はじめに
血糖値を下げるホルモンとして、インスリンがよく知られています。
今回はそのインスリンの働きによって細胞内でどのような反応が生じているかインスリンの機能について解説していきました。
インスリンについて知りたいと思っている方はぜひこの記事をご一読ください。

インスリンの分泌

糖分を含む食物を摂取すると、消化酵素などの働きによってデンプンなどの大きな糖がグルコースに分解されます。
分解されたグルコースは小腸から血液に吸収されていきます。
その後血液中のグルコース濃度が増えると、ホルモン分泌を指示する脳下垂体の視床下部から指令が下り、膵臓のβ細胞でインスリンが分泌されます。
では、このインスリンはどのように作用することで血糖値を下げているのでしょうか。
インスリンのシグナル伝達

分泌されたインスリンは、細胞内にシグナルを伝えることが知られています。
この作用をインスリンシグナルといい、インスリンが細胞の表面に存在する受容体と結合することで開始します。
受容体とは、細胞外由来のホルモンや神経伝達物質などのシグナル分子を選択的に受け取るタンパク質を指します。
今回登場する受容体はインスリン受容体というもので、インスリンを特異的に認識し結合するという性質を持っています。
インスリンが結合すると、受容体に存在するプロテインチロシンキナーゼという部位が活性化されます。
これにより、細胞内のインスリン受容体基質(IRS-1)のリン酸化が起こります。
このようなタンパク質のリン酸化反応は、生体内で起こる様々な反応を調節する役割を担っており、リン酸化によってスイッチのON/OFFが切り替わるようなイメージです。
IRS-1のリン酸化が起こると、細胞内の様々な因子に作用し、シグナル伝達が行われていきます。
このシグナル伝達には膨大な数の因子が複雑に関与しており、最終的にグルコーストランスポーター(GULT4)というタンパク質を含む小胞が細胞膜と融合します。
小胞とは細胞内に存在する膜に包まれた袋状の構造で、物質の貯蔵や輸送の際に役割を果たします。
今回の小胞はGLUT4を蓄積している特殊なものです。
GLUT4はグルコースを細胞内へ輸送する機能を持っており、これが細胞膜へ移動することで、血液から細胞へグルコースの流入が起こります。これにより血液中のグルコースが減少するため、血糖値の低下につながります。
グルコースの代謝
細胞内に流入したグルコースは解糖系に入ります。
解糖系はグルコースをピルビン酸に分解する代謝経路です。
そして解糖系で得られたピルビン酸は、細胞内のミトコンドリア内でクエン酸回路という経路に入っていきます。
解糖系とクエン酸経路のそれぞれで、アデノシン三リン酸(ATP)というヌクレオチドが生成されます。
このATPは生体におけるエネルギー通貨であり、これらの経路を通ることで、グルコースをエネルギー源に変換することで生命活動の維持を行うことが可能となっています。
以上がインスリンの働きによって血糖値を下げる仕組みですが、これが正常に機能しなくなると、高血糖が慢性的に続き糖尿病となります。
※以下の記事では生化学について解説しながら、解糖系についても若干解説しています。よかったらぜひご一読ください。

では、糖尿病はどのような異常が生じることで発症するのでしょうか。
糖尿病の種類

糖尿病には1型と2型の2種類が存在し、発症する要因が異なります。
1型糖尿病では、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊されることで、分泌量が減少します。
インスリン分泌能が低下すると、その下流に位置するシグナル伝達の働きも抑制されるため、血液中にグルコースが残った状態となり、血糖値が高くなるという仕組みです。
膵臓のβ細胞が破壊される原因の一つとして、自己免疫が知られています。
免疫とは、一般的には体外から侵入した異物を排除する働きを指します。
しかし、自己免疫が起こると、自身の組織を異物として認識してしまい攻撃を行います。これにより、膵臓のβ細胞が破壊されてしまいます。
2型糖尿病も、インスリン分泌能の低下やシグナル伝達が抑制されるという点は同じです。
しかし、インスリン受容体が機能しなくなることでも発症することと、生活習慣の影響を強く受けるという点で1型とは異なります。
普段耳にする糖尿病は、一般的にはこちらを指しており、代表的な生活習慣病と言われています。
運動不足や高脂肪食、過食などによってストレスが生じ、インスリンの分泌能が低下したり、受容体の働きが悪くなることでシグナル伝達が抑制され、血糖値の上昇が起こります。
以上が糖尿病の仕組みです。
まとめ
このように、インスリンは生体内の多くの因子に作用し、それらが複雑に関わることで、健康体の維持を行います。
糖尿病になると、インスリン注射や運動療法、食事療法などの治療が行われますが、いずれもインスリンの働きを元に戻す治療法ではありません。
しかし、インスリンシグナルのメカニズムや糖尿病の原因にはまだ解明されていない部分も多く、その部分により良い治療法を確立するための何かが存在する可能性はあります。
さらなる研究の進歩により、インスリンの新たな機能や、糖尿病のより良い治療法が解明されるとより面白いですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※以下では、糖尿病にも効果があるとされる運動トレーニングの種類について解説しています。もしよかったらぜひご一読ください。
