大きな可能性を示唆しています 1。実際に、動物実験や培養細胞を用いた基礎研究のレベルでは、遺伝子操作によってイリシンの発現を増強したり、体外から合成したイリシン(リコンビナントイリシン)を投与したりすることで、これらの疾患モデルにおいて有益な効果が得られたという報告が数多くあります 11

しかし、これらの有望な基礎研究の結果を、実際にヒトへの治療応用へと繋げるには、まだ多くのハードルを越える必要があります。例えば、ヒトにおいて治療効果を発揮するための最適なイリシンの投与量、投与経路(経口、注射など)、投与頻度、そして何よりも長期的な投与における安全性と有効性を厳密に検証し、確立する必要があります 11。動物とヒトとでは薬物動態(薬の吸収、分布、代謝、排泄の過程)や生理応答が異なる場合も多く、動物実験での成功がそのままヒトでの成功を保証するものではありません。

また、イリシンは確かに運動の効果の一部を仲介する重要な因子ではありますが、運動そのものがもたらす多面的で総合的な恩恵(例えば、心肺機能の向上、筋力の維持・増強、ストレス解消、睡眠の質の改善、社会的な繋がりの促進など)を、イリシンという単一の分子だけで完全に代替できるわけではないという視点も忘れてはなりません。イリシンは「運動模倣薬(exercise mimetic)」としての可能性を秘めていますが 1、それはあくまで運動の特定の側面を模倣するものであり、運動習慣そのものに取って代わるものではないと理解することが重要です。現時点では、イリシンの恩恵を最も確実かつ安全に享受する方法は、イリシン製剤の登場を待つことではなく、自らの体内でイリシンの産生を促す活動、すなわち定期的な運動を実践することであると言えるでしょう。

6. まとめ:イリシンと賢く付き合い、健康寿命を延ばすために

本記事では、運動によって筋肉から分泌されるホルモン「イリシン」について、その発見から期待される多様な健康効果、そして日常生活で分泌を高める方法、さらには研究の現状と課題に至るまで、国外の科学的知見を基に解説してきました。

イリシンは、白色脂肪の褐色化を介した脂肪燃焼の促進、BDNF産生促進などを通じた脳機能のサポート、骨芽細胞の活性化による骨の健康維持、そしてNF-κB経路の抑制などを介した抗炎症作用など、私たちの体に多岐にわたる恩恵をもたらす可能性を秘めた、まさに注目のホルモンです 1。特に、高強度インターバルトレーニング(HIIT)をはじめとする様々な種類の運動は、筋肉内のPGC-1αを活性化し、イリシンの分泌を高める効果的な方法として期待されています 7

しかしながら、イリシンに関する研究はまだ発展途上の段階であり、その全貌が解明されたわけではありません。動物実験で示された顕著な効果がヒトでどの程度再現されるのか、最適な投与量や長期的な安全性はどうかなど、治療薬としての実用化に向けては解決すべき課題が多く残されています。「魔法の薬」と断言するには時期尚早であり、測定方法のさらなる標準化や、ヒトにおける質の高い臨床研究の積み重ねが不可欠です 2

現時点において、私たちがイリシンの恩恵を最も確実かつ安全に享受できる方法は、イリシン製剤の登場を待つことではなく、日々の生活に適度な運動を取り入れ、活動的なライフスタイルを送ることによって、自らの体内でイリシンの産生を自然に高めることです。イリシンは、運動がなぜこれほどまでに素晴らしい健康効果をもたらすのか、その複雑なメカニズムの一端を科学的に説明してくれる魅力的な分子であり、私たち自身の体が持つ素晴らしい治癒力や適応能力を再認識させてくれます。

イリシンは万能薬ではありませんが、運動の価値を分子レベルで裏付ける強力な証拠の一つです。この知識を活かし、運動を中心とした健康的な生活習慣を賢く選択し、継続することで、イリシンを含む様々な恩恵を最大限に引き出し、より豊かで活動的な健康長寿を目指すことができるでしょう。

引用文献

  1. FNDC5/Irisin: Physiology and Pathophysiology – PMC – PubMed Central, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8838669/
  2. Understanding the Role of Irisin in Longevity and Aging: A Narrative Review – PubMed, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39846531/
  3. Evidence against a beneficial effect of irisin in humans – PubMed, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24040023/
  4. FNDC5/Irisin – Their Role in the Nervous System and as a Mediator for Beneficial Effects of Exercise on the Brain – PubMed Central, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5419585/
  5. FNDC5 – Wikipedia, 6月 8, 2025にアクセス、 https://en.wikipedia.org/wiki/FNDC5
  6. Irisin: A Multifaceted Hormone Bridging Exercise and Disease Pathophysiology – PMC, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11676223/
  7. Differences in the Impact of Various Types of Exercise on Irisin Levels: A Systematic Review and Meta-Analysis, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10982734/
  8. Salivary and serum irisin in healthy adults before and after exercise – PMC – PubMed Central, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10141757/
  9. From white to brown fat through the PGC-1α-dependent myokine irisin: implications for diabetes and obesity – PMC, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3339822/
  10. The Effect of Exercise Training on Irisin Secretion in Patients with Type 2 Diabetes: A Systematic Review – PubMed, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36614864/
  11. Unlocking the Therapeutic Potential of Irisin: Harnessing Its Function in Degenerative Disorders and Tissue Regeneration – PubMed Central, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10095399/
  12. Exercise-inducible circulating extracellular vesicle irisin promotes browning and the thermogenic program in white adipose tissue – PubMed, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38288566/
  13. Protective effect of irisin against Alzheimer’s disease – PubMed, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36203845/
  14. Irisin and Cardiometabolic Disorders in Obesity: A Systematic Review – PMC, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10602702/
  15. Irisin: An unveiled bridge between physical exercise and a healthy brain – PubMed, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38176582/
  16. Irisin: A Multifaceted Hormone Bridging Exercise and Disease Pathophysiology – PubMed, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39769243/
  17. Irisin in ischemic stroke, Alzheimer’s disease and depression: a Narrative Review – PubMed, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39214327/
  18. Irisin reshapes bone metabolic homeostasis to delay age-related osteoporosis by regulating the multipotent differentiation of BMSCs via Wnt pathway – PubMed, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39840074/
  19. Protective role of irisin on bone in osteoporosis: a systematic review of rodent studies, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40192854/
  20. Irisin: An anti-inflammatory exerkine in aging and redox-mediated comorbidities – PubMed, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36843614/
  21. Anti-Inflammatory Properties of Irisin, Mediator of Physical Activity, Are Connected with TLR4/MyD88 Signaling Pathway Activation – PMC, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5412287/
  22. Detection and Quantitation of Circulating Human Irisin by Tandem Mass Spectrometry – PMC, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4802359/
  23. Irisin and FGF21 are cold-induced endocrine activators of brown fat function in humans – PMC, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7647184/
  24. Irisin and FGF21 are cold-induced endocrine activators of brown fat function in humans – PubMed, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24506871/
  25. Irisin Serum Levels in Metabolic Syndrome Patients Treated with Three Different Diets: A Post-Hoc Analysis from a Randomized Controlled Clinical Trial, 6月 8, 2025にアクセス、 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6073260/
  26. Unlocking the Therapeutic Potential of Irisin: Harnessing its Function in Degenerative Disorders and Tissue Regeneration – Preprints.org, 6月 8, 2025にアクセス、 https://www.preprints.org/manuscript/202303.0091/v1
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